滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

２：カブキーフェスタへの道

２４０：天狗（シガミー）という名の神さま、三本目魚料理

「ニャーッ！　こんどは当たったニャン♪」
「カ・ラ・テェー、がんばれぇコォン♪」
　一喜一憂いっきいちゆうするルコルたち。
　わいわいわい、がやがやがや。
　観客きゃくたちも、それぞれ楽たのしんでくれている。

　ヴォォォン――切りかわる画面がめん。
　さてつぎは……『魚料理さかなりょうり』か。
　最初さいしょの小品オードブルに川魚かわさかなをつかったからな。
　なにか毛色けいろのちがった食材しょくざいを――

　食材しょくざいによじのぼり何なにかをさがす――裏烏天狗カラテェー。
　コッチも負けてはいられないけど――天狗装束てんぐしょうぞくはとにかく大おおきい。
　この図体ずうたいでよじのぼったら、下駄げたの歯で粉砕ふんさいしかねん。

　手がとどく範囲はんいで、山やまの表面ひょうめんに見えてる物ものの中なかから――なにか選えらびたい。
　神域惑星しんいきわくせいで採ってきた食材しょくざいは、お互たがいに知っている。

　正直海しょうじきうみに居る魚さかなが捕れてたら、いろいろな種類しゅるいのを使つかえたんだろうが。
　フェスタが終わって一息ひといきついたら、まず神域惑星しんいきわくせいで海うみを見つけよう。

　迅雷ジンライが――大おおきめな川魚さかなを二本担にほんかついで、食材山やまを下りた。

　何なにかないか何なにか。
　やたらと大おおきな大根だいこん（マンドラゴーラじゃなくて普通ふつうの白しろいの）を力一杯引ちからいっぱいひっこ抜く。
　ばらばらと崩くずれ――ぼごぼごどがっ！
　やたらとでけぇ……行商人ぎょうしょうにんが運はこんでるのを見たことが有る野菜がぶち当たってきた！

　まるくて硬かたい野菜それが頭あたまを狙ねらってきたから、手甲てっこうでおさえたら――
　どがっん――――くそう、もう一個いっこべつのが落ちて来やがった！
　天狗の体わしを下敷したじきにしたのは――――ま、魔物まものか!?
　小太刀こだちを出しかけるほどには――異形な・・・その姿すがた。

「ぬぅ――――（魚さかなを取るのに水面すいめんを力一杯叩ちからいっぱいたたいたら、いっしょに取れた川海老かわえびだ！）」
　一応持いちおうもってきたんだった。
　けど海老えびなんざ茹ゆであがったのを、まるごと囓かじったことしかねぇ。

「カカカッ――コイツを使つかっても、かまわぬかのぅ？」
　背負せおったまま立ちあがり、海老それを持ちあげてみせた。

　　　§

「さて三本目さんぼんめとなる〝魚料理さかなりょうり〟でございますが、両者りょうしゃともに完成かんせいいたしました！」
　茹ゆでたしっぽを輪切わぎりにして、薬味やくみを添えただけの粗野そやな料理りょうり。
　女将おかみさんが――これなら〝たまごソース〟が合いそうだねぇ――と出してくれたから、ちょいと付けて囓かじってみた。

　こいつぁ――味あじは想像以上そうぞういじょうにうまかった！

「カカカカッ――このタレを使つかわせてもらうわけにはイカンかのぅ？」
　うまいものを喰うために必要ひつようなのだから仕方しかたがない。
　泣き言ごとではないが……カシカシと頭あたまを掻いた。

　職員しょくいんと解説役かいせつやくが、顔かおをつきあわせ審議しんぎ。

「認みとめまぁぁすっ♪　な・ぜ・な・ら、おいしいからぁぁでぇすっ！」
　と身勝手みがってに主張しゅちょうする五百乃大角いおのはら。
　職員ゲテなんとかと解説リオが、対戦相手たいせんあいての覆面顔つらを見た。

　こくりと頷うなづく弟子兼でしけん裏天狗ジンライ。
　よぉしコレなら良い勝負しょうぶに――なったはずだ……普通なら・・・・。

　ドルゴロ――ドドン！
『烏』『烏』『烏』『烏』『烏』――『烏』！
　満場一致まんじょういっちでジンライが取った。

　まさか米こめをつかった本式の寿司・・・・・を出して来るとは――お釈迦しゃかさまでも思おもうまいて。
　さっきでかい木箱きばこの中なかでなんかやって・・・・・・やがったのは――米こめの殻からを取ってやがったんだな！
　米こめを研ぐ・・のにゃ、力自慢ちからじまんの男衆おとこしゅうが相当要そうとういるはずだが――!?

　くそう、完全かんぜんにまけた。
　おれが所属しょぞくしてた虎鶫とらつぐみ隊たい弐番にばん隊たいですら――――ここまで白しろい米こめにわぁ、お目に掛かったことがねぇ。

　やたらと小ちいせぇ寿司すしのひとつを分けてもらったが――驚天動地きょうてんどうちのうまさだった。
　審査員席しんさいんせきを見れば、五百乃大角いおのはらと伯爵夫人ルリーロと元もとスーパールーキーの目尻めじりには涙なみだが浮かんでる。

「（これ、おれにもあとで食わせろよな）」
「――良いでしょう、お師匠さまマスター。お望のぞみと有ラば・――」

　これで一勝二敗《いっしょうにはい》。よしよし迅雷ジンライめ、弟子でしめ。
　つぎこそ取りかえす――

　　　§

「はて？　蔵ぐらに手？　よくわからんな？」
　『グラニテ』とはなんぞや？
　画面がめんに映うつし出された四本目よんぼんめの絵を見れば――菓子かしというのはわかるが。

「おやぁ、テェーング選手せんしゅはコース料理りょうりにうとい、ご様子ようすですね。じつはそんなときにそなえて、助たすけ船ぶねをご用意よういさせていただいております」
　解説役かいせつやくが「おねがいいたします」と誰だれかを呼びつける。

「はい、それではここで助すけっ人との登場とうじょうです。央都おうとよりお招まねきしたＱ廷料理人きゅーていりょうりにん！　みなさま盛大せいだいな拍手はくしゅを――」
　「央都おうと」のところでニゲルがいっしゅん逃げ出しそうになったのを、姫ひめさんに首根くびねっこをつかんで引きもどした。

　わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――ニャァ――コォン――飲ませ――ぉぉぉぉぉおぉっ♪
　大歓声だいかんせいの中なか。
　舞台横ぶたいよこの階段かいだんを上がってきたのは――ぶるるんぶるるん、ぽきゅぽきゅむん♪

「ばれちゃぁ、仕方しかたがないねぇー。そうだよ、あたしが元Ｑもときゅう邸料理人ていりょうりにんのトゥナだよ♪」
　颯爽さっそうと出てきたのは、なぜかおにぎりを従したえた女将さんだった・・・・・・・。