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3:ダンジョンクローラーになろう
252:ダンジョンクローラー(シガミー御一行様)、迷宮へのいざない
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右側通路をレイダがそのまま。
真ん中をおれが。
左側をリカルルが、受け持つことになった。
密書もどきを一匹一匹退治して、一歩ずつすすんでいく。
これなら毒を喰らうことも、亀裂に落ちることもない。
とんでもなく遅い行軍になるが、じつに安全にすすんでいける。
おれがシシガニャン二号を着ても良いけど――
ふぉん♪
『>それだと通路分の時間が掛かり、
かえって遅くなります』
そうなるなぁ。
「もし燃えたりしたら言ってくれ、新しいのをスグにつくるから」
万が一、鉄餅が駄目になっても一度作った物は、エディタ経由でスグに複製できるのは大きい。
「「はぁーい」」
ふたりともへっぴり腰で、銃には慣れてねぇみてぇだ。
魔法でとおくから敵を、直に燃やせる世界。
火縄銃なんて見たことすらないんだから、あたりまえだ。
ふぉん♪
『>はい。火薬による推進力に頼る必要がありませんので、
銃器類の類いは発達しなかったようです』
何でも切れる視線に、しまいには狐火。
攻撃にはろくに使えねぇけど、一応アーティファクトもあるからな。
「では姫さま、ココに拠点を築いてもよろしいですか?」
おれが担いできた荷物の中から、夜営の道具を取りだす黒騎士。
あの荷物入れの袋は、ジンライ式隠れ蓑につながってて、荷物の重
さを肩代わりする――金剛力が使える。
ソレはいつ売り出すのかしらと、リオに詰めよられたから――「これは五百乃大角に頼まれて、試しているだけでな――たぶんそのうちだ」とごまかした。
迅雷の細腕の作りおきは――おれたち五百乃大角組の最後の砦だ。
シシガニャンに対するおもちみたいな、廉価版の細腕でも作れない限りは、外には出せねぇ。
ふぉん♪
『>プロダクトアームの在庫は現在4,483,012メートル。
シガミーの四肢換算で17,242シガミーになります』
わからねぇな。四百万メートルてなぁ、何里だ。
ふぉん♪
『>約4,500㎞、千百二十五里です』
わか――ふぉん♪
『>平均時速80キロでシガミーが走り続けた場合、約2・3日の距離です』
らん――ふぉん♪
『>日の本の国の端から端までの1・5倍……ひとつと半分になります』
わかった。
おれが使うだけなら一生分てこったな。
なら、すこしくらい……せめてパーティーメンバーには分けてやっても――
ふぉん♪
『>筋肉痛の問題が、いまだに解消されていません』
あー、それがあったか。自前の卵酒が使えるが、効くのは7、8割方だ。
ふぉん♪
『>そもそもプロダクトアームがあっても、パワーアシストは私かSDKがなければ使えません』
そういや、そうだぜ。
ほんとうに中々どうして、うまくはいかねぇもんだな。
ならやっぱり、あの歩いてるときだけ軽くなる荷物袋の方を、簡単に使えるようにでもするか。
このクエストを終わらせて今度こそ日がな一日、だらけ呆けてからで良いけど。
ふぉん♪
『>了解しました』
全部が全部、収納魔法具に入れちまうと、咄嗟に欲しいものを取り出せなかったりするし。ソレじゃなくてもガムランの連中は、魔法具に荷物を詰めることを――なんでかあまりしないからな。
§
「引き金を引いて、柄についた十字の摘みを押す?」
毒に平気な燃えない憑代を、いくらでも使い放題になった。
おにぎりと違って、いちいち自分で動かさないといけないけど――
シシガニャンへっどが口から吐きだした、板によれば。
『上のボタンで行進>敵が居れば粉砕。
右のボタンで調べる>レアアイテムが有れば、背中に背負った頭陀袋に収納。
左のボタンで防御、下のボタンで戻る。』
銃の持ち手の親指の辺りに、十字のボタンがあって、それを押すことで指図出来る。
上と右を同時に押せば、足下を調べつつ敵を粉砕、道なりにすすんでいく。
上と左で身を固めながら前進。
下と右で注意を払いながら戻る。
下と左で身を固めながら戻る。
レイダが5匹、リカルルが2匹の鉄餅を崖下に落としたけど、すぐに動かし方を覚えた。
黙黙と〝密書の魔物〟を退治して、それを一匹ずつ踏みこえていく鉄餅。
危険はないが、思ったほどには使えない。
念話と同じで視界が通らない先へは、灯りを届けることが出来ず歩いていけない。
それに、火で炙られつづけると、焼けないはずのおもちが膨れて――空中に浮かびやがった。
ジタバタともがき、やがて鉄餅は天井に横たわる。
カチリ――ソレを狙い撃つ姫さん。
ひょこり、天井からぶら下がった鉄餅が天井をさまよう。
「「お、おもしろいよっ!?」――ですわっ!?」
たしかに面白れぇが。
「「「プグフヒィ――♪」」」
おい、うしろで笑ってる連中。
そんな場合じゃねぇだろう。
ふすふすふす、ぽてん♪
天井で組んず解れつの鉄餅。
「ぷはははっ♪」
たしかに面白れぇ、つい笑っちまったぜ。
「――遠赤外線にヨる輻射熱にヨり、内部ノ空気が暖められまシた――」
おい、猪蟹屋のかき入れ時じゃなかったのか?
ふすふすふす、ぽてん♪
こんなポンコツでいいのか。
「クスクスクスッ――な、なるほど、飛行船のようになってしまったのですね」
リオがニヤける口元を隠している。
「飛行船てのわぁ、一体何でぇ……なんだでごぜぇますわぜ?」
ふぉん♪
『>暖められた空気が、空へのぼっていく現象を利用した乗り物です』
空飛ぶ船か?
なんだよ神々の船がガムラン町だか央都だかには、あるってこっちゃねぇーか!
よし、これで五百乃大角を御役御免……もとい自分の家に帰してやれる。
ふぉん♪
『>それは出来ません』
神々の国ってぇのは、空のうえにあるもんじゃねぇのか?
「(あ、やつぁ惡神だから、地の底にあるって話か?)」
ふぉん♪
『>F.A.T.Sは〝シンシナティック・ニューロネイション〟という名の双六の胴元とお考えください』
「(わからんがわかってる、おれぁくさっても坊主だからな。五百乃大角も迅雷も――彼岸と此岸の外から来たんだろ)」
冗談はこの辺で終わりにして、先に進めるようにするぞ。
おれはなんでか浮かんでない、おれの鉄餅をじっと見た。
抱えてる魔物が重いから、浮かばねぇのかも――解析指南。
§
通路の魔物をぜんぶ始末した。
お宝はとうぜんひとつもなく、残念がるフッカとレイダ。
浮かんじまうことへの対策は鉄餅を作るときに、中に入れる空気を少なめにして、重しを両足に詰めた。
重しには、退治した密書の魔物をつかった。
落ちないように気をつけて、通路を渡る。
薄暗く、熱気に阻まれていた先を、のぞき込むと――
ソコはやっぱり通路で、魔物はいなかった。
天井はさっきの広間とくらべると低くて……4シガミーくらい。
エクレアだと……ひとりと半分くらいか。
ペチペチと壁を叩く姫さん。
狐火(小)をだして壁を照らしている。
よくみれば壁天井床の全てが、鉋を掛けた柱のようになめらかだった。
さらに先に進むと通路は、また曲がってて――その突きあたりは道が二手に分かれていた。
この様子だと、どこまでも通路が続いている。
「すこし離れてください」
そういって進みでた黒騎士が、曲がり角へむかって大剣を突きたてた!
ガギィィン――そうとう硬いのが、音でわかる。
ほんの少し崩れた壁が見る間に、元のなめらかさを取りもどした。
「シガミー、欠片ヲ回収してくダさい」
掛けよって落ちたのを拾おうとしたら、氷みたいに床に溶けた。
「一旦引き返しますわよ」
様子見に真ん中の通路に侵入したおれたち、リカルル、エクレア、シガミーの三人は、来た道をもどる。
真ん中をおれが。
左側をリカルルが、受け持つことになった。
密書もどきを一匹一匹退治して、一歩ずつすすんでいく。
これなら毒を喰らうことも、亀裂に落ちることもない。
とんでもなく遅い行軍になるが、じつに安全にすすんでいける。
おれがシシガニャン二号を着ても良いけど――
ふぉん♪
『>それだと通路分の時間が掛かり、
かえって遅くなります』
そうなるなぁ。
「もし燃えたりしたら言ってくれ、新しいのをスグにつくるから」
万が一、鉄餅が駄目になっても一度作った物は、エディタ経由でスグに複製できるのは大きい。
「「はぁーい」」
ふたりともへっぴり腰で、銃には慣れてねぇみてぇだ。
魔法でとおくから敵を、直に燃やせる世界。
火縄銃なんて見たことすらないんだから、あたりまえだ。
ふぉん♪
『>はい。火薬による推進力に頼る必要がありませんので、
銃器類の類いは発達しなかったようです』
何でも切れる視線に、しまいには狐火。
攻撃にはろくに使えねぇけど、一応アーティファクトもあるからな。
「では姫さま、ココに拠点を築いてもよろしいですか?」
おれが担いできた荷物の中から、夜営の道具を取りだす黒騎士。
あの荷物入れの袋は、ジンライ式隠れ蓑につながってて、荷物の重
さを肩代わりする――金剛力が使える。
ソレはいつ売り出すのかしらと、リオに詰めよられたから――「これは五百乃大角に頼まれて、試しているだけでな――たぶんそのうちだ」とごまかした。
迅雷の細腕の作りおきは――おれたち五百乃大角組の最後の砦だ。
シシガニャンに対するおもちみたいな、廉価版の細腕でも作れない限りは、外には出せねぇ。
ふぉん♪
『>プロダクトアームの在庫は現在4,483,012メートル。
シガミーの四肢換算で17,242シガミーになります』
わからねぇな。四百万メートルてなぁ、何里だ。
ふぉん♪
『>約4,500㎞、千百二十五里です』
わか――ふぉん♪
『>平均時速80キロでシガミーが走り続けた場合、約2・3日の距離です』
らん――ふぉん♪
『>日の本の国の端から端までの1・5倍……ひとつと半分になります』
わかった。
おれが使うだけなら一生分てこったな。
なら、すこしくらい……せめてパーティーメンバーには分けてやっても――
ふぉん♪
『>筋肉痛の問題が、いまだに解消されていません』
あー、それがあったか。自前の卵酒が使えるが、効くのは7、8割方だ。
ふぉん♪
『>そもそもプロダクトアームがあっても、パワーアシストは私かSDKがなければ使えません』
そういや、そうだぜ。
ほんとうに中々どうして、うまくはいかねぇもんだな。
ならやっぱり、あの歩いてるときだけ軽くなる荷物袋の方を、簡単に使えるようにでもするか。
このクエストを終わらせて今度こそ日がな一日、だらけ呆けてからで良いけど。
ふぉん♪
『>了解しました』
全部が全部、収納魔法具に入れちまうと、咄嗟に欲しいものを取り出せなかったりするし。ソレじゃなくてもガムランの連中は、魔法具に荷物を詰めることを――なんでかあまりしないからな。
§
「引き金を引いて、柄についた十字の摘みを押す?」
毒に平気な燃えない憑代を、いくらでも使い放題になった。
おにぎりと違って、いちいち自分で動かさないといけないけど――
シシガニャンへっどが口から吐きだした、板によれば。
『上のボタンで行進>敵が居れば粉砕。
右のボタンで調べる>レアアイテムが有れば、背中に背負った頭陀袋に収納。
左のボタンで防御、下のボタンで戻る。』
銃の持ち手の親指の辺りに、十字のボタンがあって、それを押すことで指図出来る。
上と右を同時に押せば、足下を調べつつ敵を粉砕、道なりにすすんでいく。
上と左で身を固めながら前進。
下と右で注意を払いながら戻る。
下と左で身を固めながら戻る。
レイダが5匹、リカルルが2匹の鉄餅を崖下に落としたけど、すぐに動かし方を覚えた。
黙黙と〝密書の魔物〟を退治して、それを一匹ずつ踏みこえていく鉄餅。
危険はないが、思ったほどには使えない。
念話と同じで視界が通らない先へは、灯りを届けることが出来ず歩いていけない。
それに、火で炙られつづけると、焼けないはずのおもちが膨れて――空中に浮かびやがった。
ジタバタともがき、やがて鉄餅は天井に横たわる。
カチリ――ソレを狙い撃つ姫さん。
ひょこり、天井からぶら下がった鉄餅が天井をさまよう。
「「お、おもしろいよっ!?」――ですわっ!?」
たしかに面白れぇが。
「「「プグフヒィ――♪」」」
おい、うしろで笑ってる連中。
そんな場合じゃねぇだろう。
ふすふすふす、ぽてん♪
天井で組んず解れつの鉄餅。
「ぷはははっ♪」
たしかに面白れぇ、つい笑っちまったぜ。
「――遠赤外線にヨる輻射熱にヨり、内部ノ空気が暖められまシた――」
おい、猪蟹屋のかき入れ時じゃなかったのか?
ふすふすふす、ぽてん♪
こんなポンコツでいいのか。
「クスクスクスッ――な、なるほど、飛行船のようになってしまったのですね」
リオがニヤける口元を隠している。
「飛行船てのわぁ、一体何でぇ……なんだでごぜぇますわぜ?」
ふぉん♪
『>暖められた空気が、空へのぼっていく現象を利用した乗り物です』
空飛ぶ船か?
なんだよ神々の船がガムラン町だか央都だかには、あるってこっちゃねぇーか!
よし、これで五百乃大角を御役御免……もとい自分の家に帰してやれる。
ふぉん♪
『>それは出来ません』
神々の国ってぇのは、空のうえにあるもんじゃねぇのか?
「(あ、やつぁ惡神だから、地の底にあるって話か?)」
ふぉん♪
『>F.A.T.Sは〝シンシナティック・ニューロネイション〟という名の双六の胴元とお考えください』
「(わからんがわかってる、おれぁくさっても坊主だからな。五百乃大角も迅雷も――彼岸と此岸の外から来たんだろ)」
冗談はこの辺で終わりにして、先に進めるようにするぞ。
おれはなんでか浮かんでない、おれの鉄餅をじっと見た。
抱えてる魔物が重いから、浮かばねぇのかも――解析指南。
§
通路の魔物をぜんぶ始末した。
お宝はとうぜんひとつもなく、残念がるフッカとレイダ。
浮かんじまうことへの対策は鉄餅を作るときに、中に入れる空気を少なめにして、重しを両足に詰めた。
重しには、退治した密書の魔物をつかった。
落ちないように気をつけて、通路を渡る。
薄暗く、熱気に阻まれていた先を、のぞき込むと――
ソコはやっぱり通路で、魔物はいなかった。
天井はさっきの広間とくらべると低くて……4シガミーくらい。
エクレアだと……ひとりと半分くらいか。
ペチペチと壁を叩く姫さん。
狐火(小)をだして壁を照らしている。
よくみれば壁天井床の全てが、鉋を掛けた柱のようになめらかだった。
さらに先に進むと通路は、また曲がってて――その突きあたりは道が二手に分かれていた。
この様子だと、どこまでも通路が続いている。
「すこし離れてください」
そういって進みでた黒騎士が、曲がり角へむかって大剣を突きたてた!
ガギィィン――そうとう硬いのが、音でわかる。
ほんの少し崩れた壁が見る間に、元のなめらかさを取りもどした。
「シガミー、欠片ヲ回収してくダさい」
掛けよって落ちたのを拾おうとしたら、氷みたいに床に溶けた。
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