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3:ダンジョンクローラーになろう
294:ゴーレム製造工場にて、おにぎりたちと伝説の職人スキルの血
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「ま、まてやぁ――ばたりっ」
精根つき果てた。
金剛力を使えるなら、おにぎりについていくことくらい楽なもんだが。
ぜぇはぁ、ぜぜぜぇ――はははぁ――!
あれから1時間は走り……いや、ぜいぜい10分くらいか。
十号の背中が見えなくなってからも――
必死に走りつづけること3分……いや、1分くらいかも。
LV100な上、体を強くするスキルを取りまくったおれだが――
女子供の体力のなさを、甘く見てた。
金剛力なしで、強化服の重さを担ぎつづけたら――そりゃ倒れるわな。
はぁはぁ、ぜぇぇはぁぁぁぁ――――な、なんか見えたぞ。
建物だ。
檻があった建物とは、あきらかに別の建物。
最後は這いつくばり、肘で這いすすみ――どうにかこうにかたどり着いた。
§
「ギュギギギギギギチリギチリ――!」
鍛冶工房で鉄を曲げてる――みたいな音。
そんなので目が覚めた。
「んぁぁあぁ?」
痛ぇ。体中痛ぇ。
ヴッ――ぱしり。
とりだした卵酒(二級)を、ぐびりと飲み干した。
「ふぅふぅ、まったく……死ぬっかっと思ったぜぇ――よっこらせ!」
卵酒はスグに効き、体がとても楽になった。
ギシギシギチリ!
起きたら、目のまえに居やがる。
目から飛び出た、ビードロの柱。
口から飛び出た、火縄の舌。
首が長ぇから、こいつはたぶん馬だ。
ギチギチうるせぇけど――
殴りかかってきたりも、火縄を撃ってきたりも、腹ん中におれを取り込もうとしたりもしてこない。
大人しいもんだ。
それに、コイツはまるでおれが背に乗るのを、待ってるみたいだ。
倒れ込むように長首に抱きつくと、馬はパッカパカと歩きだした。
長い通路をずーっと進んで、行き着いたのは――
「こら、アナタ! 遅いですわらぁーん!」
仁王立ちの、えらそうな女。
だれだ!?
「おともだちはみんな頑張って、お手伝いをしてくださっていますのにららぁーん♪」
この声――さっきの杓子女か?
レイダの父上殿みたいな眼鏡。
そんなのを顔に張りつけてるから、まるでわからなかったぜ。
ええと、第一王女……名前はなんだったか。
迅雷が居ねぇと画面が使えなくて、こういうときに困るな。
死んでなくて良かったけど――やられた分くらい、張り倒しておくか?
ぽきゅぽきゅぽん♪
馬をおりて、王女が立つ手すりに近寄った。
ガッガン、ゴゴドゴン♪
ガチャガチャガチャ、ピピピピッ――チャリンチャリンチャリィン♪
カラカラカラララッ――キュキュィーン、ガチガチガチガチ、プッッシュゥーッ♪
「オマエらぁ――一体、何やってんだっ!?」
それはまるで鍛冶工房の、ノヴァドと仲間たちだった。
鉄の板を叩いてまるめて、胴体を作る――人形のゴーレムが担当。
同じく板を叩いて、首を作る――人形のゴーレムが担当。
丸い鉄の両端に、鉄棒をはめこむ――おにぎりが担当。
できた手足に、手首や足首……蹄を取り付ける――特撃型三号が担当。
背骨に、胴体や首を取り付ける――人形のゴーレムが担当。
首の先に、火縄銃の舌を取り付ける――特撃型四号が担当。
頭を首に取り付け、口から銃口を出したり引っ込めたり出来るか確認する――特撃型五号が担当。
最後に透明の目玉を、キュリキュリとはめ込み完成――人形のゴーレムが担当。
人形のゴーレムがしていた仕事を、嬉々として奪っていく強化服一号。
馬のゴーレムを作る仕事は、終わることなくいつまでも続けられ――
一巡するころには人形のゴーレムが隅へ押しやられ、三号から十号までが取って代わった。
ひとまわりでちょうど八匹。
完成した異形の馬が――手が空いた人型の手で平台に乗せられる。
ごととん、ごととん――ガラガラガララッ♪
奥の部屋に運び出される、馬たち――ぽきゅぽん♪
なんでか、近くに居たおにぎりまで積み込まれ――運ばれていく。
おれは工房へ降りて、奥の部屋をのぞき込んだ。
ソコには――見わたす限りの、異形の怪物たち。
おいおい、こんなに居たらもう……作らなくても良いだろう?
何に使うのかはわからねぇが、鉄や石で出来た物だ。
そうそう壊れることも、ねぇだろうしよ。
おにぎりが、平台から飛びおり工房へ――ぽきゅぽきゅと戻っていく。
鉄の板を叩いてまるめて、胴体を作る――おにぎりが担当。
「まてまて、きりがねぇ!」
コレだけ居たら、魔物たちとも余裕で――わたりあえるんじゃなかろうか。
いやまて……もぬけの殻の魔王城。
リオレイニアたちに聞いた感じじゃ――
前に出くわした、ゴーブリンの群れみたいに――
ものすげぇ数の魔物で、埋め尽くされてたはずで――
「アレは、オマエの仕業かぁー!」
ひしめき合うほどの、魔物の群れ。
ソレ全部を一掃しちまうほどの――兵力。
ガムランの冒険者たちよか、強ぇじゃねーか!
「みゃにゃあ゛ーん♪」
猫なで声の、黄緑色。
一号は頼まれ仕事の出来が良いと、あんな風に鳴きやがる。
はっ――それどころじゃねーや!
「そもそもオマエ! 何やってる!?」
おれはおにぎりを、叱りとばす!
あの杓子女は第一王女だかで、異形を操り、おれたちを閉じ込めたヤツで。
つまるところ、おれたちの敵だ。
こんな馬のばけものを、これ以上増やすな。
ん? ばけもの?
なんかひっかかるぞ。
なんだったか?
ゴーレム。
この不気味な怪物は、知ってる。
オルコトリアが絵に描いて、見せてくれたことがあった。
「さぁ、器用な猫の魔物たち! ゴーレムを沢山、沢っ山っ作ってちょうだいらぁーん♪」
ん?
立ち並ぶ馬の、最後の方のヤツ。
おにぎりが作ったばかりで、まだ湯気が出てるヤツ。
ソレには、おにぎりみたいな耳が付いていた。
「耳が付くだけでも――不気味さが、やわらぐなぁ♪」
そうだ、思い出したぜ。
このゴーレムってやつぁ――相当な嫌われもので。
たしかニゲルが、〝死ぬほど嫌がってた〟んじゃなかったか?
ずっとなんか、引っかかってたんだが――やっと思い出したぜ。
「えぇーい、いまにみてらっしゃらぁーん! ドルイドで有るこの私の自然力で、危険な魔物なんて全滅させてみせるのだかららぁーん♪」
あれ、なんか。
やってることに反して言ってることは、それほどとち狂ってるわけじゃねーよーな……気がしねーことも、なくもなくねぇか?
大体だなぁ――この目玉と口がぁ、いただけねぇ!
〝絵で板〟が使えりゃ――スグにでも直してやれるんだがな。
まてよ……ゴーレムてなぁ、よーするに〝おにぎりみたいなもん〟だろう?
みたところ酢蛸や、廃棄女神像になる物が、見当たらねぇ。
ってなると、第一王女の杓子力が動かしてる?
スキル……スキル――そうだぜ!
おれもぉ、自前のスキルを持ってるんだった。
ソッチを使やぁ、迅雷が居なくても――
ふむ――解析指南。
この〝飛び出た目玉〟と、〝火縄の舌〟。
これをもっと……優しい見た目に、置き換えられりゃぁ。
また流れ作業の列に戻ろうとするおにぎりの――うしろ頭をひっぱたく。
振り向く一号の背をすり抜け、列にもぐり込んだ。
コレは、〝伝説の職人スキルの血が騒いじまった〟としか……言い様がない。
おれは、並べられた鉄板や透明な石を――じっと見つめた。
精根つき果てた。
金剛力を使えるなら、おにぎりについていくことくらい楽なもんだが。
ぜぇはぁ、ぜぜぜぇ――はははぁ――!
あれから1時間は走り……いや、ぜいぜい10分くらいか。
十号の背中が見えなくなってからも――
必死に走りつづけること3分……いや、1分くらいかも。
LV100な上、体を強くするスキルを取りまくったおれだが――
女子供の体力のなさを、甘く見てた。
金剛力なしで、強化服の重さを担ぎつづけたら――そりゃ倒れるわな。
はぁはぁ、ぜぇぇはぁぁぁぁ――――な、なんか見えたぞ。
建物だ。
檻があった建物とは、あきらかに別の建物。
最後は這いつくばり、肘で這いすすみ――どうにかこうにかたどり着いた。
§
「ギュギギギギギギチリギチリ――!」
鍛冶工房で鉄を曲げてる――みたいな音。
そんなので目が覚めた。
「んぁぁあぁ?」
痛ぇ。体中痛ぇ。
ヴッ――ぱしり。
とりだした卵酒(二級)を、ぐびりと飲み干した。
「ふぅふぅ、まったく……死ぬっかっと思ったぜぇ――よっこらせ!」
卵酒はスグに効き、体がとても楽になった。
ギシギシギチリ!
起きたら、目のまえに居やがる。
目から飛び出た、ビードロの柱。
口から飛び出た、火縄の舌。
首が長ぇから、こいつはたぶん馬だ。
ギチギチうるせぇけど――
殴りかかってきたりも、火縄を撃ってきたりも、腹ん中におれを取り込もうとしたりもしてこない。
大人しいもんだ。
それに、コイツはまるでおれが背に乗るのを、待ってるみたいだ。
倒れ込むように長首に抱きつくと、馬はパッカパカと歩きだした。
長い通路をずーっと進んで、行き着いたのは――
「こら、アナタ! 遅いですわらぁーん!」
仁王立ちの、えらそうな女。
だれだ!?
「おともだちはみんな頑張って、お手伝いをしてくださっていますのにららぁーん♪」
この声――さっきの杓子女か?
レイダの父上殿みたいな眼鏡。
そんなのを顔に張りつけてるから、まるでわからなかったぜ。
ええと、第一王女……名前はなんだったか。
迅雷が居ねぇと画面が使えなくて、こういうときに困るな。
死んでなくて良かったけど――やられた分くらい、張り倒しておくか?
ぽきゅぽきゅぽん♪
馬をおりて、王女が立つ手すりに近寄った。
ガッガン、ゴゴドゴン♪
ガチャガチャガチャ、ピピピピッ――チャリンチャリンチャリィン♪
カラカラカラララッ――キュキュィーン、ガチガチガチガチ、プッッシュゥーッ♪
「オマエらぁ――一体、何やってんだっ!?」
それはまるで鍛冶工房の、ノヴァドと仲間たちだった。
鉄の板を叩いてまるめて、胴体を作る――人形のゴーレムが担当。
同じく板を叩いて、首を作る――人形のゴーレムが担当。
丸い鉄の両端に、鉄棒をはめこむ――おにぎりが担当。
できた手足に、手首や足首……蹄を取り付ける――特撃型三号が担当。
背骨に、胴体や首を取り付ける――人形のゴーレムが担当。
首の先に、火縄銃の舌を取り付ける――特撃型四号が担当。
頭を首に取り付け、口から銃口を出したり引っ込めたり出来るか確認する――特撃型五号が担当。
最後に透明の目玉を、キュリキュリとはめ込み完成――人形のゴーレムが担当。
人形のゴーレムがしていた仕事を、嬉々として奪っていく強化服一号。
馬のゴーレムを作る仕事は、終わることなくいつまでも続けられ――
一巡するころには人形のゴーレムが隅へ押しやられ、三号から十号までが取って代わった。
ひとまわりでちょうど八匹。
完成した異形の馬が――手が空いた人型の手で平台に乗せられる。
ごととん、ごととん――ガラガラガララッ♪
奥の部屋に運び出される、馬たち――ぽきゅぽん♪
なんでか、近くに居たおにぎりまで積み込まれ――運ばれていく。
おれは工房へ降りて、奥の部屋をのぞき込んだ。
ソコには――見わたす限りの、異形の怪物たち。
おいおい、こんなに居たらもう……作らなくても良いだろう?
何に使うのかはわからねぇが、鉄や石で出来た物だ。
そうそう壊れることも、ねぇだろうしよ。
おにぎりが、平台から飛びおり工房へ――ぽきゅぽきゅと戻っていく。
鉄の板を叩いてまるめて、胴体を作る――おにぎりが担当。
「まてまて、きりがねぇ!」
コレだけ居たら、魔物たちとも余裕で――わたりあえるんじゃなかろうか。
いやまて……もぬけの殻の魔王城。
リオレイニアたちに聞いた感じじゃ――
前に出くわした、ゴーブリンの群れみたいに――
ものすげぇ数の魔物で、埋め尽くされてたはずで――
「アレは、オマエの仕業かぁー!」
ひしめき合うほどの、魔物の群れ。
ソレ全部を一掃しちまうほどの――兵力。
ガムランの冒険者たちよか、強ぇじゃねーか!
「みゃにゃあ゛ーん♪」
猫なで声の、黄緑色。
一号は頼まれ仕事の出来が良いと、あんな風に鳴きやがる。
はっ――それどころじゃねーや!
「そもそもオマエ! 何やってる!?」
おれはおにぎりを、叱りとばす!
あの杓子女は第一王女だかで、異形を操り、おれたちを閉じ込めたヤツで。
つまるところ、おれたちの敵だ。
こんな馬のばけものを、これ以上増やすな。
ん? ばけもの?
なんかひっかかるぞ。
なんだったか?
ゴーレム。
この不気味な怪物は、知ってる。
オルコトリアが絵に描いて、見せてくれたことがあった。
「さぁ、器用な猫の魔物たち! ゴーレムを沢山、沢っ山っ作ってちょうだいらぁーん♪」
ん?
立ち並ぶ馬の、最後の方のヤツ。
おにぎりが作ったばかりで、まだ湯気が出てるヤツ。
ソレには、おにぎりみたいな耳が付いていた。
「耳が付くだけでも――不気味さが、やわらぐなぁ♪」
そうだ、思い出したぜ。
このゴーレムってやつぁ――相当な嫌われもので。
たしかニゲルが、〝死ぬほど嫌がってた〟んじゃなかったか?
ずっとなんか、引っかかってたんだが――やっと思い出したぜ。
「えぇーい、いまにみてらっしゃらぁーん! ドルイドで有るこの私の自然力で、危険な魔物なんて全滅させてみせるのだかららぁーん♪」
あれ、なんか。
やってることに反して言ってることは、それほどとち狂ってるわけじゃねーよーな……気がしねーことも、なくもなくねぇか?
大体だなぁ――この目玉と口がぁ、いただけねぇ!
〝絵で板〟が使えりゃ――スグにでも直してやれるんだがな。
まてよ……ゴーレムてなぁ、よーするに〝おにぎりみたいなもん〟だろう?
みたところ酢蛸や、廃棄女神像になる物が、見当たらねぇ。
ってなると、第一王女の杓子力が動かしてる?
スキル……スキル――そうだぜ!
おれもぉ、自前のスキルを持ってるんだった。
ソッチを使やぁ、迅雷が居なくても――
ふむ――解析指南。
この〝飛び出た目玉〟と、〝火縄の舌〟。
これをもっと……優しい見た目に、置き換えられりゃぁ。
また流れ作業の列に戻ろうとするおにぎりの――うしろ頭をひっぱたく。
振り向く一号の背をすり抜け、列にもぐり込んだ。
コレは、〝伝説の職人スキルの血が騒いじまった〟としか……言い様がない。
おれは、並べられた鉄板や透明な石を――じっと見つめた。
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