滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

３：ダンジョンクローラーになろう

２９９：仙果到達ルートＣ、召喚魔法と転移魔法

「（な、なんのことかなぁー？　大変たいへんだなんて言ったっけぇ――？・）」
　素っ頓狂とんきょうな声こえが、すっとぼける。
　背を向ける梅干し大びのめがみ。

「（お前まえさまがそういうつもりなら、それでもかまわねぇぞ。結局けっきょくいくら隠かくしても、ソレがおれたちに関かかわりがあることなら、どうせおれにお鉢はちが回まわってくらぁな）」
　なんかの事態じたいに巻き込まれた・・・・・・のは――誰だれだ？

「（ちっ、いらない知恵ちえをつけてきたわねっ、さすがわ坊主ぼうず！・）」
　チラリと第一王女だいいちおうじょをみる。
　五百乃大角いおのはらの念話ねんわに反応はんのうしねぇ所ところを見ると、この姫さんは・・・・・・念話ねんわを使つかうアーティファクトを察知・・できねぇらしい。

　ふぉん♪
『イオノ＞安心していいですわ。
　　　　＞大事な信徒をむざむざ死地へ追いやるほど、
　　　　　イオノフ教は非情ではありません』
　穏おだやかじゃねぇことを言うな。
　それとおれぁ、イオノフ教きょうとやらの信者しんじゃじゃねぇぞ。

　ふぉん♪
『＞ですが、会計を同一にする金銭的共同体ではあります』
　穏おだやかじゃねぇことを言うな。

　ふぉん♪
『＞ご安心下さい。
　＞損害は今のところ、必要最低限に留まっています』
　マジ・・で、穏おだやかじゃねぇなぁ！

「（お偉方えらがたが関かかわる話はなしなら十中八九じゅっちゅうはっく、リカルルじゃねぇしリオでもエクレアでもねぇ）」
　ほかに行動こうどうを共ともにしていたのは、ニゲルとフッカとレイダだ。

「（それは、ひょっとしたら、ゴーレムがらみか？）」
　ちょうど目のまえに、その首謀者しゅぼうしゃがいる。
　第一王女だいいちおうじょが眼鏡めがねをはずし、縁ふちのツマミを指ゆびでギギュイと動うごかしてる。
　ギュギュイィィィーンと、ひとりでに動かない・・・・・・・・・所とｋろを見るに、アーティファクトではないのかも知れない。

「（ひゅひゅひゅひゅぅー、ぷひゅーっ♪）」
　神かみさんよぉ、口笛吹くちぶえふけてねぇぞ。

「ってなると、やっぱり――ニゲルか」
　パーティーメンバー以外いがいで、おれの友達ともだちっていやぁまずはニゲルだ。

「ニゲル？　いま、ニゲルさまって言ったらぁーん？」
　あわてて眼鏡めがねをかけなおし、おにぎりの背中せなかに飛びつく。
　身を乗り出す第一王女兼だいいちおうじょけん――ゴーレム首謀者しゅぼうしゃ。
　その眼鏡りょうめが、おれに釘付くぎづけになった。

「はぁあ？　ニゲル……さま・・ぁ？　アイツを知ってんのか？」
　さま？

　ふぉん♪
『イオノ＞ええとニゲルが、ゴーレムがらみで央都の人たちと、ひと悶着有ったってのは言ったっけ？』

「（聞いてねぇぞ。ゴーレムが死ぬほどきらいで、ガムラン町まで逃げてきたのは聞いたけど）」

「そう、アナタはニゲルさまを、ご存ぞんじなのですねらぁーん♪」
　おにぎりの背に抱きつき――ぽきゅきゅぽきゅ♪
　引きずられてくる第一王女だいいちおうじょ。

「おうょ――食堂しょくどうで働はたらいてたとき、仲良なかよくなってな。いまは友達ともだちだ。そっちこそ、下々しもじもの者ものをよく覚えていやがりましたでごぜぇますわよぜ？」
　ニゲル……さまときたが？

「（えっとねー、実じつお言うとぉーねぇー。ニゲルをこの世界せかいに喚んだのわぁ・・・・・・ねぇー――ほかでもなぁいぃー」

「当然とうぜんですわらぁん。ニゲルさまを彼の地・・・からお取り寄せ・・・・・したのは、この私わたくし、中央都市ちゅうおうとしラスクトール自治領じちりょう第一王女だいいちおうじょラプトル・ラスクトールですものっらぁん♪」

「はぁっ!?」
　どーいうこったぁ、五百乃大角いおのはらぁ!?
　日ひの本もとから御霊みたまを移うつすのは、神々おまえらの御業みわざじゃなかったのか!?

「（そーなんだけどさぁー、なんかねぇー……ぺらぺらり……当代とうだいのぉ王族おうぞくのぉ、王位継承権おういけいしょうけんランキング一位いちいの未婚女性みこんじょせいにもぉ――召喚しょうかんすることが出来できるらしいのよねぇー」
　長かげぇ。攻略本とらのまきに書いてあるなら、そうなんだろ。

　ふぉん♪
『＞死後、日の本をさまよっていた魂を召喚魔術により、
　　呼びよせられた所までは〝猪蟹〟と同じです」
　前世せんぜの猪蟹おれを、ココに連れてきたのとおなじ？

「（そうわねぇ、シガミーの場合ばあいわぁ、あたくしさまが用意よういした別べつの体からだに転生てんせいさせることになったけどねー♪・）」
　ふぅん。するってぇと――

「なぁ、召喚魔法しょうかんまほうは――転移魔法てんいまほうとは違ちがうのか？」
　せっかく本人ほんにんが目のまえに居るんだ、聞いてみる。

　央都おうとからガムラン町ちょうに転移てんいしたときの――
　飛んでくる元もとが日ひの本もとなら――
　召喚魔法しょうかんまほうになるってことじゃね？

「違うらぁーん♪」
　どう違ちがうのかの、説明せつめいはない。
　じっぃいぃぃぃぃぃっと、ただただ見つめられる。

「あぁーっとそうだぜ。背中せなかのツマミを――下したにさげてくれ」
　せっかく暇ひまそうな奴やつが目のまえに居るから、遠慮えんりょなく使つかう。
　ぽきゅりと背中せなかを向けた。

「コレかしらぁぁん――ギュギジジジーーーーッ――とても面白おもしろい構造こうぞうらららぁーん♪」
　脱いだ二号にごうを食い入るように見つめる王女おうじょ。
　取られかねぇえから――急いですぽんと仕舞しまった。

「いやぁ――窮屈きゅうくつだったぁ♪」
　んあぁ――――ぁふぅ♪

「らららぁーん!?　〝ケットーシィ〟は、こんなに小ちいさな女おんなの子だったのらららぁぁーん？」
　なんか、顔かおをよせてじっと見られた。
「だから決闘けっとうなんかしねぇし、お迎むかえが来るのもまだずっと先さきだぜ！」

「てっきり、おじさんかと思おもってたらぁーん♪」
「ふぅ――それは、よーく言われる」

　　　§

「杓子しゃくしじゃなくて――王女おうじょさまは……召喚しょうかんの塔とうてぇのを、壊こわしたんだって？」
　折角本人せっかくほんにんが（以下略いかりゃく）。

「アレは不幸ふこうな事故じこでしたらぁん」
　彼女かのじょが杓子しゃくしで差した先さき。
　巨木きょぼくのかたわら。
　たしかになんかの建物たてものが、崩くずれ落ちている。

「折角折角せっかくせっっかく、最強さいきょうのお婿むこさんを召喚しょうかんしたのに、リカルル姫ひめさまが余計よけいな――――素敵すてきなことをなさったものだからつい――手元てもとが♡」
　つい？
　ついどうしたんだ？
　杓子しゃくしの先さきをグリグリ回まわす手つきは――生活魔法の鬼リオレイニアを彷彿ほうふつとさせた。

「第一王女だいいちおうじょさまぁ――いま面白おもしろいお話はなしがぁ聞こえたんだけどさぁ――」
　むぎゅにゅりっ――カシャ――『（Θ＿＜ばちーん♪）』
　おにぎりの口くちから飛び出すやいなや、〝浮かぶ球プロジェクションなんたら〟が、片目を閉じたみえをきった。

「そのお話はなしぃー、もーうすこーしくわしく――――ウケケケケッ!?」
　ヴォヴォォォォ――――ン。
　五百乃大角いおのはらの生前せいぜんの姿すがた（死んでない）が、映うつし身をあらわにしていく。

「そのお姿すがた――女神像めがみぞうにうりふたつ!?　まさか、あなたさまはイオノファラーさまららぁーん!?」
「そうですよぉー♪　あたくしさまが、美の女め――ッザッギィィィィィィンッ！」
　五百乃大角いおのはらの声こえをさえぎる、錆びた剣けんの音おと。

　まるで、鉄てつや木や石いしや御神体ごしんたいなんかを、両断ふたつにしたみたいなスゴイ音おとが――向こうから・・・・・聞こえてくる。

「っそ、その声こえェー！　まさか第一王女だいいちおうじょ……さまぁ!?」
　ニゲルだ。青年せいねんの覇気はきのない声こえが聞こえてきた。