滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

３：ダンジョンクローラーになろう

３０２：仙果到達ルートＣ、召喚魔法のひみつ

　ぼっごおわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――！
　どこまでも膨ふくれあがる炎ほのお。

「ニィゲェルゥー――――ココォォォォン♪」
　片手かたてを地につけ、背をくねらす――蒼あおが渦うずを描えがく。
　しゅるうるるぅごっぼぉぉぉぉ――――！
　ニゲルの姿すがたが蒼炎ほのおに消える。

　マジやべぇ、姫さんリカルルが本気マジでやんの。
　チョロチョロした火種ひだねにしかならなかったのが、はじめて狐火きつねびが出たときみたいな勢いきおいで、燃えひろがっている。

　あの仄暗ほのぐらい炎ほのおは、喰らっても燃えやしねぇ。
　妖狐ルリーロばけぎつねの域いきまでいきゃぁ、大筒並おおづつなみの痛手いたでを喰らわせるようになるけど。

　ヴォヴォヴォ――――ン！
　うなる聖剣せいけん（安物やすもの）に、錆色さびいろはなく。
　シュカンッ――――！
　きらめきは、聖せいなる形かたちとなった。

　横薙よこなぎにされる、仄暗ほのぐらく実じつのない火。
　斬られたソレは、散り散りになってかき消え――ォォォォォオッ！
　切断面きりくちを、その場に残のこした。

　まるで腰こしの高たかさの水面に浮かぶ・・・・・・――青あおい蓮はすの花はな。
　目を疑うたがうその光景こうけいに――声こえを発はっする者ものは居な――

「あーぁ、はいはいはいはい……コレは駄目だめねーん。ニゲル専用恋愛せんようれんあい相談所そうだんじょは、本日ほんじつをもって解散かいさんしまぁーす！・」
　手のひらを上うえに向けてみせる、五百乃大角いおのはらの映し身うかぶたま。

「あきらめるな、ここが恋愛相談所所長おまえさまの死に場所ばしょだろうが！」
　死中しちゅうに活かつを、見いだせやぁっ！

「ニゲル専用せんよう……恋愛相談れんあいそうだん……所じょ？」
　王女おうじょさまの手が、なんでか杓子しゃくしをつかむ。

　ふぉん♪
『イオノ＞それはそうとさ、ソコに居る王女様に、
　　　　　シガミーとニゲルとルリーロさまが全員、
　　　　　日の本生まれだなんてバレないように、
　　　　　気をつけなさいよ？』

　んぁー、あー？
　なんの話はなしだったっけかな、迅雷ジンライ。
　ニゲルとリカルルの色恋いろこいの行く末自体すえじたいには、そこまで興味きょうみはなかったから。
　あんまり、ちゃんと覚おぼえてねぇ。

　ふぉん♪
『＞ガムラン町が央都から、最大勢力とみなされかねないという話では』
　ソッチの話はなしか。
　本当ほんとうにややこしいことに、なって来やがったぞ。

　えーっと、ラプトル王女おうじょが喚んだ・・・のは、ニゲルだけだ。
　なんかうまいこと取りつくろえば――
　あれ、そういや王女おうじょさまはどこから召喚・・・・・・……お取り寄せしたって言ってた？

「なぁ、王女おうじょさまよぅ」
「なんですらん、ケットーシィのシガミーちゃん」
「ニゲルを取り寄せた・・・・・ってのは、本当ほんとうか？」

「本当ほんとうですらぁん♪」
「それは、なんでだ？」
「言うまでもありませんが、魔王まおうを殲滅せんめつするためですらぁん……リカルル姫ひめが倒たおしちゃったから勇者ゆうしゃさまには、なりそこねて・・・・・・しまいましたけれどらぁん」
　杓子しゃくしを置き、頬ほほに手を当てる。

「じゃぁ、どっから・・・・取り寄せた？」
「勇者ゆうしゃさまたちが仲良なかよく暮らす異世界いせかいに、決まっていますわらぁん」
　また杓子しゃくしを手にとって、キュキュキュと磨みがきだした。

「（異世界いせかいだぁ？）」
　ふぉん♪
『＞三千世界と同義かと』
　日ひの本もとなんていう場所ばしょの名では、括くくられてねぇのか。

　シュカシュカシュッカカカカカァァン――――！
　聖剣せいけん（安物やすもの）を振るい、狐火きつねびを細切こまぎれにする勇者ゆうしゃ（なり損そこない）。

　四つ足あしをつき――――コココォォォォン♪
　ぼごぼごぼごぼごぼごごごぅぅぅぅわぁぁぁっ――――!!!!

　大量たいりょうの狐火きつねび――高たかく伸び激はげしく揺らめくソレを、ニゲルの頭上ずじょうにバラ撒く。
　ザリザリザリリリッ――――目をそらさず、体からだを捻ねじりこむ妖狐ようこの娘むすめ。
　人魂ひとだまのように揺らめいていた炎ほのおが、回転かいてんを始はじめ――一点いってんに重かさななっていく。

　ギラギラとした。
　水面すいめんに写うつる陽光ようこうのような――――ィィィィッ！

　強烈きょうれつな光ひかりは、漆黒しっこくの影かげを作つくり出した！
　ニゲルの神速しんそくとくらべたら、まだ余裕よゆうで目で追える。
　それでも頭上ずじょうの光ひかりから、目をかばった瞬間しゅんかんだ。
　隙すきをつくには、十分じゅうぶんな速さ・・。

　その間合まあい。距離きょりにして１５メートル程度ほどか。
　豪奢ごうしゃな剣けんを抜き、一振ひとふり。
　青年せいねんの懐ふところに飛びこんだ、派手はでな姿すがた。
　ちいさな狐尻しっぽが、横よこになびく。

「（うへぇ、息いきをついだ瞬間しゅんかんを狙ねらいやがった）」
　ヴォルトカッターが、あろうがなかろうが。
　いくさ場で会いたくねぇことに、変わりはねぇ。

　ギイィィィィィィィィィイィィンッ――――！
　ニゲルの短みじかい剣けんじゃ、裁さばききれない。
　リカルルの豪奢ごうしゃな剣けんも、あれはあれで聖剣せいけんの柄つかから打ち直なおしてる。
　普通おれの業物こだちなら、今いまので折られてたかもしれん。

　ガァァンッ――！
　火縄ひなわを放はなったような衝撃おと！
　片足かたあしで立ち、飛んできた剣先けんさきを蹴飛ばすさまは・・・・・・・、まるで大道芸だいどうげいだが。

「プーッ、クツクツクツ。なぁにあの格好かっこぉー？」
　笑わらってやるな、恋愛相談所長いおのはらめ。
　ありゃ、貧乏人びんぼうにんが工夫くふうをしたんだぜ。
　青年かれの靴くつには底そこが減らねぇよう、鉄板てっぱんが打ち付けてある。

　たしかに面白おもしれぇが、ニゲルも本気ほんきだ。
　無様ぶざまに足あしまで使つかわねぇと、命いのちに関かかわるってことだしな。

　この際さいだ、さっき気になったことを聞いとくか。
「（なぁ、生きた人間にんげんをそのまま別べつの世界せかいから連れてくる――なんて芸当げいとうが本当ほんとうに出来できるのか？）」

　ふぉん♪
『イオノ＞そー言われると無理わね。あたくしさまのアバターを顕現させる、
　　　　　ＦＡＴＳだって生身の体を、完全再現なんて出来ないもの。
　ふぉん♪
『ヒント＞アバター／現し身
　　　　＞ＦＡＴＳ／神々の船』

　やっぱりニゲルはおれと同おなじく――
　死んでさまよってた魂たましいだけ連れてこられたって、考かんがえた方ほうが良さそうだ。

「（つまるところ、ニゲルの体・は――誰が作った・・・・・・？）」
　呼びよせたニゲルの魂たましい。
　それを入れた体からだは――どこから来たんだ？

「（それなんだけど……この辺へんにさぁ、女神像めがみぞうなんて有るぅー？　それも、変へんな形かたちのやつ」
　映うつし身の姿すがたでキョロキョロと、あたりを見わたす五百乃大角いおのはら。
　女神像めがみぞうが、どうしたってんだ？

「（なーんかねぇ、すっごいアンテナ立つんだけどさ……ぺらぺらり……その辺あたりも関係かんけいしてそうなのよねぇーん？・）」
　変へんな形かたちのだぁ？
　普通ふつうのだって捨てられてるのを、見つけられねぇってのに。
　そんなもん、そうそう有るわけが――って決めつけても仕方しかたがねぇ。

「なあ、王女おうじょさまやぁ」
「なにかしら、ケットーシィガミーちゃん？」
　つなげて言うな。

「このへんに女神像めがみぞうは有るか――それも、どこか変わった形かたちのやつ」
「あら、よくわかったわらん？　召喚しょうかんの塔とうの中なかにありましたららぁん」
　召喚しょうかんの塔とうとか言うヤツなら、巨木きょぼくの麓ふもとで崩くずれ落ちてる。