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3:ダンジョンクローラーになろう
333:龍脈の回廊、王女と婚約の儀
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「まず、くわしいお話を聞かなければ、なりませんわね。いま、人払いを――レー……リオレイニア」
令嬢リカルルの号令。
「はい、お嬢さま」
スッとそばに控える、侍女リオレイニア。
白鳥を思わせる仮面に、クチバシは無く。
磁器の艶やかさと、縁に入ったツル草の意匠。
彼女の上品なたたずまいに、かすかなアクセントを添えているが――
ギロリッ――――!
その仮面に見つめられた、長テーブルに座る面々が――
「「「んぐぅ、んぎぎ」」」
苦渋の表情をうかべ、椅子やテーブルにしがみ付いた。
「アナタたちときたらもう……ソコまで興味がおありですの?」
あきれ顔の、名物受付令嬢。
「あるよっ! ニゲルさんはシガミーの友達だし、狩りの師匠だし、王女さまもかわいそうだしっ!」
テーブルにしがみ付いたまま、顔を上げる子供レイダ。
「あたくしさまもぉー、ニゲルの恋の行方にわぁー、一家言有りますのでぇ!」
紅茶のカップにしがみ付く、根菜か丸茸のような。
「ニゲルの故意? そういえば、どういうつもりか知りませんけれど……、この指輪を付けてくれたとき、ギュッと手をいつまでも握られましたわね?」
心底不思議そうに右手薬指を見つめる、伯爵令嬢リカルル。
金色に輝く指輪には――
朱色のラインや文様が彫られていて、キズひとつ無い。
「ぴゃらっ――ニゲルさまから頂いたぁ、指輪ぁららぁん!?」
白目をむいて倒れる、ラプトル王女殿下。
カチャカチャガシャラララッ――――ふわさ。
その体を、近くに浮かんでいた女神の眷属迅雷が、そっと受け止めた。
王女を抱えた鳥の脚のような黒い細腕が、もう一本棒から生え――
ヴッ――ゴドン!
フカフカのソファーを置き、その上に王女を横たえた。
「クツクツクツクツクツッ、フェスタも終わっちゃったしさぁ、こぉーんなぁ面白そぉーなぁイベントおぉー見逃す手わぁぁ、無いじゃありませんのぉ――コッコォォォォン♪♪」
テーブル席に陣取り必死にしがみ付く、コントゥル家名代伯爵夫人ルリーロ。
「あぁーもぉー、名代まで――はしたないですわよ」
額に手を当てる、伯爵令嬢。
「ひょっとして迅雷も、この件に興味がおありですか?」
鳥の仮面のメイドが、浮かぶ棒に尋ねた。
「ニルゲ互助会会員とシては――ヴヴヴヴヴヴッルルッ――、無視できナい案件ではありマす」
浮かぶ棒が、まるで蜂のような動きで、高揚した内面を表現した。
§
「ニゲルを四六時中、ゴーレムでぇ追いかけ回したぁ!?」
あきれ顔の、リカルル姫。
「だ、だってらん! ニゲルさまとの婚約を認めさせるにはらん、必要な儀式だったんですらぁぁぁぁんっ!」
息を吹き返すなり釈明する、ラプトル姫。
「面白いね、リオレイニアさん♪」
ふさぎ込みがちだった子供に、笑顔がもどる。
「コラ、レイダ。人の恋路を笑ってはいけません――ぷふっ!!!」
彼女は横を向き、何かに耐えている。
「けどおかしくなぁい? ニゲルの剣の腕わさぁ、見た目に反して結構なものだったんでしょお? ならゴーレムなんて、イチコロじゃぁ無いのぉ?」
丸茸のようなフォルムが、テーブルに鎮座……寝そべ……転がっている。
「そうでスね。シガミーでサえ太刀打ちできナい、ニゲルノ実力。ソレを以てしテも達成できナい儀式とイうのは、不自然でス――コトン」
浮かぶのにも飽きたのか――棒がテーブルに足(?)をついた。
「国益だけでなく国家存亡に関わることですのでー、くわしいことは言えないのですけれどらぁん――――つ、強すぎるので昼夜を問わず、この子で追いかけるしかなかったのですらぁん!」
ブチリと腰から馬の人形をちぎり取る、ラプトル王女殿下。
長いテーブルの、使われていない方へ向かって――――ポイッス♪
投げられた人形の姿が――異形に変わる。
目を形作る、鋭利な宝石。
口からは、銃口の空いた黒金の銃身。
四つ足は太く不格好で、馬らしくはなかったが。
長い顔と首と胴を見るかぎり、やっぱり馬のつもりらしい。
ガシャッ――ピピププゥーン♪
鳥の囀りのような、電子音。
「「きゃぁぁ――――ゴ、ゴーレム!?」」
椅子を倒し飛び退く――伯爵令嬢と元侍女長。
「レーニア!」
カップや丸茸を蹴散らしテーブルに上がる、ガムラン最凶受付令嬢。
その高貴な踵が――ガッ、コワァーン♪
お盆の縁を踏みつけた。
「はい、お嬢さま――!」
椅子を蹴上がり、くるくると舞うお盆をつかむ給仕服姿。
「――ひかりのたてよ!」
盾のように構えられた、その表面に――
光の文様が浮かび上がった。
「すぅぅぅっ――♪」
大きく息を吸い、やや中腰。
高貴な指先がテーブルに付く。
「――コォン、コォン、コォン、コォン!」
ややツリ目の受付嬢。
その鋭い視線から連なるのは――
――連続の狐火。
「ギュギギッチ――――?」
天を突くような尖った目鼻口。
ゴーレムの顔が、狐の耳に正対する。
小さな尻尾ごと振られるドレス――
ぼぼっヴヴォ――――チチュィィィン!
青白い炎が、重なっていく。
ヴォォン――――――――!!!
ゴーレムの尖った顔に走る、灼熱の閃光。
腰の剣は抜かれていないが、神速の剣がゴーレムに到達する!
――――――――ぼごぉんっ!
「ピュプピュゥゥン!?」
ドシャッリ!
テーブルに沈む、厳つい顔。
「ふぅ、まったく何を考えていますのっ! こんな所でゴーレムを出すなんて!」
「そうですね、子供が見たら卒倒します!」
「だ、大丈夫だったよ……顔が凄かったけど」
大丈夫だった子供の、口の端が引きつる。
「けど納得ですわ。いきさつはどうあれ、アレに追いかけ回され続けたら――」
うなだれ、額に手を当てる、ご令嬢。
「――毎度、脱兎の如く逃げ出すのも……頷けますね」
同じくうなだれ、頬に手を当てる、メイド。
「理解しマした。要すルに〝婚約の儀〟というのは――ニゲル青年ヲ討伐もしくは鹵獲スる、必要があるのでスね?」
ヴォヴォォン♪
「えーっ、そうわのーっ? 全っ然っ、わからなかったわー、ソコまで興味も無いけどさー♪」
イオノファラーの興味は――運ばれてきた料理に、すべて注がれていた。
令嬢リカルルの号令。
「はい、お嬢さま」
スッとそばに控える、侍女リオレイニア。
白鳥を思わせる仮面に、クチバシは無く。
磁器の艶やかさと、縁に入ったツル草の意匠。
彼女の上品なたたずまいに、かすかなアクセントを添えているが――
ギロリッ――――!
その仮面に見つめられた、長テーブルに座る面々が――
「「「んぐぅ、んぎぎ」」」
苦渋の表情をうかべ、椅子やテーブルにしがみ付いた。
「アナタたちときたらもう……ソコまで興味がおありですの?」
あきれ顔の、名物受付令嬢。
「あるよっ! ニゲルさんはシガミーの友達だし、狩りの師匠だし、王女さまもかわいそうだしっ!」
テーブルにしがみ付いたまま、顔を上げる子供レイダ。
「あたくしさまもぉー、ニゲルの恋の行方にわぁー、一家言有りますのでぇ!」
紅茶のカップにしがみ付く、根菜か丸茸のような。
「ニゲルの故意? そういえば、どういうつもりか知りませんけれど……、この指輪を付けてくれたとき、ギュッと手をいつまでも握られましたわね?」
心底不思議そうに右手薬指を見つめる、伯爵令嬢リカルル。
金色に輝く指輪には――
朱色のラインや文様が彫られていて、キズひとつ無い。
「ぴゃらっ――ニゲルさまから頂いたぁ、指輪ぁららぁん!?」
白目をむいて倒れる、ラプトル王女殿下。
カチャカチャガシャラララッ――――ふわさ。
その体を、近くに浮かんでいた女神の眷属迅雷が、そっと受け止めた。
王女を抱えた鳥の脚のような黒い細腕が、もう一本棒から生え――
ヴッ――ゴドン!
フカフカのソファーを置き、その上に王女を横たえた。
「クツクツクツクツクツッ、フェスタも終わっちゃったしさぁ、こぉーんなぁ面白そぉーなぁイベントおぉー見逃す手わぁぁ、無いじゃありませんのぉ――コッコォォォォン♪♪」
テーブル席に陣取り必死にしがみ付く、コントゥル家名代伯爵夫人ルリーロ。
「あぁーもぉー、名代まで――はしたないですわよ」
額に手を当てる、伯爵令嬢。
「ひょっとして迅雷も、この件に興味がおありですか?」
鳥の仮面のメイドが、浮かぶ棒に尋ねた。
「ニルゲ互助会会員とシては――ヴヴヴヴヴヴッルルッ――、無視できナい案件ではありマす」
浮かぶ棒が、まるで蜂のような動きで、高揚した内面を表現した。
§
「ニゲルを四六時中、ゴーレムでぇ追いかけ回したぁ!?」
あきれ顔の、リカルル姫。
「だ、だってらん! ニゲルさまとの婚約を認めさせるにはらん、必要な儀式だったんですらぁぁぁぁんっ!」
息を吹き返すなり釈明する、ラプトル姫。
「面白いね、リオレイニアさん♪」
ふさぎ込みがちだった子供に、笑顔がもどる。
「コラ、レイダ。人の恋路を笑ってはいけません――ぷふっ!!!」
彼女は横を向き、何かに耐えている。
「けどおかしくなぁい? ニゲルの剣の腕わさぁ、見た目に反して結構なものだったんでしょお? ならゴーレムなんて、イチコロじゃぁ無いのぉ?」
丸茸のようなフォルムが、テーブルに鎮座……寝そべ……転がっている。
「そうでスね。シガミーでサえ太刀打ちできナい、ニゲルノ実力。ソレを以てしテも達成できナい儀式とイうのは、不自然でス――コトン」
浮かぶのにも飽きたのか――棒がテーブルに足(?)をついた。
「国益だけでなく国家存亡に関わることですのでー、くわしいことは言えないのですけれどらぁん――――つ、強すぎるので昼夜を問わず、この子で追いかけるしかなかったのですらぁん!」
ブチリと腰から馬の人形をちぎり取る、ラプトル王女殿下。
長いテーブルの、使われていない方へ向かって――――ポイッス♪
投げられた人形の姿が――異形に変わる。
目を形作る、鋭利な宝石。
口からは、銃口の空いた黒金の銃身。
四つ足は太く不格好で、馬らしくはなかったが。
長い顔と首と胴を見るかぎり、やっぱり馬のつもりらしい。
ガシャッ――ピピププゥーン♪
鳥の囀りのような、電子音。
「「きゃぁぁ――――ゴ、ゴーレム!?」」
椅子を倒し飛び退く――伯爵令嬢と元侍女長。
「レーニア!」
カップや丸茸を蹴散らしテーブルに上がる、ガムラン最凶受付令嬢。
その高貴な踵が――ガッ、コワァーン♪
お盆の縁を踏みつけた。
「はい、お嬢さま――!」
椅子を蹴上がり、くるくると舞うお盆をつかむ給仕服姿。
「――ひかりのたてよ!」
盾のように構えられた、その表面に――
光の文様が浮かび上がった。
「すぅぅぅっ――♪」
大きく息を吸い、やや中腰。
高貴な指先がテーブルに付く。
「――コォン、コォン、コォン、コォン!」
ややツリ目の受付嬢。
その鋭い視線から連なるのは――
――連続の狐火。
「ギュギギッチ――――?」
天を突くような尖った目鼻口。
ゴーレムの顔が、狐の耳に正対する。
小さな尻尾ごと振られるドレス――
ぼぼっヴヴォ――――チチュィィィン!
青白い炎が、重なっていく。
ヴォォン――――――――!!!
ゴーレムの尖った顔に走る、灼熱の閃光。
腰の剣は抜かれていないが、神速の剣がゴーレムに到達する!
――――――――ぼごぉんっ!
「ピュプピュゥゥン!?」
ドシャッリ!
テーブルに沈む、厳つい顔。
「ふぅ、まったく何を考えていますのっ! こんな所でゴーレムを出すなんて!」
「そうですね、子供が見たら卒倒します!」
「だ、大丈夫だったよ……顔が凄かったけど」
大丈夫だった子供の、口の端が引きつる。
「けど納得ですわ。いきさつはどうあれ、アレに追いかけ回され続けたら――」
うなだれ、額に手を当てる、ご令嬢。
「――毎度、脱兎の如く逃げ出すのも……頷けますね」
同じくうなだれ、頬に手を当てる、メイド。
「理解しマした。要すルに〝婚約の儀〟というのは――ニゲル青年ヲ討伐もしくは鹵獲スる、必要があるのでスね?」
ヴォヴォォン♪
「えーっ、そうわのーっ? 全っ然っ、わからなかったわー、ソコまで興味も無いけどさー♪」
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