滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

３：ダンジョンクローラーになろう

３８８：龍脈の回廊、展望台と和解

「にゃっふふふふーっ♪」
　黒板タブレットを日にかざす、猫耳の女性ニャミカ。

「なんで、楽たのしそうコォン？」
　同おなじく黒板タブレットをかざす、狐耳の少年ルコル。

　ここはガムラン町ちょうギルド屋舎おくしゃ、最上階ペントハウスのさらに上うえ。
　展望台てんぼうだい南側みなみがわ。

「一回いっかい５ヘククとして６回かいも届とどけたらぁ、ふたりで３パケタになるニャン♪」
　猫耳ねこみみの女性じょせいは下卑げびた表情かおをするが――
　愛嬌あいきょうのある生来しょうらいの顔かおつきが邪魔じゃまをして、下衆げすな内面ないめんを再現あらわしきれていない。

「えっ!?　お金取かねとるコォン？　この黒くろい板いたを展望台ここで日に当てるだけで、手に入はいる情報じょうほうコォン！」
　狐耳きつねみみの少年しょうねんが、ガタガタと揺れるギルド椅子いすに乗せた――大おおきな鞄かばんを見つめる。
　その中なかには黒板タブレットが何枚なんまいも、押し込められていた。

「完全自供かんぜんじきょうご苦労様くろうさまです……おふたりとも」
　突如とつじょとして姿すがたを現あらわす、鳥とりの仮面かめんの給仕服きゅうじふく。

「チッ、リオレイニアニャァ――あっ、なにか飛んでるニャ！」
　北きたの空そらを指ゆびさし、大口おおぐちを開ける猫耳ねこみみ。
「ニャミカさん、そうそういつも騙だまされませんよ――あら、本当ほんとうに何なにか飛んでいますね？」
　仮面かめんが見つめる先さき。
　巨大きょだいな翼つばらを駆る鳥とり、いや、巨大きょだいな蜥蜴とかげが飛んでいた。

「ド、ドラーゴンコォン？」
　展望窓てんぼうまどへ、へばりつく少年しょうねん。
「あ、こらっ、今いまのうちに逃げるニャァ！」
　少年しょうねんをつかみ、引っ張ろうとするも――

「こぉら、アナタたち！　この緊急時きんきゅうじに小銭稼こぜにかせぎとは――商売人しょうばいにんの風上かざかみにも置けませんねぇ――――!!」
　ごちんごちん！

「フッギャッ――!?」
「ケケーン――!?」
　一撃いちげきずつ拳骨げんこつをくらい、崩くずれ落ちる喫茶店組きっさてんぐみ。
　彼女かのじょたちは隣町となりまちで、喫茶店きっさてんを営いとんでいたが――
　アーティファクト仲介ちゅうかいの目利めきききを買われ、今いまココに居る。

「ここだと女神像めがみぞうの情報じょうほうが、きちんと収得しゅうとくできますね――よいしょっと」
　気絶きぜつした二人ふたりを、椅子いすに重かさねて座すわらせる、鳥の仮面リオレイニア。

　エプロンのポケットから、ヘッドセットを取り出し耳へ装着ピピッ♪。
「イオノファラーさま。展望台てんぼうだい南側みなみがわですと、ちゃんと更新こうしんされました――はい、はい、いえ――それと今いましがた巨大きょだいな龍りゅう……恐おそらく火龍かりゅうゲールと思おもわれますが、西にしへ向かって飛んでいきました――は、はい。そういうことでしたか、では後のちほど――」
　ヘッドセットを外はずし、ポケットへしまう。
　彼女このじょの口元くちもとは、かすかに震ふるえていた。

　　　§

　ふぉん♪
『＞極所作業用汎用強化服を一件作成しました
　＞運搬中
　＞１２０秒後に〝シガミー〟１番コンテナ搬出口より、お届けします』

「１番いちばんコンテナ搬出口はんしゅつぐちてなぁ、どこでぇい・――ニャァ？・」
　ここは、レイド村むらギルド支部しぶ。
　女神像めがみぞうへつづく階段前かいだんまえ。

　ガッキュゥゥン――ズガゴゥン♪
　腹はらにも肩かたにも、箱はこは無ぇ。
　ゴッキャガチャコ――ゴン♪
　かるく立ちあがったら天井てんじょうから吊つすされてた、灯あかりの魔法具まほうぐにぶち当たった。
　ゴカカンッ――ガチャンッ！

「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ！」」
　新米しんまいメイド・タターと、白しろい服ふくの神官しんかんが――
　落ちてきた魔法具まほうぐから、飛びのき逃げていく。
　この図体ずうたいであちこちぶつかりまくってたら、女子おんなこどもからしたら――
　恐おそろしいかもなぁ。
　画面モニタに描かれてる鉄鎧鬼おれの絵。
　顔かおが鬼おにみてぇだし、角つのみてぇなアンテナもやたらと生えてるしな。

「マぁ、まとわりツかれるよかぁ、良いやナぁ・――ニャァ♪・」
　胡座あぐらをかいて座すわる、おれの周まわりを――
　ニゲルとレイダが、ウロチョロする。

「これさ、プラモだよプラモ！　ロボットアニメ主役級しゅやくきゅうの♪」
　やかましい。だれが麩羅猛ぷらもうだ。
「なんだかわからないけど、大丈夫だいじょうぶだよ。例たとえずっと、このままでもシガミーに変わりは無いんだから！」
　危あぶねぇから、あまり近寄ちかよるなよ。
　踏ん付けちまう。

「変かわりがねぇのは、たしかにそうだがぁ――猪蟹屋ししがにやに入はいれねぇのは、厄介やっかいだぜ・――ニャァ？・」
　この図体ずうたいじゃ、仕事しごとにならんし――
　家いえにも入はいれん。

「はいはいはいはい。大丈夫だいじょうぶ、大丈夫だいじょうぶですよ、くすくす？・」
　うるせぇ惡神わるがみめ。
　はいは二回にかいまでにしとけ。
「ひひひぃぃん？　ひんひひん？」
　うるせぇ、でけぇ子馬こうまめ。
　ひひひんは二回にかいまでだから――よし。

　ぽぽぉーん♪
「んぁ？　出来できたみたいだぜ・――ニャァ？・」
　背中せなかの大筒バックパック腰の角かどが――ガッシャッ♪
　蓋ふたがひとりでに開ひらいて――ごろごろろ、どさささっ♪
　猫ねこの頭あたまとツナギてぇな毛皮けがわの服ふくが、ころがり落ちた。

「（シガミーのクラフト能力のうりょくに、変りはないようですね）――デは私わタしハ自律型じりツがた強化服きょうかふくおにぎり一号いチごうノ復旧ふっキゅうヲ行おこナいマす・」
「じゃぁ、私わたしも手伝てつだうー♪」
　迅雷ジンライに巻き付かれたまま、はしゃぐレイダ。

「おう、たのむわ。おにぎりあいつが居ると、便利べんりは便利べんりだからなぁ・――ニャァ♪・」
　レイダが異様いように高たかく跳びはねて、たぶん、〝おにぎりの卵たまご〟を探さがしに行った……頭あたまぶつけるなよ？

「さて、星神ほしがみさまよぉ・――ニャァ！・」
　ガチャコ、ギッチャゴン♪
　短みじかくなった大角ミノタウを指ゆびさす。

　とててて、くすくす？
　ちゃんとおれの、可憐かれんな姿すがたをしている。
　ぽきゅぽきゅむ、ひひひぃん？
　ずいぶんとまぬけだがぁ、王女ラプトルのゴーレム馬うまよか――
　だいぶマシだな。

「そうだ、シガミー。色々いろいろあるんだろうけどさ――」
　おれの鉄鎧てつよろいの膝ひざを、ゴカンゴカン叩たたきながら青年ニゲルが口くちを開ひらいた。
「なんでぇい、ニゲル・――ニャァ？・」
　ギッチャゴ♪
　ニゲルを見つめると――キュキュィ♪

　ふぉふぉん♪
『ニゲル　ＬＶ：３８
　勇者見習い★★★★☆　／聖なる剣／全属性無効／勇者の歩み
　追加スキル　／多重ロックオン／可変レンジ／クリティカル１００％／女神の神託
　　　　　所属：なし』

　ニゲルの鑑定結果かんていけっかが出た。
　いままでどうしてか、見ようと思おもわなかったが。
　リオレイニアのに似た、強つえぇスキルを持ってやがるな。

　しかしこれは、見えちまって……良いもんなのか？
　スキル隠蔽いんぺいもＬＶ詐称さしょうもねぇなら――
　上級じょうきゅう鑑定者かんていしゃに見られたら一発いっぱつで、【勇者ゆうしゃ（見習みならい）】ってバレちまうぜ。

「カヤノヒメは、シガミーが居ない間あいだ、ずっと二号店にごうてんの手伝てつだいや、イオノファラーさまたちの手助てだすけをしてくれてたんだよ。もし、本気ほんきで退治たいじするっていうなら、もう一度いちど、相手あいてになるよ？」
　ザギザギザギザギ――！

「まてまてい。抜くな抜くな！　こんな形なりでも折角せっかく、生きかえったんだ、もう勘弁かんべんしてくれやぁ・――ニャァ！・」
　ガッチャチャゴゴッ――――手のひらをニゲルに向けて、盾代たてがわりにした

「なに言ってるんだよ。さっきの真剣勝負しんけんしょうぶ、勝ったのはシガミーじゃんか？」
　ザギザギザギザギ――！
　抜くな抜くな。

「わかった！　星神ほしがみとは仲良なかよくするぜ。二号店みせの戦力せんりょくだってんなら、なおさらだぜ・――ニャァ!?・」
　ガッチャチャゴゴッ♪

「ならいいけど、仲良なかよくするんだよ？」
　ザギザギザギ――――ガキン！
　閉じられる鍵剣かぎけんセキュア。

　その後、しばらくおれたち（厳いかつくて巨大きょだいな鉄鎧おれと、可憐かれんな生身なまみの童女ほしがみと、間抜まぬけたでけぇ子馬こうま）を見張みはっていたが――
　それにも飽きたのか、女神象めがみぞうへつづく階段かいだんを、降りていった。

「よし、星神カヤノヒメさまよぅ、そーいうわけだからぁ・――（ミノタウこいつをさっさと取ってくれ・・・・・やぁ！・）――ニャァ♪・」
　子馬こうまを引きつれた、おれの体わるがみを問いただす。

「では、ミノタウロース伐採ばっさいのための、ニッパーを作成さくせいして頂いただけますか？」
　うふふ？
　二八にっぱちってなぁ、なんだぜ？

　ふぉふぉん♪
『解析指南＞ミノタウロース伐採のための、
　　　　　　ニッパーを作成しますか？
　　　　　　＜Ｙ／Ｎ＞』
　わからん。
　この鉄鎧てつの体からだがなじんでからは、いろいろとわかることが増えたが・・・・・・・・・・、それでも、わからんことが時々ときどきある。

　ふぉん♪
『ヒント＞ニッパー／鉄線などを切断するための工具』
　わからん……が、要るってんならやってくれや。