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4:龍撃の学院
424:初等魔導学院、詠唱魔法具と拠点その7
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「あのう、シガミーさんは、一体何と戦っているのですか?」
猫耳メイド・カヤノヒメが、一番冷静なギ術開発部顧問へ尋ねた。
「さぁ? 魚頭の怪物かもしれないし、まだ名前がないような厄災かもしれないニャァ♪」
まだ手を付けられてない料理がのこる――
さっきまでとは反対の端席に座る、猫頭氏ミャッド。
「もーっ、何を人ごとみたいに、言っているんですか!」
猫の獣人族である上司の襟首を、首皮ごと持ち上げる秘書の女性。
「フッギャァァァァァァァァ――!?」
ダミ声と猫爪をだし威嚇するが、猫頭氏の腕は構造上――
背後に回られると言葉どおりに、〝お手上げ〟らしかった。
「本当ですねー。これは魔導騎士団団長へ報告しなければなりませんよ」
秘書の横から手を伸ばし――猫の頭をグリグリと撫でる学院長。
「わ、私もぉ、お兄様に告げ口するららぁん!」
やはり横から手を伸ばし――猫頭をグリグリする第一王女。
「それはひどいニャァ。大丈夫だよ、革袋の中身がなんであれ――ここに本人が居るんだからニャ♪」
ガタガタと震える美の権化リオレイニアを、指さす猫頭氏。
「ふぅーふふうふっふふふふ――♪」
どこからか、そんな不気味な声が聞こえてくる。
「なぁによ、この変な声わぁ――?」
カヤノヒメの頭上、キョロキョロと辺りを見わたす小さな影。
猫耳ヘッドドレスを手すりのようにつかむ、美の女神御神体だ。
「レーニアおばさん、元気出して」
才女と名高いレーニアおばさん(震える)を気づかう、初等魔導学院一年生ヴィヴィー。
「なにか聞こえたぁ?」
おなじく初等魔導学院一年生レイダ。
「聞こえなかったけど?」
やや寸足らずな見習いメイド兼、初等魔導学院一年生タター。
子供組が、いまだ放心状態のリオレイニアを取り囲む。
「それで、シガミーは何と戦ってるの?」
ふたたび核心を突く、子供。
「そうだねぇ、しいて言うなら〝自分と〟かニャァ♪ 物の作りとしては単純で――これと何ら変わらニャイ物だけどニャァ♪」
取り出されたのは、やっぱり革袋で――
青色をしていて――
「ふぅーふふうふっふふふふ――♪」
笑い声を放つ革袋には『(笑)』なんて文字が、共用語で書かれていて。
ビクリと肩を震わせる、メイド服にローブ姿。
その手が仮面の上から、顔を覆う。
「レーニアおばさん、お水!」
「あ、ありがとう――――こくこくこくりっ……ふはぁーっ♪」
姪からコップの水を受け取り、飲み干すレーニアおばさん。
レイダが猫手からさっと、青い袋を奪った。
すかさずカチリと『(笑)』を押す、子供。
「ふぅーふふうふっふふふふ――♪」
もう一度、カチカチリ。
「ふぅーふふうふっ――」「ふぅーふふうふっふふふふ――♪」
押したとおりに、連続して笑う革袋。
「「ぷふふふっ――♪」」
笑みをこぼす、子供たち。
ビク、ビクリッ――連続して肩をふるわす、レーニアおばさん。
「ぶ、不気味! あ、ひょっとして……王女さまが作った、おもちゃ……ですかね?」
率直な感想を述べた見習いメイドが……何かに気づいて、愛想笑いを浮かべる。
「はい。発掘魔法具を真似て作っただけのコレは――ひょい――声が出るだけのおもちゃですらぁん」
見る影もなくなった、才女と名高い知人を哀れに思ったのか――
王女殿下が子供から、青い革袋を取りかえす。
「声が出るおもちゃあ? あたくしさま謹製のと比べると……ごそごそぉ♪」
猫耳メイドの頭上。
根菜のような御神体が取り出したのは、一枚の板。
「むぎゃ――!?」
メイド姿の金髪の少女が無造作に、頭の上の一切合切をつかんだ。
猫耳が付いた頭の飾りまで引っこ抜いてしまい――がしゃらららっ!
抱えたすべてを、流し台に付いた台へ放った。
金髪のメイドが頭に、猫耳の飾りのせ直す。
そして台へ置いてあったお盆に、御神体と件の板をうやうやしく載せた。
「ららぁん」
そして空いた台へ青い革袋を、王女がゴトリと置く。
「音が出るだけの機構にしては、随分おおきいのねぇん?」
御神体はそう言って青い革袋と、自分が手にする謹製品を見くらべる。
板は『♪』や『■』の押ボタンが付いた、詠唱魔法具だった。
やや厚みはある物の、携帯性に優れているのは一目瞭然だ。
それは、わざわざ横に並べて見るべくもなく――
「か、神々が作った太古の時代のテクノロジーと一緒にされてわ、たまりませんららぁん!」
王女は悔しげに、地団駄を踏む。
「あーうん。まーそーねーぇん。けどそこらへんわぁ、おいおい改良していきたいのぉよぉねぇぇん」
板に描かれた金髪少女の顔のあたりを、てちてちと踏みつける女神御神体。
「あ、イオノファラーさま、ソレでしたら――コレ、さっきシガミーから受け取りました。私の詠唱魔法具の試作品だそうですが」
介抱され立ちあがれるほどに回復した才女、リオレイニアがエプロンのポケットを探る。
ぺたり。
一枚のカードが板状の魔法具の上に、重ねて置かれた。
ソレは、古代の詠唱魔法具(革袋)と比べたら――
ましてや、女神の謹製品と比べてなお――
「ニギャッ!?」「ららぁん!?」
顧問と王女。
立場は違えど、アーティファクトや魔導工学を専門にする二人。
「「冒険者カードレベルの魔法具なんて、まるで神々の御業――じゃないかぁ!」――ららぁん!」
ただただ、驚愕の二人に――もう一個が混じる。
「本当よぉねぇぇん……っていうかぁ、あたくしさまも神だけどね……もぐもぐ……操作系も一個にまとまってるし、文句の付けようがないわねっ♪」
カヤノヒメちゃん、おかわり頂けるかしらぁ♡
その顔は、厄介ごとがひとつ片付いたように、晴れ晴れとしている。
「はい、ただいま。くすくす?」
作りおきがなくなったのか、流し台よこの魔法具箱を開き――
食材を取り出す星神兼、猫耳メイド。
「わたくしも、お手伝いいたしますね」
小振りなナイフをポケットから取りだす、仮面の女性。
小気味良く切り刻まれていく、肉野菜に魚。
元コントゥル家侍女長という肩書きは、伊達ではないようで――
スグに台の上が、料理で埋め尽くされた。
「ニャフフッ♪ あしたは休日だし、酒の肴は沢山有るし――?」
猫頭氏の首がキョロキョロと。
やがて、長テーブルの反対側へ向けられた。
いままさに――
美の女神の眷属である、アーティファクト迅雷を手にした――
美の女神関係者にして、凄腕の魔導工学技士である――
年端もいかない少女が、怪しげな構えを取った。
そのすぐ横まで、猫頭顧問氏が駆けていく。
「レーニアおばさん。あっちのは、もう放っといても良いの?」
姪っ子が見つめる、先――
「あった、あった♪ こんなに澄んだお酒は、いままでお目に掛かったことがないに゛ゃぁー♪」
うれしそうに酒瓶を抱え、駆けもどる猫頭氏。
その肩越しの、何もない空間。
「あ、アレは自分を倒した相手を……記録し……模倣し……再現するだけのアーティファクトです。ちょ、直視さえしなければ、ど、どうということのないもので……すよ?」
〝だけ〟ではなく、〝どうということのあるもの〟でもあるのだろう。
仮面の女性が両手で、少女の頬をつかみ――
ぐいと前を向かせた。
猫耳メイド・カヤノヒメが、一番冷静なギ術開発部顧問へ尋ねた。
「さぁ? 魚頭の怪物かもしれないし、まだ名前がないような厄災かもしれないニャァ♪」
まだ手を付けられてない料理がのこる――
さっきまでとは反対の端席に座る、猫頭氏ミャッド。
「もーっ、何を人ごとみたいに、言っているんですか!」
猫の獣人族である上司の襟首を、首皮ごと持ち上げる秘書の女性。
「フッギャァァァァァァァァ――!?」
ダミ声と猫爪をだし威嚇するが、猫頭氏の腕は構造上――
背後に回られると言葉どおりに、〝お手上げ〟らしかった。
「本当ですねー。これは魔導騎士団団長へ報告しなければなりませんよ」
秘書の横から手を伸ばし――猫の頭をグリグリと撫でる学院長。
「わ、私もぉ、お兄様に告げ口するららぁん!」
やはり横から手を伸ばし――猫頭をグリグリする第一王女。
「それはひどいニャァ。大丈夫だよ、革袋の中身がなんであれ――ここに本人が居るんだからニャ♪」
ガタガタと震える美の権化リオレイニアを、指さす猫頭氏。
「ふぅーふふうふっふふふふ――♪」
どこからか、そんな不気味な声が聞こえてくる。
「なぁによ、この変な声わぁ――?」
カヤノヒメの頭上、キョロキョロと辺りを見わたす小さな影。
猫耳ヘッドドレスを手すりのようにつかむ、美の女神御神体だ。
「レーニアおばさん、元気出して」
才女と名高いレーニアおばさん(震える)を気づかう、初等魔導学院一年生ヴィヴィー。
「なにか聞こえたぁ?」
おなじく初等魔導学院一年生レイダ。
「聞こえなかったけど?」
やや寸足らずな見習いメイド兼、初等魔導学院一年生タター。
子供組が、いまだ放心状態のリオレイニアを取り囲む。
「それで、シガミーは何と戦ってるの?」
ふたたび核心を突く、子供。
「そうだねぇ、しいて言うなら〝自分と〟かニャァ♪ 物の作りとしては単純で――これと何ら変わらニャイ物だけどニャァ♪」
取り出されたのは、やっぱり革袋で――
青色をしていて――
「ふぅーふふうふっふふふふ――♪」
笑い声を放つ革袋には『(笑)』なんて文字が、共用語で書かれていて。
ビクリと肩を震わせる、メイド服にローブ姿。
その手が仮面の上から、顔を覆う。
「レーニアおばさん、お水!」
「あ、ありがとう――――こくこくこくりっ……ふはぁーっ♪」
姪からコップの水を受け取り、飲み干すレーニアおばさん。
レイダが猫手からさっと、青い袋を奪った。
すかさずカチリと『(笑)』を押す、子供。
「ふぅーふふうふっふふふふ――♪」
もう一度、カチカチリ。
「ふぅーふふうふっ――」「ふぅーふふうふっふふふふ――♪」
押したとおりに、連続して笑う革袋。
「「ぷふふふっ――♪」」
笑みをこぼす、子供たち。
ビク、ビクリッ――連続して肩をふるわす、レーニアおばさん。
「ぶ、不気味! あ、ひょっとして……王女さまが作った、おもちゃ……ですかね?」
率直な感想を述べた見習いメイドが……何かに気づいて、愛想笑いを浮かべる。
「はい。発掘魔法具を真似て作っただけのコレは――ひょい――声が出るだけのおもちゃですらぁん」
見る影もなくなった、才女と名高い知人を哀れに思ったのか――
王女殿下が子供から、青い革袋を取りかえす。
「声が出るおもちゃあ? あたくしさま謹製のと比べると……ごそごそぉ♪」
猫耳メイドの頭上。
根菜のような御神体が取り出したのは、一枚の板。
「むぎゃ――!?」
メイド姿の金髪の少女が無造作に、頭の上の一切合切をつかんだ。
猫耳が付いた頭の飾りまで引っこ抜いてしまい――がしゃらららっ!
抱えたすべてを、流し台に付いた台へ放った。
金髪のメイドが頭に、猫耳の飾りのせ直す。
そして台へ置いてあったお盆に、御神体と件の板をうやうやしく載せた。
「ららぁん」
そして空いた台へ青い革袋を、王女がゴトリと置く。
「音が出るだけの機構にしては、随分おおきいのねぇん?」
御神体はそう言って青い革袋と、自分が手にする謹製品を見くらべる。
板は『♪』や『■』の押ボタンが付いた、詠唱魔法具だった。
やや厚みはある物の、携帯性に優れているのは一目瞭然だ。
それは、わざわざ横に並べて見るべくもなく――
「か、神々が作った太古の時代のテクノロジーと一緒にされてわ、たまりませんららぁん!」
王女は悔しげに、地団駄を踏む。
「あーうん。まーそーねーぇん。けどそこらへんわぁ、おいおい改良していきたいのぉよぉねぇぇん」
板に描かれた金髪少女の顔のあたりを、てちてちと踏みつける女神御神体。
「あ、イオノファラーさま、ソレでしたら――コレ、さっきシガミーから受け取りました。私の詠唱魔法具の試作品だそうですが」
介抱され立ちあがれるほどに回復した才女、リオレイニアがエプロンのポケットを探る。
ぺたり。
一枚のカードが板状の魔法具の上に、重ねて置かれた。
ソレは、古代の詠唱魔法具(革袋)と比べたら――
ましてや、女神の謹製品と比べてなお――
「ニギャッ!?」「ららぁん!?」
顧問と王女。
立場は違えど、アーティファクトや魔導工学を専門にする二人。
「「冒険者カードレベルの魔法具なんて、まるで神々の御業――じゃないかぁ!」――ららぁん!」
ただただ、驚愕の二人に――もう一個が混じる。
「本当よぉねぇぇん……っていうかぁ、あたくしさまも神だけどね……もぐもぐ……操作系も一個にまとまってるし、文句の付けようがないわねっ♪」
カヤノヒメちゃん、おかわり頂けるかしらぁ♡
その顔は、厄介ごとがひとつ片付いたように、晴れ晴れとしている。
「はい、ただいま。くすくす?」
作りおきがなくなったのか、流し台よこの魔法具箱を開き――
食材を取り出す星神兼、猫耳メイド。
「わたくしも、お手伝いいたしますね」
小振りなナイフをポケットから取りだす、仮面の女性。
小気味良く切り刻まれていく、肉野菜に魚。
元コントゥル家侍女長という肩書きは、伊達ではないようで――
スグに台の上が、料理で埋め尽くされた。
「ニャフフッ♪ あしたは休日だし、酒の肴は沢山有るし――?」
猫頭氏の首がキョロキョロと。
やがて、長テーブルの反対側へ向けられた。
いままさに――
美の女神の眷属である、アーティファクト迅雷を手にした――
美の女神関係者にして、凄腕の魔導工学技士である――
年端もいかない少女が、怪しげな構えを取った。
そのすぐ横まで、猫頭顧問氏が駆けていく。
「レーニアおばさん。あっちのは、もう放っといても良いの?」
姪っ子が見つめる、先――
「あった、あった♪ こんなに澄んだお酒は、いままでお目に掛かったことがないに゛ゃぁー♪」
うれしそうに酒瓶を抱え、駆けもどる猫頭氏。
その肩越しの、何もない空間。
「あ、アレは自分を倒した相手を……記録し……模倣し……再現するだけのアーティファクトです。ちょ、直視さえしなければ、ど、どうということのないもので……すよ?」
〝だけ〟ではなく、〝どうということのあるもの〟でもあるのだろう。
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