滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

４：龍撃の学院

４３４：神域惑星へようこそ、天かける天ぷら号

「ひひひぃぃぃん？　ひひひひぃぃぃん？」
　うるせえ？　うるせえ？
　ぽっきゅらぽっきゅら、ぽぽぉぉ――ん♪

「きゃぁぁぁぁっ――!?」
　かなり高たかめに跳ねた。
　この隙すきに鞍くらの上うえに立って、うしろを向く。
　天てんぷら号ごうが落ち始はじめ、涙目なみだめの見習みならいメイドと目が合った。

「まったく、どうしてまた……引っかかってやがるんだぁ？」
　呆あきれても物ものは言う。聞かなきゃ始はじまらん。

「つ、ついさっき、解ほどいてくれたばかりじゃないですかー！」
　おれが聞いてるんだ。

「まぁ、いいぜ。助たすけてやるから、このまま仕事しごとに付き合え」
　やはり馬うまの尻尾しっぽに袖そでの金具かなぐを絡からませた、彼女タターの足あしをつかんで引き寄せる。

「しかし……お前まえさんは子供がきだが、もうそろそろ良い褌ふんどしをしめた方がよかぁねぇか？」
　上下逆じょうげさかしまなうえに、風かぜで給仕服メイドふくも外套ローブも盛大せいだいにまくれ上がっている。
「な、なんですかぁー、フンドシってぇ!?」
「リオレイニアやリカルル姫ひめさんは、凄いのを・・・・履いてるぞ？」
　ぺちりと腰回こしまわりを叩たたいてみたが、まだまだ子供こどもだな。

「きゃぁ、何なんてことするんですかっ！　見ないで下さぁい！　あの二人ふたりとちがって、私わたしにはお金かねが有りませぇんからぁ！」
　顔かおを真っ赤にしたタターの体からだを抱かかえなおし、鞍くらに座すわらせてやる。

「よっこらせっと、馬うまには乗れるのか？」
「む、村むらには馬うまなんて居ませんでしたし――居たとしても私わたしなんかに乗り方かたを教おしえてくれる人ひとは居ませんでしたぁー！」
　とんでもない速はやさで、勝手かってに走はしって行く天てんぷら号ごう。
　流ながれていく景色けしきに、身をすくませる少女タター。

「じゃぁ、おれが手綱たづなを握にぎるか――――よいしょ！」
　肩かたをつかんで、タターを飛び越える。
　強風かぜに煽あおられ――すとん。
　おれは丁度ちょうど、タターのまえの隙間すきまに潜もぐり込んだ。

「きゃぁっ――もう、あぶないでしょ！」
「悪わるい悪わるい。この辺へん……見たことのねぇ背の高たかい草くさが生えてるな？　一旦止いったんとまるか！」
　手綱たづなを引くが、まるで止まらねぇ？
「ありゃ？　とまらんぞぉ？」
　ぽっきゅぽきゅぽきゅきゅら――――♪

「えっ!?　ど、どーするんですかぁー！」
「いざとなったら、うしろ頭あたまを力一杯ちからいっぱい錫杖しゃくじょうで、ひっぱたいてやりゃぁ――!?」
　ヴッ――じゃっりぃぃん♪

「だっ、駄目だめですぅっ！　テンプーラゴウはぁ、こう見えてとっても精巧せいこうな魔導人形ゴーレムなんですからっ、叩たたくだなんて……かわいそうですっ！」
　うん？　たしかにコイツはおにぎりみたいな形なりをして、そのじつは――
　ラプトル王女殿下おうじょでんかが作つくったゴーレムだ。

「そうだな、叩たたくのは止めとくか。けどこうも言うことを聞かねぇんじゃ、王女おうじょさまの工房こうぼうに送り返かえすしかねぇなぁ」
　錫杖しゃくじょうを仕舞しまう――すぽん♪

「ひひひひひぃぃぃぃんっ!?」
　ぽぎゅずざざざぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ――――!!
　四つ足あしを踏ん張り、急停止フルブレーキングする天てんぷら号ごう。

「うをっ――ぽぎゅどがぁぁんっ♪」
　痛いてぇ――馬うまの首くびにぶち当たったおれは、天高てんたかく弾はじき飛ばされた！

　ヴッ――じゃっりぃぃぃぃぃぃぃんっ♪
　錫杖しゃくじょうを取りだし――――ブゥォオォォォォオンッ♪
　回転かいてんさせ――――くるん。
　空中で一回転とんぼをきる――――すとん、ずざざざざぁぁぁぁっ！

　金剛力無こんごうりきなしでも、ふつうに体からだが動うごかせた。
　星神ほしがみがこの体からだに施ほどこした、ＨホシガミＳＰスキルポイント由来ゆらいの性能せいのうは――
　おれの体からだが持っていた〝体現する力・・・・・〟を、どこまでも引き出してくれる。

「だっ、大丈夫だいじょうぶ!?　シガミー？」
　タターが駆けよってくる。

「平気平気へいきへいき、ふう。やい馬うまの魔物まもの。ここで話はなしを付けとくぞ」
　ふぉふぉん♪
『シガミー＞この一行文字は読めるか？』

「ひひひひｈぃぃぃんっ？」
「どっちだ？」
　ふぉん♪
『天ぷら号＞ひっひひひぃぃぃぃん？』
　ふぉん♪
『シガミー＞だからそれじゃ、わからんだろうが！』
　いや、わかってはいるな。
　言語辞書げんごじしょが入はいってないとか、そう言うことか？

　ふぉん♪
『シガミー＞おれの言うことがわかるなら、右前足を上げてみろ』
　ぽぎゅりぃん♪
　これは左前足ひだりまえあし。

　ふぉん♪
『シガミー＞こんどは、右前足、左前足、右後ろ足、左後ろ足の順だ』
　ぽっきゅぽっきゅぽっきゅぽぎゅりぃん♪
　逆ぎゃくだ、逆ぎゃくまわりだろっ。
　てめぇ、わかってんじゃんか！

　ふぉん♪
『シガミー＞じゃあ、おれたちの所に居る間は、おれたちに従え。
　　　　　　うまい飯も、これまで通り食わせてやるし、
　　　　　　仕事を手伝えば、王女に頼んでうちの子にもらってやる』

「ひひひひひぃぃぃぃん？」
　あいかわらず疑問形ぎもんけいだが、首こうべを垂れる馬うま。
　よーし、じゃあ「ひとまず、タターのことを尻尾しっぽに引っかけて、連れ去るのを止めてやれ」

　ふぉふぉん♪
『天ぷら号＞ひひひぃーん？』
　ぶふひぃん？
　首くびを振り、鼻はなを鳴らす馬うま。
　ふざけてるんじゃねぇっぽい。
　どういうコトだ。迅雷ジンライを連れてくるべきだったか。

「まあ、もどってから聞いてやる。ひとまずこれから、〝馬韮ばにら〟とかいう草くさを取ってこなきゃいけなくてな――」
　くるり――じぃぃぃぃぃ。
　色いろんな種類しゅるいの草くさが生い茂しげる、草地くさちを見わたす。
　唸うなれ、おれの薬草採取やくそうさいしゅの職業関連パッシブスキル。

　ふぉん♪
『ヒント＞バニラビーンズ』
「あー、そー。馬韮貧豆ばにらびんずな」

　それが草くさで、何なにかしらの利き目があるなら――
　立ち所どころに、見つかるはずだぜ。

「ひひひひひぃぃぃん？」
　ぽっぎゅらぽっぎゅら♪
　ちょっと離はなれた所ところへ駆けていった天てんぷら号ごうが、地面じめんを踏みならす。

「どうしたぁ？」
「どうしたの？」
　おれたちも駆けよる。

　あ、このやけに長ぇ蔓草つるくさぁ。
　細ほそいキュウリみたいな実が、なってる？
　百科事典ひゃっかじてんに描いてあるその細長ほそながい、乾燥かんそうした豆まめに似てなくもないぞ。

　がぶり、ぽっきゅらぽっきゅら――がさがさがさ♪

「やいこら、あ――それだそれ、間違まちがいなくその草くさが、探さがしてた奴やつだぜ」
　かせよこせ、遊あそぶなってんだ。
　おれの薬草師やくそうしとしてのスキルが――
　緊張きんちょうや不眠ふみんの緩和かんわ、滋養強壮じようきょうそう、抗酸化作用こうさんかさよう、甘あまみ強化きょうかなんかの薬効やっこうを知らせてくる。

　この実からは、甘あまい香かおりなんてまるでしねぇが――
　〝甘あまみ強化きょうか〟ってのは、おそらく当たりっぽい。

「ひっひぃぃぃぃぃんっ？」
　馬うまはそれを咥くわえたまま、また少すこし離はなれた場所ばしょへ行き――がさがさがさ♪
　初はじめて見る草くさを探さがし当てたのは、魔導人形ゴーレムとしての機能きのうなのか、偶然ぐうぜんなのかわからん。
　けど間違まちがいなく天ぷら号こいつは今いま、遊あそんでる。

「王女おうじょさまに言っちゃおっかなぁー？　天てんぷら号ごうは仕事しごとの邪魔じゃまをす――――!?」
　ぽっぎゅぽっぎゅぽっぎゅら、ぽぎゅきききぃぃっ♪
　どがん――うをわっ、危あぶねぇだろうが！

「ひひひぃん、ひひひひひぃぃぃん？」
　馬うまは頭あたまを上下じょうげにゆらし咥くわえていた、ソコソコ沢山たあくさんの青あおく細長ほそながい実のような物ものを差し出してきた。

「これが、イオノファラーさまがほしがってた、お菓子かしの材料ざいりょうになる草くさなの？」
「たぶんそうだ。さっそく持ち帰かえって――こいつで〝アイス・・・〟って菓子かしを作つくってやらんといかん――戻もどるぞ、おまえらぁ！」
　それほど遠とおくはないが、でたらめに走はしってきちまったから。
　帰かえりは高たかい木にでも登のぼって上うえから、御神体像ごしんたいぞうを探さがさねぇといけねぇかと思おもってたんだが――

　ぽっきゅらぽきゅららぽきゅらぽきゅらららっ――――♪
　軽快けいかいな走はしり。
「帰かえり道みちが、わかるのか？」
「ひひひひぃぃぃぃん？」
　おれたちは迷まようことなく、御神体像ごしんたいぞうへ帰かえり着いた。

　　　§

「さぁ――次つぎはそこぉ！　網あみが空あいたわよぉう、お肉にくのっけて、広ひろげちゃって♪」
　ぴっぴきぴー、ぴりぴりぴりりぃぃぃぃぃっ♪
　口くちに咥くわえたのは大角はらのふえ……ずいぶんと小ちいせぇが角笛つのぶえかぁ？
　うるせぇぞ！

　御神体いおのはらが、櫓やぐらの中央ちゅうおうから――グルリと囲かこまれ輪になった大竈おおかまどへ向かって、指示しじを飛ばしている。
　子供こどもたちは白米はくまいを盛ったどんぶり片手かたてに、肉にくを焼かされ野菜やさいもときどき焼かされ――
　実じつにうまそうに、昼飯ひるめしを堪能たんのうしていた。