滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

４：龍撃の学院

４４２：烏天狗（シガミー）、コントゥル家家宝をつくろう

「あれだけの大群たいぐんが一瞬いっしゅんで……神々かみがみやヒーノモトー国こくの住人じゅうにんには、本当ほんとうに驚おどろかされますね」
　こめかみを押さえ、空になった・・・・・対魔王結界たいまおうけっかいを見つめる給仕服リオ。

「それでも小一時間こいちじかんほど、かかってしまいましたわ。くすくす♪・」
　おう、茅かやの姫ひめさま。超助ちょうたすかったぜ！

「（そういや、なんで姫ひめさんたちを追い出したんだ？）」
「（こうして内緒話ないしょばなしが、出来できないからですわ・）」
「（それなら――）」
　ふぉん♪
『シガミー＞こいつで話をすりゃ、良いじゃねーか？』

　ふぉん♪
『ホシガミー＞だめです。この文字でも会話は可能ですが、
　　　　　　　念話中の意識の高速化が使えません』

「（攻略本・・・に記載きさいのアイテムリスト。それとの照らしあわせを高速こうそくに行おこなうことが、今回こんかいの装備修繕そうびしゅうぜんの肝きもだったようです・）」
　迅雷ジンライの念話こえが、頭あたまの中なかで聞こえる。
「（わからんが、念話ねんわさまさまってのはわかった）」
　おれの考え・・も、強つよく思おもえば神々共むこうに伝つたわる。

「と言うわけで、カラテェー君くんにテングーさま。遠方えんぽうから戻もどった直後ちょくごに
、こんな無理難題むりなんだいを押しつけることになってごめんなさい」
　腰こしを落とし片足かたあしを引く、リオレイニア。

「うぬ。儂わしらは異国いこくの地に棲まうゆえ、この地の歴々れきれきと縁えんを持つのは肝要かんようと考かんがえておるわい。それ故ゆえむしろ、渡わたりに船ふね……お役やくに立てて何なによりじゃて――カカッ♪・」
「師の仰おっしゃる通とおりです。リオレイニアさん、いつもありがとう♪」
　烏天狗と天狗くろづくめたちが踏ん反りかえりつつ、礼れいをする。
　なんか思おもい出してきたな、烏天狗からすてんぐと天狗てんぐのしゃべり方かたとか。

「いいえ、もうあなた方がたは猪蟹屋ししがにやの従業員じゅうぎょういんも同然どうぜんです。いまシガミーを呼んできますね」
　猪蟹屋店主パーティーリーダーのおれを呼びに行こうと、給仕服メイドふくをひるがえす。

「あいや待たれよ。店主殿てんしゅどのも夕餉ゆうけの支度したくで忙いそがしいじゃろうて・」
　空中ちゅうを鷲わしづかみ、彼女リオを止める天狗役ジンライ。
　これは修験しゅげんの技わざではなく、天狗役てんぐやくが板いたに付いてきただけだ。

「そうですね、師さま。ぼくたちはこのまま、ここで例れいの家宝かほうについて相談そうだんしたいんだけど。場所ばしょを借りても良いかな？　リオレイニアさん」
　シガミーおれと烏天狗ぼくの分ぶんだけでも、口調くちょうがこんがらかりそうだ。

「はい、とても助たすかりますが、あまり無理むりはしないように、天狗てんぐさまも。それでは――」
　ひきつづき作業さぎょうを見たいという子供こどもたちを、両脇りょうわきに抱かかえたリオレイニアが階段かいだんを登のぼっていく。

「カラテェー君くん、またねー♪」
　ビビビーが、烏天狗ぼくに手を振る。
「テェーングさまもーっ♪」
　レイダは、裏天狗ジンライに手を振った。

「にゃみゃがぁー♪・」
　子供こどもたちに手を振りかえす、猫の魔物おにぎり。
「ひっひひひぃん？」
　給仕服リオについていく、黄緑色きみどりいろの魔物騎馬一式まものきばいっしき。

「（おい、あいつら好きにさせといて良いのか？）」
「（はい。家宝かほうクラスの一式装備いっしきそうびの作成さくせいには、邪魔じゃまになる可能性かのうせいもありますので）」
「（リオたちに押しつけるみたいで悪わるいが、ひとまず頼たよるか）」

「では、私わたくしも上うえに参まいりますね・」
　すたすたと階段かいだんへ向かう、星神ほしがみ。
「（ぬ？　手伝てつだってはくれんのか？）」
「（私わたくしが出来できるのは精々せいぜい、〝場を見る〟だけですもの。シガミーさんのように何も無い所から・・・・・・・、物ものを作つくることには向きませんわ）」
　こちらを振り返かえりもせずに、茅の姫かのじょは階段かいだんを登のぼっていく。

　さて、烏天狗ぼくと天狗役ジンライだけになった。
　おれと迅雷ジンライは、いそいで上うえに顔かおを出さねぇとならねぇが。

　　　§

「（よし、始はじめるぞ）」
「（はい。ミノタウロース素材そざいは全すべて、分類済ぶんるいずみです・）」
　ミノタウ素材そざいでって、指示しじされたわけじゃねぇが。

「（そーだなぁー、折角せっかくの素材そざいだ。あの妖怪狐ようかいぎつね……もとい奥方おくがたさまの度肝どぎもを抜くようなイカレた奴やつを、作つくってやるとしようぜ）」
「（了解りょうかいしました・）」

　　　§

「（そういや魔法杖まほうつえってのわぁ、早はやい話はなし。狙ねらいを定さだめるのと飛ぶのと、あと何なんのためにあるんだぜ？）」
「（基本的きほんてきには魔術行使まじゅつこうしのための軌条レールです・）」
　軌条きじょう……レール？

　ヴォウォン♪
　表示きょうじされた小窓こまどには――
　地面じめんに埋め込まれた、並ならんだ鉄てつの角棒かくぼう。
　その上うえを転ころがる荷車にぐるまが、映うつし出された。
　重おもいモノを動うごかすための、引き戸みたいな仕組しくみか。

「（魔術ひかりの神髄すじを無理矢理むりやりまっすぐにして、活力かつりょくを押してる・・・・のか？）」
「（私わたしも、この世界せかいの魔術体系まじゅつたいけいを完全かんぜんに理解りかいしたわけではありませんが、概おおむね、その認識にんしきで合っていると思おもわれ・）」
　黒くろづくめの親子おやこみたいなのが、何なにも無くなった広ひろい地下室ちかしつで。
　屈かがみ込み微動びどうだにせずに、膝ひざをつき合わせている。
　誰だれかに見られたら、衛兵えいへいでも呼ばれそうだが気にしない。

　ふぉん♪
『ヒント＞魔法杖／魔導伝導効率の高い木枝や、希少金属製の物が主流』
　うむ。そーらしい。
　担任教師ヤーベルトの太枝ふとえだもレイダの細枝ほそえだも、似たような色いろの木だった。

「（ルリーロの持つ杖つえのように、レア素材そざいを使用しようして専用せんようの別機能べつきのうを、持たせる場合ばあいもあります・）」
「（おれたちを神域惑星しんいきに吹っ飛ばした、山菜束アレだな）」

　ふぉふぉふぉぉん♪
『ルードホルドの魔法杖【無限属性】
　魔法攻撃力１３００（＋７５０）。全属性使用可能な魔法杖（アーティファクト）。
　追加効果／ＳＴＲ－２０／ＶＩＴー２０／ＩＮＴ＋９５
　追加スキル／【球軸術数】一日に一度、ＭＰ消費１で、
　　　　　　　現存する魔法の中でも最大級の魔法を放つ事が可能。
　　　　　　　魔法属性は選べるが、同じ魔法は二度と放てない。
　装備条件／ＳＴＲ２０、ＶＩＴ２０』

　杖つえの上級鑑定じゅきゅうかんてい結果けっかが、表示ひょうじされた。

　伸び過ぎちゃった羊ひつじの角つのが三本さんぼん――まとめた山菜ぜんまいみたいな形かたち。
　柄つかの部分ぶぶんには、こまかな彫刻ちょうこくが彫られていて、角つのの先端さきには、いくつもの宝石ほうせきがちりばめられている。

　何度見なんどみても、異界いかいに敵てきを呑みこむ機能きのうは無い。
「（やっぱり妖狐ようこの技わざに魔法杖まほうつえを使つかって……威力いりょくが増したんだろうなぁ？）」
　わからん。わからんが――

「（レアな素材そざいか……ミノタウ素材そざい、全部出ぜんぶだしてみろ）」
　ヴッ――――ゴガララァン♪
　ヴッ――――ゴゴゴン♪
　ヴッ――――バラバララッ♪

　沢山有たくさんあるのは角つのだろ？
　そして蹄ひづめが四よっつに、魔石ませきみたいなのが二個にこ。
　ヴッ――――もわさっ！
　もう一個有もういっこあったか……なんだこりゃ？

「（毛皮けがわです・）」
　角つのと蹄ひづめと魔石ませきと……赤黒あかぐろい毛皮けがわか。

　全部ぜんぶを折半せっぱんするって話はなしだったが。
　ほとんど、角つのばっかりになっちまうぞ。
　換金かんきんすれば、それなりになるから文句もんくは出ねぇだろうが。

　央都側おうとがわだとミャッドにラプトル姫ひめさんが、「角以外つのいがいも寄こせ」って言いそうだ。
「（ガムラン側がわは、角つのを武器ぶきに加工かこうできれば、うまく収おさまると思おもいますが・）」
　うん、工房長ノヴァドたちに任まかせられるしな。

「（となると、やっぱり問題もんだいは……お狐さまルリーロだな）」
　とにかく一式いっしき。今いますぐでっち上げねぇと、巡めぐり巡めぐっておれたちの学院生活がくいんせいかつまで、破綻はたんしかねねぇ。

　ミノタウ装備一式そうびいっしきを、出来できるだけ少すくない素材そざいで作つくるしかなくね？
　せめて角つのを潤沢じゅんたくに使つかい、蹄ひづめは二個にこ。
　魔石ませきは一個いっこで、なんかの形かたちにしてみる。

　おれは絵で板エディタを、立ち上げた。
　念話ねんわを使つかえば、コレだけ話はなしても１分ぷんもかかってねぇ。
　もう少すこしくらい遅おそくなっても、良いだろ。