468 / 744
4:龍撃の学院
468:央都猪蟹屋プレオープン、少年とたまご
しおりを挟む
「いや、雄だが?」
ごそごそと、腰の革ベルトを外しにかかる火龍の少年。
「あー、見せんで良い、見せんで。卵、落っことすぞ?」
こいつぁ子供に見えても火の龍だし、たしか200歳を超えてる――
いまは魔物境界線にある砦住まいで、まだまだ人の町には馴染んでいない。
ふぉん♪
『人物DB>火龍ゲートルブ
元魔王軍第一エリア統括。
現猪蟹屋三号店〝かりゅうのねどこ〟店長(内定)』
二号店がまるで手つかずのまま、王都に来ることになっちまって。
ゲイルには、悪いことをしたが――
「店主殿よ。なんでも手練れの修験者が現れたと聞き、こうして参じたワケだが――こんな狭い所で本当に戦えるのか?」
こいつぁ、奥方さまが遠出をするときには、必ず引きつれられてるな。
奥方さまの護衛である黒騎士は当然としても、わざわざ火龍のお前さんを何でまた?
ふぉん♪
『解析指南>〝火龍ゲートルブ〟の保有する熱量を、〝ルードホルドの魔法杖〟の燃料にするためと思われます』
あっ、そういや少年の姿になってるってこたぁ――
あの〝燃える蜥蜴〟が、どっかその辺に……居る様子はねぇ。
子細わからんが、少年からそこそこの熱を感じる。
粗熱を取るのに一人だけ、外で待たされていたのかもな。
黒の騎士は人間が出来た奴だから意味もなく、(224歳とはいえ)子供を一人きりにするとは思えんし。
「あーうん。広い場所は、店の地下にあるんだ。こっちはただの倉庫だぜ」
木箱をタンと叩いてみせる。
「ぬぅ、そうであったか。ではワレもそちらへ」
たまごを抱えなおし、倉庫をあとにしようとする少年。
「まてまて、そいつはどうしたんだぜ?」
「むぅ、コレか? これはココへ飛んでくる途中、空から落ちてきたから店主殿への土産にと思い、持ってきたのだ」
「こんなでけぇ卵を、差し出されてもなぁ」
どーするかな。
おれはいま寝てることになってるから、ゲイルを店に連れて行くわけにもいかねぇし。
ふぉん♪
『シガミー>迅雷、そっちはどうだ?』
ふぉふぉん♪
『>議論が白熱し、現在、汎用エディタを起動。シガミーに似合うドレスの作成を開始しています。』
まるで寝るつもりがねぇな。
ふぉふぉふぉん♪
『シガミー>わかった。折角、楽しそうにしてるんだ、お前を取りかえすのも忍びねぇ。こっちはそいつらが寝てからで良い。ただし、おれのドレスを作るなら動きやすく、戦いに支障が出ねぇようにしてくれ。それと鍋を振るから、油汚れに強い素材にして置いてくれ』
ふぉん♪
『>了解しました。シガミーの現在地点、倉庫内部に熱源を感知しましたが、異常はありませんか?』
ふぉん♪
『シガミー>大丈夫だ。ゲイルが店と間違えて、入りこんだだけだ』
ふぉん♪
『ホシガミー>あら、それはそれは。ではいま、お迎えに上がりますね、くすくす♪』
本当に使える奴だな、星神さまはよ。
「ゲイル。いまあの〝おれそっくりな奴〟が迎えに来るから、店に行っててくれ」
ゲイルは茅の姫と、何度か会ってる。
「むぅ、わかった。では土産は、ドコへ置けばよいか?」
見れば見るほど、でけぇんだが。
「土産なぁ。絶対、魔物の卵だよな? しかも空の上から落ちてきたってことわぁ、お前さんみたいな飛ぶ種族が落としたんだろーなぁ?」
「たぶんソウだろう。ルリーロの魔法杖に振り落とされたから龍の姿に戻り、王都へ向かっていたら、コレが頭に当たったのだ」
やっぱり杖で、飛んで来たらしい。
そうしたらいくら黒の騎士でも、火龍の心配をしてる余裕なんてない。
頭を押さえたから、その辺りを触ってみると――
たしかに、たんこぶが出来ていた。
火龍に怪我を負わす勢いでぶつかっても、割れない卵。
それは卵とは言わない。
軽く叩いてみたら――ごごごぉん♪
超硬え。まるで石だぜ。
「おれぁ、いまから仕事があるし――どのみちおれの手には負えそうもねぇ。星神に渡してくれ」
「わかった」
がらがらららー!
「ゲイルさん、こんばんわ。うふふ♪」
ちょうと星神、茅の姫が来た。
がたがたがたがた、ごとごとごとごと――
ぷしゅしゅしゅぅ、ぐわんぐわんぐわんぐわわん。
同時に、地下の工房が動き出した。
おにぎりたちが、来たらしい。
「おれぁ、この下の工房に居るから、何かあったら呼んでくれや。あと、おれは寝てることになってるから、リオレイニアたちにはうまいこと言っとけよ」
念のため、釘を刺しておく。
「わかった」
「わかりましたわ。ではゲイルさん、お手伝いいたしますわ♪」
卵じゃなくて……石を抱えた人外の少年少女が、よたよたと倉庫を出て行く。
「さて仕事をしねぇと、朝までに間に合わんぞ」
おれは無人工房へ、引きかえした。
ごそごそと、腰の革ベルトを外しにかかる火龍の少年。
「あー、見せんで良い、見せんで。卵、落っことすぞ?」
こいつぁ子供に見えても火の龍だし、たしか200歳を超えてる――
いまは魔物境界線にある砦住まいで、まだまだ人の町には馴染んでいない。
ふぉん♪
『人物DB>火龍ゲートルブ
元魔王軍第一エリア統括。
現猪蟹屋三号店〝かりゅうのねどこ〟店長(内定)』
二号店がまるで手つかずのまま、王都に来ることになっちまって。
ゲイルには、悪いことをしたが――
「店主殿よ。なんでも手練れの修験者が現れたと聞き、こうして参じたワケだが――こんな狭い所で本当に戦えるのか?」
こいつぁ、奥方さまが遠出をするときには、必ず引きつれられてるな。
奥方さまの護衛である黒騎士は当然としても、わざわざ火龍のお前さんを何でまた?
ふぉん♪
『解析指南>〝火龍ゲートルブ〟の保有する熱量を、〝ルードホルドの魔法杖〟の燃料にするためと思われます』
あっ、そういや少年の姿になってるってこたぁ――
あの〝燃える蜥蜴〟が、どっかその辺に……居る様子はねぇ。
子細わからんが、少年からそこそこの熱を感じる。
粗熱を取るのに一人だけ、外で待たされていたのかもな。
黒の騎士は人間が出来た奴だから意味もなく、(224歳とはいえ)子供を一人きりにするとは思えんし。
「あーうん。広い場所は、店の地下にあるんだ。こっちはただの倉庫だぜ」
木箱をタンと叩いてみせる。
「ぬぅ、そうであったか。ではワレもそちらへ」
たまごを抱えなおし、倉庫をあとにしようとする少年。
「まてまて、そいつはどうしたんだぜ?」
「むぅ、コレか? これはココへ飛んでくる途中、空から落ちてきたから店主殿への土産にと思い、持ってきたのだ」
「こんなでけぇ卵を、差し出されてもなぁ」
どーするかな。
おれはいま寝てることになってるから、ゲイルを店に連れて行くわけにもいかねぇし。
ふぉん♪
『シガミー>迅雷、そっちはどうだ?』
ふぉふぉん♪
『>議論が白熱し、現在、汎用エディタを起動。シガミーに似合うドレスの作成を開始しています。』
まるで寝るつもりがねぇな。
ふぉふぉふぉん♪
『シガミー>わかった。折角、楽しそうにしてるんだ、お前を取りかえすのも忍びねぇ。こっちはそいつらが寝てからで良い。ただし、おれのドレスを作るなら動きやすく、戦いに支障が出ねぇようにしてくれ。それと鍋を振るから、油汚れに強い素材にして置いてくれ』
ふぉん♪
『>了解しました。シガミーの現在地点、倉庫内部に熱源を感知しましたが、異常はありませんか?』
ふぉん♪
『シガミー>大丈夫だ。ゲイルが店と間違えて、入りこんだだけだ』
ふぉん♪
『ホシガミー>あら、それはそれは。ではいま、お迎えに上がりますね、くすくす♪』
本当に使える奴だな、星神さまはよ。
「ゲイル。いまあの〝おれそっくりな奴〟が迎えに来るから、店に行っててくれ」
ゲイルは茅の姫と、何度か会ってる。
「むぅ、わかった。では土産は、ドコへ置けばよいか?」
見れば見るほど、でけぇんだが。
「土産なぁ。絶対、魔物の卵だよな? しかも空の上から落ちてきたってことわぁ、お前さんみたいな飛ぶ種族が落としたんだろーなぁ?」
「たぶんソウだろう。ルリーロの魔法杖に振り落とされたから龍の姿に戻り、王都へ向かっていたら、コレが頭に当たったのだ」
やっぱり杖で、飛んで来たらしい。
そうしたらいくら黒の騎士でも、火龍の心配をしてる余裕なんてない。
頭を押さえたから、その辺りを触ってみると――
たしかに、たんこぶが出来ていた。
火龍に怪我を負わす勢いでぶつかっても、割れない卵。
それは卵とは言わない。
軽く叩いてみたら――ごごごぉん♪
超硬え。まるで石だぜ。
「おれぁ、いまから仕事があるし――どのみちおれの手には負えそうもねぇ。星神に渡してくれ」
「わかった」
がらがらららー!
「ゲイルさん、こんばんわ。うふふ♪」
ちょうと星神、茅の姫が来た。
がたがたがたがた、ごとごとごとごと――
ぷしゅしゅしゅぅ、ぐわんぐわんぐわんぐわわん。
同時に、地下の工房が動き出した。
おにぎりたちが、来たらしい。
「おれぁ、この下の工房に居るから、何かあったら呼んでくれや。あと、おれは寝てることになってるから、リオレイニアたちにはうまいこと言っとけよ」
念のため、釘を刺しておく。
「わかった」
「わかりましたわ。ではゲイルさん、お手伝いいたしますわ♪」
卵じゃなくて……石を抱えた人外の少年少女が、よたよたと倉庫を出て行く。
「さて仕事をしねぇと、朝までに間に合わんぞ」
おれは無人工房へ、引きかえした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
『悪魔クロとやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は秘密の力で人間の頂点を狙う』
なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。
スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、
ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。
弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、
満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。
そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは――
拾ってきた野良の黒猫“クロ”。
だが命の灯が消えかけた夜、
その黒猫は正体を現す。
クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在――
しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。
力を失われ、語ることすら封じられたクロは、
復讐を果たすための契約者を探していた。
クロは瀕死のソラと契約し、
彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。
唯一のスキル《アイテムボックス》。
そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、
弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。
だがその裏で、
クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、
復讐の道を静かに歩み始めていた。
これは――
“最弱”と“最凶”が手を取り合い、
未来をやり直す物語
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
50歳元艦長、スキル【酒保】と指揮能力で異世界を生き抜く。残り物の狂犬と天然エルフを拾ったら、現代物資と戦術で最強部隊ができあがりました
月神世一
ファンタジー
「命を捨てて勝つな。生きて勝て」
50歳の元イージス艦長が、ブラックコーヒーと海軍カレー、そして『指揮能力』で異世界を席巻する!
海上自衛隊の艦長だった坂上真一(50歳)は、ある日突然、剣と魔法の異世界へ転移してしまう。
再就職先を求めて人材ギルドへ向かうも、受付嬢に言われた言葉は――
「50歳ですか? シルバー求人はやってないんですよね」
途方に暮れる坂上の前にいたのは、誰からも見放された二人の問題児。
子供の泣き声を聞くと殺戮マシーンと化す「狂犬」龍魔呂。
規格外の魔力を持つが、方向音痴で市場を破壊する「天然」エルフのルナ。
「やれやれ。手のかかる部下を持ったもんだ」
坂上は彼らを拾い、ユニークスキル【酒保(PX)】を発動する。
呼び出すのは、自衛隊の補給物資。
高品質な食料、衛生用品、そして戦場の士気を高めるコーヒーと甘味。
魔法は使えない。だが、現代の戦術と無限の補給があれば負けはない。
これは、熟練の指揮官が「残り物」たちを最強の部隊へと育て上げ、美味しいご飯を食べるだけの、大人の冒険譚。
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。
もる
ファンタジー
剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる