滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

４：龍撃の学院

５１２：ギ術開発部研究所、第一倉庫最下層のなぞ

「あら？　倉庫部屋そうこべやはこの階かいで、おしまいみたいでしてよ？」
　確たしかにかに甲冑姿リカルルが言うとおりに、下したへ続つづく階段かいだんが無い。

「これで終おわりか、助たすかった！　なんせミャッドがあれもこれもと詰め込むから、収納魔法具しゅうのうまほうぐが足りなくなるところだったぜ」
　まだ、この階全部かいぜんぶを見て回まわってはいない。
　けどここまで、下したへ降りる階段かいだんは必かならず見えるところに・・・・・・・有った。

　ふぉん♪
『＞はい。それを考えれば、ここが最下層で間違いはないように思えます』

「だって今いままで、この倉庫そうこは先さきに進すすめないところばかりで、こんなに深ふかく降りたのは初はじめてニャァ♪」
　歓喜かんきの小躍こおどりを舞う、猫の獣人ミャッド。
　猫頭ねこあたまをした毛むくじゃら、猫耳族ねこみみぞく。
　手先てさきまで苔こけのような緑色みどりいろの毛皮けがわに覆おおわれていて――

「ありがとうだニャヤァー♪」
　はしりとつかまれた手のひらには、押すと爪が飛び出る・・・・・・・・・肉球にくきゅうとやらがある。
「よ、よさねぇか！」
　総そうじて憎にくめない姿形すがたかたちは、異性いせいから絶大ぜつだいにもてる。
　こうしてかわいらしい猫頭かおを向けられると、それはわからんでもない。

「顧問こもん、お気持きもちはわかりますが、落ちついてぇ――くっださい！」
　べりべりと引き剥がした上役ミャッドを、すとんと床ゆかに置く顧問秘書マルチヴォル。

「ふぅ。コレだけの収穫しゅうかくが有れば、魔導騎士団まどうきしだんが抱かかえていた資金難しきんなんもかなり解消かいしょうされます♪」
　ぺこりと映像えいぞうの五百乃大角いおのはらやおれに、首こうべを垂れる秘書ひしょ。
　秘書ひしょにならい、顧問氏こもんしもぺこり。

「そうわの？　大掃除おおそうじのガラクタ集あつめじゃぁなかったのねぇーん♪・」
　ヴォォォォゥン♪
　映像いおのはらが顧問ミャッドの頭あたまをなでた。

「役やくに立てたのなら、何なによりだぜ」
　央都こっちではずっと二人ふたりに、世話せわになってたからな。

「ガラクタではないニャァ。まえに君きみたちに売った〝太古たいこの廃棄女神像はいきめがみぞうの部品ぶひん〟だって、ここで見つけた物ものだニャァ？」
　それはつまり、おにぎりの中身なかみである――
　猪蟹屋ししがにやが今いま、もっとも欲しているものだ。

　女神関係者おれたちなら欲しがるだろうとふっかけられ、まんまと高値たかねで買わされた経緯けいいがある。

「なんだと!?　ソレを早はやく言えやぁ！」
　まるで気にしねぇで、ここまで来ちまっただろうがぁ！
「あれ、言ってなかったかニャァ？」
　聞いとらんぞ。

「大丈夫だいじょウぶでス、シガミー。棚たナニ並ナらんでイた物体もノノ中なカニ、廃棄女神像はいきめがミぞうヤ女神像めがミぞうに類るイスる物もノハ有りませんでシた・」
　なら良いが。
　酢蛸ＳＤＫでも廃棄女神像はいきめがみぞうでも、何なんでも良い。
　おにぎりに使つかっちまった、〝自分じぶんで考かんがえるための――何か・・〟。
　あれがありゃぁ、迅雷ジンライとかおれが居なくても――
　天狗てんぐとか烏天狗からすてんぐを〝本当に居る・・・・・〟ように出来できる。

　ふぉん♪
『＞そうですね。演算単位を、もう一人分扱えるようになるなら、猪蟹屋業務の完全自動化も夢ではありません』
　迅雷おまえが居てくれるだけでも、相当助そうとうたすかってはいるんだがな。

　兎に角かくだ。間違まちがっても大事だいじなそれを・・・、おにぎりの二匹目にひきめに使つかうような真似まねはもうしねぇ。
　自律型一号あんにゃろうは一匹・・で、十分じゅうぶんだぜ。

「それで肝心かんじんの、その〝封印ふういんの宝箱たからばこ〟とやらは、どこにあるのかしら？」
　カッツカッツコッツコッツ――――ひょい？
　赤いのリカルルが壁向かべむこうの通路つうろを、覗のぞき込んだ――「うぎゃぁ！」
　淑女しゅくじょにあるまじき、怒声どせい！

「ひかりのたてよっ！」
　ヴォォォォォォンッ――――！
　聖せいなるなる光ひかりを放はなち、邪よこしまなるものを遠とおざける。
　蜂女ルガさんの高等魔術こうとうまじゅつが炸裂さくれつし、守まもるべき主君リカルルを――

「むっぎゃっぴゃ――!?」
　ドッガァン――ゴドゴロロロロロロッ！
　盛大せいだいに弾はじき飛ばした！

「ひ、痛ひはわはいへへへほ、酷ひほひへふわほレー……ルーア゛レ」
　転ころんだ勢いきおいで狐面きつねめんが、ふたたび閉じられている。
　何なにを言ってるのか、ほとんどわからんな。

　駆けよりカパリと、狐面それを持ち上げてやる蜂女ルガレイニア。
「申もうし訳わけありません、お嬢じょうさま！　この新あたらしい白狐しろきつねの面めん……いえ、鏡かがみの眼鏡めがねを通すと・・・、威力いりょくや速はやさが上がるのに、まだ慣れていなくて」
　頬ほほを押さえ、弁明べんめいする白しろい魔神まじん。

「威力いりょくだけじゃなくて速はやさもですか、そーですかっ――これだからヒーノモトーの連中れんちゅうは、まったくもうっ！」
　ガシャリと飛び起き、睨にらまれた。

「そんなことよりよ。ありゃぁ、ご令嬢おまえさまがやったのか？」
　短みじかい通路つうろの奥おくにあったのは、そこそこの広ひろさの部屋へや。

　真っ白しろい壁床天井かべゆかてんじょう、その真ん中なか。
　一段高いちだんたかくなった台だいの上うえ。
　転ころがるのは――〝豪奢ごうしゃな作つくりの箱はこ〟。

「そんな訳有わけありませんでしてよ！　その壁かべに空いた、穴に驚いただけ・・・・・・・ですわっ！」
　どうやら、そうらしい。
　奥おくの壁かべには、大穴おおあなが――空いていた。

　　　§

　箱はこは壊こわれていて、中なかは空からっぽだった。
　どういうことだぜ？

　ふぉん♪
『＞この国の歴史は類推ですが、５００年から数千年と思われます。少なくとも、それだけの長い期間封印されていた果実を、倉庫の外へ投げ放った者が居るようです』
　そいつぁ、どんな大男おおおとこ……いや、大女おおおんなだぁ。
　頭あたまを鬼の娘オルコトリアがよぎった。

「「何なんということ――ニャァ」――でしょう」」
　モサモサ神官しんかんどもを従したがえた、ギ術開発部じゅつかいはつぶの二人ふたりが、宝箱たからばこに群むらがる。

「この壊こわれ方かたからみて、まだひと月つきも過ぎていないニャァ？」
　モササササッ、モササササッ。
「どういうコトでしょう？　我々われわれでさえ到達出来とうたつできなかった倉庫最下層そうこさいかそうへ侵入しんにゅうし、あまつさえ〝封印ふういんの宝箱たからばこ〟を壊こわすなんて――」
　モッサモササ、モモサァサァ。

　カツンコツン、カツンコツン――主人リカルルの介抱かいほうを終えた魔神まじん蜂女ルガレイニアさんが、寄ってきた。

「と言うよりも……コレは、箱の中・・・に封印ふういんされていた何かが・・・――内側から・・・・箱はこを壊こわしたようにみえませんか？」
　銀色ぎんいろの瞳ひとみに映うつりこむ――壁かべの大穴おおあな。
　大穴おおあなは壁かべを粉砕ふんさいし地中ちちゅうを、ほぼ真横まよこに突き進すすんでいて――
　よーく見れば向こう側に・・・・・、光ひかりが見えていた。

　すると、この穴あなは――

「「「「「龍りゅうの巣へ、繋がってるっ!?」」」」――のぉん!?・」
　方角的ほうがくてきに間違まちがいいねぇ。

「ジリリリリン――ッ♪」
　突然とつぜんの警報けいほう!?

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ぎゃぁぁっ!!!???」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
　飛び上がる、おれたち。
　モモサァ――引く波なみのように、下がる神官モサモサたち。
　槍やりを構かまえ、周囲しゅういの警戒けいかいに当たる。

「はぁぁい！　ガチャリッ――もしもしー、斧原おりはらですけどぉー、どぉーなぁーたぁー？・」
　胸元むなもとから剣けんの柄つかみたいな取っ手もの（映像えいぞう）を取りだした・・・・・、イオノファラー（映像えいぞう）。
　それには草くさの蔓つるのような紐ひもが、付いている。

　激しく動いたからか、五百乃大角いおのはら（映像えいぞう）の、中身おくがうっすらと見えていて――
　浮かぶプロジェクション球ＢＯＴから伸びた機械腕プロダクトアームが、根菜ごしんたいをつかんで映像いおのはらの耳みみに押し当てている。

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「もしもし？」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」――ござる!?」
　だからゴザルは言ってねぇ。
　それにしても何なんの真似まねだぜ、五百乃大角いおのはらぁ？

　ふぉん♪
『＞女神像デバイス間の、同期チャンネルを利用した音声通話のようです』
　はい、わからん。

　ふぉん♪
『ホシガミー＞シガミーさん。今よろしいでしょうか、クースクス？・』
　何なんだぜ、こんなときに――っていうか、いまの「通話もしもし」は茅野姫ほしがみか。

　ふぉん♪
『シガミー＞構わんが、こっちはとんでもねぇ物を見つけた。たぶん、ゲイルにぶち当たった木の実の出所がわかったぞ』

　ふぉん♪
『ホシガミー＞あら、それはそれは。こちらでも弾道解析がすんだところですわ』
　なに？

　ふぉん♪
『ヒント＞弾道解析／弾道学と同義。発射した弾を当てるための演算。この場合は着弾の様子から、発射地点を逆算すること』
　わか――るな。
　そりゃ、ゲイルを狙ねらった果実たまの出所でどころ……だろう？
　つまり、おれたちが今居いまいる部屋へやだ。