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4:龍撃の学院
542:央都魔導騎士団訓練場、発掘魔法杖と銘
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「――ソの大キな装備は、我輩が作ッた物ニャ♪――」
迅雷の声みたいな、金物をひっかいたような音が混じるが――
簡単な言葉なら、耳栓越しに届くようになった。
「ガハハッ――ね、猫の魔物!? いやっ――まさか、ケットーシィかっ!?」
なんと――ノヴァドもお猫さまのことを、知っていたらしい。
そして、「うぅおぉわぁぁっ――!?」
とたたたったぁん♪
猫はアダマンタイトを手甲で、持ち上げたまま――
工房長の頭の上まで駆け上り――
小さな足で、ノヴァドの持つ金槌を蹴った。
チリィィィン――――――――♪
工房長愛用の鉄塊。
おれの伝説の職人スキルに勝るとも劣らない、金属を叩くのに特化した――魔法杖の一種だって話だが。
その持ち手の付け根に付いた、白金の金具が強く鳴った。
「――ほらこコに『型式番号』ト『製造年月日』と『銘』ガ入っテるニャ♪――」
よく見ればソレは、高等魔術を使うときに浮かび上がる文様とか――
元宮廷魔道士である女将さんの、古代魔術とかに似ていて――
「あら本当♪ ここにおにぎりの顔みたいな印が、刻まれていますわっ♪ か、かわいらしい♡」
「猫だな」「猫だニャァ♪」
お猫さまの足下に、群がるおれたち。
「な、なんだとぉ!? おれにも見せやがれやぁ――!」
ブゥウゥォン!
「あっぶねっ!」
金槌を振り回す工房長。
小柄な身長に似合わない、屈強な体躯。
その膂力はドワーフと言う種族としての、性質であり――
先天的後天的に宿るスキルとは、別物だ。
「チィェ――」
おれは飛んできたアダマンタイトと、お猫さまを避け――
「ェェェェ――」
まだその場に居続ける、姫さんの尻を蹴飛ばし――
「――ェェェェェェィッ!!」
迅雷を、飛んでいく猫へ向かって放り投げた!
ヴッ――取り出すのは、くるぱしん。
ゴッガァァン――っじゃりりぃぃん♪
錫杖じゃねぇと、撃ち負ける!
それでも金槌の重さには、敵わねぇ――ガギギィィンッ!
おれは吹っ飛ばされ、地面を転がり――女神像にぶつかって、漸く止まった。
迅雷式隠れ蓑を、纏う暇はなかった。
痛ぇ――から蘇生薬を、いや勿体ねぇか。
さっきポケットに入れたままだった蘇生薬を、仕舞って――
普通の回復薬を、収納魔法具から取り出した。
「わっ、悪ぃ悪ぃ――長年使ってきた金槌に、そんなもんが描かれてるなんて知らなかったからよぉ! つい勢い付けて振り回しちまったぜ!」
ガハハハッ――ドズズズゥゥン♪
置かれる鉄塊。笑ってる場合か。
「ぎゃっふん♪」と這いつくばる姫さんは……無事だな。
お猫さまは――ふぉん♪
『>ケットシーならびにアダマンタイト鉱石の保全は、完了しています』
迅雷の機械腕に巻き付かれた、お猫さまが「ふにゃぁー?」と鳴く。
あの、もの凄く気の抜けた面で、空飛ぶ棒を睨んでやがる。
そして顧問氏は――居ねぇ?
ふぉん♪
『>女神像が設置された西洋風東屋の、屋根の上に居ます』
何っ!?
おれは外に出て、後ろを見上げた。
「酷いニャァ♪ 気をつけてくれないと、困るニャーァ♪」
ヴォォォヴォヴォォォォゥン♪
猫の獣人の、両手足と腹に頭。
光の文様が、浮かんでいる。
何かの魔法具か。
ふぉん♪
『>そのようです』
うーむ。みんな何かしらの奥の手を、持っていやがるぜ。
§
「本当だぜ、猫の顔が付いてやがるぜ――ガハッハハハハハッ♪」
屈強な鍛冶職人である工房長が、猫の柄を喜んでやがるぜ。
けどその顔には、手形がくっきりと残っている。
もちろん、「こらっ、工房長! そこへお直りなさいな!」
そう宣言したリカルル姫によって、平手打ちを食らったのだ。
この場で手打ちにしてやろうという、温情の表れなので――
決して、心根の悪い行動ではない。
それでも……助走を付ける必要わぁ、ねぇと思うが。
§
「――何だかコの辺りニは、我輩謹製ノ〝装備ヲ作ルための装備〟が沢山あルようだニャ♪――」
そう言った猫が、またリカルルへ飛び乗ろうとする。
「おいそれ危ねぇから、いい加減に下ろせやぁ!」
硬い金属であるアダマンタイト鉱石は、基本的には重い。
加工する段階で「フッと軽くなる」って、工房長が前に言ってたっけ。
「きゃっ――もうっ、貴方は少し落ち着きなさいな♪」
猫を抱き上げるリカルル。
やたらと長ぇ鉄の棒を持ってるもんだから、姫さんの腰が引けてる。
「――コの聖剣モ、ソうニャ♪――」
猫がご令嬢を蹴って、地面に降りた。
チリィィィン――――――――♪
蹴られた、豪奢な細剣の柄頭。
白金の金具が強く鳴った。
「まさか!? 私の聖剣も、ネコチャンが打ったんですのっ!?」
驚愕のご令嬢。
お前さまの聖剣わぁ、柄だけの紛い物だろーが。
ふぉん♪
『まがい物の聖剣【匠スペシャル】
攻撃力287。聖剣の柄を再利用した業物。
剣速に補正が付くが、攻撃力は高級品並み。
度重なる修復により、強度UP。
追加効果/AGI+78』
迅雷が表示してくれたのは、あの聖剣の記録だ。
「わかったニャァ! 〝装備を作るための装備〟というのはどうやら、使用者を選ぶ発掘魔法具のことを指しているようだねぇー、ニャフフ♪」
笑う、猫の獣人ミャッド。
「じゃぁ、ケットーシィ師匠が使ってる、その手甲みたいな奴も――装備を作るための装備、発掘魔法杖なのかぁ?」
師匠? 工房長にそういうのが居た話は聞いたことがないし、そもそも、お猫さまとは、さっき会ったばかりだろ。
「――ソうニャ。他にハ椅子ノ形ヲしたのとか、扇ノ形ヲしたのとか、空ニ浮カぶ巨大ナ鳥の形ヲしたのとかが……有ったヨうな無かったヨうな気がスるニャ♪――」
アダマンタイトを執拗に、おれたちに突きつけつつ――
お猫さまが、頼りねぇことを言いやがる。
「覚えてねぇのかよ。けどルコルや王女さまの魔法杖も、お猫さま謹製っぽいぜこりゃ」
ルコルのギルド椅子、王女殿下の万能工具、そして工房長の金槌。
この全部が彼、お猫さまの手による物とほぼほぼ判明した。
「扇ノ形というノは、〝クロウリンデ・モソモソ〟の魔法杖のコとと思わレ」
ヴォヴォォォォゥン♪
唸る迅雷。
フッカ父を叩き飛ばした、あの威力。
確かに、そうだぜ――
お猫さまは長生きしてるみたいだし、見境なく使い手を選ぶ魔法杖を――
今まで大量生産して、来たんじゃね?
「――けド、こイつは知らナいニャ? 我輩ノ銘モ入っテないニャー?――」
ヴォヴォヴォオヴォヴォヴォヴォゥン?
お猫さまがアダマンタイトの矛先を、空飛ぶ便利棒・迅雷へ向けた。
ヴォォォォォオゥン♪
棒はクルクルと旋回し――
「初めまシて、ケットシー。私はINTタレット、形式ナンバーINTTRTT01、迅雷でス。以後、オ見知りおキを」
蜂のように震えた。
迅雷の声みたいな、金物をひっかいたような音が混じるが――
簡単な言葉なら、耳栓越しに届くようになった。
「ガハハッ――ね、猫の魔物!? いやっ――まさか、ケットーシィかっ!?」
なんと――ノヴァドもお猫さまのことを、知っていたらしい。
そして、「うぅおぉわぁぁっ――!?」
とたたたったぁん♪
猫はアダマンタイトを手甲で、持ち上げたまま――
工房長の頭の上まで駆け上り――
小さな足で、ノヴァドの持つ金槌を蹴った。
チリィィィン――――――――♪
工房長愛用の鉄塊。
おれの伝説の職人スキルに勝るとも劣らない、金属を叩くのに特化した――魔法杖の一種だって話だが。
その持ち手の付け根に付いた、白金の金具が強く鳴った。
「――ほらこコに『型式番号』ト『製造年月日』と『銘』ガ入っテるニャ♪――」
よく見ればソレは、高等魔術を使うときに浮かび上がる文様とか――
元宮廷魔道士である女将さんの、古代魔術とかに似ていて――
「あら本当♪ ここにおにぎりの顔みたいな印が、刻まれていますわっ♪ か、かわいらしい♡」
「猫だな」「猫だニャァ♪」
お猫さまの足下に、群がるおれたち。
「な、なんだとぉ!? おれにも見せやがれやぁ――!」
ブゥウゥォン!
「あっぶねっ!」
金槌を振り回す工房長。
小柄な身長に似合わない、屈強な体躯。
その膂力はドワーフと言う種族としての、性質であり――
先天的後天的に宿るスキルとは、別物だ。
「チィェ――」
おれは飛んできたアダマンタイトと、お猫さまを避け――
「ェェェェ――」
まだその場に居続ける、姫さんの尻を蹴飛ばし――
「――ェェェェェェィッ!!」
迅雷を、飛んでいく猫へ向かって放り投げた!
ヴッ――取り出すのは、くるぱしん。
ゴッガァァン――っじゃりりぃぃん♪
錫杖じゃねぇと、撃ち負ける!
それでも金槌の重さには、敵わねぇ――ガギギィィンッ!
おれは吹っ飛ばされ、地面を転がり――女神像にぶつかって、漸く止まった。
迅雷式隠れ蓑を、纏う暇はなかった。
痛ぇ――から蘇生薬を、いや勿体ねぇか。
さっきポケットに入れたままだった蘇生薬を、仕舞って――
普通の回復薬を、収納魔法具から取り出した。
「わっ、悪ぃ悪ぃ――長年使ってきた金槌に、そんなもんが描かれてるなんて知らなかったからよぉ! つい勢い付けて振り回しちまったぜ!」
ガハハハッ――ドズズズゥゥン♪
置かれる鉄塊。笑ってる場合か。
「ぎゃっふん♪」と這いつくばる姫さんは……無事だな。
お猫さまは――ふぉん♪
『>ケットシーならびにアダマンタイト鉱石の保全は、完了しています』
迅雷の機械腕に巻き付かれた、お猫さまが「ふにゃぁー?」と鳴く。
あの、もの凄く気の抜けた面で、空飛ぶ棒を睨んでやがる。
そして顧問氏は――居ねぇ?
ふぉん♪
『>女神像が設置された西洋風東屋の、屋根の上に居ます』
何っ!?
おれは外に出て、後ろを見上げた。
「酷いニャァ♪ 気をつけてくれないと、困るニャーァ♪」
ヴォォォヴォヴォォォォゥン♪
猫の獣人の、両手足と腹に頭。
光の文様が、浮かんでいる。
何かの魔法具か。
ふぉん♪
『>そのようです』
うーむ。みんな何かしらの奥の手を、持っていやがるぜ。
§
「本当だぜ、猫の顔が付いてやがるぜ――ガハッハハハハハッ♪」
屈強な鍛冶職人である工房長が、猫の柄を喜んでやがるぜ。
けどその顔には、手形がくっきりと残っている。
もちろん、「こらっ、工房長! そこへお直りなさいな!」
そう宣言したリカルル姫によって、平手打ちを食らったのだ。
この場で手打ちにしてやろうという、温情の表れなので――
決して、心根の悪い行動ではない。
それでも……助走を付ける必要わぁ、ねぇと思うが。
§
「――何だかコの辺りニは、我輩謹製ノ〝装備ヲ作ルための装備〟が沢山あルようだニャ♪――」
そう言った猫が、またリカルルへ飛び乗ろうとする。
「おいそれ危ねぇから、いい加減に下ろせやぁ!」
硬い金属であるアダマンタイト鉱石は、基本的には重い。
加工する段階で「フッと軽くなる」って、工房長が前に言ってたっけ。
「きゃっ――もうっ、貴方は少し落ち着きなさいな♪」
猫を抱き上げるリカルル。
やたらと長ぇ鉄の棒を持ってるもんだから、姫さんの腰が引けてる。
「――コの聖剣モ、ソうニャ♪――」
猫がご令嬢を蹴って、地面に降りた。
チリィィィン――――――――♪
蹴られた、豪奢な細剣の柄頭。
白金の金具が強く鳴った。
「まさか!? 私の聖剣も、ネコチャンが打ったんですのっ!?」
驚愕のご令嬢。
お前さまの聖剣わぁ、柄だけの紛い物だろーが。
ふぉん♪
『まがい物の聖剣【匠スペシャル】
攻撃力287。聖剣の柄を再利用した業物。
剣速に補正が付くが、攻撃力は高級品並み。
度重なる修復により、強度UP。
追加効果/AGI+78』
迅雷が表示してくれたのは、あの聖剣の記録だ。
「わかったニャァ! 〝装備を作るための装備〟というのはどうやら、使用者を選ぶ発掘魔法具のことを指しているようだねぇー、ニャフフ♪」
笑う、猫の獣人ミャッド。
「じゃぁ、ケットーシィ師匠が使ってる、その手甲みたいな奴も――装備を作るための装備、発掘魔法杖なのかぁ?」
師匠? 工房長にそういうのが居た話は聞いたことがないし、そもそも、お猫さまとは、さっき会ったばかりだろ。
「――ソうニャ。他にハ椅子ノ形ヲしたのとか、扇ノ形ヲしたのとか、空ニ浮カぶ巨大ナ鳥の形ヲしたのとかが……有ったヨうな無かったヨうな気がスるニャ♪――」
アダマンタイトを執拗に、おれたちに突きつけつつ――
お猫さまが、頼りねぇことを言いやがる。
「覚えてねぇのかよ。けどルコルや王女さまの魔法杖も、お猫さま謹製っぽいぜこりゃ」
ルコルのギルド椅子、王女殿下の万能工具、そして工房長の金槌。
この全部が彼、お猫さまの手による物とほぼほぼ判明した。
「扇ノ形というノは、〝クロウリンデ・モソモソ〟の魔法杖のコとと思わレ」
ヴォヴォォォォゥン♪
唸る迅雷。
フッカ父を叩き飛ばした、あの威力。
確かに、そうだぜ――
お猫さまは長生きしてるみたいだし、見境なく使い手を選ぶ魔法杖を――
今まで大量生産して、来たんじゃね?
「――けド、こイつは知らナいニャ? 我輩ノ銘モ入っテないニャー?――」
ヴォヴォヴォオヴォヴォヴォヴォゥン?
お猫さまがアダマンタイトの矛先を、空飛ぶ便利棒・迅雷へ向けた。
ヴォォォォォオゥン♪
棒はクルクルと旋回し――
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