滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

５：大森林観測村ＶＳガムラン町

６１２：大森林探索行、静寂と高等魔術

　ガタガタタタッ――――ぷすぅん♪
　タターと話はなしをしようと、シシガニャンの列れつに追いついたら――
　魔法杖まほうつえが揺れ、止まっちまった！

「（ぬぅぉわゃぁぁぁっ――――!?）」
　そのまま落ちていく、おれたち。
「（――――――――――――!?）」
　何なんだぜ!?　慌あわてるリオを抱かかえる！

　ふぉん♪
『リオレイニア＞マナ欠乏による失速です！』
　ふぉん♪
『シガミー＞なんでそんなことになってる？』
　呪文こえが出なくても飛んでる杖つえは、いつも無言むごんで飛ばしてるだろっ!?
　ふぉん♪
『リオレイニア＞分かりません。お、落ちます！』

「（星神ほしがみっ！　落ちるぞ、助たすけてくれやぁ！）」
　迫せまる地面じめん。念話ねんわの思考加速おそくなるやつも迅雷あいてなしじゃ、起きやしねぇ！
　ふぉん♪
『シガミー＞星神、助けろ！』
　ふぉん♪
『ホシガミー＞こちらも手一杯ですので自力で、重力軽減の高等魔術を筆記にて行使して下さい』
　そんなもの、おれが知るかぁ！

「――――、――!?」
　おれの耳みみに、温あたたかい息いきが掛かる。
　ふぉん♪
『リオレイニア＞シガミー、迅雷を貸して下さい！』
　ふぉん♪
『シガミー＞腰に差してある、使え！』

　短みじかくなった迅雷ジンライを抜き、ぐるんと天てんに円えんを描えがく！
　そして魔法ひかりの神髄すじで、細こまかな文字もじをつらつらと――ヴォゥ！
　書き込んでるウチに、地に落ちた！

　せめて鉄下駄てつげたを履いてりゃ、地を割ることが出来できて――
　勢いきおいを殺ころせたんだろぉがぁ――
　地に着く、おれの両足あし。
　せめてリオの尻しりが、割れねぇように――
　高たかく持ち上げたら――

　その勢いきおいのまま、天てんへ昇のぼっていくメイド服リオレイニア。
　おれはスッタァァァッン！
「（痛゛ぇぇっ――――!!!）」
　普段ふだん、どれだけ高たかい所ところから落ちても平気へいきなのは、一直線いっちょくせんに真下ましたに落ちることが無いからで――
　こう垂直すいちょくに降りりゃ、痛いてぇし――
　足あしくらい折れんじゃね？

　と思おもったが――ガグン！
　おれの首根くびねっこ。
　給仕服メイドふくの背中せなかの、まるで持ち手・・・・・・になってる所ところを、むんずとつかまれた！

　　　§

　ふぉん♪
『リオレイニア＞危ないところでしたね？』
　リオが使つかってくれたのは、重力軽減のかるくする魔法まほうだ。

　ふぉん♪
『シガミー＞まったくだぜ』
　話が出来る耳栓ヘッドセットをしていて、超助ちょうたすかった。
　相談そうだんも魔法まほうを使つかうことも出来できない、この静寂せいじゃくの間合まあいは、命いのちに関かかわるぞ？

　ふぉん♪
『シガミー＞また引き離されちまったぜ！　茅野姫、何処だ!?』
　ふぉん♪
『ホシガミー＞渓谷を進んでいますが、一行表示も途切』
　地に這いつくばり、息いきを整ととのえるおれたち。

　ふぉん♪
『シガミー＞おい、茅野姫!?　渓谷ってのわぁどっちだぁ!?』
　返事へんじがねぇ。

　ふぉん♪
『リオレイニア＞シガミー。急がないと地形が変わってしまい、追跡出来なくなります』
　ふぉん♪
『シガミー＞なんでこんな、先の〝龍脈がらみの天変地異〟みてぇなことが、又起きてやがる？』
　ふぉん♪
『リオレイニア＞おそらくは〝かりゅうのねどこ〟以上に、マナ欠乏が激しくなり龍脈の流れを維持しようとする、別の流れによって地殻変動が起きているのではないかと。迅雷が居ないので確証はありませんが』

　呪文こえを使つかう、生活魔法まほうに高等魔術まじゅつ。
　それを使つかえなくするだけじゃなくて――
　地形ちけいまでメキメキゴガガガンと、変わっていく。
　そうとうやべぇな、あの二股ふたまたの角つのの娘むすめわぁ！

　せめてもの救すくいは――
　迅雷ジンライが魔法杖まほうつえとしては使つかえることだ。
　そして、リオレイニアが魔術まじゅつの神髄しんずいで文様もんようを描えがくことで――
　古代魔術こだいまじゅつを使つかえたから、おれたちは大怪我おおけがをせずに済んだ。

　ふぉん♪
『シガミー＞じゃぁ、下から持ち上げるぞ！』
　おれはリオレイニアの股またの間あいだに、頭あたまを突っ込んだ！
　肩車これなら薄うすい尻しりが、割れることもないだろ。

「――――、――!?」
　ふぉん♪
『リオレイニア＞こら、おまちなさい！　裾が捲れ上がって』
　おれは草履ぞうりの足裏あしうらで、地をつかむ。
　急いそがんと渓谷けいこくとやらが別べつの形かたちになって、追いつけなくなる。

　おれは波打なみうつ大地だいちを蹴り飛ばし、前まえへ進すすんでいく！