644 / 744
5:大森林観測村VSガムラン町
644:冒険者ギルド大森林観測村支部、イイスタァエッグ?
しおりを挟む
ちなみに厨房は、さっきの多目的宴会場の一階上にある。
リカルルたちが降りてきた鉄籠は、厨房真ん中に鎮座していて――
正直、使い辛ぇが――「この階ならまるごと、ご自由に使って頂いて構いませんわ♪ うーふふ?」
と商会長さまに言われては、そうするしかなくて結局こうなった。
「あら珍しっ! ちょっとバクチ! この卵、ドコで見つけてきましたの!?」
ツカツカと進み出る、最凶なご令嬢。
背後から、そう声を掛けられた盗賊が飛び上がり――
曲がっていた、背筋を伸ばした。
「正直に仰い、今なら痛くしないからっ!」
おれが出してやった張り扇を腰の辺りから、するりと抜き放つ悪逆ご令嬢。
「へぃ、おかしらぁ。貝が取れる辺りの岩山に出来てた穴に、すっぽりと挟まってたんでさぁ!」
威勢が良くて、この盗賊はやはり嫌いではない。
進んで仲良くはしないが――
ふぉん♪
『>シガミー、貝が取れるという食材情報を習得しました』
おう、色んなことが済み次第、おれたちも貝釣りにでも行こうぜ。
スパ――――パッコゥゥォォォォン♪
耳を劈く快音!
盗賊バクチの毛のない頭から、黒煙が立ち上った!
「サーを付けなさいと何十年言ったら、おわかりになりますのっ!?」
爆発魔法を使いやがったなー、ハリセンの先が黒く焦げてるぞ。
ふぉん♪
『イオノ>いま誰か、おかわりって言った? ねぇっ、あたくしさまにもおかわりを!』
やかましぃ――すぽん♪
おれは根菜を引っつかんで、迅雷の収納魔法に格納した。
お前さまは、そこで迅雷が言ってた何とかを、直ぐに出来るようにしてくれやぁ。
ぶふぉわわぁ――倒れた盗賊が、口から白煙の輪を吐いた。
中は生煮えだから、回復薬でも飲ませときゃ良いか――ヴッ♪
おれは倒れた盗賊に、軽く手を合わせてから――コトリ。
小瓶を眉間の辺りに、そっと立ててやった。
「ろ、ロットリンデは知ってるよね、このファローモの卵のこと?」
村長が村長語も忘れて、困惑している。
「ええ、ですけど、私が知っている〝イースターエッグ〟という名を冠したアイテムは――卵の形をしていませんでしたわ?」
若くもないが年寄りでもない、美しさの中に品格と底意地の悪さが見え隠れするような――
そんな悪逆ご令嬢の小首が、かたんと傾く。
確かに、ちと、ややこしいことになってきたぞ。
「ぎにるるるるるっゆ?」
『Θ』をした二股角娘が、いつのまにか木箱に入り込み――大卵を、しっかりと抱えている。
迅雷が大竈まえに映し出した、上級鑑定結果。
ソレを見た村人たちが――雑然としだした。
「「「「「お宝じゃん、ァハァン♪」」」」」
と色めき立つのは――
「「「「「「「「ォゥィエー♪」」」」」」」」
ファンキー・フカフ村から来た、丸い頭の陽気な連中。
「けどぉ、ファローモの子供に、もしものことがあればぁ――大森林観測村は、壊滅よねぇー?」
頬に手を当て、困った顔の商会長。
同じ村人でも此方のグランジ・ロコロ村の、髪が長い連中は――
「「「「「「「「「「「「「「「「ファロちゃんの妹か弟かぁ、きっとかわいいよぉなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぅぃやぁあ゛ぁああぁっぁぁっ――――――――――♪」」」」」」」」」」」」」」」」
ファロコの側に付く、つもりらしい。
凄ぇうるさかったから、一緒になって「ぅぃやあ゛ぁあぁー♪」してる針刺し男を――すっぱぁぁんっ♪
かるく、引っ叩いておいた。
「ですからアレは――建国の龍の再来と言ってますのよっ!」
カツンッ――釘のように尖った踵を鳴らし、チリッ!
イラッとした視線を、おれたちに投げかける――
悪漢紛いの立ち振る舞い。
後ろに兵六玉を張り付かせた、ガムラン代表が気を吐いた!
「「「「「「「「「「「「「ひゃひゃぁーい♪」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「チェックワンツー♪」」」」」」」」」」」」」」」」
蜘蛛の子を散らすように、散り散りに逃げていく村人たち。
ふぉん♪
『シガミー>誰でも良い、説明してくれ――解析指南!』
ふぉん♪
『解析指南>>結論から言うなら、イースターエッグはファローモ幼体が入った卵ではありません』
「おい、それはやっぱり、お前の卵じゃねぇってよ!」
そう言ってやったら――
「るるぎゅぎゅぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぃぃぃぃっ!?」
『(Θ曲Θ)』
歯をむき出しにして、威嚇された。
「だから、そいつぁ――おれたちが、ついこの間倒した、『おうさまと、りゅうのまもの』に出てくる、龍そのものなんだぜ!」
ふぉん♪
『解析指南>>いいえ。木属性における最高位種である、ドラゴンの種でもありません』
ふぉん♪
『シガミー>>はあ? 違うのかよ!?』
「ぎぎるぎみーぃ!?」
唸る子供。
「ちがうよ、それはファロコが生まれた卵に、そっくりじゃよぉ!」
叫ぶ大人。
「いや、ちょっと待て――」
迅雷、解析指南が言ってることを、鑑定結果の横にでも映してくれ。
ふぉん♪
『>>では適宜、表示内容を校正して表示します』
「今から、女神の料理番だけが使える――超上級鑑定結果を映し出すから、見てくれっ!」
手を上げて、そう大声で告げる。
ふぉん♪
『リオレイニア>よろしいのですか、神々の知識をそう易々と披露してしまっても?』
ふぉん♪
『シガミー>かまわん。いざとなったら五百乃大角に、丸投げする』
下っ腹が出ていても、彼奴は頓知が効くからな。
ふぉん♪
『解析指南>>イースターエッグに関する記述は、更新されている可能性があります。電子書籍『シンシナティック・ニューロネイション超攻略絵巻読本』を最新バージョンへ更新し、〝第11章:全アイテム一覧〟を再検索して下さい』
こいつぁ見せられねぇな。
おい、五百乃大角、それ早くやっとけ!
ふぉん♪
『解析指南>>〝イースターエッグ〟の中身は、SSS級レアアイテムであることが確定しています』
ふぉん♪
『>>これは、イースターエッグに対する記述だけですので、そのまま投影します』
ヴォォゥン♪
『超上級鑑定>〝イースターエッグ〟の中身は、SSS級レアアイテムであることが確定しています』
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「SSS級レアアイテム!?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
目の色を輝かせる全員。
長大なアダマンタイト鉱石に、匹敵するほどのお宝ってことか。
ガムラン町だったら、血の雨が降っていたやも知れん。
「SSS級レアアイテムって言ったら、ジュークのジューク箱と同じくらい貴重ですわね?」
「なんだって!? おかしらぁ――その話は本当か!?」
盗賊の一人が湧いて出た。
悪逆令嬢は、本当に盗賊の親玉らしいぜ。
ご令嬢は、思っていたよりは……悪党かも知れない。
「おい、村長の村長箱って、金さえ入れりゃ何でも叶うやつだろ?」
がやがやがやがやがやがやがやがやがやがやや――――!?
ん? 急に村人どもが、殺気だって来やがったぞ。
ヴォォゥン♪
『超上級鑑定>先着一名、手にした者のみが獲得出来る可能性があります』
「はぁ? 先着一名だとぉぅ?」
可能性って、何だぜ?
手にしたら……手に入るだろうがよ?
てちてちてちてち、ひょこひょこ、ぐぐぐぐっ――すぽん♪
おれの画面を横切る邪魔な奴は、梅干し大の五百乃大角の分け身。
やい、五百乃大角、お前……料理の本なんか引っ張り出して、どうした?
迅雷に言われた、何たらの仕事をしろよ?
「ににるぎーぃ!?」
卵と二股角の少女が入った木箱に視線が集中する!
「そういえばぁ、すっごい昔に難攻不落のSSS級ダンジョンの最下層を目指したことがあったんだけどさぁ――とうとう私だけになってさぁ、必死に逃げ帰ったことがあったわぁねぇー、きゃはぁ☆」
コロコロと笑う、うら若き乙女のような――巫女装束。
「きゃはぁ☆」ではない。
齢200歳の内訳が前世と来世で、どうなってるのか。
そのへんの年齢にまつわる、詳しいことは聞けてねぇ。
おれを含んだ、日の本からの転生者全員の身を――
危険に晒しかねない重要ごとを、気軽にペラペラ喋りやがって!
「それ聞いたことありますぜ、辺境伯名代さま」
鉄籠の下から、小柄な大男が姿を現した。
「ウカカカッ♪ 工房長、そっくりだぜ!」
いけねっ、あまりにも似てたから、つい笑っちまった。
「工房長だとぉー? そんな出世をしたやつぁ、ガムランの俺の甥っ子ぐれぇだぜ?」
蓄えた髭を撫でる仕草まで、まるで同じで――
リオレイニアが調理台の角に、頭をぶつけた。
§
「俺はワーフと申しますぜ。この村で冒険者をしつつ鍛冶工房を営んでるますぜ」
片膝を突き、辺境伯名代へ、ぎこちない礼をする。
その背中には、巨大な……鉄杭か?
あんなのを背負って、よくも狭い鉄籠の下に潜り込めたもんだぜ。
ふぉん♪
『>あれもラプトル王女殿下の〝万能工具〟や、ノヴァド工房長の〝金槌〟に類する物と思われます』
ああ、おれの新しい手甲同様、相当なスキルを有した魔法杖だろうな。
「たしか発見者の欲しいものが……中から出てくるという噂を、聞いたことがありますぜ?」
ソレでは確かに、村長箱そのものだ。
「そう、たしかそんなだった! 当時の王様がぁー、ご病気でさぁー。そんな噂に総力を挙げて、挑んだんだぁけぇどぉねぇー」
「ねぇー」と魔法杖が入った収納魔法具に、話しかけてやがる。
ふぉん♪
『>ノヴァドやワーフ氏のようなドワーフと言う種族は、ルリーロほどではないにせよ、長命なようです』
長生きするのが他にも居るから、そこまで悪目立ちせずに済んでたってことか。
「一度は諦めたSSS級のお宝ぁ、クツクツクツクツクツクツ――――ココォォォン♪」
イナリィの字を残す――妖怪化け狐。
その口が、あり得ねぇ程に裂け――
手近にあった鉄鍋を、頭に被った!
「みゃぎゃにゃにゃぅ――――!?」
魔法具の妖精ロォグさまも、手近な鉄器をひっくり返して――かぽん♪
中に、すっこんじまった!
何だぜ?
ふぉん♪
『>>わかりませんが、【地球大百科事典】によるなら、イースターエッグとは神々の船にも匹敵しうる可能性を秘めた、SSS級レアアイテムのようです』
ふぉん♪
『シガミー>>けど大きさも柄も、どう見たって巨木・木龍の卵じゃんか?』
ならば一度は退治した物だぜ。
どうして彼処まで恐れる必要がある?
ふぉん♪
『解析指南>>その可能性もあります。イースターエッグというアイテム名称は、可能性に制限がないことを、示唆しています』
何にでも化けるってことか?
なら上級鑑定しても、意味ねぇじゃねぇか。
ふぉん♪
『イオノ>>ちょっと待って、シガミー。これ結構な大事に、なりかねないわよ♪』
ぺらぺらぺらり――だから仕事もせずに、料理の作り方ばっかり――
いつまでも、読んでるんじゃねぇやぁ。
ふぉん♪
『シガミー>>どういうこった? 何かわかるなら、まず説明をしろや?』
ふぉん♪
『イオノ>>ファロコちゃんの、頭の上を見て』
ヴォオォゥンッ♪
『ファロコ・ファローモ・ナァク・ジオサイト
■■■□□□□□□□31%』
それは、HPやMP表示と似たような横棒。
ソレは虹色に輝き――じわじわじわと、満ちていく。
ふむぅ、どーいう?
ルリーロやロォグが鉄鍋や鉄器の下から、そっちを覗ってる。
おれは耳栓を、すぽんと引っこ抜く。
耳栓無しでも、あの横棒はちゃんと見えた。
ふぉん♪
『ホシガミー>>なるほど? 手にした人の活力や思惑に左右され、中身が変わるみたいですね。プークス♪』
中身が変わる?
じゃぁこいつは、木龍の卵じゃぁねぇのか?
ふぉん♪
『>>そのようです』
ふぉん♪
『イオノ>>このままいけば、ファロコちゃんの弟妹が出てくるのは間違いないわねん』
木龍が出ねぇんなら、まだマシだが――
ふぉん♪
『解析指南>>このままの人員配置のまま、卵が孵化した場合。25%の確率で巨木・木龍の苗が、生成されます』
はぁ? 少なくともおれぁ、そんなことを望んじゃねぇぞ?
待て待てやぁー、なぁーんか、いつもの。
とんでもねぇことが起こる、前ぶれみてぇな音が幽かに――ォォン♪
ふぉん♪
『解析指南>>イースターエッグには〝いたずら〟を表すイメージが顕著に含まれています。当て推量100%換算の場合、約1%の確率でミノタ☆ウロースが生成されます』
ミノ太郎だとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉっ――――――――――――――――――!?!?
リカルルたちが降りてきた鉄籠は、厨房真ん中に鎮座していて――
正直、使い辛ぇが――「この階ならまるごと、ご自由に使って頂いて構いませんわ♪ うーふふ?」
と商会長さまに言われては、そうするしかなくて結局こうなった。
「あら珍しっ! ちょっとバクチ! この卵、ドコで見つけてきましたの!?」
ツカツカと進み出る、最凶なご令嬢。
背後から、そう声を掛けられた盗賊が飛び上がり――
曲がっていた、背筋を伸ばした。
「正直に仰い、今なら痛くしないからっ!」
おれが出してやった張り扇を腰の辺りから、するりと抜き放つ悪逆ご令嬢。
「へぃ、おかしらぁ。貝が取れる辺りの岩山に出来てた穴に、すっぽりと挟まってたんでさぁ!」
威勢が良くて、この盗賊はやはり嫌いではない。
進んで仲良くはしないが――
ふぉん♪
『>シガミー、貝が取れるという食材情報を習得しました』
おう、色んなことが済み次第、おれたちも貝釣りにでも行こうぜ。
スパ――――パッコゥゥォォォォン♪
耳を劈く快音!
盗賊バクチの毛のない頭から、黒煙が立ち上った!
「サーを付けなさいと何十年言ったら、おわかりになりますのっ!?」
爆発魔法を使いやがったなー、ハリセンの先が黒く焦げてるぞ。
ふぉん♪
『イオノ>いま誰か、おかわりって言った? ねぇっ、あたくしさまにもおかわりを!』
やかましぃ――すぽん♪
おれは根菜を引っつかんで、迅雷の収納魔法に格納した。
お前さまは、そこで迅雷が言ってた何とかを、直ぐに出来るようにしてくれやぁ。
ぶふぉわわぁ――倒れた盗賊が、口から白煙の輪を吐いた。
中は生煮えだから、回復薬でも飲ませときゃ良いか――ヴッ♪
おれは倒れた盗賊に、軽く手を合わせてから――コトリ。
小瓶を眉間の辺りに、そっと立ててやった。
「ろ、ロットリンデは知ってるよね、このファローモの卵のこと?」
村長が村長語も忘れて、困惑している。
「ええ、ですけど、私が知っている〝イースターエッグ〟という名を冠したアイテムは――卵の形をしていませんでしたわ?」
若くもないが年寄りでもない、美しさの中に品格と底意地の悪さが見え隠れするような――
そんな悪逆ご令嬢の小首が、かたんと傾く。
確かに、ちと、ややこしいことになってきたぞ。
「ぎにるるるるるっゆ?」
『Θ』をした二股角娘が、いつのまにか木箱に入り込み――大卵を、しっかりと抱えている。
迅雷が大竈まえに映し出した、上級鑑定結果。
ソレを見た村人たちが――雑然としだした。
「「「「「お宝じゃん、ァハァン♪」」」」」
と色めき立つのは――
「「「「「「「「ォゥィエー♪」」」」」」」」
ファンキー・フカフ村から来た、丸い頭の陽気な連中。
「けどぉ、ファローモの子供に、もしものことがあればぁ――大森林観測村は、壊滅よねぇー?」
頬に手を当て、困った顔の商会長。
同じ村人でも此方のグランジ・ロコロ村の、髪が長い連中は――
「「「「「「「「「「「「「「「「ファロちゃんの妹か弟かぁ、きっとかわいいよぉなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぅぃやぁあ゛ぁああぁっぁぁっ――――――――――♪」」」」」」」」」」」」」」」」
ファロコの側に付く、つもりらしい。
凄ぇうるさかったから、一緒になって「ぅぃやあ゛ぁあぁー♪」してる針刺し男を――すっぱぁぁんっ♪
かるく、引っ叩いておいた。
「ですからアレは――建国の龍の再来と言ってますのよっ!」
カツンッ――釘のように尖った踵を鳴らし、チリッ!
イラッとした視線を、おれたちに投げかける――
悪漢紛いの立ち振る舞い。
後ろに兵六玉を張り付かせた、ガムラン代表が気を吐いた!
「「「「「「「「「「「「「ひゃひゃぁーい♪」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「チェックワンツー♪」」」」」」」」」」」」」」」」
蜘蛛の子を散らすように、散り散りに逃げていく村人たち。
ふぉん♪
『シガミー>誰でも良い、説明してくれ――解析指南!』
ふぉん♪
『解析指南>>結論から言うなら、イースターエッグはファローモ幼体が入った卵ではありません』
「おい、それはやっぱり、お前の卵じゃねぇってよ!」
そう言ってやったら――
「るるぎゅぎゅぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぃぃぃぃっ!?」
『(Θ曲Θ)』
歯をむき出しにして、威嚇された。
「だから、そいつぁ――おれたちが、ついこの間倒した、『おうさまと、りゅうのまもの』に出てくる、龍そのものなんだぜ!」
ふぉん♪
『解析指南>>いいえ。木属性における最高位種である、ドラゴンの種でもありません』
ふぉん♪
『シガミー>>はあ? 違うのかよ!?』
「ぎぎるぎみーぃ!?」
唸る子供。
「ちがうよ、それはファロコが生まれた卵に、そっくりじゃよぉ!」
叫ぶ大人。
「いや、ちょっと待て――」
迅雷、解析指南が言ってることを、鑑定結果の横にでも映してくれ。
ふぉん♪
『>>では適宜、表示内容を校正して表示します』
「今から、女神の料理番だけが使える――超上級鑑定結果を映し出すから、見てくれっ!」
手を上げて、そう大声で告げる。
ふぉん♪
『リオレイニア>よろしいのですか、神々の知識をそう易々と披露してしまっても?』
ふぉん♪
『シガミー>かまわん。いざとなったら五百乃大角に、丸投げする』
下っ腹が出ていても、彼奴は頓知が効くからな。
ふぉん♪
『解析指南>>イースターエッグに関する記述は、更新されている可能性があります。電子書籍『シンシナティック・ニューロネイション超攻略絵巻読本』を最新バージョンへ更新し、〝第11章:全アイテム一覧〟を再検索して下さい』
こいつぁ見せられねぇな。
おい、五百乃大角、それ早くやっとけ!
ふぉん♪
『解析指南>>〝イースターエッグ〟の中身は、SSS級レアアイテムであることが確定しています』
ふぉん♪
『>>これは、イースターエッグに対する記述だけですので、そのまま投影します』
ヴォォゥン♪
『超上級鑑定>〝イースターエッグ〟の中身は、SSS級レアアイテムであることが確定しています』
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「SSS級レアアイテム!?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
目の色を輝かせる全員。
長大なアダマンタイト鉱石に、匹敵するほどのお宝ってことか。
ガムラン町だったら、血の雨が降っていたやも知れん。
「SSS級レアアイテムって言ったら、ジュークのジューク箱と同じくらい貴重ですわね?」
「なんだって!? おかしらぁ――その話は本当か!?」
盗賊の一人が湧いて出た。
悪逆令嬢は、本当に盗賊の親玉らしいぜ。
ご令嬢は、思っていたよりは……悪党かも知れない。
「おい、村長の村長箱って、金さえ入れりゃ何でも叶うやつだろ?」
がやがやがやがやがやがやがやがやがやがやや――――!?
ん? 急に村人どもが、殺気だって来やがったぞ。
ヴォォゥン♪
『超上級鑑定>先着一名、手にした者のみが獲得出来る可能性があります』
「はぁ? 先着一名だとぉぅ?」
可能性って、何だぜ?
手にしたら……手に入るだろうがよ?
てちてちてちてち、ひょこひょこ、ぐぐぐぐっ――すぽん♪
おれの画面を横切る邪魔な奴は、梅干し大の五百乃大角の分け身。
やい、五百乃大角、お前……料理の本なんか引っ張り出して、どうした?
迅雷に言われた、何たらの仕事をしろよ?
「ににるぎーぃ!?」
卵と二股角の少女が入った木箱に視線が集中する!
「そういえばぁ、すっごい昔に難攻不落のSSS級ダンジョンの最下層を目指したことがあったんだけどさぁ――とうとう私だけになってさぁ、必死に逃げ帰ったことがあったわぁねぇー、きゃはぁ☆」
コロコロと笑う、うら若き乙女のような――巫女装束。
「きゃはぁ☆」ではない。
齢200歳の内訳が前世と来世で、どうなってるのか。
そのへんの年齢にまつわる、詳しいことは聞けてねぇ。
おれを含んだ、日の本からの転生者全員の身を――
危険に晒しかねない重要ごとを、気軽にペラペラ喋りやがって!
「それ聞いたことありますぜ、辺境伯名代さま」
鉄籠の下から、小柄な大男が姿を現した。
「ウカカカッ♪ 工房長、そっくりだぜ!」
いけねっ、あまりにも似てたから、つい笑っちまった。
「工房長だとぉー? そんな出世をしたやつぁ、ガムランの俺の甥っ子ぐれぇだぜ?」
蓄えた髭を撫でる仕草まで、まるで同じで――
リオレイニアが調理台の角に、頭をぶつけた。
§
「俺はワーフと申しますぜ。この村で冒険者をしつつ鍛冶工房を営んでるますぜ」
片膝を突き、辺境伯名代へ、ぎこちない礼をする。
その背中には、巨大な……鉄杭か?
あんなのを背負って、よくも狭い鉄籠の下に潜り込めたもんだぜ。
ふぉん♪
『>あれもラプトル王女殿下の〝万能工具〟や、ノヴァド工房長の〝金槌〟に類する物と思われます』
ああ、おれの新しい手甲同様、相当なスキルを有した魔法杖だろうな。
「たしか発見者の欲しいものが……中から出てくるという噂を、聞いたことがありますぜ?」
ソレでは確かに、村長箱そのものだ。
「そう、たしかそんなだった! 当時の王様がぁー、ご病気でさぁー。そんな噂に総力を挙げて、挑んだんだぁけぇどぉねぇー」
「ねぇー」と魔法杖が入った収納魔法具に、話しかけてやがる。
ふぉん♪
『>ノヴァドやワーフ氏のようなドワーフと言う種族は、ルリーロほどではないにせよ、長命なようです』
長生きするのが他にも居るから、そこまで悪目立ちせずに済んでたってことか。
「一度は諦めたSSS級のお宝ぁ、クツクツクツクツクツクツ――――ココォォォン♪」
イナリィの字を残す――妖怪化け狐。
その口が、あり得ねぇ程に裂け――
手近にあった鉄鍋を、頭に被った!
「みゃぎゃにゃにゃぅ――――!?」
魔法具の妖精ロォグさまも、手近な鉄器をひっくり返して――かぽん♪
中に、すっこんじまった!
何だぜ?
ふぉん♪
『>>わかりませんが、【地球大百科事典】によるなら、イースターエッグとは神々の船にも匹敵しうる可能性を秘めた、SSS級レアアイテムのようです』
ふぉん♪
『シガミー>>けど大きさも柄も、どう見たって巨木・木龍の卵じゃんか?』
ならば一度は退治した物だぜ。
どうして彼処まで恐れる必要がある?
ふぉん♪
『解析指南>>その可能性もあります。イースターエッグというアイテム名称は、可能性に制限がないことを、示唆しています』
何にでも化けるってことか?
なら上級鑑定しても、意味ねぇじゃねぇか。
ふぉん♪
『イオノ>>ちょっと待って、シガミー。これ結構な大事に、なりかねないわよ♪』
ぺらぺらぺらり――だから仕事もせずに、料理の作り方ばっかり――
いつまでも、読んでるんじゃねぇやぁ。
ふぉん♪
『シガミー>>どういうこった? 何かわかるなら、まず説明をしろや?』
ふぉん♪
『イオノ>>ファロコちゃんの、頭の上を見て』
ヴォオォゥンッ♪
『ファロコ・ファローモ・ナァク・ジオサイト
■■■□□□□□□□31%』
それは、HPやMP表示と似たような横棒。
ソレは虹色に輝き――じわじわじわと、満ちていく。
ふむぅ、どーいう?
ルリーロやロォグが鉄鍋や鉄器の下から、そっちを覗ってる。
おれは耳栓を、すぽんと引っこ抜く。
耳栓無しでも、あの横棒はちゃんと見えた。
ふぉん♪
『ホシガミー>>なるほど? 手にした人の活力や思惑に左右され、中身が変わるみたいですね。プークス♪』
中身が変わる?
じゃぁこいつは、木龍の卵じゃぁねぇのか?
ふぉん♪
『>>そのようです』
ふぉん♪
『イオノ>>このままいけば、ファロコちゃんの弟妹が出てくるのは間違いないわねん』
木龍が出ねぇんなら、まだマシだが――
ふぉん♪
『解析指南>>このままの人員配置のまま、卵が孵化した場合。25%の確率で巨木・木龍の苗が、生成されます』
はぁ? 少なくともおれぁ、そんなことを望んじゃねぇぞ?
待て待てやぁー、なぁーんか、いつもの。
とんでもねぇことが起こる、前ぶれみてぇな音が幽かに――ォォン♪
ふぉん♪
『解析指南>>イースターエッグには〝いたずら〟を表すイメージが顕著に含まれています。当て推量100%換算の場合、約1%の確率でミノタ☆ウロースが生成されます』
ミノ太郎だとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉっ――――――――――――――――――!?!?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
『悪魔クロとやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は秘密の力で人間の頂点を狙う』
なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。
スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、
ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。
弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、
満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。
そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは――
拾ってきた野良の黒猫“クロ”。
だが命の灯が消えかけた夜、
その黒猫は正体を現す。
クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在――
しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。
力を失われ、語ることすら封じられたクロは、
復讐を果たすための契約者を探していた。
クロは瀕死のソラと契約し、
彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。
唯一のスキル《アイテムボックス》。
そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、
弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。
だがその裏で、
クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、
復讐の道を静かに歩み始めていた。
これは――
“最弱”と“最凶”が手を取り合い、
未来をやり直す物語
50歳元艦長、スキル【酒保】と指揮能力で異世界を生き抜く。残り物の狂犬と天然エルフを拾ったら、現代物資と戦術で最強部隊ができあがりました
月神世一
ファンタジー
「命を捨てて勝つな。生きて勝て」
50歳の元イージス艦長が、ブラックコーヒーと海軍カレー、そして『指揮能力』で異世界を席巻する!
海上自衛隊の艦長だった坂上真一(50歳)は、ある日突然、剣と魔法の異世界へ転移してしまう。
再就職先を求めて人材ギルドへ向かうも、受付嬢に言われた言葉は――
「50歳ですか? シルバー求人はやってないんですよね」
途方に暮れる坂上の前にいたのは、誰からも見放された二人の問題児。
子供の泣き声を聞くと殺戮マシーンと化す「狂犬」龍魔呂。
規格外の魔力を持つが、方向音痴で市場を破壊する「天然」エルフのルナ。
「やれやれ。手のかかる部下を持ったもんだ」
坂上は彼らを拾い、ユニークスキル【酒保(PX)】を発動する。
呼び出すのは、自衛隊の補給物資。
高品質な食料、衛生用品、そして戦場の士気を高めるコーヒーと甘味。
魔法は使えない。だが、現代の戦術と無限の補給があれば負けはない。
これは、熟練の指揮官が「残り物」たちを最強の部隊へと育て上げ、美味しいご飯を食べるだけの、大人の冒険譚。
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。
もる
ファンタジー
剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる