滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

５：大森林観測村ＶＳガムラン町

７０６：第四の大森林観測村現る、大浴場にて

「しかし、目のやり場に困こまるぜ――」
　此処ここは大浴場だいよくじょう。香かおりの良い木の湯船ゆぶね。
　飯めしの支度したくが済むまで、もう少すこしかかるって言うんで――
　おれたちは先さきに、風呂ふろに浸かることになった。

　童わらしどもが全員一度ぜんいんいちどに入はいったとしても余あまるくらい、広ひろくしておいて命拾い・・・したぜ。

「シガミー、どーしたの？　そんな隅すみっこで」
　折角せっかく、じっと壁かべを見てたのに、レイダめ。
　おれを目立たせる・・・・・んじゃねぇやぃ！
　童わらしどもわぁ、おれと大差ねぇ・・・・・・・から、何なんら困こまらんがよぉぅ。

「あら、そんなところにいたのね、シガミー。こっちへいらっしゃいな、体からだを洗あらって差し上げますわ♪」
　ぶるるるるぅーん♪
　仁王立ち・・・・の、ガムラン代表だいひょう。

「ばかやろうっ！　ちったぁ、慎つつしみって奴やつを持たんかっ――!?」
　こりゃぁ駄目だめだぜ、豪華絢爛ごうかけんらんな体からだつきを――
　こうも堂々どうどうと、さらけ出されちゃ――
　いくら坊主ぼうずでも、とても正気しょうきでは居られん。

　おれは壁かべに張り付き、助たすけを請う。
　ふぉん♪
『シガミー＞＞迅雷、助けろ！』

「子供こどもが何なにを、言っていますの。小猿こざる、こちらをお向きなさいな♪」
　やめろ、何なんだこの怪力かいりきわぁっ!?
　ぶるるるるぅーん♪
　こっちも駄目だめだった。

　おれは目を閉じ、もう一度助いちどたすけを請う。
　ふぉん♪
『シガミー＞＞誰でも良いからぁ、助けてーっ！』

「目を、お・開・け・な・さ・い・な？」
　頭あたまをつかまれ、無理矢理むりやりに両目りょうめを四本よんほんの指ゆびで――
　ぐりぐりと、こじ開けられた！

　ぶるるるっ、ぷるるるるぅーん♪
　そこそこの歳としのはずだがぁ――
　まるで生娘きむすめみてぇな、体からだつき。
　日の本生まれ・・・・・・と言ってたが、香味庵こうみあんの女将おかみとわぁ――
　まるで違ちがうじゃねぇかぁ！
　あの気が弱よわそうな村長ジュークわぁ、こんなのを・・・・・相手あいてにしてやがるのか!?

「わかった、手を放はなせ！」
　じっと令嬢れいじょうどもを、正面しょうめんから見据みすえた。
　ちゃぷちゃぽん――湯船ゆぶねに走はしる緊張きんちょう。

　離はなれる手、よし！

「ウカカッ――おれぁ先さきに出――」
　腕うでをガシリと、つかまれた。
　誰だれの手かはわかる。

「シガミー、折角せっかくの温泉おんせんですし、体からだの芯しんまで温あたたまっていかれては？」
　猪蟹屋ししがにやの紅一点・・・、美の女神いおのはらすら虜とりこにする彼女かのじょ。
　その厚あつみのない体つき・・・をした彼女リオから、後光ごこうがさして見えた。

「後生ごしょうだ、見逃みのがし――」
　いけねぇっ――――正面しょうめんから、見ちまったぜ！
　生来しょうらいのあまりの美うつくしさに、〝魅了みりょうの神眼しんがん〟スキルと化した目力めぢから。
　只者ただものであるはずの、彼女かのじょの肉眼まなこに宿やどる――
　暴力的ぼうりょくてきな〝邪視じゃし〟の発露はつろ。

　眼鏡着用時めがねちゃくようじの彼女かのじょは、素敵すてきではあるが――
　此処ここまで心こころを惑まどわす存在そんざいでは、ないのだ。

　その光ひかりは彼女かのじょの在り方かたを、際限さいげんなく――
　どこまでも魅惑的みわくてきに、捉とらえさせてしまう。

　その常時発動するパッシブスキルを、押さえるために・・・・・・・作つくってやった眼鏡めがねも――
　ふぉん♪
『＞＞はい。防水防滴であっても、風呂では外すことを考慮していませんでした』

　リカルルやロットリンデや、女将おかみさんに商会長しょうかいちょう。
　あの辺へんのあられもない姿・・・・・・・を、見た後あとじゃぁ――
　リオの均整きんせいの取れた、慎つつましやかな肢体からだ。
　そんな程度ていどじゃぁ、動どうじることもあるまいと――
　高たかを括くくっていたのだ。

　彼女かのじょの、薄い胸や腰回り・・・・・・・を――
　直線的まっすぐに滴したたり落ちる、水滴すいてき。
　その一滴ひとしずくが、芳かぐわしく艶つややかな――
　紅くれないの花弁かべんを伝つたう、朝露あさつゆのように感かんじられる。

　奴リオの肌はだの解像度きめこまやかさに、吸い込まれ――
　目が離はなせなくなった！

　ふぉん♪
『＞＞他の女性や子供たちは、シガミーほどには影響を受けていないのは、迅雷式隠れ蓑製のタオルを、リオレイニアが頭に巻いているからと思われますが』
　彼女リオが正面しょうめんから、おれを見たのは信頼しんらいの証あかしと思おもうがぁ――

　生憎あいにくとぉ、シガミーおれの中身なかみわぁ――
　齢四十よわいしじゅうの爺じじいだぜっ！
　しかも酒さけに女おんなに博打三昧ばくちざんまい、後のちの世じゃきっと――
　破戒僧猪蟹はかいそうししがになんて、呼ばれただろうおれがぁ――

　この艶つややかで平たいらな肢体からだを前まえに、耐えられる訳わけがあるまい!?

　後光ごこうさすリオレイニアを、隠かくすように――
　ぷっかぁ――ぽぎゅりーん♪
　湯を流ながれてきたのは――

「みゃぎゃにゃぁー♪・」
　おまえ、おにぎり！
　湯船ゆぶねには、浮かぶことしか・・・・・・・出来できんだろうに――
　何なんで風呂場なんかこんなところに、居やがるっ!?
　そもそも、モフモフ村むらに置いてきた、筈はずだろぅが!?

　ふぉん♪
『イオノ＞＞お礼は後ほど、そうわね。夕食後のデザートを一品追加で、手を打ちましょお♪』
　御神体めしがみさまの差し金がねか、超助ちょうたすかったぜ！
　ふぉん♪
『＞＞シガミーが温泉旅館を建てるのに、苦労していたので呼んだのですが、順路検索の一部にバグがあり現在地への到達が、やや遅れました』
　何なにを言うか、上等じょうとうだ。

　ふぉん♪
『シガミー＞＞ここから逃げるぞ』
　正まさに〝地獄じごくに仏ほとけ〟とは、このことを言うのだろう。

「みゃにゃぎゃぁー♪・」
　湯面ゆなもに、ぽぎゅりと立つ黄緑色おにぎりが――
　リオの手を手刀しゅとうで、叩はたき落とした。
　怯ひるむリオレイニア。
　見つめ合う、おれたち二人ふたりと一匹いっぴき。

　おれを小脇こわきに抱かかえた奴やつは、庭石にわいしや庭木にわきや柵さくなんかを――
　ぽぽぽきゅきゅーんと蹴り飛ばして、外そとへと逃げ出した。

　　　§

　上うえを下したへの大騒おおさわぎ。
　たまたま騒ぎそれを聞きつけた、うだつの上がらない風体ふうていの二人ふたり。
　つまりニゲル青年せいねんと、ジューク村長そんちょうを――
　手も足も使わずに・・・・・・・・、伸して見せた……いや――
　見せて伸した・・・・・・、ご令嬢れいじょうたちは――
　スゴスゴと脱衣所だついじょへと、帰かえっていった。

　そして三階さんかい、客間付きゃくまつきの湯船ゆぶねに、駆け込むなり――
　とぷりと浸かる、黄緑色きみどりいろ。

「何なんだぜこの、お湯わぁ!?」
　おまえ、どうやって――お湯に沈しずんだぁ？

　頑丈がんじょうな袋ふくろである強化服シシガニャンは、早々沈そうそうしずまないはず。
　二ふたつの月つきの光ひかりが、混ざったときと同じ色・・・・・・・・・・。
　蘇生薬エリクサーと同おなじ、おかしな色いろの湯が揺らめく――ちゃぽん♪

「や＠っとお出ましとは、樹界虫・・・も――偉えらくなったものですね」
　その湯には先客せんきゃくがいて、それは男性おとこの声こえをした女性おんなだった。