滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

５：大森林観測村ＶＳガムラン町

７０８：旅籠屋三階内湯にて、森の主洗われる

「イオノファラー、重力値じゅウりょくち異常いじょうヲ検出けンしゅつしまシた。注意ちゅウいしテ下クださイ・」
　窓まとの木枠きわくの隙間すきまから、飛び込んで来た棒ぼうが――ヴォヴォヴォヴォゥゥンッ♪
　盆ぼんの上うえから、ぱしんと女神めがみを掠かすめ取った。

「住侶朽じゅうりょくち已上いじょう……何なんだぜ、そいつぁ？」
　おれは酒さけと猪口ちょくを、ひっくり返かえりそうな盆ぼんから持ち上げた。
　ふぉん♪
『＞＞ロコロ村近くで遭遇した、〝巨大質量生命体〟に関するログデータに酷似しています』
　わからん。

「ふぅん、ふふふぅん。あなたがぁ、シガミーが言ってたぁ、森もりの主ぬしわねん？・」
　ヴォッヴォヴォゥゥン♪
　棒ジンライに乗り、こぢんまりとした内湯うちゆの真上うえを飛ぶ、根菜いもや丸茸きのこにしか見えない御神体かみさん。

　ちびり。
　頭上ずじょうを飛ぶ、棒ぼうと根菜こんさいを見上げ、猪口ちょくを傾かたむける珍妙な女もりのぬし。

　それほど広ひろくはない、風呂場ふろば。
　相対あいたいする美の女神御神体いおのはらと、成体ファローモもりのぬし。
　微かすかに走はしる緊張きんちょう。

「マジ・・やめとけ、森の主そいつさまはやばいぞ」
　少すくなくとも星神カヤノヒメが来るまで、大人おとなしくしといてくれや。
　おれも自分じぶんの猪口ちょくに、酒さけを注そそぎ――ぐびり。

「みゃぎゃにゃぁー♪・」
　でけぇ丼どんぶりを横よこから突き出すのは、黄緑色きみどりいろの猫ねこの魔物風まものふう。
　どうも狭せめぇと思おもったら、お前・・も居たっけな。

　それにしてもぉ――酒さけの味あじもわからん癖くせに、生意なまいき気だぜ。
　それでも、さっき助たすけてもらったから――とぽぽん♪
　ちょっとだけ……丼どんぶりの半分はんぶんくらいまで、注ついでやる。

「（おっと、そうだぜ迅雷ジンライ）」
　袋ふくろになってる強化服おにぎりが、湯に沈しずむってのわぁ――
　どうにも道理どうりが通とおらねぇ。
　この蘇生薬エリクサー色いろの湯もやべぇから、ちゃんと調しらべとけ。

　ふぉん♪
『＞＞なるほど。重力値異常の原因は、この湯に含まれる成分にあると思われます』
　ふーん。もう、すっかり漬かっちまったから、知ったことではねぇのだが――
　やはり、この色味いろが、おかしいらしい。

　　　§

「ひっくうぃー♪　ウカカカカッカカッ♪」
　ふぉん♪
『＞＞シガミー、その辺で控えて下さい』
　ばかやろうめぃ。
　これが飲まずに、やってられるかってぇんだぜ。

　ヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォゥゥゥゥゥンッ♪
『(￣Д￣カシャッ♪)』『(ಠ◡ಠカシャッ♪)』『(｀ ͜ʖ´カシャッ♪)』『( ͡°,_ゝ ͡°カシャッ♪)』
　酔いに任せて・・・・・・増えた、実物大・・・の女神映像うかぶたまたち。

　そいつらが、泡だらけ・・・・になり――
　事こともあろうか、森の主さまファローモを――

「ひ＠ゃひゃひゃわひゃぁー!?　こらっ、小ちいさき者ものっ――!?」
　わしゃわしゃ、ぶくぶくあわわわと――
　洗ってやっている・・・・・・・・。

「「「「小ちいさき者ものでわぁ、有ーりーまーせーんーよぉーぅ？　アナタの世界せかいのよりどころっ、美びの女神めがみやってまぁすぅー。イオノファラーちゃんでぇーすぅ♡・」」」」
　どざぱぁん――木桶きおけで頭あたまから、湯をかぶせる五百乃大角いおのはらども。

　ばかひゃろうめ、おれたちがたびゃになっへも――
　かへんひゃいへに、なんへことぉしてやがっつひっくぅぅぃー♪

　コンコココン？
「どなひゃでぇーぃ！」
　この忙いそしいときに、戸を叩たたく奴やつがいるぜ。

「冷つめたくて甘あまい物もの、お持ちしましたぁ――クスクスププー♪・」
　戸を開け突き出されたのは、おれと瓜二つの・・・・顔かお。

「ぷはぎゃっ!?　樹界虫きかいちゅうが、もう一匹いっぴき!?」
　木桶きおけで頭あたまから、湯をかぶせられた森もりの主ぬしが――怯ひるんだ。

「あらあら皆みなさん、すっかり出来上できあがっていますわね。プーッ、クスクス？　別べつにおつまみでも、お作つくりいたしましょうか？・」
　口元くちもとへ揃そろえた指ゆびを添える、樹界虫きかいちゅう２匹目・・・。
　星神ほしがみさまにわぁ、おれの髪かみみたいにぃ――
　木の枝が生えていたり・・・・・・・・・・はしないが？

「「「「良きわね、おつまみ！・」」」」
　ヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォゥゥゥゥゥンッ♪
　戸を開け放ち、盆ぼんに乗せられた人数分にんずうぶんの冷つめたい菓子かしを受け取る――
　美の女神いおのはらどもめ――脳天気のうてんきに、浮かれやがって。

　濡れ鼠ねずみの森の主ファローモさまが、ぷるぷると肩かたをふるわせてる。

「じゃぁ、おれぁ辛からみのある……そうだな、わざび付けでもぉ――貰もらうかなぁ」
　（迅雷ジンライ、轟雷ゴウライの準備じゅんびしとけ――）
　ったく、酔いが覚めちまったぞ。

　ふぉん♪
『＞＞神力充電１００％、万全の状態です。大森林猪蟹屋村｜（仮）を包囲中のドローンは３４基、風神までの距離は１８メートル。通常兵装並びに、猪蟹屋標準制服用機械腕弾倉は、腕輪の収納魔法具へ補充済みです』
　よーし、別べつにやり合おう・・・・・って訳わけじゃねぇが――
　用心ようじんに越したことはねぇ。