滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

５：大森林観測村ＶＳガムラン町

７１３：ファローモからの依頼、毛色と毛並みと板ぺら

　おれを見下みおろすのは、星神ほしがみ茅野姫カヤノヒメ。
　その目がチカチカと、光ひかりを帯びて――へちり♪
　勢いきおいがまるでない手刀てがたなが、額ひたいに振り下ろされた。

　ぶちぶちり――頭あたまから抜け落ちた物ものが、ごろごろろろっ♪
　辺あたりを転ころがる気配けはい。

「いやぁー又また、立派りっぱな果物くだものが、取れたねぇ♪」
　いつの間に戻もどって来たのか、女将おかみさんの声こえがした。
　見れば大おおきな果物くだものを、抱かかえてやがる。
　こんなことがぁ、前まえにもあったぞ？

「ほ＠ら娘むすめよ、あなたも頂いただきなさい」
　手近てぢかな桃ももみたいなのを、つかみ取る男の声の女もりのぬし。
「娘むすめ？」
　森の主おまえさまの娘むすめといやぁ――

「ぎ＠にゅるりぃぃぃぃ？」
　頬ほほを膨ふくらませた若わかい女おんなが、傍かたわらに立っていた。
「うわっ!?　どっから出やがった!?」
　ファロコだ。また片目かためが『Θけもののめ』をしている。

「顧問こもんっ！　居ましたわ！」
「本当ほんとうかニャ――!?」
「レトラベラ君くんに、もしもーのことがあったら――!?」
　騒々そうぞうしい声こえを張り上げ、顧問技師こもんぎしと顧問秘書そのひしょ――
　それと１年ねんＡ組担任ぐみたんにんヤーベルトが、客間きゃくまへ飛び込んで来た！

　秘書ひしょの手には――――カラカラッ、グルグルグルグルルルッ♪
　格子こうしで出来できた丸まるい玉たまに、取っ手が付いた魔法具まほうぐ。
　その中なかに浮かぶ光ひかりの針・が、こっちを向いてやがる。

　ふぉん♪
『シガミー＞＞おい、秘書さんが持ってる魔法具は何だぜ？』
　ふぉん♪
『＞＞恐らく、〝森域〟や〝樹界〟といった〝大森林〟や〝森の主〟にまつわるファクターを検出し、追跡するための魔法具であると思われ』
　動体検知モーショントラッカーみたいなもんか。

「ぎゅにーっ？　レーラの分ぶんとフィーコの分ぶんと……あと、ミャドーとマーチとセンセーの分ぶん――」
　果物ももを拾ひろう手。全部せんぶで６個欲こほしいようだが……片手かたてじゃ無理むりだろ。
「ぅぴゃぁぁ――ここわぁ、どこぉー!?」
　ふさがったファロコの、もう片方かたほうの手には――眼鏡めがねを掛けた子供こどもが抱かかえられている。

「ぎ＠にゅりぃ――？」
　そして眼鏡の子供レトラベラの首くびには、矢鱈やたらと毛の多い赤子・・・・・・が張り付いていた。
　その小ちいさな手が、此方こちらへ伸ばされた。
　おれはおれから生ったらしい果物くだもの……多分たぶん、桃ももの小ぶりなのを――
　一ひとつつかんで、持たせてやった。

　すると、木の葉のような小ちいさな手が――
　果物ももとおれの手から、離はなれなくなった。

　　　§

「ち＠ょっと目を離はなした隙すきに、何なんと面妖めんような――しゃくしゃく、もぐもぐ!?」
　自分じぶんの娘むすめが知らぬ間に、〝倍ばいに増えた〟のだから――
　森もりの主ぬしファローモ、その成体おやが驚おどろくのも無理むりはあるまい。
　額ひたいから小枝こえだを生やし、『＠もよう』の入はいった着流きながしを着ている。

「ギャニギャッ!?　本当ほんとうに面妖めんようニャ！　幼体ようたいならいざ知らず、大森林だいしんりんの気象きしょうをも司つかさどると言われる、成体せいたいファローモが人ひとの姿すがたに化けるとは――!?」
　猫耳族ねこみみぞくであるミャッドが遠巻とおまきに、森の主ファローモを観察かんさつし始はじめた。
　彼かれの職業しごとは、〝魔導騎士団まどうきしだんギ術開発部じゅつかいはつぶ顧問技師こもんぎし〟だ。
　顔かおや手先てさきに見える毛色けいろは、明あかるい緑色みどり。
　肩かたから橙色だいだいいろの布ぬのを、垂らしている。
　橙色だいだいいろの布ぬのは、魔導工学技士まどうこうがくぎしで有ることの証あかし。

　ふぉん♪
『人物ＤＢ／ミャニラステッド・グリゴリー
　　　　　　ラスクトール自治領王立魔導騎士団魔術研究所ギ術開発部顧問技師』

　顧問氏ミャッドが――キュルッキュラ、ガッチャガチャンッ♪
　大人おとな３人にんを乗せた〝地を走はしる乗り物もの〟の、鎌首をもたげた・・・・・・・。
　あの平ひらたい箱はこは、彼かれが使つかう魔法杖だ・・・・。

　ルコル少年ちょうねんの〝走る椅子ギルドいす〟や、お猫さまロォグの手甲ガントレット。
　工房長ノヴァドの金槌ハンマーに、王女殿下ラプトルさまの杓子しゃくし。
　工具こうぐや乗り物・・・になる、変わり種だねの魔法杖まほうつえは――
　その全すべてを魔法具まほうぐの妖精ようせい、ケットーシィが作つくっている。

「こ、顧問こもん!?　お、落ち着いて下ください――！」
　ふぉん♪
『人物ＤＢ＞マルチヴィル・エリミネフ
　　　　　　ラスクトール自治領ギ術部顧問秘書官』

　踏み台だいのように高たかくなった、ミャッドの魔法杖まほうつえが――
　ガシャガシャ、チャキャチャキャチャキャチャッ！
　人ひとが通とおり抜けられるほどの、大おおきな輪を形作かたちづくった。

　顧問秘書マルチヴィルが泡あわを食うってこたぁ、あの踏み台だいの先さきに付いた輪っかは――
　並みの物ではない・・・・・・・・のだろう。
　十中八九じゅっちゅうはっく、碌ろくでもないことを、しでかしてくれそうだぜ。

　森の主ファローモの娘むすめたちを追いかけるのに使つかわれた、丸格子モーションの・魔法具トラッカーを――
　顧問秘書こもんひしょからひったくる、顧問氏こもんし。
　丸い輪・・・の中央ちゅうおう、垂れ下がる鎖くさりへ――――ガチリッ!!!

　ポヒヒヒヒヒィイッ、ヒュシュッヒヒュルルルゥウルッ――――♪
　何なんかの音おとと魔術の神髄ひかりのすじが、輪の真ん中に・・・・・・集あつまっていく！

「（森もりを脅おびやがす――龍脈りゅうみゃくの゛乱みだれ――幼体ようたいが泣いでいる――約定やくじょうは果だされだ――――）」
　ギィン――ぐわあぁっ！
　森もりの主ぬしの姿すがたが、男おとこの姿すがたへと変わっていく。

「待て待て、待てやぁっ――――痛いだ゛ぃいだっだだっ！」
　鋭するどく重おもく、おれの脳天のうてんを貫つらぬく――男おとこの声こえ！
　大角おおつのを生やし、両目りょうめが『ψけ（ΘＷΘだものの）ψめ』になってやがるぜっ――!?


『（Θ△Θぎにゅりりっ？）』『（Θ曲Θぎぎぎるるっ？）』
　森の主の娘おまえらもぉ、いい加減かげん、手を放はなせやぁ！
　姉あねの方ほうがレトラを抱かかえ、妹いもうとの方ほうがおれの腕うでをつかんで――
　まるで離はなしやがらねぇ！

「シガミーちゃぁん!?」
　だれがシガミーちゃんか！
　しかし、お前さまレトラには色々いろいろと任まかせっきりで、悪わるいことをしちまった！
　ファロコの妹いもうとが落ちないよう、必死ひっしに抱かかえている様子ようすを見れば――
　彼女かのじょが森の主ファローモの娘むすめたちを、無下むげに扱あつかってないことが、わかるからな。

　ゴドガァァンッ――――「今度こんどは、何なんだぁ!?」
　窓まどの外そとに何なにかが、ぶち当たったようだ。
　建てたばかりの旅籠屋はたごやが、ぐらぐらりと揺れ――
「グゲッゲゲゲゲゲゲッ――――!?」
　風神ふうじんの鳴き声ごえまで聞こえてくる！

　くそう、ぐぐぐぐっ！
　森の主ファローモの念話ねんわを聞いたからか又また、頭あたまが重おもくなってきた。
　もう駄目だめだなっ。こんな時ときに、五百乃大角いおのはらめ――
　何処どこ、行きやがった!?

　バキバキメギッ――――ガッチャァァンッ!!!
　窓まどを突き破やぶり、飛び込んで来たのは――
「みゃぎゃにゃぎゃぁぁぁぁぁぁあっ――――――――♪」
　大おおきな手甲ガントレットを突き出す、ひょろ長ながい体からだ。

「みゃひゃにゃやぁー？・」
　俄にわかに立ち上がった、おにぎりの後ろ頭・・・。
　すっぽここここここぉぉぉぉぉっぉんっ♪
　魔法杖ガントレットが炸裂さくれつし、黄緑色おにぎりが廊下ろうかへ――すっ飛ばされた！

「「「きゃぁぁぁっ――――!?」」」
　おにぎりの嵩張かさばる体からだが、顧問氏ミャッドたちを、なぎ払はらう。

　ぐるんと回転かいてん、平机そのばへと降り立つ――
　青色の毛並み・・・・・・。

「お＠や？　〝ヴァロルフォグル・オルネコー〟とは、随分ずいぶんと珍めずらしいですね？」
　珍客ちんきゃくの登場とうじょうに、気でも削そがれたのか――
　森の主ファローモが、珍妙ちんみょうな女おんなの姿すがたに戻もどった。

「みゃにゃぎゃにゃぎゃにゃ、にゃぁーぎゃにゃにゃぁぁニャァ♪」
　くるくるくるくるるん、ぱたん♪
　魔術師まじゅつしの格好かっこうをした、お猫ねこさまの足下あしもとへ落ちる、おにぎりの文字盤いたぺら。

　んぎぎぎぎっ。
　重おもい頭あたまを捻ひねり、木板それを覗き込む。

　ふぉん♪
『＞あんな猫の中の猫と我輩を、
　　一緒にしないで頂きたいニャァ♪』
　表示ひょうじされたのは、そんな文字もじだった――まったく。

　〝オルネコー〟てのは……偉えらいのか、偉えらくねぇのか――
　さっぱり、わからんなぁ。