滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

５：大森林観測村ＶＳガムラン町

７２１：吠えろ魔銃オルタネーター、スコープ換装

「タターです……な、何なんでしょうか？」
　女神めがみの笑顔えがおに不穏ふおんなものを感かんじつつも、素直すなおに寄ってくるメイド姿すがたの小女しょうじょ。

「オルタネーターを出してねぇーん♪・」
　短みじかい腕うでを組み、仁王立におうだちの五百乃大角いおのはら。

　少女しょうじょメイドタターが前掛けエプロンを捲めくり、下したの服ふくの物入れポケットから、手袋・・を取り出した――キュキュッ♪
　それを手早てばやく手にはめ、長銃ひなわを構かまえる仕草しぐさをすると――ヴルル、ガシャッ！
　その手に、アダマンタイトの光沢ひかりを放はなつ長大ちょうだいな棒ぼうが、握にぎられた。

　長物じゅうを取り出すとき危あぶなくねぇーよう、〝手袋てぶくろ〟に収納魔法具しゅうのうまほうぐを仕込しこみ――
　長銃それを持つ手の形を・・・・、取り出すための鍵にしたのだ・・・・・・。

　ふぉふぉふぉぉん♪
『魔銃オルタネーター【物理】
　魔法攻撃力８３０（＋∞）。全属性使用可能なライフル型魔法杖（新造アーティファクト）。
　追加効果／ＳＴＲ－５０／ＶＩＴ－２０／ＩＮＴ＋１８０
　追加スキル／【主観ロックオン】発射された弾体は、
　　　　　　　スコープで捉えた物を必ず穿つ。
　装備条件／メイド服、ネネルド村出身』

　この鑑定結果プックマークを見ただけじゃ、どれだけの代物しろものなのか、おれにはわからんが――

「な、なんど見ても、興味きょうみぶかのい？」
　第四師団長ミラカルカの瞳ひとみが輝かがやく。
　魔法杖つえの扱あつかいに長けた第四師団だいよんしだんを率ひきいる、彼女かのじょには――
　見ただけでも、この長銃オルタネーターの凄すごさが、わかるのかも知れない。

　ふぉん♪
『＞アダマンタイト製の唯物特化型超々長々ロングレンジ魔法銃杖です。動力部にラプトル王女製作の疑似活力回路を搭載。全長１・７６～２・３６メートル。口径は・５０ｕａｓ。装填ならびに排莢は収納魔法具を介し、ポルトアクションにて行う。各種のイオノファラー謹製弾頭を使用可能で、最大装弾数は１２＋１発。７０インチバレルで重量は７６０グラム～４２・３キログラム』

　だから、わからんと言っとるだろぅがぁ！
　兎に角かく、〝巨木･木龍りゅうのまもの〟を仕留めた・・・・のは、間違まちがいなくこの魔銃オルタネーターだ。
　つまりとんでもない代物しろものだし、実際じっさい、魔銃こいつが放はなった弾丸たまは、凄すさまじかった。

　銅あかがねの光沢混こうたくまじりの白金はっきん、輝かがやく希少金属製銃身アダマンタイトバレル。
　持ち手側てがわに向かって、レイダ材ざいの鮮烈せんれつな蒼色あおへと変化へんかする色彩いろは――
　とても火縄ひなわの類たぐいには見えん。ソレくらいに美うつくしい仕上しあがり。
　持ち手の上うえ、二股ふたまたに分かれた銃身じゅうしんの片方かたほうには、ビードロで出来できた珠たまのような物ものが埋め込まれている・・・・・・・・。

　ふぉん♪
『ヒント：軍用全天球レンズ／ミルスペックのパノラマ望遠レンズ。全景７２０°という非常に広い視野角を、取り込める光学素子』
　おれが作《つくった》った軍用ぐんよう――つまり、いくさ場で使つかうための、全天球すべてをみとおすレンズめだま。
　真後まうしろも見渡みわたせる、このビードロのお陰かげで、王女殿下おうじょでんかが作つくる魔導人形ゴーレムの目が尖らなくなった・・・・・・・。
　そのレンズをキュリキュリと外はずしてしまう、五百乃大角いおのはらが操あやつる浮かぶプロジェクション球ＢＯＴ。

　ガッチャコン――♪
　代わりに取り付けられたのは、ロコロ村で迅雷ジンライたちが――
　カックカクするのを防ふせぐために作つくった、〝ＳＤＫ・・・弾倉マガジン〟だった。
　演算単位とんちを上げる為ためのＳＤＫすだぁこ。
　言ってみりゃ、体の無いおにぎり・・・・・・・・や、鎧の無い轟雷・・・・・・みたいなもんだ。

「それで――長銃ひなわの頭あたまを良くして、どうしようって言うんだぜ？」
　そろそろ出ねぇと、やべぇだろぅが？
　一行表示ティッカー下したの数字すうじは、『変異種出現よりの経過時間　／　１８：０３』だし。

「このパノラマレンズおぉー、こっちにぃー戻もどしてっと――ぉ・」
　キュリキュリッ、カチン♪
　ＳＤＫエスディーケー弾倉マガジンに付いた丸穴まるあなに、はめ込まれる全天球パノラマレンズ。
　チキピピピピ――「ジャイロマスターフルサポートオプション、【弾道照準だんどうしょうじゅん】が可能かのうになりました」
　神々かみがみの道具どうぐから時々聞ときどききこえる、いつもの女おんなの声こえ。

「コレでこのスコープわぁ重力偏差じゅうりょくへんさとぉ、大気制動偏差たいきせいどうへんさとぉ、コリオリの力偏差ちからへんさにぃ対応たいおうしぃまぁしぃたぁ♪・」
　まてやぃ。轟雷ゴウライを着てねぇと……流石さすがにわからんぞ？

「はイ。弾道学バリスティクスコンポーネントノ更新完了こうしンかんりょう。惑星わクせいヒースにオける、自転速度じてんソくど、曲率きョくりつ、重力加速度じゅうりょくかソくど分布ぶんぷガ、射撃諸元算定データコンピュータプログラムへ入力インプットさレました。いつデも長距離ロンヅレンジ弾道バリスティック射撃シューティングでキます・」
　だから、人ひとの念話ねんわを聞けってんだ！

「うーむ――わかるかってんだぜ！　タターも居るんだ、もっとわかりやすく説明せつめいしろや」
　そうしろやぁー！
　おれが目を三角さんかくにして睨にらむと、浮かぶ珠と棒めがみどもはぷいと横よこを向いた。

「そうね、まずわぁ構かまえてみてよん♪・」
　テーブルに転ころがる、御神体ごしんたいさま。
　一仕事終ひとしごとおわった顔つらだがぁ、いくさはこれから・・・・だからな。

「は、はい！」
　チャキッ――――ヴォヴォヴォゥゥゥン♪
　やや腰こしを落とし、レンズを片目かためで覗のぞこうとして――
　いつもの所ところに、ソレ・・が無いのに気づく少女タター。
　のぞき穴あなのような今いままでのとは違ちがって、黒板ひょうじ（小ばん）は目を当てなくても見える。

　ソレを理解りかいした少女しょうじょが、上体あたまを持ち上げた。
　ヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォゥゥゥゥゥウゥン♪
　唸うなりを上げる長銃じゅう。

　ヴュザザザッ――ヴィィ♪
　長銃ちょうじゅうに付けられたＳＤＫエスディーケー弾倉マガジンの縁ふち、小ちいさな黒板がめん。
　黒板そこに映うつし出されているのは、女神像めがみぞうの間の壁かべ――
　其処そこに張り付く黄緑色おにぎりが見えた。
　画面くろいたの色味いろが緑色みどりいろで、映いつし出されていても――
　その悪目立わるめだちする色いろは健在けんざいで――

「みゃにゃぎゃにゃぁ？・」
　タターの背後うしろに集合しゅうごうするおれたち。
　ばかやろぅ、押すなや！
　オルコトリアは嵩張かさばるんだから、真ん中なかに陣取じんどるんじゃねぇやい！
　逞たくましい腕うでを頭あたまで押しのけ、長銃スコープに捉そらえられた強化服自律型シシガニャンを、じっと見た。

「ひと言で言うならぁ、〝山向こうの標的・・・・・・・を目で見て、直に・・捉とらえられるのわよ♪・」
　ばかやろぅ、面妖めんようなことを言うんじゃねぇやい！

「山向やまこうの……的まとに当てる？」
　少女しょうじょタターの首くびが傾かたむくと――
　表示板くろいたの下したに付いた小ちいさな丸棒ぼうに、少女タターの指ゆびが触れた。

　それは〝魂徒労裏コントローラー〟や〝もちコン〟に付いたのと、同おなじ棒ぼうだ。
　ふぉん♪
『ヒント＞＞コントローラー／テレビゲームや、自走する無線機器などを操作するための機器
　　　　＞＞もちコン／４Ｄ超音波フェーズドアレイモジュール付き光源ユニット。照らした使い捨てシシガニャンを操るためのコントローラー』

　ソレに気づいた彼女タターが――ウィィイィィッ。
　棒ぼうを横よこに倒たおすと――ヴュザザッ♪
　どういう訳わけか、タターの背後はいごに立つオルコトリアの――
　背中が見えた・・・・・・。

　　　§

　おれたちは、三方さんぽうに分かれることになった。
　今回こんかいは時間じかんとの勝負しょうぶだ。流石さすがに子供らわらしどもを連れて行く、余裕よゆうは無い。
　そして、子供らわらしどもや森の主ファローモの子供らむすめたちを守まもるために、此処ここにも戦力せんりょくを置いていかないといけない。
　そのための〝魔獣まじゅうオルタネーター・弾道ＳＰなんたらだ。
　これで遊撃班ゆうげきはんの二人ふたりに、ファローモのお宿やどを守まもりつつ――
　櫓やぐらの上うえから、東西両方とうざいりょうほうの変異種バリアントを狙ねらってもらうことが出来できる。

　ロォグと五百乃大角いおのはらを箱に詰めて・・・・・、長銃オルタネーターやルードホルドや迅雷ジンライで撃ち出す・・・・ことも考えたが――
　撃ち出したときの勢いきおいで、まずお猫さまロォグが死ぬらしい。
　しかも、その速はやさで打ち出すくらいなら、ルードホルドで高高度馬車こうこうどばしゃ（猪蟹屋ししがにやの壊こわれない馬車ばしゃ）を引っ張った方ほうが……早はやく着くそうだ。


「私わたくしは蟹かにが心底しんそこ、恐おそろしいですわっ！」
　そう怯おびえる悪逆令嬢ロットリンデのため、タターに長銃ちょうじゅうで変異種てきのすがたを、山なりに見てもらった・・・・・・・・・・。
　ヴュザザザッ――ヴィィウィィィィィィィイィィィィィッ♪

「なんだぜこりゃ……芋いもか？」
「お団子だんご……ではないでしょうか？」
「いやいや、こりゃぁ……旨うまい酒さけが入はいった大樽おおだるだぜ？」
「きっと……甘あまいお菓子かしのぃ？」
　流石さすがに遠すぎる・・・・のか――いつまでたっても、角張った芋か団子・・・・・・・・にしか見えなかった。

　ふぉふぉん♪
『＞＞超広角映像の解像度を上げるためには、増設したＳＤＫ弾倉の強化学習が必要です』
　はぁ？　時間じかんが掛かるってことか……それじゃ意味いみねぇんじゃね？

「超解像度化アップスケーリングのためのデータセット構築こうちくまで、多少たしょうのお時間じかんが掛かるわよぉーん♪・」
　わからんし、それじゃ意味いみねぇんじゃね？
　ふぉん♪
『イオノ＞＞実戦投入すればするほど、早く正確になるわよ』
　ぬぅ、神々かみがみの頓知とんちわぁ、いちいち修行しゅぎょうが必要いるてぇのがぁ――
　便利べんりなのか不便ふべんなのか、いまいちわからんなぁ！

　猪ししだか蟹かにだか不確ふたしかな以上いじょう、恨うらみっこなしと言うことで――
　リスト分けは当初とうしょのまま、ロットリンデたっての希望きぼうで、向かう方角さきが入れ替えられた。

　シュドドドンッ――――!!!
　天てんへ向かって無造作むぞうさに放はなたれる、魔銃の咆哮オルタネーター！
　ソレを合図あいずに、風神ふうじんに跨またがった轟雷おれと、他ほか１０名めいが西にしへ。

　シュドドドンッ――――!!!
　辺境伯へんきょうはく名代みょうだいルリーロさまと他ほか１１名めいも、東ひがしへ向かう。

　　　§

「ブモォォォォォォォッォォォォォォッ!!」
　まさかの、巨大きょだいモクブート。
　西にしへ向かった、おれたちの前まえに姿すがたを現あらわしたのは――
　猪ししの方ほうだった。

「向こうは、さぞかし……酷ひどいことになってるんだろぅなぁ」
　おれたちが、変異種バリアントと遭遇そうぐうしてから約やく５分後ふんご。

　泥音どろおんの配置はいちとやらが完了かんりょうし――
「スピーカーホンで、お姫ひめちゃんと繋つなぐわよん♪・」
　五百乃大角いおのはらが板ぺらスマホを、リカルルと繋つないだ。

ーーー
・５０ｕａｓ／１２・７ミリ（５０口径）のカートリッジ弾規格のひとつ。ｕａｓは〝撃てば当たるイオノちゃんスペシャル〟の略。使用弾頭に構造上の制約は、ほぼ無い。
弾道学／バリスティクス。投石から砲弾、はては大陸間弾道ミサイルまで、ありとあらゆる飛翔体の挙動に関する学問。近年では宇宙開発的側面が強くなっている。
射撃諸元算定プログラム／瞬時に複雑な物理学的計算を行い、精密な射撃を可能にするデータコンピュータ。バリスティックコンピュータ。
高解像度化／画像や映像のピクセルを拡大し補完するプロセス。失われた変化の高い高周波部分をＡＩにより推定・復元することで、自然に解像度を上げる技術も含まれる。アップスケーリング。