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5:大森林観測村VSガムラン町
729:吠えろ魔銃オルタネーター、タターザカニスレイヤー
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「ザザザザッ――どっせぇぇぇぇぇぇぇぇいっ――――!!」
工房長の叔父にして、屈強な鍛冶方ワーフ。
小柄な体躯に似つかわしくない、その膂力。
ザッ――ガコンッ――振りあげられる、楔形のシルエット。
それはまさに、鉄杭であり鉄塊であり――
狙い定めた切り株を粉砕するには過剰な、攻撃力を秘めていた。
ザザヒュゥ――ガキガギギィィィンッ――――!
鉄杭型の魔法杖は、無骨な手甲で地面に打ち込まれた!
ザヒッ――ゴッバカン――割れる大きな切り株!
比類なき腕力、そして背筋力が――
巨大な鉄塊を地に沈める!
ザヒュザザッ――ゴッゴゴゴゴゴゴ、グゥゥゥゥゥヮァァァァァァアッァ!
その衝撃は地面を、水面のように波打たせた。
広がっていく巨大な古代魔術、方陣結界ピクトグラム。
「ザザッ――あわわわわっ! ワーフさぁん!」
凄まじい振幅が近くに居た村長を――地に転がした!
「ザザザッ――キ゜ュキ゜チキ゜ッ、ぷるんぷるんぷるるるっ!」
地を這う振幅。捉えられた巨大蟹が、震える鳴き声を発し――
硬いはずの蟹の、真っ青な甲羅を振幅させる。
ぷるんぷるんと震える、蟹の鋏からスルリと、リカルルが落ちた。
「ザザヒュ――っに゜ゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
蟹ほどではないものの、ご令嬢の声も震えていたが――
ソレは恐怖や怒りや驚きなどの精神的な物では無く、物理的な原因に因るものだ。
「ヒュザザッ――っつっはぁぁぁぁぁぁぁあぁぁっ!!!」
ニゲル青年が、すかさずキャッチする。
ザヒュ――ガサガサ、ガサササッ♪
同時に、やわらか~く震える蟹脚の下から、蟹のように這い出すのは――
傾国の魔物にして、吸血鬼令嬢とまで謳われた淑女。
ザザザッ――パタパタパタタタッ!
倒れた村長から、板きれのような物が地を這い、やがて――
「ザザッ――んにゃわ゜――?」
ロットリンデを、飲み込んだ。
§
ドローンから送られてくる空撮映像の中、お嬢さま二人の身柄が拘束……保護され――――ォォゥン♪
ドワーフ族が放った古代魔法が、一瞬で縮まり消えた。
「(シガミー、〝超特選洞窟蟹|(変異種)〟の軟体化が解けました)」
おう、そうらしい。
「ザヒュヒュザッ――ギギュギュイィィィィィッ――ギュチギチッ、ぶくぶくぶくくっ!」
地を踏み鳴らし、巨大鋏を振り上げ――
ガッチン――ガガッチィィン!
「ウケケケッ、ウケケケケケケケッ――――巨大蟹が怒ってるぅ件にぃ、つぅいぃてぇぇー♪」
その笑い方は止めとけ、妖怪さまよ。
だが巨大蟹め、取って置きの獲物を奪われて――
生意気にも、怒ってやがるっ!!!!
「タター、オルコトリア、今だぜっ!――ニャァ♪」
「ザッ――ははーい?」
何かを確認するような、少女メイドの声。
「ザザザッ――目標到達まで、10秒」
何かを確認し、ソレを伝えてくる鬼娘受付嬢の声。
ふぉん♪
『>16秒前にローンチを確認。空撮映像から算出した弾道に、誤差は有りません』
タターが放った……既に放っていたらしい弾丸は、岩山が如き巨大な変異種を屠ったのと同じ。
1342パケタもする、超高額弾丸タイフーンだ。
強力な丸ぁ撃つ時に耳栓を繋いでると、耳栓が途切れたりするから――
適宜、迅雷が切ったりしてくれてたらしい。
ヴュウゥン♪
ヒュパパパッ――『▽――HCV000002』あった。
積層モニタの0番から、虎型モニタの12番――
小地図の真ん中を目指して、飛んで来てる。
「ザザヒュッ――ギュギッチリッ!?」
蟹が目を伸ばした。
ぶくぶくぶくくくふっ?
泡を吹き、西の空を見上げる。
ザザッ――ぱっこぉぉぉぉぉぅん!
面白ぇ風音が、聞こえた。
疎らな雲を突き抜け、流れ落ちてゆくのは――
1本の風雲。
ゴッバァァァァァッ――――フフォフォフォフォフォッォォォッ!
その先端が幾重にも、分かたれていく。
その数は、全部で10。
ヒュザッ――ドガガガドッガガ、ゴキャキャキャキャッ!!!!!!!!
蟹の凄まじい動き。分身した弾頭を、避けようとしているのだろうぜ。
ヴォヴゥンッ、ヴゥンッ――――!
あまりの速さで巨大な甲羅が、透けて見えた。
ザザザザザッ――ガッキュキュキュキュキュキュゥゥゥゥゥンッ――――!!!!!!!!
巨大鋏で受け止められる、戦術級高極超音速弾、高極超音速飛翔体。
ザザッ――ぶくくぶくくくくくっ!?
蟹やルリーロが薙ぎ倒した倒木が――ザザザザッ――パッコォォオォォォォッォォォォォンッ!
辺り一面が怪音とともに薙ぎ払われ、真っ平らになった。
ザザザッ――ヴォヴォパパパッァァァァッ――――――――!!!
弾丸から棚引く風雲の残りは、九つ。
スゥゥ、ウゥゥ、スススゥスススッスゥ――キュルリュッキュルッ!
小地図に軌跡が、描かれていく。
その巨大な縁取りの周りを、何度も縫うように。
こいつぁ、五百乃大角が算出した、魔弾タイフーンの弾道予測だ。
「んーん。今度はあたくしさまは、関知してないわよ♪」
なんだと?
こっちの岩山と比べたら、随分と小せぇ巨大蟹を狙うってぇのに――
お前さまは、手伝わねぇとか――また、おサボりかぁ!?
『◇¹』
いやまて?
ちゃんとロックオンカーソルが出た。
「ザザヒュゥ――狙まーす!」
実に覇気のねぇ声。
タターが魔銃で、狙ったようだが。
『◇²』『◇³』『◇⁴――』
一発目の標的は、蟹脚の左後ろ。
2、3、4発目は、左側の蟹脚の全てに、狙いが付けられた。
ふぉん♪
『ゴウライ>タター、この距離で、ちゃんと当てられるのか?』
敵の気配を感じ取り、ロックオンカーソルの数を増やしていくのは――
轟雷なら考えるまでもなく、鎧が勝手にやってくれるが。
「ザヒュッ――やってみないとわかんない……って、ローグちゃんが言ってた」
案の定、人ごとのように言いやがるぜ。
『◇⁵』『◇⁶』『◇⁷』『◇⁸――』
5、6、7、8発目は、右側の蟹脚の全部に。
「ザザッ――むしろ当たるかどうかは、神の采配――緑色レーザー発光モジュール――ハロウィン限定スイーツ――博士後期課程支援給付制度――ニャッ♪」
ネコ声を急に聞かされると、驚くだろぉが。
神の采配てのは、文字通りに美の女神、五百乃大角の事を言っている……と思う。
『◇⁹――』
9発目は巨大蟹鋏に張り付いた。
挟まれてなお、ぱっこぉぉぉぉぉぅんと風雲を発する弾頭(9)は――超頑張ってる。
「ちょっと、お猫さまっ! 人聞きの悪いことを言わないでちょぉだい! オルタネーターの使用者を選んだのわ、お猫さまわよ!?」
何だかわからんが責任の所在を、押しつけ合うんじゃぁねぇやい。
ヒュザッ――ドガガガドッガガ、ゴキャキャキャキャッ!!!!!!!!
蟹の凄まじい動き。蟹脚が弾頭を避け、跳ねるように蠢く。
蟹脚は、もはや人の目には映らない速さに達している。
ヴォヴゥンッ、ヴゥンッ――――!
チラつく巨大な甲羅が、ゆっくりと逆回転を始めた。
『◇⁵』――回転の基点にした、〝淑女を踏みつけていた〟右側後ろ蟹脚。
その1本の蟹脚の蒼色が、空中に残った。
それはまるで景色に浮く奇岩のようにも見え、とても奇妙に思えた。
スゥウゥ――キュルリュッ!
8個の動体検知は弧を描き、弾道予測が空へと戻っていく。
機動性を高めていく、1342パケタ。
推定的中率によって揺らぐ色彩が、青へと変わっていく。
それはまるで、蒼い彼岸花だった。
ふぉん♪
『ゴウライ>>おい迅雷、例の旋回半径はどうなってる?』
天上の花を形作る曲線の半径は、精々が15メートルしかねぇぞ!?
弾丸の旋回半径は、約400メートルだったはず。
ふぉん♪
『>>最小旋回半径は作戦維持のため、運動エネルギーを確保するための指針です』
はぁ? そいつぁ、どーいう?
ふぉん♪
『イオノ>>ウケケッ、温存するつもりが無ければ、いくらでも高機動力を発揮するわよ♪ お・か・わ・り?』
ふーん? うるせぇ。
おれがわかるのは、錫杖や短刀の間合いだけだ。
投げた後のことは到底、関知出来ん。
ザザッ――シュゴッ――シュシュシュシュシュシュシュン!
巨大蟹の頭の上を通り過ぎ、再び色を赤く染めていく――
弾頭(1~8)の、弾道予測。
ザザッザッ――ぱっこぉぉぉぉぉぅん――――ガギャギギャガギャギギギィィィンッ!!!!!!!!
急加速し、今度は全ての蟹脚を弾く、弾頭¹から弾頭⁸。
着弾の瞬間まで弾道予測は、赤いままだったが――
見事に、ぶち当てやがった!
ザザザッ――ドッガガァァァァンッ――――ゴッズウズズズゥゥン!
巨体が、ひっくり返った!
「ザザッヒュ――やったぁ、当たったぁよ、オルコトリアさん♪」
「ザヒューゥ――こら、まだとどめを刺してないでしょう?」
弾けるような声と、それを窘める声が聞こえ――
「ザザヒュッ――ギュギッチリッ!?」
蟹が巨大な鋏脚で、甲羅を起こそうとし――
途中で動きを止めて、目を伸ばした。
ぶくぶくぶくくくふっ?
泡を吹き、空を見上げている。
ザザッ――ぱっこぉぉぉぉぉぅん!
また面白ぇ風音が、聞こえた。
上空から、流れ落ちてゆくのは――
1本の風雲。
『▼▼――』
ソレは、さっきまで巨大蟹挟みに挟まれていた――
弾頭⁹に張り付いた、動体検知。
人の目には見えない音速の弾丸が、巨大蟹の中枢神経を破壊した。
「迷わず成仏してくれやぁ――ニャァ♪」
そして勢いが余ったのか、蟹の眉間|(?)から飛び出してきた弾丸が、
たまたま目の前に居た、ニゲル青年の横っ腹に命中した。
一瞬焦ったが、猪蟹屋標準制服である執事服を着てる以上、命に関わることはあるまい。
「ザヒュッ――ちょっと、なんですのっ!? わ、私そんなに重くは、ございませんわよっ!?」
抱えていた思い人を落とし、詰られる負傷者。
いつものことではあるが――迷わず成仏してくれやぁ。
§
しかし実に恐ろしきは、遊撃班の奴らだ。
五百乃大角無しでも、アレだけのことが出来る。
そして東西両方の変異種を、とうとう一人で止めを刺しちまったってこたぁ――
またLVアップの鐘に、苛まれることだろう。
アレはうるせぇから遊撃班の耳栓は、切っとけ。
「あああああああああっ――こらっ! おにぎりっ、蟹さまの御味噌が零れるまえにっ、お早めに、格納してわよっ!」
鬼の形相の女神御神体。必死か。
ふぉふぉふぉん♪
『超特選大森林洞窟蟹|(変異種)【蒼い奏者】/
鋏脚と甲羅を持つ、十足。食用甲殻類としては、史上最大級の大型種。
脱皮直後の洞窟蟹に大森林における、龍脈由来の蟹質とでも呼ぶべき、
活力形質を取り込むことにより、無くした鋏脚を再生し巨大化させた、
甲羅は非常に硬く、物理・魔法共に堅牢。
身だけでなく内蔵も美味で、濃厚な天然のスープとなる。
鋏脚と甲羅は、耐物・耐魔法素材として重宝される。
但し、この蒼く超硬質な甲羅を開くには、同じく蒼く刀身を染めた、
SSS級武器が必要。』
ふむ。迅雷が表示したのは、そんな食材情報。
〝特選洞窟蟹【大】〟と、そう変わらんな。
空撮映像の中、すぽんと姿を消す巨大蟹。
はっははっ、巨大蟹の出汁には、おれも料理番として興味がある。
「全く本当に、忙しねぇ一日だったぜ!」
大森林に来てからこっち、良いことも多少はあったが――
概ね、危険で辛くて面倒なことばかりだったからな。
どうにかして日がな一日、ずーっと寝て過ごしてぇ。
「はハはは、こちラの変異種ノ解体だケでも、数日はかかルと思われ――」
やい迅雷、笑ってんじゃねぇー!
目の前にそびえる猪の、ひと山さえなかったら――
一休みくらい、出来たんだろぉがよぉ。
工房長の叔父にして、屈強な鍛冶方ワーフ。
小柄な体躯に似つかわしくない、その膂力。
ザッ――ガコンッ――振りあげられる、楔形のシルエット。
それはまさに、鉄杭であり鉄塊であり――
狙い定めた切り株を粉砕するには過剰な、攻撃力を秘めていた。
ザザヒュゥ――ガキガギギィィィンッ――――!
鉄杭型の魔法杖は、無骨な手甲で地面に打ち込まれた!
ザヒッ――ゴッバカン――割れる大きな切り株!
比類なき腕力、そして背筋力が――
巨大な鉄塊を地に沈める!
ザヒュザザッ――ゴッゴゴゴゴゴゴ、グゥゥゥゥゥヮァァァァァァアッァ!
その衝撃は地面を、水面のように波打たせた。
広がっていく巨大な古代魔術、方陣結界ピクトグラム。
「ザザッ――あわわわわっ! ワーフさぁん!」
凄まじい振幅が近くに居た村長を――地に転がした!
「ザザザッ――キ゜ュキ゜チキ゜ッ、ぷるんぷるんぷるるるっ!」
地を這う振幅。捉えられた巨大蟹が、震える鳴き声を発し――
硬いはずの蟹の、真っ青な甲羅を振幅させる。
ぷるんぷるんと震える、蟹の鋏からスルリと、リカルルが落ちた。
「ザザヒュ――っに゜ゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
蟹ほどではないものの、ご令嬢の声も震えていたが――
ソレは恐怖や怒りや驚きなどの精神的な物では無く、物理的な原因に因るものだ。
「ヒュザザッ――っつっはぁぁぁぁぁぁぁあぁぁっ!!!」
ニゲル青年が、すかさずキャッチする。
ザヒュ――ガサガサ、ガサササッ♪
同時に、やわらか~く震える蟹脚の下から、蟹のように這い出すのは――
傾国の魔物にして、吸血鬼令嬢とまで謳われた淑女。
ザザザッ――パタパタパタタタッ!
倒れた村長から、板きれのような物が地を這い、やがて――
「ザザッ――んにゃわ゜――?」
ロットリンデを、飲み込んだ。
§
ドローンから送られてくる空撮映像の中、お嬢さま二人の身柄が拘束……保護され――――ォォゥン♪
ドワーフ族が放った古代魔法が、一瞬で縮まり消えた。
「(シガミー、〝超特選洞窟蟹|(変異種)〟の軟体化が解けました)」
おう、そうらしい。
「ザヒュヒュザッ――ギギュギュイィィィィィッ――ギュチギチッ、ぶくぶくぶくくっ!」
地を踏み鳴らし、巨大鋏を振り上げ――
ガッチン――ガガッチィィン!
「ウケケケッ、ウケケケケケケケッ――――巨大蟹が怒ってるぅ件にぃ、つぅいぃてぇぇー♪」
その笑い方は止めとけ、妖怪さまよ。
だが巨大蟹め、取って置きの獲物を奪われて――
生意気にも、怒ってやがるっ!!!!
「タター、オルコトリア、今だぜっ!――ニャァ♪」
「ザッ――ははーい?」
何かを確認するような、少女メイドの声。
「ザザザッ――目標到達まで、10秒」
何かを確認し、ソレを伝えてくる鬼娘受付嬢の声。
ふぉん♪
『>16秒前にローンチを確認。空撮映像から算出した弾道に、誤差は有りません』
タターが放った……既に放っていたらしい弾丸は、岩山が如き巨大な変異種を屠ったのと同じ。
1342パケタもする、超高額弾丸タイフーンだ。
強力な丸ぁ撃つ時に耳栓を繋いでると、耳栓が途切れたりするから――
適宜、迅雷が切ったりしてくれてたらしい。
ヴュウゥン♪
ヒュパパパッ――『▽――HCV000002』あった。
積層モニタの0番から、虎型モニタの12番――
小地図の真ん中を目指して、飛んで来てる。
「ザザヒュッ――ギュギッチリッ!?」
蟹が目を伸ばした。
ぶくぶくぶくくくふっ?
泡を吹き、西の空を見上げる。
ザザッ――ぱっこぉぉぉぉぉぅん!
面白ぇ風音が、聞こえた。
疎らな雲を突き抜け、流れ落ちてゆくのは――
1本の風雲。
ゴッバァァァァァッ――――フフォフォフォフォフォッォォォッ!
その先端が幾重にも、分かたれていく。
その数は、全部で10。
ヒュザッ――ドガガガドッガガ、ゴキャキャキャキャッ!!!!!!!!
蟹の凄まじい動き。分身した弾頭を、避けようとしているのだろうぜ。
ヴォヴゥンッ、ヴゥンッ――――!
あまりの速さで巨大な甲羅が、透けて見えた。
ザザザザザッ――ガッキュキュキュキュキュキュゥゥゥゥゥンッ――――!!!!!!!!
巨大鋏で受け止められる、戦術級高極超音速弾、高極超音速飛翔体。
ザザッ――ぶくくぶくくくくくっ!?
蟹やルリーロが薙ぎ倒した倒木が――ザザザザッ――パッコォォオォォォォッォォォォォンッ!
辺り一面が怪音とともに薙ぎ払われ、真っ平らになった。
ザザザッ――ヴォヴォパパパッァァァァッ――――――――!!!
弾丸から棚引く風雲の残りは、九つ。
スゥゥ、ウゥゥ、スススゥスススッスゥ――キュルリュッキュルッ!
小地図に軌跡が、描かれていく。
その巨大な縁取りの周りを、何度も縫うように。
こいつぁ、五百乃大角が算出した、魔弾タイフーンの弾道予測だ。
「んーん。今度はあたくしさまは、関知してないわよ♪」
なんだと?
こっちの岩山と比べたら、随分と小せぇ巨大蟹を狙うってぇのに――
お前さまは、手伝わねぇとか――また、おサボりかぁ!?
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ちゃんとロックオンカーソルが出た。
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実に覇気のねぇ声。
タターが魔銃で、狙ったようだが。
『◇²』『◇³』『◇⁴――』
一発目の標的は、蟹脚の左後ろ。
2、3、4発目は、左側の蟹脚の全てに、狙いが付けられた。
ふぉん♪
『ゴウライ>タター、この距離で、ちゃんと当てられるのか?』
敵の気配を感じ取り、ロックオンカーソルの数を増やしていくのは――
轟雷なら考えるまでもなく、鎧が勝手にやってくれるが。
「ザヒュッ――やってみないとわかんない……って、ローグちゃんが言ってた」
案の定、人ごとのように言いやがるぜ。
『◇⁵』『◇⁶』『◇⁷』『◇⁸――』
5、6、7、8発目は、右側の蟹脚の全部に。
「ザザッ――むしろ当たるかどうかは、神の采配――緑色レーザー発光モジュール――ハロウィン限定スイーツ――博士後期課程支援給付制度――ニャッ♪」
ネコ声を急に聞かされると、驚くだろぉが。
神の采配てのは、文字通りに美の女神、五百乃大角の事を言っている……と思う。
『◇⁹――』
9発目は巨大蟹鋏に張り付いた。
挟まれてなお、ぱっこぉぉぉぉぉぅんと風雲を発する弾頭(9)は――超頑張ってる。
「ちょっと、お猫さまっ! 人聞きの悪いことを言わないでちょぉだい! オルタネーターの使用者を選んだのわ、お猫さまわよ!?」
何だかわからんが責任の所在を、押しつけ合うんじゃぁねぇやい。
ヒュザッ――ドガガガドッガガ、ゴキャキャキャキャッ!!!!!!!!
蟹の凄まじい動き。蟹脚が弾頭を避け、跳ねるように蠢く。
蟹脚は、もはや人の目には映らない速さに達している。
ヴォヴゥンッ、ヴゥンッ――――!
チラつく巨大な甲羅が、ゆっくりと逆回転を始めた。
『◇⁵』――回転の基点にした、〝淑女を踏みつけていた〟右側後ろ蟹脚。
その1本の蟹脚の蒼色が、空中に残った。
それはまるで景色に浮く奇岩のようにも見え、とても奇妙に思えた。
スゥウゥ――キュルリュッ!
8個の動体検知は弧を描き、弾道予測が空へと戻っていく。
機動性を高めていく、1342パケタ。
推定的中率によって揺らぐ色彩が、青へと変わっていく。
それはまるで、蒼い彼岸花だった。
ふぉん♪
『ゴウライ>>おい迅雷、例の旋回半径はどうなってる?』
天上の花を形作る曲線の半径は、精々が15メートルしかねぇぞ!?
弾丸の旋回半径は、約400メートルだったはず。
ふぉん♪
『>>最小旋回半径は作戦維持のため、運動エネルギーを確保するための指針です』
はぁ? そいつぁ、どーいう?
ふぉん♪
『イオノ>>ウケケッ、温存するつもりが無ければ、いくらでも高機動力を発揮するわよ♪ お・か・わ・り?』
ふーん? うるせぇ。
おれがわかるのは、錫杖や短刀の間合いだけだ。
投げた後のことは到底、関知出来ん。
ザザッ――シュゴッ――シュシュシュシュシュシュシュン!
巨大蟹の頭の上を通り過ぎ、再び色を赤く染めていく――
弾頭(1~8)の、弾道予測。
ザザッザッ――ぱっこぉぉぉぉぉぅん――――ガギャギギャガギャギギギィィィンッ!!!!!!!!
急加速し、今度は全ての蟹脚を弾く、弾頭¹から弾頭⁸。
着弾の瞬間まで弾道予測は、赤いままだったが――
見事に、ぶち当てやがった!
ザザザッ――ドッガガァァァァンッ――――ゴッズウズズズゥゥン!
巨体が、ひっくり返った!
「ザザッヒュ――やったぁ、当たったぁよ、オルコトリアさん♪」
「ザヒューゥ――こら、まだとどめを刺してないでしょう?」
弾けるような声と、それを窘める声が聞こえ――
「ザザヒュッ――ギュギッチリッ!?」
蟹が巨大な鋏脚で、甲羅を起こそうとし――
途中で動きを止めて、目を伸ばした。
ぶくぶくぶくくくふっ?
泡を吹き、空を見上げている。
ザザッ――ぱっこぉぉぉぉぉぅん!
また面白ぇ風音が、聞こえた。
上空から、流れ落ちてゆくのは――
1本の風雲。
『▼▼――』
ソレは、さっきまで巨大蟹挟みに挟まれていた――
弾頭⁹に張り付いた、動体検知。
人の目には見えない音速の弾丸が、巨大蟹の中枢神経を破壊した。
「迷わず成仏してくれやぁ――ニャァ♪」
そして勢いが余ったのか、蟹の眉間|(?)から飛び出してきた弾丸が、
たまたま目の前に居た、ニゲル青年の横っ腹に命中した。
一瞬焦ったが、猪蟹屋標準制服である執事服を着てる以上、命に関わることはあるまい。
「ザヒュッ――ちょっと、なんですのっ!? わ、私そんなに重くは、ございませんわよっ!?」
抱えていた思い人を落とし、詰られる負傷者。
いつものことではあるが――迷わず成仏してくれやぁ。
§
しかし実に恐ろしきは、遊撃班の奴らだ。
五百乃大角無しでも、アレだけのことが出来る。
そして東西両方の変異種を、とうとう一人で止めを刺しちまったってこたぁ――
またLVアップの鐘に、苛まれることだろう。
アレはうるせぇから遊撃班の耳栓は、切っとけ。
「あああああああああっ――こらっ! おにぎりっ、蟹さまの御味噌が零れるまえにっ、お早めに、格納してわよっ!」
鬼の形相の女神御神体。必死か。
ふぉふぉふぉん♪
『超特選大森林洞窟蟹|(変異種)【蒼い奏者】/
鋏脚と甲羅を持つ、十足。食用甲殻類としては、史上最大級の大型種。
脱皮直後の洞窟蟹に大森林における、龍脈由来の蟹質とでも呼ぶべき、
活力形質を取り込むことにより、無くした鋏脚を再生し巨大化させた、
甲羅は非常に硬く、物理・魔法共に堅牢。
身だけでなく内蔵も美味で、濃厚な天然のスープとなる。
鋏脚と甲羅は、耐物・耐魔法素材として重宝される。
但し、この蒼く超硬質な甲羅を開くには、同じく蒼く刀身を染めた、
SSS級武器が必要。』
ふむ。迅雷が表示したのは、そんな食材情報。
〝特選洞窟蟹【大】〟と、そう変わらんな。
空撮映像の中、すぽんと姿を消す巨大蟹。
はっははっ、巨大蟹の出汁には、おれも料理番として興味がある。
「全く本当に、忙しねぇ一日だったぜ!」
大森林に来てからこっち、良いことも多少はあったが――
概ね、危険で辛くて面倒なことばかりだったからな。
どうにかして日がな一日、ずーっと寝て過ごしてぇ。
「はハはは、こちラの変異種ノ解体だケでも、数日はかかルと思われ――」
やい迅雷、笑ってんじゃねぇー!
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彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。
唯一のスキル《アイテムボックス》。
そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、
弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。
だがその裏で、
クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、
復讐の道を静かに歩み始めていた。
これは――
“最弱”と“最凶”が手を取り合い、
未来をやり直す物語
50歳元艦長、スキル【酒保】と指揮能力で異世界を生き抜く。残り物の狂犬と天然エルフを拾ったら、現代物資と戦術で最強部隊ができあがりました
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「命を捨てて勝つな。生きて勝て」
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高品質な食料、衛生用品、そして戦場の士気を高めるコーヒーと甘味。
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これは、熟練の指揮官が「残り物」たちを最強の部隊へと育て上げ、美味しいご飯を食べるだけの、大人の冒険譚。
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
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「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
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雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
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※表紙のイラストはAIによるイメージです
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