並(なみ)プロちゃんとわたボコる、原子回路設計(QCD)アライアンス

スサノワ

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わーくす

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「コレ、どうするんですか?」
 地味子ふつうがホワイトボードをクルリと回す。
 現れたのは昨日描いた、〝矢印群を迎え撃つなみプロちゃん〟の絵。

 ちなみにちゃぶ台の上の、朱色の巨大サイコロ(サイの目はない)に点灯する数字は『14:46』。
 本日の業務は午後からに変更したから、開始早々すぐオヤツどきになった。

「まあ理論は完成してるから、ソフトウェア担当の地味子ふつうと三日も詰めりゃ、必要なパーツの調達に入れるんだが――」
 ギギーィ――玄関ドアが開く音。昨日の今日で模型部の連中は来ないだろうし――後輩1ちがさきだな。

「あれ? 先輩――バリボリバリ――どうしたんですか? 会計アプリなんて使って珍し~――バリボリバリ」
 俺のコンソールをのぞき見しながら、ヤツはなんかむさぼってた。
「フン、大人には色々あんだよ……ソレうまそうだな、一つくれ」
 違崎ちがさきは菓子の袋を持ち上げ、俺の手から遠ざけた。
 そして、そのまま玄関へ逃走。
 菓子の一つくらいくれてもイイだろと思ったが、ヤツは大きな箱を抱えて戻ってきた。

「たくさん有るから、好きなのドーゾ」
 段ボール箱一杯に詰め込まれた銀色のパッケージ。印刷プリントはなく。インクジェット文字だけが刻印されている。

『並列プロジェクトⓇ〝MR実行部ちゃん〟瓦煎餅(イラスト焼印入り)』
『並列プロジェクトⓇ〝AR電影部くん〟角切りカスタードパイ(いちご味)』
 コッチのは『並列プロジェクトⓇ〝主幹部さん〟厚切りポテトチップス(沢庵炒飯味)』とか書いてあるし、ガチでうまそうじゃんか。
 かなり大きな段ボール箱の中には『納品書』と、正式な書面による『並列プロジェクト登録商標使用許諾申請書』と、丁寧な手書きの『申請お願い書き』まで入ってた。

「おまえコレ、どっから持ってきた!? ヴォストーク食品工業って結構デカい会社だろっ!?」
 新歓カンファレンスのあと、大学広報からの執拗な取材攻勢をうけたヒープダイン社は、社員(総勢二名。つまり俺と地味子ふつう)のプロフィールを公開した。
 厳密には地味子ふつうは客員扱いで正式な社員ではないが、主業務を担っている以上、外すことは出来ない。

 そして、なみプロちゃん達もモチロン社員の一員(兼、主力製品)である。
 並列プロジェクトの概要は、主幹部・実行部・電影部の簡単な性能表とともに、大学のサイトフレームに掲載済みだ。

 つまり……なみプロちゃん達(3~6号機は非公開だが)の個体名やスペックの概要は、すでに社外秘の情報では無い。
 ないけど……一体どういうコトだ?
 銀色の袋をひとつ手にする。

「んん? ちょっとまって二人とも――ぺち、ぺちり!」
 俺と違崎ちがさきは手をひっぱたかれ、お菓子を奪われた。

「コレ食べないでっ! たぶん、テイスティング用の試作品よ!」

      §

「まったく、おまえは時々すごいことするよな……そもそも、イチ学生がどーやってアポ取ったんだ?」
「昨日の模型部君達といい、ひょっとして並列プロジェクトの……広報を・・・してくれてるの?」
「えー、だって。いつも先輩にタダ飯食らいは許さんぞって怒られるから。給料分は・・・・働こーかなーって……」

「お給料? 違崎ちがさき君って、ヒープダインの社員なの?」
「いやいやいや、会社設立ん時にチョット名義借りた程度で、その分の謝礼は飯オゴってやったし――」

「えー? そんなことないっしょ? ちゃんと新生ヒープダイン社から入金されてましたよ?」
 個人口座アプリを開いてみせる後輩1兼、幽霊社員ゴーストワーカー
「あー、言葉に気をつけろよ。HeapDyneヒープダイン™は別に潰れてた訳じゃないからな――」

『入金:○月○○日/ヒープダイン○月分 2,400Ptsポイント
 マジだ。マジで入金されてやがる。
 先月以前は入金されてないところを見ると、ひょっとして……この間、特許関連の手続きした時、なんか間違ったか?
 ……相当慌ててたしな。

「コレって無登録制の個人口座でしょ? 公開レートは一律――今日だと62円だから……」
 地味子ふつうがスマホでポイント単価@Ptsを検索してる。
 俺もコンソールで別タブを開き計算――ピコン♪

「148,800円だと!? やい違崎ちがさき! 幽霊社員のくせに、社長より高給取りじゃねーか! 業務上横領だ!」
「よくわかんないけど、へっへーん、もう使っちゃったもんねーだ!」
 尻をたたいてみせる後輩1改め幽霊社員1。

 ん? 社員1のベルトにぶら下がってるのは、俺のと色違いオソロ小型鞄スコッシュ
 アレは携帯ゲーム機の特別パッケージ版に付いてきたヤツで、ジキトーチカ社の防弾性能と開発アプリへのアクセス権もついてたはず――しめて15万円なり
「おっまえ、全部使ったのか!」

「コレでもう、後れを取ることはありませんから。フフン♪」
 携帯ゲーム機を抜き差しするサマはまるでガンマン……ではなく、尻がかゆい人か、来園者を馬鹿にする小猿にしか見えない。
 昨日の惨敗を、ゲーム機のせいにしやがったな。そんなだからオマエは勝てないんだ。

「二人とも、ふざけてる場合じゃないでしょ。それと先輩、お小遣い程度の微々たる金額でオロオロしないでください。ヒープダイン社の信用にも関わりますので、どっしりと構えていていただかないと」

「微々たる……金額? 俺の先月の収入よか多いんだけど……ボソリ」
 なみプロちゃんの小遣いにも驚いたが、所詮は金持ちの考えることだ。
 いま何か言うと、格差に打ちのめされる気がするから、言わないでおく。

 ――カタカタッ、タン♪
 開いていた会計アプリを、監査モードに切り替えた。

 特別会計として計上される各種助成金は、早々に打ち切られている。
 いまヒープダイン社を動かしているのは、俺の個人資産|(それほどはない)と、WEB小説への支援おひねりだけだった。開業当初に売れた製品代金は、原子回路設計のための設備投資でほとんど消えたし。

 昨日、一千万いっぽんなら融資するとか言ってたよな。
 本当に金持ちどもの金銭感覚は、どうかしてる。
 俺は、自宅兼作業場ショールームを見回す。
 自宅としてならとても借りられない、イイ物件だ。

 管理費込みで月額13万円。起業当初のチョットしたコネで、コレでも相当安く借りられているのだ。
 このまま、何の成果も出ないまま更新時期が来たら、ショールーム移転も考えなきゃならない。
 本格的なバックアップ設備が整った、この物件なしでは、俺や地味子ふつうの仕事は成り立たない。
 いや、地味子ふつうは自宅の専用地下研究室で、研究開発三昧だろうが、コッチは途端に路頭に迷う。
 大学に戻れば、最新機材も使いたい放題だが、そもそも戻る役職ポストがあるなら、俺は起業していなかったかもしれないのだ。

 コレはいけねえ。原子回路の失敗続きで半分ヤケになってたが、いまウチには地味子ふつうも居るし、なみプロちゃんだって居る。
 真面目に、ここしばらくの弊社の取引状況をあらためることにした。

      ¥

なみプロちゃんの小遣いって、地味子ふつうから出てるんだろ?」
 聞くまいと思っていたことを、仕方なく確認する。
 もう、半年くらい前から尻に火が付きっぱなしなのだ。
 そのことを優秀な会計ソフトが、売れないWEB小説家に叩きつけてくる。
 格好が悪いとか言ってる場合じゃなくなった。

なみプロちゃんに関する全責任はウチが持つって話だったけどさ――――さっき聞いた金額なんてとても、いまは出してやれん…………ごめんねなみプロちゃん」
 いつの間にかコンソール横に置かれている黒い巨大サイコロ(サイの目はない)に、真摯に謝った。

 伊達や酔狂で、学食に入り浸っていた訳ではない。
 掛け値なしに食い詰める直前だったのだ。
 というか、地味子ふつうなみプロちゃん達が来て俺のやる気が復活しただけで、金銭的な問題は何一つ解決していない。

「えーっ!? なんですかー? いま、試食テイスティングのための資料、印刷しててそっちの声が聞こえないんですけどーっ?」
 耐震ラックの向こう側、クローゼットとかが有るL字に曲がった空間の突き当たり。
 あの辺は確かに、玄関チャイムも聞き取りづらかったりする。

 ドサリ――ふーっ!
「今日中にコレ、やっちゃいましょう」
 うわ、地味子ふつうがちゃぶ台に置いたのは、結構な枚数の(業務提携アライアンス契約書類には及ばないけど)アンケート書類だった。

 アンケートには、『味』『見た目』『食感』『成分表への要望』『そのほかのご提案』などなど。
 すっげー細かい項目が、試作品ごとに用意されていた。
違崎ちがさきは一体どういう契約を取ってきやがったんだ? すでに相当、話が進んでるだろコレ!?」

「あとで、要約したものをお渡ししますが――仮契約内容はノーリスクミドルリターンと破格の条件でしたので、このまま進めても問題ないと思いますよ」

「ソウなの? なら悪いんだけどさ、この案件、お任せしてもイイでしょうか? 正直、商売のことはさっぱりわからん……すまん」
 昨日、怒られたばかりなので、どう言ったらいいのか悩んだけど、本当に商売関係はややこしくて、俺の手にはあまる。

「はい、わかりました。書類手続きなどはお任せください。金平かなひら代表となみプロちゃんの代理で動く場合には、両方に確認を取りますので、メッセージアプリへの返信等はお早めにお願いいたしますね」
 その視線が、俺を通って自分の肩に向く。
 髪どめに擬態できる黒い箱は今、俺の手元に来ている。
 その髪留めの残り。地味子ふつうのお下げを留めている、漆黒の六角ナットみたいなのの面の一つが点滅したチカチカ
 通話機能もあるのか。そろそろ取説か、仕様説明書リファレンスがほしいんだが、マジで。

「うん、たのむよ。じゃあ、後はオマエだ違崎ちがさき。いったいどーやって、こんな大手の食品会社に取り入った!? 洗いざらい吐くなら大目に見てやるから、ちゃんと正直に言えよ!」
「じゃあ、ちょっと待ってください。いま、日記出すんで――」
 悪びれるところがないから、イカサマで取り入ったり不正なことをしでかした訳ではないようだった。

 コツン。
 ん? 指先に当たる感触。
「どうしたの?」
 なみプロちゃんの機械腕にはレーザー発振装置だけでなく、各種の無接続アダプタが完備されている。

 俺はその、オレンジ色にブリンクする『eコネクト情報』を、コンソールから選択して実行した。

『【なみプロちゃん™】の【個人口座】および【所持ライブラリ一覧】へのアクセス権が譲渡されました.』
 ソレはなみプロちゃん法人格が持つQID証明コード(複製)だった。
 簡単に言うなら、違崎ちがさきがさっき開いた〝無登録の個人口座〟へのアクセスキーなんかと同じモノだ。

「わっ、何してんの!? コレ、俺にくれたらダメなヤツだろっ!」
「大声出さないでください。一体どうしたんですか?」
 なみプロちゃんをつかんで抱える地味子ふつう

なみプロちゃんの個人口座へのアクセス権に、HeapDyneヒープダイン社が追加されちまった」

「コラ、なみプロちゃん、コラッ! 管理者権限アドミニストレーターと個人口座へのアクセス権は、私以外の人には渡したらダメって宣言おやくそくしたでしょうっ?」
 例によって怖くはねえけど、マジで怒ってる。そりゃそうだ、AIだって生活をする以上、金はかかるのだ。

『ソンナ事はナい。チャンと、【ヒープダイン™】と【>DRETディーレットσシグマコロンバージョン13・000・0000000001/rスラッシュリビジョン0】は宣言されテイル・・・・・・・
 俺は、コンソール画面をさらに分割して、周囲のメッセージを時系列表示した。

 このQID・・・って、間違いなく俺んだろ?
 コレには、ヒープダイン社全ての権限を持たせてある。
 念のため、自分のQIDアカウントに接続して、新規接続項目である『New』マークを検索する。
『該当する項目はありません――ピロン♪』
 コレは、なみプロちゃん(AI)がウソ・・をついた事を表していた。

なみプロちゃん。ウソはイカン、ウソは――地味子ふつう、どうなってる?」
 そして、虚偽申告ウソは、目先のエラーなんかよりも、やっかいな事柄だ。
 ――コトリ。
 ちゃぶ台の上。朱色の箱の隣にそっと置かれる黒い箱。

「強制コード104。コール、『並列プロジェクト主幹部5847389Ttr:v0・000・4002002867/rスラッシュリビジョン1』!」
 地味子ふつうの強制コールにより召喚されたのは、なみプロちゃん主幹部のアイコン。

 ポポッ、ポポポポ、ポポッポポポ――
 タカタカタカタカ――ッターン♪
 地味子ふつうはスマホで、俺は軍用PCコンソールなみプロちゃんを問い詰めた。

 ――――シシシシ、シシシシッ♪
 静かな入力音。なみプロちゃん主幹部が、反証する。

『<音声データ xxxxxxxxxxxx_0000001.mp3>』
 ソレは、音声データへのリンク。

 カチッ――開いた。

「ザザッ――――なみプロちゃん総体としてのAI人格権は俺の〝HeapDyneヒープダイン社〟が存続する限りにおいて・・・・・・・・・・全責任を持つ! ――シュヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァーン♪」

 うをっ、こりゃ、この間俺が吐いた、〝なみプロちゃんを全力をもって支持する〟発言じゃんか。
 改まって聞かされると、かなり――鼻につく。

 けど、そういうことか!
 この発言をなみプロちゃんは、口頭による〝特権スーパーユーザー要求リクエスト〟と解釈したんだな。
 つまり、さっきの『宣言されテイル』って、〝俺が・・(宣言した)〟って意味で。
 ……そしてソレを言質げんちにとるために、採取サンプリングしておいたと。

 末恐ろしくもあるけど、魂が宿っていればこそだ。
 でもAR電影部は、勝手に謎の効果音を足すな・・・
 すっげー、ドラマチックになっちゃうだろ。

「先輩も、ヤル時はヤルもんですねー。あ、スマホ見つかりました」
「ヤルってなにがだ? カッコイイことを言ったつもりはないぞ? 健全な経営者として、当たり前のことを言ったまでだ」

「でもさー……あ、コレ普通フッこちゃんの前であんまり、言わない方がいっかな~」
 なんだ、俺たちをまんべんなく見渡しやがって、気色悪いやつだな。
「ちょっと違崎ちがさき君、なにその言い回し。気になるからちゃんと言って!」

「じゃあ、言うけどさぁー、なんかさぁ――――プロポーズみたい・・・・・・・・だなーって」
 はぁあ? なぜそうなる!?

「なにバカ言ってんだ、よく聞けよ? お・れ・は、〝なみプロちゃんのAIとしての人権を保障するべく彼女のスベテに責任を持ち、AI生活権を無期限に保証する〟って言っただけだぞ? 文句あんのか!?」
 間違ったことは言ってない。言ってないが、なんか顔が熱くなってきた。

「やだっ、いまのご時世、多少問題ある言い回しだけど、けど……すっごく、すっごく男らしい! 珈琲先輩のくせにっ!」
「でしょうー? もう、プロポーズにしか聞こえませんよぅ?」

 パカリ――キュイッ?
 ちゃぶ台の端から、俺たちを見上げる半透明じっこうぶ

 必然、俺たちの視線は開いた箱に集中する。
 困惑の表情。明らかに『?』を脳裏に貼り付けている。

『?』
 ポップアップ文字も『なんだ?』と言ってきた。
 おたがいに相手を推し量りかねていたら、『?』はどんどん大きくなり、『怒マーク』になって最後には『鬼マーク』になった。

 ――――――ぷすぷすぷすぷす、ぷすぷすぷすぷす、ぷすぷすぷすぷす。
 ――――――ぷすぷすぷすぷす、ぷすぷすぷすぷす、ぷすぷすぷすぷす。
 ――――――ぷすぷすぷすぷす、ぷすぷすぷすぷす、ぷすぷすぷすぷす。

 俺は作業着だからイイ。両胸にかわいいイラストが付いたくらいで、へこたれたりはしない。
 宣伝にもなるしな。
 だが違崎ちがさき。おまえソレ、そろそろヤバイだろ。
 いつものブルゾンに、空いた場所が・・・・・・なくなった。

 そして極めつけは、地味子ふつうだ。
 すっげー高級そうなベストの右胸に刻印されたなみプロちゃんイラストはカワイイけど、アサルトライフルを構えた姿は勇ましすぎて。
 ソレはさすがにもう着られんだろう。

 俺と違崎ちがさきが、高級女性服の値段について考えていたら――

 突然、地味子ふつうが遮光グラスを顔に掛けた。
なみプロちゃんへ火力支援要請。メタルカービング視器型V0・4へ刻印インビジブル除去メンディング弾装填、撃ち方用意よーい――――」

      §

「こんなすごい機能、有るなら言っとけよ」
 号令直後、MR実行部はんとうめいが放ったのは、光学兵器レーザーではなかった。
 細い白煙をたなびかせ、地味子ふつうの胸元に着弾。
 その特殊パウダーの噴煙が晴れぬ間に、32Kの超々高解像スコープで捉えられた刻印のすべてを上書き・・・。目立たない程度にまで補修してしまった。

「ホントですよ。コレなら、掛けはぎのバイトお願いできそう♪ っていうか、僕のブルゾンも直して❤」
 首を横に振るMR実行部かけはぎし。「えーなんでー?」
 俺も、作業着の右胸のヤツは、消してほしかったんだが――ウザいから。

なみプロちゃんの基本兵装である〝安全強襲ライフル〟の装填数は2。そのうちの一発は並列化したQCLレーザーに占有されてるので――現状、特殊弾の最大保持数は1です。今日は、追加弾薬は持ってきていないので……諦めてください」
 実際の射撃はMR実行部くろいはこの実体が行っている。
 〝安全強襲ライフル〟、つまり機械腕先端の口径は、せいぜい五ミリだ。
 予備弾50発詰んでも、ミントタブレットのケース一個分にもならんだろう。

 今度の新型に、予備弾薬を詰めるようにしてもいいかも――いや、ソレを言うなら射撃管制トリガーを厳重にする方が先か。

 だが、その辺の〝設計思想に反する改変〟を行うと〝人格形成・・・・〟に多大な悪影響があるらしいので、今のところソレは出来ない。
 代替案として、本当に撃ったらダメなときは〝時限式スリープ状態(これなら負荷はかからない)〟に移行してもらうことで、なんとかしのいでいる。

なみプロちゃんも、あまり質素な素材を射撃するのはヤメなさい。何の計測値も得られないのだから――――クドクド」
 おい、違崎ちがさきの私服ははともかく、俺の作業着まで質素呼ばわりすんな。

 ――――――ぷすぷすぷすぷす、ぷすぷすぷすぷす、ぷすぷすぷすぷす。
 地味子ふつうの小言に対する、電光石火の反撃。

「あーコレっ、お気に入りオキニだったのにっ!」
 慌てる地味子ふつう
自宅ふつうハウスに戻ったら、また〝掛けはぎ弾〟で撃ってもらえばいいじゃんか?」
「そうですよ、今度は予備弾薬を、たくさん持ってきてくださいね」

「……ムリです。刻印インビジブル除去メンディング弾は金属木材衣類その他もろもろ、ほぼすべての材質に効果がありますが、刻印後3分以上経過した場合や補修済みの場所への再刻印に対しては、補修不可能になります」
 同じ場所?
 なみプロちゃんの射撃性能はではない。寸分のズレも無く上書き補修したばかりの座標へ、もう一度刻印することなど朝飯前だ。

「えー、じゃあ掛けはぎのバイトは出来ないじゃんかー」
 うなだれる違崎ちがさき
「おまえ、ホントに真面目になみプロちゃんを売り込むつもりで居てくれるんだな。〝出所不明の給料分働こう〟ってのがあるにしても、少し見直したぞ」
 ちょっとほっこりした俺は、さっき途中だった社の会計監査に戻る。

 すると、新しく監査対象になった、AI法人格であるなみプロちゃん達の法人口座が、見られるようになってた。
 そして――さっき検索して開きっぱなしだったウインドウに『New』の文字を発見した。
 まてまて、ヤな予感。

「……出所不明じゃなかった。『今月分○ガツブン』……『広報活動費コウホウカツドウヒ』として。振込先は、『チガサキワタル コジンコウザ』になってる」

「えーっ!? この給料って・・・・・・なみプロちゃんが払ってくれたの!? わーっ、どーしよっ、全部使っちゃったよー!?」
 慌てふためく幽霊社員1。

 たしかに、こんな小さいから小遣いをせしめるのは、相当気が引けるだろうな。
 それを俺は、よく知っていた。
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