並(なみ)プロちゃんとわたボコる、原子回路設計(QCD)アライアンス

スサノワ

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わたぼこる

こんふぃぐ/1654596000.cfg

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 ガッシャ、ガッシャガシャ!
 レンガみたいな氷を砕いて、ます形のグラスに入る大きさにする。
 このグラスは、教授が来た時用に新しいグラスが欲しくて探してたら、見つけた。

 大きさサイズと言いフォルムと言い、まさに計ったように瓜二つおなじだったのだ。
 何とって、もちろんなみプロちゃん達、並列プロジェクト各ノード筐体とだ。

 透明のとスモークのを、それぞれ7個ずつ購入した。
 結構高く付いたが、なみプロちゃん達のサイズ取りなんかにも使えて、そこそこ便利だ。

 玄関横のショーケース。その空いたスペースを埋めるために、MR実行部サイコロのペーパークラフトを飾ったのだが、その骨組み代わりになってる。

「あれ? 箱が倒れてんじゃねーか」
 ショーケースの一番目立つ棚。むき出しの基盤の横。
 立てかけてあったパッケージ箱が、ひっくり返ってた。
 ついさっきの、LM女史の鉄塊アッパーの余波を食らったんだろう。

「……直しとくか」
 『六角柱が屹立する小型基盤のイラスト』が描かれたパッケージを手に取る。
 この基板の絵、〝人造原子模型型原子演算回路〟の外観図を書いた頃は、まさかこんなことになるとは思ってなかったよなー。

 しみじみとしてしまった。なんせ初期ロット以降、全く製品の受注がなく、一年を待たずに開店休業状態にまで陥った。
 そんなときに出会った、凄腕ゲーマーの地味な女とサイコロ……もといなみプロちゃん。
 二人に出会えてなかったら、俺はいまだに学食で後輩にたかる、売れない投稿作家フレームオーサーをやってただろう……いまでもやってるが、もう大丈夫だ。

 なんせ、原子Quantum回路Circuit設計者Designerとして復活の糸口をつかんだからな。どれだけヘタを打ったとしても快進撃してしまうだろう、ふっふっふ。
 脳裏に、名刺交換にいそしむ俺となみプロちゃんの姿が浮かんだ。

 そういや、あれ確認しておくか。
 量子教授にもらった、俺の演算複合体としての名刺を、財布から取り出した。
 裏を見るとポートレートには、カンファレンスの壇上で隠し撮りされたらしい写真が使われていた。

 なんだよ、どうせなら俺も大人しい研究者っぽい写真ヤツのが良かったぞ。
 ディスクリート量子の名刺には、若かりし頃の量子教授の写真が使われてたし。

 けどあの写真、『わたボ狐狸こりA6FEPβ』さんのプロフィール画像と同じだったんだよなー。
 若い頃の写真ってことで、めんどうな火種になりかねないから直接聞けないで居たけど。

 フロアイーターかソレに連なる製品のどれかが〝わたボ狐狸こりさん〟であるのは確かで。
 やっぱり俺の小説には、彼女(もしくは彼)の校正添削コメントがないと、寂しい。

「そうだよ、ぜひ教授に紹介してもら……」
 ……でもまてよ、あの写真。
 教授の若い頃の写真ってことは、えっと少なくとも……十ウン年前・・・・・だろ?
 なんで背後に――去年作った製品・・・・・・・ボックスが写ってたんだ?
 ――――まてまて。

 そして、どうして俺たちはそのことを不思議に思わなかった・・・・・・・・・・んだ?
 ――――今日何度目かわからなくなった、冷えた汗が背中を伝っていく感覚。

 これは〝個別の情報統制〟じゃないのか!?
 そう考えた瞬間――――チキッ♪

 ソレは携帯ゲーム機の通知音ノーティス
 なん……だ!?

 ベルトに下げた小型鞄スコッシュから、携帯用ゲームコンソールを取り出す。
 ――カシ、カパリ――チキッ♪

 シャインレッドの筐体側面。
 リンク先が変わるたび、LEDの色が切り替わる。

 赤、青、黄色、もう一回、青を経由して、緑色の光が点灯したままになった。
 ――――まてまてまてまて。

 ――――ヴゥオォォォォン♪
 表示されたのは、見慣れたゲーム会社のロゴマーク。

『並列プロジェクトⓇPRESENTS
 ひーぷだいん™ VS しんぎゅらんⓇ』
 次に表示されたのは、緊急時戦術プロトコル謹製のゲーム画面。

 ひらがな部分が、ものすごい自己主張しとびはねてるけど、いま楽しく宴会してるだけだぜ、どこにも外敵エネミーなんて居ないよな?
 ――――サァァァァァァァァッ!
 血の気が引いていく。

 まてまて、13号機はもう帰ったし、俺いま指輪してねえんだけど――!?
 俺はパッケージを小脇に抱えたまま、応接テーブルを振り返った。

 だがソコに自宅兼作業場ヒープダインはなく、紙束に埋もれた白衣の女性が机に突っ伏してた。
 ここはどこだ?
 なんか一里塚りょうこ研究室に似てるけど、椅子や棚にビニール袋が掛かってるし、なによりPCモニタの全てが巨大なブラウン管だった。

「むにゃむにゃー、すぴぃー♪」
 いびきを掻く若い女性。その顔に見覚えが有る。
 まだあどけなさが残るけど、間違いなく量子りょうこ教授だ。

 この印刷物プリントアウトの束から察するに、卒論に忙殺されている最中なのかもしれない。
 紙で出来た塔の、一番上の一枚を手に取った。

『……くから言い習わされる言葉の中には……
 ……確に分類されたことから……
 ……算下におけるボトルネック解消のための……
 ……虎の威を借る狐とならぬ……
 ……てして取らぬ狸の皮算用を恣意的に……』
 それは教授の卒論で間違いなかった。

 たしか、日本語の多様性を数理モデルとして体系化した結果を、量子情報理論としてまとめた感じだったはず。
 そして、わたボ狐狸さんのネーミングの秘密がわかった。
 印刷失敗した束の一番上に付けた×が、達筆すぎて輪っかになってて、その中の文字を縦に読んでみたのだ。
 何の事はない、俺の小説のペンネーム(ランダム生成されたものをそのまま使ってる)と同じようなモノだった。

 そしてネーミングの下半分、『A6FEPβ』というのは恐らくだけど、A6細胞群である青斑核せいはんかく、つまり脳の注意などを司る回路を、FEPというサブ回路プログラムで再現しましたって感じなんじゃないかなと。βベータはその評価版て意味で。

 この教授の論文を元に、初期のAIプログラムを作成したんだろうなあ。現にフロアイーターが稼働していたし。
 けど、A6細胞群は情動・・も司っていたはず。
 フロアイーターが好戦的なのは、その辺も関係してるのかも。

「うむむむむ」
 なんか怖い気もしたので念のため、携帯ゲーム機を向けてみた――ポコス♪

 軽快に飛び出たのは、『一里塚いちりづか日菜子ひなこ(22)』というダイアログ。
 『BOSS CHARACTER/DISCREET RYOUKO』って表示が出なくて、ホント良かった。

 どんなに厳つい猛獣でも子供の頃はかわいいもんだが、量子教授も昔はこんなにかわいらしい女性だったのだなあ~。
 その顔を見つめていると――――シシシッ♪

 すぐ横に点線で形作られた、〝直方体〟が現れた。
「なんだ?」
 紙束の上、何もない空間に〝透明の箱〟が縁取られている・・・・・・・
 点線の縁取りが、半透明になっては元に戻るのを繰り返している。

 そう、まるで――手にしたパッケージを、ここに置けといっているようだ。
 ターゲットアイコンを表示させる。
 大きな矢印が斜め上に表示された。
 やはり謎アプリは、ココに箱を置かせたいらしい。

 だからさー、ややこしいことはさー、全部明日にしようぜ。
 ほんと、疲れ果ててんだけど俺。
 違崎ちがさき地味子ふつうを呼んでみるか。
 見た目だけが別の場所に、見えてるだけかもしれんし。

ちが――!」
 大声を出そうとしたらゲーム機の隅に、デシベル表示が出た。
 だめだ、多分これ、教授……っていうか日菜子ちゃん(22)が起きて、ゲームオーバーになる。

「うーむ?」
 しかたなく矢印にゲーム機の画面を向けると、『キーアイテムを使用せよ! パーフェクトクリア条件/予測演算不可能な未踏領域を迂回し、出窓を注目せよ』なんて、やりこみ条件がポップアップした。

 ああもう、〝キーアイテム〟はわかる。けど〝出窓〟って何だ?
 この研究室っぽい部屋に、出窓らしきモノはない。

 ――チッ♪
 ヘルプ機能を呼び出す。
 キーアイテムを調達し、所定の場所にセットすることで、クリアできることが図解されていた。
 出窓に関する情報は無かった。
 かわりに、『※ゲームオーバー時に、セーブされていない実行環境は消去されますのでご注意下さい。』なんて怖いことが書いてある。

 ひとまずクリアしとこう。
 箱を置いた。

   ◈

「ポポポォオーーーーン♪」
 わ、警報!? いや、放送か?
 教授が起きたら、俺はどうなる!?

乙種セカンドクラス物理検索フィジカルサーチを開始致します。論理封鎖態勢ロジカルブロッケードが解除されるまでは、白線内に下がってお待ち下さい」
 なにこのカワイイ声、白線!?
 何だそれ、どこに有んだよ!?

 辺りが暗くなっていく。
 室内の蛍光灯あかりに変化はない。
 視界がドコまでも、小さくなっていく感覚。 

 研究室の有るこの世界自体が、小さくなっているのが、なぜか理解できた。
 当然俺も、小さく小さくなっていく。

 逆に何もなくなった余白の外側くうかんに、どこか別の部屋がブルブル震えながら姿を現した。
 まるでVR空間のように、辺縁が曲がって見える。

「――おい違崎ちがさき、アレは残ってたっけか、あのオヤツの試作品――」
 なんか俺の声が聞こえる。
「おつまみに、ちょうどいいですねー」
 地味子ふつうの声も聞こえてきた。

 ちょっとまってくーださぁーい、ひっく!
 どかどかと走ってきた巨大な何かに蹴飛ばされ――――

 この後のことは、俺は覚えていない。
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