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奥編 moglie

34:火の山の魔女(その2)Strega in vulcano:secondo

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 遠くに “火の山„ を望む麓の一角、岩の神殿があり、その中央の祭壇に赤く光る宝珠グローボが浮かんでいる。
 ここが 依頼クエスト “火の山の魔女„ の入口だ。
「この宝珠グローボに手をかざして、真名ノーメ・コンプレートで宣言すれば良いらしい。まず、わたしから行こう」
 パートナーの隼を肩に乗せたサヤが前に進む。
「いや、俺から行こう。中でいきなり大歓迎があるかもしれん」
「用心のためです。水の加護プロテツィオーネ・ダ・アクア! 風の加護プロテツィオーネ・ダ・ヴェント!」
 コーリの結界バッリエーラ魔法は、パートナーにも有効になる。ますます重要になって来た。
「では、フォーメーションの順に入ろう。ゲッツ気を付けてな」
「分かった」
 ゲッツは宝珠グローボの前に進み出て、手をかざす。
「我が名は、ゴッドフリート・ケラー、依頼クエスト “火の山の魔女„ に臨まん。道を啓き給え!」
 騎乗するゲッツの姿が一瞬で消える。
 サヤが続く。
「我は、沙耶・瑞穂、依頼クエスト “火の山の魔女„ に挑戦する。道を啓き給え!」
 サヤも全く同様に消えて行く。
 コーリが行く。
「あたしは、コーリ・スグル、依頼クエスト “火の山の魔女„ に臨む。道を啓き給え!」
 最後になった。よし行くか!
「ボクの名は、アルフィオ・トロイージ、依頼クエスト “火の山の魔女„ に挑む。道を啓き給え!」
 宝珠グローボが真紅に輝き、周囲が一気に暗くなる。
 空中に放り出される感覚、いよいよ開始か、ワクワクするな。

 周囲が明るくなった途端に、生命の腕輪の効果音エッフェット・ソノーロが響く。
 “ワイド・インスタンス:火の山の魔女„ 
 文字通りの大乱戦が繰り広げられている。
 周囲はセンチメートル単位の火の精霊たちが取り囲む。
「ははっ! 凄いね」
 ボクの声に、ゲッツが騎乗で槍を振り回しながら笑う。
「俺たちは大歓迎されてるらしいぞ」
 コーリが降雨ピオッジャを掛けたのか周囲を小雨が舞う。
「コーリ! 水纏いダ・インドッサーレ・フォコは?」
「掛けました!」
「了解、行くぞ~ 青き波オンダ・アッズーラ!」
 水魔法全体攻撃で敵を削る。
挑発プロヴォカツィオーネ!」
真一文字レッタ!」
 ゲッツに集まる火の粉を、サヤの鷹が一直線に飛び、線上に居る敵を全て叩き落す。
 隼つぇぇ! “空中戦では無敵に近い„ と言ったサヤの言葉通りだ。

 どうやら火の粉の群を払い終わる。と思ったら、煌めく星を伴った炎の塊がふわりと近付いて来る。
「我が君の命を受け案内に参りました」
 声と共に精霊の姿が現れる。女性の姿で周囲を炎が取り囲む。
「その割には、随分の歓迎だったようだな」
 ゲッツが皮肉交じりに応える。
「あなた方の実力ちからを試したのです」
「それで、わたしたちは合格なのかな?」
 サヤの言葉に、精霊が頷く。
「えぇ、さすがに選ばれた冒険者たちですね。我が君は挑戦を受けることにしました」
 前方は馬車がすれ違えるほど幅のある道がずっと続く。
 火の精霊は導くように先へと進む。
「いくつか関門を用意しております。それを全て突破すれば、我が君はお会いになるでしょう」
「案内してくれると言うのだから、付いて行こう」
 サヤの声に、いつものようにゲッツを先頭に、サヤとコーリが続き、ボクは最後尾で警戒して進む。
「奇襲に備えます。水の加護プロテツィオーネ・ダ・アクア!」
「そうだね。水纏いダ・インドッサーレ・アクア!」
 コーリの結界バッリエーラに続き、ボクの魔法で装備に水属性を付加する。
「そのように気にしなくても、我が君は脅かすような手段は取りません」
「敵の言を素直に聞くほど楽天家ではないからな」
 サヤが傲然と言い放つ。いつもと違うのはかなり緊張しているのだろうか?

「では、第一のホストです」
 精霊の言葉に応じて、空間に炎が上がる。中から現れたのは、炎を纏う大きな猪だ。
「ほぅ」
 ゲッツが嬉しそうに笑う。
「如何ほどのものか、試させて貰おう」
 槍を構えるゲッツを乗せて、馬が突進する。
二重撃コルポ・ドッピオ!」
降雨ピオッジャ!」 
 サヤとコーリの攻撃が重なる。
水の連弾アタッコ・ディ・アクエ!」
 こんな所で手間取る訳にはいかない。一気に片付けてやる!
 水魔法に続き、水属性を付加されたスリング・ショットを連続で放つ。

「意外に大したことはないな」
 ゲッツが言う間に、炎の猪は薄赤の光を上げながら消えて行く。
「では、第二のホストを――」
 同じように空間に炎が吹き上げ、中から二メートルくらいの鳥が現れる。
 朱雀ってことはないよね。単に炎を纏った鳥さんだ。
「ゲッツ、動きを抑えてくれ。攻撃はこっちがする」
「承知!」
シャボン玉ボッレ・ディ・サポーネ!」
 撒き散らされる泡に動きを阻害され、前はがっちりとゲッツが抑える。
「螺旋《スピラーレ》!」
 隼が敵の足元から螺旋形の上昇し、切り裂いて行く。
 よろめく炎の鳥に向かって集中攻撃を掛けると、あっけなく地に落ちて消えて行く。
「お強いですね。では第三のホストを」
 再び空間に炎が拡がり、今度は炎を纏う牛が現れる。
「ふむ、同じレベルかな?」
 ゲッツが悠然と槍を構える。
「ゲッツ、先入観は禁物だよ!」
 ボクの声にゲッツは笑って応える。
「そうだな。気合を入れ直そう」
 牛の突進にゲッツが構え直す。
氷の柱コロンナ・ディ・ギアッチオ!」
 今回の依頼クエスト用に準備した防御魔法を掛ける。
泥濘メルマ!」
 コーリの魔法で突進を弱められ、何とか氷を突破した所でゲッツに抑えられる。
「急降下《トゥッフォ》!」
「連撃《アタッコ・コンティーヌオ》!」
 隼のダイビング攻撃に槍の連続攻撃を重ねる。
 大丈夫、こちらはまだ余裕ある。
回復の霧ネッビア・グァレンテ!」
 全体に回復グァレンテを掛けながら、敵を削って行く。

 時間は掛かったが、遂に炎の牛さんが倒れる。
 第一関門はこんなものだろうか?
「この程度では、あなた方の相手にはならないですね」
「そう言うのなら、骨のある相手を出してくれるか?」
 サヤが精霊にきつく言い返す。
「それでは、第一関門の最後のホストです」
 声と共に地が割れ、噴き出す溶岩の中から、それは現れる。
「ほぅ、サラマンドラか」
 余裕のある声で確認するゲッツに向けて、全身を真紅に輝かせる蜥蜴が睨み付ける。
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