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旦那編 marito

43:冒険者の集う街 La città di avvenurieri

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 “冒険者の集う街„ が近づいて来る。
 とても大きな街だ。焼成煉瓦の外壁が街を取り囲んでいる。壁の高さは五メートル以上は十分ある。
 衛門の前では衛士が立ち、街に入る人たちを確認している。
 ここは南門と言うらしい。
「高くて広い壁だね」
 ついと言葉が出てしまう。
「うむ、大きな街じゃのぅ」
 はるっちも同じ感想らしい。
「大きかろうが小さかろうが、どうでもいいわ。要は、ワイにとって都合が良いか悪いかだけや」
「その通りだわ~、街の大きさには拘らないわよ!」
 男二人は実践主義らしい。
「とりあえずは様子見ですな」ポロロン♪
 ジョルジュは周囲を見てからにするらしい。

 街に入る前に生命の腕輪をチェックされたが問題なく通過できる。
 ベスはパートナーと言うことで認めてくれた。
 街は全体が石畳でかなり広い。
 両側は色々なお店が見える。
 前方に冒険者ギルドの大きな建物が見える。その前の広場には臨時パーティ募集の勧誘が行われている。その数に驚くほど。
 それだけ腕に自信のある冒険者が多いのだろう。楽しみだ。
「とりあえず冒険者ギルドで情報を集めよう」
「そうじゃな。まずは住居を決める必要があるぞ」
 
 ギルドの建物は近くで見ると、更に大きさが際立つ。
 正面の扉を開くと小さな部屋になっており、そこを通過すると、広い部屋があり、ギルドの受付が並ぶ。
 冒険者と思われる人たちが大勢行き交っており、掲示板にある依頼クエストの数も半端ではない。
 しばし立ち竦んでしまったが、そこに女性の声が掛かる。
「あなた方も今日この街に着いたのですか?」
 振返ると、弓手《ゆんで》と思われる人が居る。
「あ、はぃ今日着きました。わたしたちは “希望の町„ からこちらへ来たのですが、そちらは?」
 たぶん同じくらいのレベルだろうし、顔を繋いでも良いと思う。
 彼女は笑いながら返して来る。
「わたしたちは、“明日に向かう町„ からですね。機会があればよろしくお願いします」
「はい、こちらこそ。よろしくです」
 こらこらベス、人にじゃれついちゃだめだよ。
「ごめんなさい。この子はまだ子供なもので」
「あぁ、可愛い子猫ですね」
 女性はベスの頭を優しく撫でて、立ち去る。
「あぁいう人も居るのね。色々と交流したいわ~」

 冒険者ギルドでは住居の斡旋はしていないそうだ。そこは不動産に関する商店があるらしい。
 依頼クエストは多彩で毎日かなりの量あり、当日でも十分受けることができる。
 モンスター・ドロップや様々なアイテムの買取は常時行っており、依頼クエストでなくても良いとのこと。
 冒険するにはとても良い環境だけど、住居については何とかする必要がある。

 さて、どうしようかと相談してたら、ジョルジュが一つ案を持っていた。
「住む所ではありませんが、フュルベール師匠から紹介状を貰っています。時間が取れたときに挨拶に行く予定だったのですが、この街に詳しいと思いますので、相談してみてはいかがでしょう」
 時間は十分にあるので、とりあえず行ってみることにする。

 この街の中央には大きな噴水があり、その北側にやや低い三メートルくらいの壁が東西に走っており、街全体を二分している。
 この壁の向こう側は、所謂偉い人たちの区画。街に入るより、ここに入る方が難しい。
 北東側は神殿があり、高位聖職者たちがここに居る。ここの宗教はかなり権力があるようだ。
 俗人たちは北西側に居住している。高級店なども立ち並ぶ。
 お屋敷は直ぐに見つかった。かなり有名な人らしい。

 何ともと言えない豪邸の門を潜り、執事さんらしき人に紹介状を渡す。
 挨拶だけはさせてくれた。
 名前は “ベアトリッツ・デ・ディア„ なんと女性吟遊詩人メネストレッラだ。
 因みに
「私は、“メネストレッラ„ という言い方は大嫌いです。“トロバイリッツ„ と思っております」
 だそうです。
 ここまで来ると個性的な人が多い。

 執事さんの話では、街壁の北側にある住居は非常に高価なので、勧められない。
 それで、西門の南にある不動産屋さんと言うか、住居斡旋する所を紹介して貰った。
 紹介だから、あまり変な所ではないだろうと訪ねてみる。
 ここで、現実を思い知らされた。
 “冒険者の集う街„ は人が多く住居は競争が激しい。中継地なので他に移動しても住居はそのままにして置く人が多い。そのため、住居はなかなか空がない。結局、高価になってしまう。
 それでも何とか探してくれた。
 五人部屋ならここくらいだろうという屋根裏部屋だ。
 階段を上ると “コの字形„ で中央にテーブルとテーブルの端側に簡単なコンロがある。
 問題なさそう。
「拙はこれで良いと思うぞ、稼げるようになってから新しい所を探せば良い」
「ワイは寝床さえあれば何とでもなる。問題ないわ」
「あたしはこういうの好きよ。嬉しいわ!」
「いいですな。如何にもここから始まるという雰囲気です」ポロロン♪
 拠点はここに決めた。
 明日からは、難しい依頼クエストを一緒に突破した仲間と戦闘開始だ!
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