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奥編 moglie
56:闘技場 Colosseum
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ここはどこだろう?
気が付いたら、周囲は全て岩と砂の世界
空は真っ黒、星が僅かに見える。
地球でもない、世界でもない、知らない星空だ。
目が覚めると砂利の上に放り出されている。装備を調べてみたが、全く持っていない。いつも傍に居るはずの黄蘭さえ見当たらない。
何が起こっているか、さっぱり分からない。
部屋で寝床に着いた処までは覚えているのだが……
インスタンスかとも思うけど、寝たのは街中、まだ一回もインスタンスが発生していない。
ただ、VRMMOのようなゲームは不具合修正と共に新機能が追加されることもある。いままでなかったようなことも突然起こるかもしれない。
一枚の紙?がひらりと落ちて来る。
何か書いてある。
----------------------------------------------------------------
愚かな人間たちよ
そして、蜥蜴たちよ
両者は戦うことを止めない。
このままでは、共倒れとなる。
我々はそれを容認しない。
それで、両種族の代表を戦わせて勝利を得た種族の存続を認める。
敗者は駆除する。
代表者の健闘を祈る
--------------------------------------------------------------------
読み終えた途端に紙は空中に溶けて行く。
なんだこれは?
事態に目を瞑ってはいけない。メッセージは全て本気と捉えるべきだろう。
躊躇してたらこちらがやられる。
まずは装備の確認だ。生命の腕輪は――反応しない。動作自体はしているようだ。
ゲーム始まって一度もなかった状況だ。
装備は全て使えないと考えよう。あるのは今着ている服のみだ。
魔法は?
「真水!」
生活魔法で出した水はそのまま飲める。一番心配した飲料水は解決した。
薬剤は全く使えない。魔法も無駄遣いはできない。
食糧もないので、せいぜい数日が限度だ。
次に、周囲の環境を確認だ。
木を数本見つける。
蔓が巻き付いていたので、これで投石器を造ろう。Y字形の枠とゴム紐を使ったものではなく、長い紐と石を包む幅広の部分から出来ている、ゴリアテと戦ったダビデが持っていたタイプのものだ。
蔓と木の皮で何とか造り上げ、手頃の石を集める。
これで何とか遠距離攻撃の手段が出来た。ただ石を多く持てないので、ヒット・アンド・アウェイが基本になりそうだ。
さて、敵を確認しに行こう。“彼を知り己を知れば百戦殆ふからず„ だ。
ここまで敵が奇襲して来ないということは、敵も同じように情報整理をしていると考えるのが自然だ。
つまり相当手強いということだ。
蜥蜴ということは素手で殴り合っては不利だろう。距離を取って投石と魔法しかない。
敵の姿を探しつつ、このフィールドの大きさを確認して行く。
端まで行くと、限界があり、それ以上先には進めない。一定の範囲の中で戦わせるわけか、何だか闘鶏や格闘技の金網デスマッチを思い出す。
見物人たちが大勢いるんじゃないだろうな!
フィールド自体は楕円形のようだ。中央辺りは砂場のようになっていて、見通しも良い。外側は岩や木などがかなり多く点在し、隠れる所が多い。中央で戦ってはダメだな。
周囲を慎重に警戒しつつ、敵の姿を探る。
突然、空気の揺らぎを感じて飛び離れる。
空中から蜥蜴が手製と思われる槍を持って飛び掛かって来た。
先に見つかったのか、危ない!
「火の矢!」
MPの消耗を抑え、三本の矢に炎を纏わせて攻撃する。
敵は避けようと左に動く。なかなか素早いな。
でも逃がさない。
「誘導!」
こちらの意志に従い追尾する。
矢が敵の身体に炸裂するが、皮膚で弾かれる。
無属性みたいだな。
鱗のような皮膚からして、濡らして雷が良いと思う。
敵は接近戦有利と見て、遮二無二突っ込んで来る。
「水の壁!」
防御魔法で突進を止める。
「雷迅!」
稲妻が襲い掛かり、何枚かの鱗がはじけ飛ぶ!
トカゲさんは岩陰に入り、距離を取る。
碧い光が身体を取り巻き、流れていた血が治癒して行く。
回復魔法もあるのか厄介な。
敵が距離を取ったので、作戦を再度練り直しだ。
魔法で攻撃して来ない。しかし、回復魔法は使える。
動きは俊敏、パワーもある。
敵も食糧は持ってないだろうし、このフィールドに食糧らしきものはない。
後は飲水だが、ひょっとして魔法で水が出せない?
すると真水はこっちが有利だ。
敵に血と汗を流させて水の補給が追い付かないようにすれば良さそうだ。
予定通り、ヒット・アンド・アウェイで投石中心で傷を与えることを目標にしよう。
途中で石も拾えるしね。
敵は見通しの良いフィールド中央付近で待機している。
今度はこちらから奇襲をかける。
投石器で遠距離攻撃を繰り返し、接近する前に岩場に逃げ込む。
敵とは距離を取る。
石を投げ返して来るけど、投石器の分こちらがアウトレンジ出来る。
そして接近されたら
「石の連弾!」
地魔法で鱗を弾き飛ばし、怯んでいる隙に距離を取る。
これを延々と繰り返す。もう本当に根気勝負だ。時間かけても負けるわけにはいかない。
遠距離だと投石はなかなか当たらないけど、偶に当たると結構ダメが出てるみたいだ。
ゴリアテって巨人で動きが鈍かったのかなぁ、それともダビデの腕が良かったのか
時間が経つに従い、こちらが有利になって行くようだ。
鱗が彼方此方剥げて、血が流れている。
回復は何度もしているようだが、かなり消耗している。
投石に出た瞬間、相手は勝負して来る。
「地の壁!」
防御魔法掛けたけど、槍を投げて来る。
予想してなかったため、右手で庇ったら吹き飛ばされた。痛てぇ~~。血飛沫が飛び散る。
ここが勝負と決断して、地魔法を連打。もうMP尽きるくらいに連打。
地の壁で閉じ込めようとしたけど、這い上がって来たので、左手で投げられた槍を抱え込んで、体当たりするようにして突き出す。
鱗が剥げ落ちていた敵の皮膚を貫く。絶叫が聞こえる。
残っていた左手で敵の喉首を掴み、止めの魔法を叩き込む。
「雷迅!」
蜥蜴は全身を痙攣させ、その動きも次第に緩やかになる。
やったようだな。
「回復の花々!」
大地に花々が咲き、傷が回復して行く、同時に痛みも引く。
何とか生き延びたみたいだ。
地に転がる敵の身体が輝く出して、次第に消えて行く。
ふと、声が聞こえて来る。天の声かぃ?
良く戦った。
そちらの勝利だ。
はぃはぃありがとう!
高みの見物は気楽だよね。
人間たちは栄え、蜥蜴たちは滅ぶ。よ
弱肉強食、それが進化である。
強くあれ! 知恵を使え、謀れ、裏切れ、そして生き延びよ!
ふふっ、それだけじゃダメだな。
疑心暗鬼は種族全体を弱くする。
取り込み、協力し、競う それが強くする。
神々もまだまだ。
人の身でも勝ち目はありそうだ。
生命の腕輪が再起動したようだ。
効果音が鳴り響き、仮想画面に表示が現れる。
”インスタンス・クリア:闘技場”
面倒な課題が多いことだ。
気が付いたら、周囲は全て岩と砂の世界
空は真っ黒、星が僅かに見える。
地球でもない、世界でもない、知らない星空だ。
目が覚めると砂利の上に放り出されている。装備を調べてみたが、全く持っていない。いつも傍に居るはずの黄蘭さえ見当たらない。
何が起こっているか、さっぱり分からない。
部屋で寝床に着いた処までは覚えているのだが……
インスタンスかとも思うけど、寝たのは街中、まだ一回もインスタンスが発生していない。
ただ、VRMMOのようなゲームは不具合修正と共に新機能が追加されることもある。いままでなかったようなことも突然起こるかもしれない。
一枚の紙?がひらりと落ちて来る。
何か書いてある。
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愚かな人間たちよ
そして、蜥蜴たちよ
両者は戦うことを止めない。
このままでは、共倒れとなる。
我々はそれを容認しない。
それで、両種族の代表を戦わせて勝利を得た種族の存続を認める。
敗者は駆除する。
代表者の健闘を祈る
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読み終えた途端に紙は空中に溶けて行く。
なんだこれは?
事態に目を瞑ってはいけない。メッセージは全て本気と捉えるべきだろう。
躊躇してたらこちらがやられる。
まずは装備の確認だ。生命の腕輪は――反応しない。動作自体はしているようだ。
ゲーム始まって一度もなかった状況だ。
装備は全て使えないと考えよう。あるのは今着ている服のみだ。
魔法は?
「真水!」
生活魔法で出した水はそのまま飲める。一番心配した飲料水は解決した。
薬剤は全く使えない。魔法も無駄遣いはできない。
食糧もないので、せいぜい数日が限度だ。
次に、周囲の環境を確認だ。
木を数本見つける。
蔓が巻き付いていたので、これで投石器を造ろう。Y字形の枠とゴム紐を使ったものではなく、長い紐と石を包む幅広の部分から出来ている、ゴリアテと戦ったダビデが持っていたタイプのものだ。
蔓と木の皮で何とか造り上げ、手頃の石を集める。
これで何とか遠距離攻撃の手段が出来た。ただ石を多く持てないので、ヒット・アンド・アウェイが基本になりそうだ。
さて、敵を確認しに行こう。“彼を知り己を知れば百戦殆ふからず„ だ。
ここまで敵が奇襲して来ないということは、敵も同じように情報整理をしていると考えるのが自然だ。
つまり相当手強いということだ。
蜥蜴ということは素手で殴り合っては不利だろう。距離を取って投石と魔法しかない。
敵の姿を探しつつ、このフィールドの大きさを確認して行く。
端まで行くと、限界があり、それ以上先には進めない。一定の範囲の中で戦わせるわけか、何だか闘鶏や格闘技の金網デスマッチを思い出す。
見物人たちが大勢いるんじゃないだろうな!
フィールド自体は楕円形のようだ。中央辺りは砂場のようになっていて、見通しも良い。外側は岩や木などがかなり多く点在し、隠れる所が多い。中央で戦ってはダメだな。
周囲を慎重に警戒しつつ、敵の姿を探る。
突然、空気の揺らぎを感じて飛び離れる。
空中から蜥蜴が手製と思われる槍を持って飛び掛かって来た。
先に見つかったのか、危ない!
「火の矢!」
MPの消耗を抑え、三本の矢に炎を纏わせて攻撃する。
敵は避けようと左に動く。なかなか素早いな。
でも逃がさない。
「誘導!」
こちらの意志に従い追尾する。
矢が敵の身体に炸裂するが、皮膚で弾かれる。
無属性みたいだな。
鱗のような皮膚からして、濡らして雷が良いと思う。
敵は接近戦有利と見て、遮二無二突っ込んで来る。
「水の壁!」
防御魔法で突進を止める。
「雷迅!」
稲妻が襲い掛かり、何枚かの鱗がはじけ飛ぶ!
トカゲさんは岩陰に入り、距離を取る。
碧い光が身体を取り巻き、流れていた血が治癒して行く。
回復魔法もあるのか厄介な。
敵が距離を取ったので、作戦を再度練り直しだ。
魔法で攻撃して来ない。しかし、回復魔法は使える。
動きは俊敏、パワーもある。
敵も食糧は持ってないだろうし、このフィールドに食糧らしきものはない。
後は飲水だが、ひょっとして魔法で水が出せない?
すると真水はこっちが有利だ。
敵に血と汗を流させて水の補給が追い付かないようにすれば良さそうだ。
予定通り、ヒット・アンド・アウェイで投石中心で傷を与えることを目標にしよう。
途中で石も拾えるしね。
敵は見通しの良いフィールド中央付近で待機している。
今度はこちらから奇襲をかける。
投石器で遠距離攻撃を繰り返し、接近する前に岩場に逃げ込む。
敵とは距離を取る。
石を投げ返して来るけど、投石器の分こちらがアウトレンジ出来る。
そして接近されたら
「石の連弾!」
地魔法で鱗を弾き飛ばし、怯んでいる隙に距離を取る。
これを延々と繰り返す。もう本当に根気勝負だ。時間かけても負けるわけにはいかない。
遠距離だと投石はなかなか当たらないけど、偶に当たると結構ダメが出てるみたいだ。
ゴリアテって巨人で動きが鈍かったのかなぁ、それともダビデの腕が良かったのか
時間が経つに従い、こちらが有利になって行くようだ。
鱗が彼方此方剥げて、血が流れている。
回復は何度もしているようだが、かなり消耗している。
投石に出た瞬間、相手は勝負して来る。
「地の壁!」
防御魔法掛けたけど、槍を投げて来る。
予想してなかったため、右手で庇ったら吹き飛ばされた。痛てぇ~~。血飛沫が飛び散る。
ここが勝負と決断して、地魔法を連打。もうMP尽きるくらいに連打。
地の壁で閉じ込めようとしたけど、這い上がって来たので、左手で投げられた槍を抱え込んで、体当たりするようにして突き出す。
鱗が剥げ落ちていた敵の皮膚を貫く。絶叫が聞こえる。
残っていた左手で敵の喉首を掴み、止めの魔法を叩き込む。
「雷迅!」
蜥蜴は全身を痙攣させ、その動きも次第に緩やかになる。
やったようだな。
「回復の花々!」
大地に花々が咲き、傷が回復して行く、同時に痛みも引く。
何とか生き延びたみたいだ。
地に転がる敵の身体が輝く出して、次第に消えて行く。
ふと、声が聞こえて来る。天の声かぃ?
良く戦った。
そちらの勝利だ。
はぃはぃありがとう!
高みの見物は気楽だよね。
人間たちは栄え、蜥蜴たちは滅ぶ。よ
弱肉強食、それが進化である。
強くあれ! 知恵を使え、謀れ、裏切れ、そして生き延びよ!
ふふっ、それだけじゃダメだな。
疑心暗鬼は種族全体を弱くする。
取り込み、協力し、競う それが強くする。
神々もまだまだ。
人の身でも勝ち目はありそうだ。
生命の腕輪が再起動したようだ。
効果音が鳴り響き、仮想画面に表示が現れる。
”インスタンス・クリア:闘技場”
面倒な課題が多いことだ。
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