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一話 砕かれた想い
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その日の分の授業が終わって部活が始まる時間、そんな時に俺、御堂 樹が教室から出て向かうのは、別に家でも部室とかって訳でもない。
本を読むことが好きな俺はよく学校の図書室に行くんだ。
図書室にある本の中でも特に好きな本、まだ読んでいない本やその時目に付いた本、果ては自分で買った本を持ってきたりして、好きなように本を読むんだけど……
"その日" も意気揚々と図書室に入って目に付いたのは、隣のクラスにいる女子生徒、観月 奏さんだった。
彼女はかなりの美人で入学した時から、先輩や同級生…そして進級した今年も後輩からまで告白されている。
そんな人が今、この図書室の椅子に座って本を読んでいる。
今までいなかったじゃん!なんてことは無く、彼女もちょくちょく図書室に現れる。
いつもだが、彼女は奥の椅子に座っているので、俺はその対角の位置、つまり入口のすぐ近くの椅子に座ったんだ。
彼女と一緒にいればなんて噂されるか分からんし、変なやっかみがあるかも分からない。
というか間違いなくあるだろう、俺は別にそこまでパッとした人間じゃない。
友人は気心のしれたヤツら数人、家族は両親と姉がいる。幼馴染なんてのも男が一人くらいだ。それも先述の友人に含まれる。
別段 周囲に認知されていない人間が、いきなり人気者の隣にいるなど周りはもちろん困惑するだろう。
そもそも俺とてそこまで彼女と関わろうという気がないので、別に今のまま不干渉で全く構わないし、むしろその方がいい。
そう思っていつも通り自分の世界に入っていたんだけど…
「何を読んでいるんですか?」
唐突に後ろから話しかけられた俺は驚きのあまり普通に振り返ってしまった。
「あ、ごめんなさい。いつもあなたがここにいるのでちょっと気になってしまって…」
驚いてしまい、振り向いたまま固まっている俺を見た観月さんは、目を泳がせて慌てながらそう言った。
それが彼女との関係の始まりだった。
それからはちょくちょく本の話題について話すことがあったり、雑談をしたりとよく喋るようになった。図書室限定ではあるけどね。
どうてあの時観月さんが俺に話しかけてきたのかというと。
「自分で言うのも変ですが、私はよく色んな人に話しかけられるんです、でも御堂くんは私にあまり興味を示さないでしょう?だから大丈夫だと思って…」
ということらしい、話かけないのが裏目に出たのかと。
最初は社交辞令の範囲で関わっていたのだが、何度も話しているうちに気が付けば俺は彼女との時間が楽しくなったいた。
放課後の図書室という二人きりで誰にも邪魔されない時間。
たまに他の生徒らが入ってくることもあるが、その時は二人して素知らぬ顔をし誤魔化し、その人達が立ち去ったあとに二人で吹き出すように笑い出したりして、心から楽しい時間だと思っていた。
そりゃ好きにもなるだろう、だから俺は少しでも振り向いて貰えるように自分を磨いたつもりだ。
彼女にとっては無意味だった訳だけど。
「束の間の幸せだったよ」
楽しかったあの時の思い出を彼女…七瀬 紗奈さんに語る。
昨日 観月さんに振られた俺は、その後に七瀬さんから声をかけられて今日も一緒に帰っているところだ。
「きっと観月さんは恋愛に興味が無かったんだろうね」
「うん、確かにそう言ってたね」
それは二度目に告白した時に言われた言葉。いつまでも嫌なことを覚えているものだ。
まさに未練タラタラってやつだろう。
「そっか…それなら私が御堂くんと放課後を過ごせるんだね」
「え、七瀬さんって図書室来たっけ?」
過ごせる…その言い方に含みを感じるけど、あんまり考える気はなかった。
それに今まで図書室で彼女を見たこともない。
「実は私もまぁまぁ本読むよ?二人ほどじゃないと思うけどね。だから図書室には何回か行ってたんだ。私も二人に声かけなかったから気付かなかったかな?」
なんということだ、七瀬さんが人に言いふらすような人じゃなくて良かった。
もし口の軽い人が俺たちの関係に気付いていたれと考えるとゾッとするよ。
「まったく気付かなかったよ」
「あははっ、二人とも楽しそうだったからね…だから観月さんが御堂くんを振ったのは意外だったんだ」
「そう?」
まるで上手くいきそうだったとでもいうような言葉にハテナが浮かぶ。
あの結果を考えると、とてもそうは思えない。
「うん、周りから見ると結構いい感じに見えたよ……ってこんな事 御堂くんに言っちゃいけないよね、ごめんね?」
そう言って七瀬さんが謝るジェスチャーをした。
眉をハの字ににして行ったその仕草はとても可愛い。
「気にしないとは言わないけど…まぁしょうがないよ、俺にそこまで興味とか魅力とかがなかっただけでしょ」
それが答えだと思う。
そうじゃなかったら付き合うはずだからね。
「そうかなぁ…それってだいぶ見る目がない気がする」
「えっと?」
七瀬さんの言葉の意図を汲みかねてつい聞き返してしまう。
俺自身がどういう風に見られているのかが分からないのでなんとも言えないのだ。
「御堂くんに魅力を感じる人はいるってことだよ」
そう言って笑う彼女の笑顔は、失恋した心を少しだけ癒してくれた。
翌日の学校終わりもまた七瀬さんと一緒に帰る。
いつもなら図書室に行くけど、観月さんと顔を合わせると考えると、豆腐メンタルな俺はしばらく行けないな。
昨日は教室に出てすぐ七瀬さんと合流したけど、今日は彼女が友達と喋っていたので俺は先に校舎から出て彼女を待っていた。
その時、俺の前を観月さんが通ったが、その隣には一学年上のイケメンで割と人気のある先輩がいた。
「あっ、樹くん…」
観月さんが俺に気付いてこちらに来た。気まずいので勘弁して欲しいが、その隣にいる人は一体なんなのだろうか?
「樹くん、この人は私の恋人になりました、槍坂先輩です」
彼女は紹介するように隣にいる先輩を手で指し示す。
何故わざわざそんなことを俺に言いに来たんだ?というか恋愛に興味無いって言ってなかったか?
「もしかしてコイツが奏の言ってたヤツ?」
「はい」
困惑する俺を放置し、その槍坂先輩はヘラヘラと俺を指《ゆび》さした。
「あー、まぁそんなパッとしねぇもんな。コイツにゃ奏と付き合う資格なんてねぇし勿体ねぇよ」
「それは…まぁ…」
ヘラヘラした彼に観月さんは目を逸らして答える。
不愉快な物言いだ、どうして初対面の人にここまで言われなきゃいけない?
「だから言ったんだよ、こんなヤツなんかより俺の方がお前を楽しませてやれるんだ。もし逆恨みで付き纏われても俺がぶっ殺やるから任せろって、な?」
「…はい」
彼のこき下ろすような言葉を観月さんは肯定する。
なんの意図があるのか、どうしてわざわざ振った男のところに来てこんな事をするんだ?
どうして人を好きになってバカにされなきゃいけない。
最悪の気分だ。
本を読むことが好きな俺はよく学校の図書室に行くんだ。
図書室にある本の中でも特に好きな本、まだ読んでいない本やその時目に付いた本、果ては自分で買った本を持ってきたりして、好きなように本を読むんだけど……
"その日" も意気揚々と図書室に入って目に付いたのは、隣のクラスにいる女子生徒、観月 奏さんだった。
彼女はかなりの美人で入学した時から、先輩や同級生…そして進級した今年も後輩からまで告白されている。
そんな人が今、この図書室の椅子に座って本を読んでいる。
今までいなかったじゃん!なんてことは無く、彼女もちょくちょく図書室に現れる。
いつもだが、彼女は奥の椅子に座っているので、俺はその対角の位置、つまり入口のすぐ近くの椅子に座ったんだ。
彼女と一緒にいればなんて噂されるか分からんし、変なやっかみがあるかも分からない。
というか間違いなくあるだろう、俺は別にそこまでパッとした人間じゃない。
友人は気心のしれたヤツら数人、家族は両親と姉がいる。幼馴染なんてのも男が一人くらいだ。それも先述の友人に含まれる。
別段 周囲に認知されていない人間が、いきなり人気者の隣にいるなど周りはもちろん困惑するだろう。
そもそも俺とてそこまで彼女と関わろうという気がないので、別に今のまま不干渉で全く構わないし、むしろその方がいい。
そう思っていつも通り自分の世界に入っていたんだけど…
「何を読んでいるんですか?」
唐突に後ろから話しかけられた俺は驚きのあまり普通に振り返ってしまった。
「あ、ごめんなさい。いつもあなたがここにいるのでちょっと気になってしまって…」
驚いてしまい、振り向いたまま固まっている俺を見た観月さんは、目を泳がせて慌てながらそう言った。
それが彼女との関係の始まりだった。
それからはちょくちょく本の話題について話すことがあったり、雑談をしたりとよく喋るようになった。図書室限定ではあるけどね。
どうてあの時観月さんが俺に話しかけてきたのかというと。
「自分で言うのも変ですが、私はよく色んな人に話しかけられるんです、でも御堂くんは私にあまり興味を示さないでしょう?だから大丈夫だと思って…」
ということらしい、話かけないのが裏目に出たのかと。
最初は社交辞令の範囲で関わっていたのだが、何度も話しているうちに気が付けば俺は彼女との時間が楽しくなったいた。
放課後の図書室という二人きりで誰にも邪魔されない時間。
たまに他の生徒らが入ってくることもあるが、その時は二人して素知らぬ顔をし誤魔化し、その人達が立ち去ったあとに二人で吹き出すように笑い出したりして、心から楽しい時間だと思っていた。
そりゃ好きにもなるだろう、だから俺は少しでも振り向いて貰えるように自分を磨いたつもりだ。
彼女にとっては無意味だった訳だけど。
「束の間の幸せだったよ」
楽しかったあの時の思い出を彼女…七瀬 紗奈さんに語る。
昨日 観月さんに振られた俺は、その後に七瀬さんから声をかけられて今日も一緒に帰っているところだ。
「きっと観月さんは恋愛に興味が無かったんだろうね」
「うん、確かにそう言ってたね」
それは二度目に告白した時に言われた言葉。いつまでも嫌なことを覚えているものだ。
まさに未練タラタラってやつだろう。
「そっか…それなら私が御堂くんと放課後を過ごせるんだね」
「え、七瀬さんって図書室来たっけ?」
過ごせる…その言い方に含みを感じるけど、あんまり考える気はなかった。
それに今まで図書室で彼女を見たこともない。
「実は私もまぁまぁ本読むよ?二人ほどじゃないと思うけどね。だから図書室には何回か行ってたんだ。私も二人に声かけなかったから気付かなかったかな?」
なんということだ、七瀬さんが人に言いふらすような人じゃなくて良かった。
もし口の軽い人が俺たちの関係に気付いていたれと考えるとゾッとするよ。
「まったく気付かなかったよ」
「あははっ、二人とも楽しそうだったからね…だから観月さんが御堂くんを振ったのは意外だったんだ」
「そう?」
まるで上手くいきそうだったとでもいうような言葉にハテナが浮かぶ。
あの結果を考えると、とてもそうは思えない。
「うん、周りから見ると結構いい感じに見えたよ……ってこんな事 御堂くんに言っちゃいけないよね、ごめんね?」
そう言って七瀬さんが謝るジェスチャーをした。
眉をハの字ににして行ったその仕草はとても可愛い。
「気にしないとは言わないけど…まぁしょうがないよ、俺にそこまで興味とか魅力とかがなかっただけでしょ」
それが答えだと思う。
そうじゃなかったら付き合うはずだからね。
「そうかなぁ…それってだいぶ見る目がない気がする」
「えっと?」
七瀬さんの言葉の意図を汲みかねてつい聞き返してしまう。
俺自身がどういう風に見られているのかが分からないのでなんとも言えないのだ。
「御堂くんに魅力を感じる人はいるってことだよ」
そう言って笑う彼女の笑顔は、失恋した心を少しだけ癒してくれた。
翌日の学校終わりもまた七瀬さんと一緒に帰る。
いつもなら図書室に行くけど、観月さんと顔を合わせると考えると、豆腐メンタルな俺はしばらく行けないな。
昨日は教室に出てすぐ七瀬さんと合流したけど、今日は彼女が友達と喋っていたので俺は先に校舎から出て彼女を待っていた。
その時、俺の前を観月さんが通ったが、その隣には一学年上のイケメンで割と人気のある先輩がいた。
「あっ、樹くん…」
観月さんが俺に気付いてこちらに来た。気まずいので勘弁して欲しいが、その隣にいる人は一体なんなのだろうか?
「樹くん、この人は私の恋人になりました、槍坂先輩です」
彼女は紹介するように隣にいる先輩を手で指し示す。
何故わざわざそんなことを俺に言いに来たんだ?というか恋愛に興味無いって言ってなかったか?
「もしかしてコイツが奏の言ってたヤツ?」
「はい」
困惑する俺を放置し、その槍坂先輩はヘラヘラと俺を指《ゆび》さした。
「あー、まぁそんなパッとしねぇもんな。コイツにゃ奏と付き合う資格なんてねぇし勿体ねぇよ」
「それは…まぁ…」
ヘラヘラした彼に観月さんは目を逸らして答える。
不愉快な物言いだ、どうして初対面の人にここまで言われなきゃいけない?
「だから言ったんだよ、こんなヤツなんかより俺の方がお前を楽しませてやれるんだ。もし逆恨みで付き纏われても俺がぶっ殺やるから任せろって、な?」
「…はい」
彼のこき下ろすような言葉を観月さんは肯定する。
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