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七十九話 心の準備
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昼食を食べ終わり、今は咲恵さんのお願いで二人きりで話をすることになった。
紗奈さんは部屋で待機だってさ。話が終わったら俺もそっちに行くよ。
「ごめんね、紗奈と二人きりの時間を使わせちゃって」
「いえ、咲恵さんも大切な人ですから」
「ふふっ、お上手ね♪」
俺は当然のことを言ったまでなのだが、咲恵さんは嬉しそうに笑う。
大切な人の家族だと言うのなら、そりゃあその人だって大切な人だろう。
「それで、樹くんと話したいことって言うのはね?紗奈についてどう思ってるのかって事なんだけど……」
「はぁ……」
どう思ってるのか……それはあまりにも抽象的というか、振れ幅があるというかで一概には言えない。もし言えるとするなら大好きな人とか、素敵な人といったとこだろう。
「ごめんなさいね、私もなんて言えばいいか分からなくてフワフワし過ぎちゃって。樹くん的にはこれから紗奈とどうしたいかって事を聞きたいの。なんとなくのイメージでいいけどね」
「あー、これからも一緒にいるつもりがあるかどうかってことです?」
「そうね、寄り添ってあげられるかどうかってとこかしら」
そういうことなら簡単だ。大好きな恋人である紗奈さんからずっと離れるつもりは無いし、もしかしたら最期まで一緒かも。今はそうとしか考えられない。
「それなら、そうですね……紗奈さんは俺が困ってた時に寄り添ってくれたし、守ろうとしてくれました。話を聞いてくれたり、一緒に怒ってくれたりで、大切に思ってくれてるって感じてるし、本当に大好きでとても大切な人です。だから、ずっと一緒にいたいです」
紗奈さんに向ける気持ちを自分の中でまとめながら、できるだけ伝わるように話す。
想いを噛み締めるように、滔々と。
「ふふっ、紗奈も似たようなことを言っていたわ。本当にお互い好き同士なのね♪」
咲恵さんは嬉しそうに笑った。その話を聞いて俺の心も温かくなり、頬が緩む。
「でもね、ちょっと意地悪なことを言うけれど、どれだけ幸せなカップルでも、時には別れてしまう人達もいるわ。もちろん樹くんたちがそうとは限らないけれど、もしかしたら……いえ、ずっと一緒なら必ず喧嘩をしてしまう時が来ると思うの」
たしかに、今はそんな事が起きるとは考えにくいが、これから一年二年……或いは五年に十年と長く、一緒にいるのなら避けられない事だろう。人が二人も集まれば、むしろ正常な事とも言える。
それを否定できない俺は、その言葉に相槌を打つ。
「もし紗奈とそういう事があったとして、そういう時は遠慮なく私に相談して欲しいの。お互い感情的になっている時には誰かしら間を取り持ってくれる人が必要よ。もちろんあなた達共通の友達でもいいのよ。えっと……燈璃ちゃんだったかしら」
もしかしたらと思ったが、やはり紗奈さんは燈璃のことも話しているらしい。かなり仲がいいから予想はしていた。
「えぇ、紗奈さんから聞きました?」
「そうね、なんでもその子も樹くんの事が好きらしいわね。モテモテじゃない」
咲恵さんからからかわれ、少し照れてしまう。
まぁ二人の女の子から好かれるというのは嬉しいものだけどね。あっ、そういえば観月もいたっけ、あと一人なんかいたような……気のせいか。
「話が逸れちゃったわね……それでね、もちろん二人の間でそういう事があった時でもそうでなくても、私を頼って欲しいわ。けどもしかしたら……言いたくないけれど、別れるということも、絶対にないとは言えないわ」
「それは……」
未来のことは誰にも分からない。凄く幸せそうな二人が、気付けば別の人と付き合っているだなんて、そんな話は腐るほどある。
そう考えれば、幸せとは一過性のようなもので、それをただ繰り返しているだけなのかもしれない。
「もしその一歩手前まで辛いことになったとして、私に気を遣ったりしなくていいの。どうしても分かり合えない時や、一緒にいられない時っていうのは、一度距離を置いた方がいい時もあるわ。二人がちゃんと話し合って決めたことなら、それが別れだとしても私は何も言わない」
あまり考えたくないが、クッションとしてイメージを持っておくのは悪いことではないだろう。
もちろん必ず別れるってわけじゃないし、あくまで " 最悪 " の事態ってところか。
世の中に絶対って無いもんな。
「結局何を言いたいのかって、後悔の無いようにしてほしいのよ。他人の目を気にせず、二人でちゃんと話し合って欲しいの。それが出来ない時は私を頼ってねって話……ごめんね、暗い話をしてしまって」
「いえ、それだけ俺たちのことを考えてくれてるって事ですよね。ありがとうございます、嬉しいです」
なんでも心の準備は大事だ。それを気付かせてくれたのだから全く不愉快などではない。
本当に心から感謝している。
「ふふっ、ありがとう。そう言ってもらえると助かるわ。さっ、話は終わり!紗奈の部屋に行ってらっしゃい!」
ニコッと笑った咲恵さんが立ち上がり、俺の背中をポンポンと優しく叩いて言った。
そんな彼女に頭を下げて、紗奈さんの部屋に向かう。
「あぁそれとね、もし子育てするなら私も手伝うからね!紗奈ってば最近ピルまで用意してるんだもの、さすがに分かっちゃうわ♪」
「そういう事は言わないで下さいよ恥ずかしいんで!」
いくらなんでも赤裸々すぎると、咲恵さんにそう言うと彼女は アハハ!と笑った。
俺はソレに背を向けて紗奈さんの部屋に向かった。
紗奈さんは部屋で待機だってさ。話が終わったら俺もそっちに行くよ。
「ごめんね、紗奈と二人きりの時間を使わせちゃって」
「いえ、咲恵さんも大切な人ですから」
「ふふっ、お上手ね♪」
俺は当然のことを言ったまでなのだが、咲恵さんは嬉しそうに笑う。
大切な人の家族だと言うのなら、そりゃあその人だって大切な人だろう。
「それで、樹くんと話したいことって言うのはね?紗奈についてどう思ってるのかって事なんだけど……」
「はぁ……」
どう思ってるのか……それはあまりにも抽象的というか、振れ幅があるというかで一概には言えない。もし言えるとするなら大好きな人とか、素敵な人といったとこだろう。
「ごめんなさいね、私もなんて言えばいいか分からなくてフワフワし過ぎちゃって。樹くん的にはこれから紗奈とどうしたいかって事を聞きたいの。なんとなくのイメージでいいけどね」
「あー、これからも一緒にいるつもりがあるかどうかってことです?」
「そうね、寄り添ってあげられるかどうかってとこかしら」
そういうことなら簡単だ。大好きな恋人である紗奈さんからずっと離れるつもりは無いし、もしかしたら最期まで一緒かも。今はそうとしか考えられない。
「それなら、そうですね……紗奈さんは俺が困ってた時に寄り添ってくれたし、守ろうとしてくれました。話を聞いてくれたり、一緒に怒ってくれたりで、大切に思ってくれてるって感じてるし、本当に大好きでとても大切な人です。だから、ずっと一緒にいたいです」
紗奈さんに向ける気持ちを自分の中でまとめながら、できるだけ伝わるように話す。
想いを噛み締めるように、滔々と。
「ふふっ、紗奈も似たようなことを言っていたわ。本当にお互い好き同士なのね♪」
咲恵さんは嬉しそうに笑った。その話を聞いて俺の心も温かくなり、頬が緩む。
「でもね、ちょっと意地悪なことを言うけれど、どれだけ幸せなカップルでも、時には別れてしまう人達もいるわ。もちろん樹くんたちがそうとは限らないけれど、もしかしたら……いえ、ずっと一緒なら必ず喧嘩をしてしまう時が来ると思うの」
たしかに、今はそんな事が起きるとは考えにくいが、これから一年二年……或いは五年に十年と長く、一緒にいるのなら避けられない事だろう。人が二人も集まれば、むしろ正常な事とも言える。
それを否定できない俺は、その言葉に相槌を打つ。
「もし紗奈とそういう事があったとして、そういう時は遠慮なく私に相談して欲しいの。お互い感情的になっている時には誰かしら間を取り持ってくれる人が必要よ。もちろんあなた達共通の友達でもいいのよ。えっと……燈璃ちゃんだったかしら」
もしかしたらと思ったが、やはり紗奈さんは燈璃のことも話しているらしい。かなり仲がいいから予想はしていた。
「えぇ、紗奈さんから聞きました?」
「そうね、なんでもその子も樹くんの事が好きらしいわね。モテモテじゃない」
咲恵さんからからかわれ、少し照れてしまう。
まぁ二人の女の子から好かれるというのは嬉しいものだけどね。あっ、そういえば観月もいたっけ、あと一人なんかいたような……気のせいか。
「話が逸れちゃったわね……それでね、もちろん二人の間でそういう事があった時でもそうでなくても、私を頼って欲しいわ。けどもしかしたら……言いたくないけれど、別れるということも、絶対にないとは言えないわ」
「それは……」
未来のことは誰にも分からない。凄く幸せそうな二人が、気付けば別の人と付き合っているだなんて、そんな話は腐るほどある。
そう考えれば、幸せとは一過性のようなもので、それをただ繰り返しているだけなのかもしれない。
「もしその一歩手前まで辛いことになったとして、私に気を遣ったりしなくていいの。どうしても分かり合えない時や、一緒にいられない時っていうのは、一度距離を置いた方がいい時もあるわ。二人がちゃんと話し合って決めたことなら、それが別れだとしても私は何も言わない」
あまり考えたくないが、クッションとしてイメージを持っておくのは悪いことではないだろう。
もちろん必ず別れるってわけじゃないし、あくまで " 最悪 " の事態ってところか。
世の中に絶対って無いもんな。
「結局何を言いたいのかって、後悔の無いようにしてほしいのよ。他人の目を気にせず、二人でちゃんと話し合って欲しいの。それが出来ない時は私を頼ってねって話……ごめんね、暗い話をしてしまって」
「いえ、それだけ俺たちのことを考えてくれてるって事ですよね。ありがとうございます、嬉しいです」
なんでも心の準備は大事だ。それを気付かせてくれたのだから全く不愉快などではない。
本当に心から感謝している。
「ふふっ、ありがとう。そう言ってもらえると助かるわ。さっ、話は終わり!紗奈の部屋に行ってらっしゃい!」
ニコッと笑った咲恵さんが立ち上がり、俺の背中をポンポンと優しく叩いて言った。
そんな彼女に頭を下げて、紗奈さんの部屋に向かう。
「あぁそれとね、もし子育てするなら私も手伝うからね!紗奈ってば最近ピルまで用意してるんだもの、さすがに分かっちゃうわ♪」
「そういう事は言わないで下さいよ恥ずかしいんで!」
いくらなんでも赤裸々すぎると、咲恵さんにそう言うと彼女は アハハ!と笑った。
俺はソレに背を向けて紗奈さんの部屋に向かった。
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