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五十二話 改めて
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茂たちカップルに中学時代に起きたあの出来事を話した。繭奈が俺を好きになったきっかけのあの事件だ。
繭奈が変な事を言ったせいで話が中断してしまった為、気を取り直して一から順を追って話を進める。
ある日、体育の授業を終えて体育館から教室へと戻った後、繭奈が自分の机の中にあったペンを探していた。それを見ていたとある男が自分も探すと言い出し、他の連中と誘って探し始めたことでクラスメイト全員で探し始めるという大事になった。
ないないと皆が言っていたその時、繭奈のペンを見つけたのが言い出しっぺの男だ。ソイツは俺の机に片手を置きながら、右手でそれを掲げて全員にアピールをして、繭奈に向けて謎のアプローチをかまし彼女に拒否された。
ただ、俺の机から繭奈と物が出てきたということで、クラスだけでなく学年全体に "俺が繭奈を好きで、それが抑えられずに彼女の私物を盗んだ男" という、悪意ある形で広まってしまった。
しかし、俺は繭奈のペンを盗んではいない。ではなぜ俺の机に彼女のペンが入っていたのかと言うと、あのイキった男が俺の机に入れたからだ。
まぁそれに関しては推測だけど、彼女としては確信しているらしい。どうやら、皆が落としたという前提であちこち探している時に、奴がピンポイントで俺の机を漁ったからなのだとか。
そして時間が経ち、その事件をネタに騒いだのが告美たちに声をかけたあの男だということだ。
再び俺が孤立しかけたところ、繭奈がそれを許さなかった……と。
そこまでの話を終えると、二人は神妙な面持ちだった。
「なんかムカつくね、凄く。しかも、告美と麗凪は蔵真くんの言い分じゃなくて、その人の話だけ信じたんだ」
「そうよ。龍彦くんは否定したのに、それでも信じなかった。そのことだけは今でも私は許してないわ」
今考えると、同調圧力に近しい物があったのだろう。事の是非は置いといて、周囲の意見の多数が俺を非難するものであれば、その雰囲気に圧倒され流されてしまうのも人間というものだろう。
誰かを責める時の人には、それだけのパワーがあるという事だろう。
「まぁ、今はもうそこまで気にしてないし別にって感じかな。それに今は、他ならぬ繭奈が傍にいてくれるからね」
そう言ってなんとなく繭奈を見ると、彼女は顔を真っ赤にしてこちらを見る。ふふっと笑いかける彼女の笑顔に、自然とこちらも口角が上がる。
「あーあついあつい」
そんな俺たちを見て、貝崎が手をパタパタとさせながら言った。反応が冬夏と一緒なんだよな。
ちなみに茂は苦笑いしている。
「そういや、ソイツはどうして龍彦の机に白雪のペンを入れたんだよ。席が隣だったのか?」
「そんなの簡単よ。龍彦くんって割と人気あったから」
「ホントかァ?」
茂の疑問はもっともだ。俺も最初はそう悩んだのだが、結局分からずじまいだった。
とはいえ、繭奈の答えには首を傾げるのみだ。だって繭奈って妙に俺の評価が高いんだもん。
それに、俺は女子から好かれた経験なんぞ、繭奈の他には告美と麗凪くらいしかいない。
「本当よ。言っておくけど、私が龍彦くんを好きになる前からずっと、女の子たちの間で名前は挙がってたもの。誰もが手を出さない不可侵域と言えばいいかしら?龍彦くんとは皆で友達でいましょうっていう抜け駆け禁止ルールを決めてる子達もいたわね」
「ほっホントかァ?」
「本当よ?」
にわかに信じ難い話である。さっき一目惚れとか言ってたくせに、好きになる前って言ってるし。
「確かに、蔵真くんって喋りやすいよね。変にぐいぐい来ないし、落ち着きがあって安心感あるかも。変に騒いだりしないし真面目だし」
「ちょっと過大評価すぎないか?俺はただ普通にしてるだけなんだけどな」
俺だって繭奈にはぐいぐい行くし、彼女と一緒にいる時ははしゃぐし、鼻の下伸ばしたりエロいこと考えたりするしで普通の男である。特別イケメンってわけでもないし、そこまでモテる要素もない。
「──まぁ、龍彦くんはあの事件があってから、かなり周りから避けられたりしてたものね。あなたのことを好きだった子たちと、アレのせいで掌を返してたもの。まぁ、不謹慎ながらそのおかげで私がその隣をもらったんだけどね」
「結局付き合うまで四年かかったみたいけどな」
「龍彦くんったらガード硬いんだもの」
ガードが硬いというより、単純なすれ違いの連続だと思う。まぁ俺が避けていたということもあるけど。
「嫌われてたと思ってたしな。そんな状態で仲良くだなんてできないだろ」
「そう思わせていたのは私のミスね。だから私は学んだの、好きならハッキリ伝えればいいのよ。言葉でも身体でもね♪」
繭奈はそう言ってパチッとウインクをした。なかなかどうして心が奪われる。なんてこった、もう嫌われてるだなんて勘違いは、金輪際できそうにないみたいだ。
繭奈が変な事を言ったせいで話が中断してしまった為、気を取り直して一から順を追って話を進める。
ある日、体育の授業を終えて体育館から教室へと戻った後、繭奈が自分の机の中にあったペンを探していた。それを見ていたとある男が自分も探すと言い出し、他の連中と誘って探し始めたことでクラスメイト全員で探し始めるという大事になった。
ないないと皆が言っていたその時、繭奈のペンを見つけたのが言い出しっぺの男だ。ソイツは俺の机に片手を置きながら、右手でそれを掲げて全員にアピールをして、繭奈に向けて謎のアプローチをかまし彼女に拒否された。
ただ、俺の机から繭奈と物が出てきたということで、クラスだけでなく学年全体に "俺が繭奈を好きで、それが抑えられずに彼女の私物を盗んだ男" という、悪意ある形で広まってしまった。
しかし、俺は繭奈のペンを盗んではいない。ではなぜ俺の机に彼女のペンが入っていたのかと言うと、あのイキった男が俺の机に入れたからだ。
まぁそれに関しては推測だけど、彼女としては確信しているらしい。どうやら、皆が落としたという前提であちこち探している時に、奴がピンポイントで俺の机を漁ったからなのだとか。
そして時間が経ち、その事件をネタに騒いだのが告美たちに声をかけたあの男だということだ。
再び俺が孤立しかけたところ、繭奈がそれを許さなかった……と。
そこまでの話を終えると、二人は神妙な面持ちだった。
「なんかムカつくね、凄く。しかも、告美と麗凪は蔵真くんの言い分じゃなくて、その人の話だけ信じたんだ」
「そうよ。龍彦くんは否定したのに、それでも信じなかった。そのことだけは今でも私は許してないわ」
今考えると、同調圧力に近しい物があったのだろう。事の是非は置いといて、周囲の意見の多数が俺を非難するものであれば、その雰囲気に圧倒され流されてしまうのも人間というものだろう。
誰かを責める時の人には、それだけのパワーがあるという事だろう。
「まぁ、今はもうそこまで気にしてないし別にって感じかな。それに今は、他ならぬ繭奈が傍にいてくれるからね」
そう言ってなんとなく繭奈を見ると、彼女は顔を真っ赤にしてこちらを見る。ふふっと笑いかける彼女の笑顔に、自然とこちらも口角が上がる。
「あーあついあつい」
そんな俺たちを見て、貝崎が手をパタパタとさせながら言った。反応が冬夏と一緒なんだよな。
ちなみに茂は苦笑いしている。
「そういや、ソイツはどうして龍彦の机に白雪のペンを入れたんだよ。席が隣だったのか?」
「そんなの簡単よ。龍彦くんって割と人気あったから」
「ホントかァ?」
茂の疑問はもっともだ。俺も最初はそう悩んだのだが、結局分からずじまいだった。
とはいえ、繭奈の答えには首を傾げるのみだ。だって繭奈って妙に俺の評価が高いんだもん。
それに、俺は女子から好かれた経験なんぞ、繭奈の他には告美と麗凪くらいしかいない。
「本当よ。言っておくけど、私が龍彦くんを好きになる前からずっと、女の子たちの間で名前は挙がってたもの。誰もが手を出さない不可侵域と言えばいいかしら?龍彦くんとは皆で友達でいましょうっていう抜け駆け禁止ルールを決めてる子達もいたわね」
「ほっホントかァ?」
「本当よ?」
にわかに信じ難い話である。さっき一目惚れとか言ってたくせに、好きになる前って言ってるし。
「確かに、蔵真くんって喋りやすいよね。変にぐいぐい来ないし、落ち着きがあって安心感あるかも。変に騒いだりしないし真面目だし」
「ちょっと過大評価すぎないか?俺はただ普通にしてるだけなんだけどな」
俺だって繭奈にはぐいぐい行くし、彼女と一緒にいる時ははしゃぐし、鼻の下伸ばしたりエロいこと考えたりするしで普通の男である。特別イケメンってわけでもないし、そこまでモテる要素もない。
「──まぁ、龍彦くんはあの事件があってから、かなり周りから避けられたりしてたものね。あなたのことを好きだった子たちと、アレのせいで掌を返してたもの。まぁ、不謹慎ながらそのおかげで私がその隣をもらったんだけどね」
「結局付き合うまで四年かかったみたいけどな」
「龍彦くんったらガード硬いんだもの」
ガードが硬いというより、単純なすれ違いの連続だと思う。まぁ俺が避けていたということもあるけど。
「嫌われてたと思ってたしな。そんな状態で仲良くだなんてできないだろ」
「そう思わせていたのは私のミスね。だから私は学んだの、好きならハッキリ伝えればいいのよ。言葉でも身体でもね♪」
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