クールで一途な白雪さん

SAKADO

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四話 過去の事件

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 それは中学の時の出来事だ。ある日体育が終わって皆が教室に戻ってきたときに白雪が普段使っているシャーペンがないと探していた時のこと。

 彼女はその時からも人気者で、そんな人が失くしたものを見つけて、少しでもいい所を見せようと男たちがあっちこっちを探していた。
 俺もソレに付き合って仕方なしに探していたのだが、当然だが心当たりもなく途中から諦めモードに入っていた。別に俺は彼女に好意もなんもなかったし、見た目は良いよなくらいにしか思っていなかったので別に彼女にいい所を見せる必要いみもなかった。

 しかし、彼女のことを気になっていた男の一人が俺の机の中を見て やたらとでかい声で騒ぎ出した。

 『蔵真くらまのやつが人の物をパクった』

 どうやら白雪のペンが俺の机から出てきたらしく、そんなことを露ほども知らなかった俺は意味が分からず困惑していた。
 そんな俺を無視したソイツはそのペンを彼女に持っていき、ここぞとばかりに俺を悪者にしてヒーロー気取りをしていた。

『こんなヤツがクラスメイトってのも危ないし、これからは俺が守ってやるよ!』

 ソイツがそう言うとクラスの女子数人がきゃいきゃいと騒ぎ立てていたが、白雪本人は気怠げに冷たく言い放った。

『迷惑、やめて』

 彼女は自身の肩に手を回そうとしたソイツの手をはたいて、恐ろしい程に冷たい声と二つの単語のみで構成された彼女の言葉を受け、盛り上がっていたクラスは凍りつきソイツは肩を落として自分の席に戻った。

 しかし、俺が白雪の私物を取ったという事実でっちあげがクラスに蔓延し当然彼女からも人一倍睨まれることになった。
 周りの女子たちからも一時いっときとはいえキツく嫌悪され罵倒もされたりした。

 幸い俺がそんなことをするいとまなどなかったことを知っている友人たちもおり、彼らのおかげでその事実は段々と暗黙に嘘として認識されることになったが、それでも非常に居心地が悪かった。

 恐らく犯人はペンを見つけたヤツだと思うし、周りの連中もヤツとはそれとなく距離を置いたりしていたのだが、それでも確たる証拠もなくなんのケジメも付けられないまま進学してしまった。
 まぁ肩身狭そうにしていたからやり辛かったとは思うけどね。同情の余地はないけど。

 ただそんな事件があってからというもの、白雪の俺に対する視線は一段と鋭くなり、先日や先程のようにキツい言葉を投げられることもたびたびあった。
 だから彼女とは関わりたくなかったんだ、めんどくさいし不愉快だし。

 そんなこんなで一年二年と時が経ち、気が付けば彼女からの視線や態度にはすっかり慣れてもはやどうでもよくなってしまった。


 だから、彼女が俺の事を気になっていると言われても困るのだ。

「どうしてかしらね?あなたにペンを取られてからずっと、あなたが気になって仕方がないの」

 困惑している俺をよそに彼女は伏し目がちに滔々とうとうと語る。その姿はまるで、何かに縋っているようだった。

「もしあなたが、蔵真くらまくんが私の事を好きでいてくれたらって思うと……ドキドキするの」

 そう言った白雪は、無意識かは分からないが俺の手をゆっくりと自らの胸に抱く。
 ただただ自らの思いを吐露しているだけで、別に俺を困らせたいわけではないと思う。そんな様子は欠片も見当たらないから。

「ねぇ蔵真くん……私のことは、好きかしら?」

 白雪はそう言って伏し目がちだった目をこちらにゆっくりと向ける。
 そうして問われたソレに、俺は言葉が紡げないどころか声すら出せない。
 ただただどうしてこんな事になったのかと、この状況に翻弄されるばかりだ。

「……なんてね、分かってるわよ。あなたが私のペンを取ったわけでも、好きでもなんでもないことくらい……それに私、あなたにずっと冷たい態度をしてしまっていたものね、ごめんなさい」

 ふと表情を変えて、俺の手を離しながら寂しそうに言った白雪はひどく小さく、そして弱々しく見えた。

 まさか彼女がここまでいじらしい姿を見せるなんて、まるで夢でも見ているような錯覚に陥る。
 この光景を俺は、まるで傍観者のように呆然と見ていた。

「……蔵真くん?大丈夫?」

 ボーッと硬直している俺を心配したのか、彼女が俺の目を見て首を傾げた。
 そこでようやくハッとした。

「あぁいや、ごめん。まさか白雪さんがそんな……」

「言わないで、ただの照れ隠しだったから……ずっとあなたの事が気になっていたせいで、もう好きで好きで仕方ないの」

 ようやっと口を開いた俺に彼女は安心し、またもや爆弾を放り込んでくる。やめてくれ。
 どうしてあんなに冷たかったくせに、今更そんな表情を見せる、どうしてそんなことを言うんだ?
 ここまで俺を戸惑わせて何が楽しい?

 ……腹立ってくるな、なんか。

「ごめんなさい、好き勝手言っちゃって……先に行くわ、また明日ね」

 白雪は言いたいことを言って先に走っていった。なんなんだ一体?

 ……いや、違うか。彼女も色々と迷っているのかもしれない。
 多分、その感情を持て余しているんだ。
 ソレに腹を立てても仕方ないよな、誰だって迷ったり困ったり、分からなかったりするもんだ。
 ましてや感情なんて目に見えないもの……それを完璧に理解するなんて、まだ学生の身分である俺たちじゃ難しいだろう。

 神経質になっちゃ、いけないな。こんなことで腹立たせてたら身が持たない。


 彼女に握られた両の手をまじまじと見つめる。
 俺は明日から、どうやって白雪と接すればいいのだろう?

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