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三十二話 暴走繭奈
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夏休みに入った初日、つまり昨日は繭奈のお父さんである舞智さんと顔合わせをした日である
今日は繭奈に予定があったため一緒にはいられないが、だからといって家に篭もるのも勿体ないと、夏休みの課題を面倒ながらも三ページほど進めたところで、昼食ついでに外出した。
繭奈たち三人と一緒に勉強したおかげで思いの外スムーズだったのは言うまでもない。
これならそこまで辛くないかもな、今度は繭奈も誘って一緒にやろう、多分進みは早い。後は繭奈次第だ。
どこで食事をしようかと街を歩く。ちなみに茂も誘ってみたが彼は貝崎と一緒のようだ。いいカップルだね。
うーん、なかなかピンとこないなぁ……
もうスーパーで買って帰ろうかしら?
そんなことを考えながら歩いていると、見覚えのある後ろ姿を見つけた。俺の大好きな背中だ。
「繭奈」
思わずその背中に声を掛けてしまうと、彼女はピクリと肩を震わせ振り向いたが、俺を見るなり嬉しそうに笑う。
「あら、奇遇ね龍彦くん♪」
繭奈はそう言って二歩三歩とこちらに歩みを進めて、もはや接触するのではという距離で後ろ手に立ち止まった。
その頬は朱に染まっている。
「龍彦くんはこれからお昼?」
「うん、繭奈もこれから?」
「そうよ、良ければ一緒に……あっ」
繭奈はそこまで言って、忘れてたとばかりに後ろを向いた。そういえば彼女は今日、予定があるって言ってたような……
「……完全にウチの事忘れてたっしょ」
「悪いわね、蔵真くんとは最近仲良くなってね」
「今更取り繕っても遅いっつーの」
呆れたようにそう言ったのは、繭奈の友人である笹山だ。ウェーブがかったロングな金髪と口調がギャルっぽい。
「あぁ……と、この事は内緒にしててくれるかしら?」
「それはいーけどさ……」
「ありがとう冬夏」
少しむくれたように笹山が言う。腕を組んだその姿は少し近寄り難い雰囲気を醸し出している。
スタイルも良く、繭奈よりも更にスラッとしていて、背も高い。モデルだと言われても疑わないぞ。
「別にいいよ。繭奈がコイツと付き合ってるとか、どう考えても繭奈の汚点だし可哀想だから」
「へ?」
そう言って鋭い視線を向けてくる笹山に、繭奈は少しマヌケな声を出す。
俺はと言うと、あーそういうね…って感じだ。
「ねぇアンタ。どうして繭奈と付き合ってるのか知らないけどさ、本当に繭奈のことを想うならさっさと手を引いて」
「なんで?」
「ちょっと冬夏、なに言ってるのかしら?」
こういう手合いは中学の時にある程度慣れたので今更怒ることもないが、繭奈はそうでもないようで、笹山に鋭い眼を向けている。
「なにって、コイツに別れろって言ってんの。どう考えても似合わないでしょ、こんなチビ」
鋭い眼から蔑むようなソレに変わった笹山だが、確かに彼女は俺とではほぼ同じ身長、なんならあちらの方が少し高いが、そんなことをバカにされる謂れはない。
まったく面倒くさいのに絡まれてしまった、つい繭奈に話しかけてしまったのが運の尽きか。
「ふざけたこと言わないでくれるかしら?いくら冬夏でも許さないわよ」
「ちょっ、繭奈!汚いよそんなヤツ!」
笹山の言い分に苛立った繭奈が俺の手を握って、見せつけるように身体を寄せた。
もちろん俺だってそれを突っぱねることはない。その腰に手を回す。
「チビとか汚いとか、まさかアナタがそんな汚い口の利き方をするような人だとは思わなかったわ。そういうことをするのならアナタとの関係はこれまでね」
「そっそんな!ウチは繭奈のタメを思って……」
「それを独り善がりというの。龍彦くんには私から告白して、やっと付き合えたの。中学の時からずっと好きだったのに、なんでそれを諦めなきゃいけないのかしら?それも他人の言葉なんかで」
「うぐ、それは……」
繭奈の言い分は最もだ。本人が決めたのならともかく、他人がその付き合いにアレコレ口出しをするのは違うだろう。
それは友達ではなく、理想を押し付けるための人形扱いと同義だ。
「だっだってソイツは、繭奈が好きだからってペンを盗んだり、ことある事に付きまとってストーカーしたり、ジロジロ気持ち悪い視線をむけて視姦する最低な男だって聞いて……」
「残念だけど、龍彦くんはそんなことしないわよ」
「「残念……?」」
一体どこが残念だというのか、困惑してしまい笹山と二人でハモったオウム返しをしてしまった。
それって普通やられたら嫌なんじゃないの?
「いい?冬夏が思ってるより龍彦くんはずっと紳士的よ。ペンを盗んだ時もアリバイがあるし、中々バッタリ会う事がないから私の方が先回りとかもしなきゃいけないし、ずっと見ていたくてジロジロしてたら目が合っちゃうし。ソレ全部 私の方がやっていたくらいよ。ちなみに料理上手でいつも手作り弁当よ」
「なんかごめん」
途中から繭奈がかなり興奮気味になり、後半は言葉足らずになってしまっている。
料理上手で手作り弁当とは……?たぶん学校に持っていっている昼食にまつわる話だろうが……
そんな様子の彼女に笹山は軽く引いている。
「ふぅ……ちょっと興奮しすぎたわね。とにかく、龍彦くんは変にがっつかないし誰ともフラットにコミュニケーションを取れるわ。いつもいつもだる絡みされていた私にとって、龍彦くんの存在は癒しだったの。いつの間にか好きになって、ずっとその気持ちに我慢して、だから上手くいかなくて冷たく接しちゃって後悔して……でも、やっと付き合えた。やっと恋人になれたの。それを邪魔することだけはやめて、お願い」
「っ……分かった、ごめん繭奈」
真剣な表情で言った繭奈に、笹山もその剣呑さが無くなり謝った。
ひとまず仲直りだろうか?
今日は繭奈に予定があったため一緒にはいられないが、だからといって家に篭もるのも勿体ないと、夏休みの課題を面倒ながらも三ページほど進めたところで、昼食ついでに外出した。
繭奈たち三人と一緒に勉強したおかげで思いの外スムーズだったのは言うまでもない。
これならそこまで辛くないかもな、今度は繭奈も誘って一緒にやろう、多分進みは早い。後は繭奈次第だ。
どこで食事をしようかと街を歩く。ちなみに茂も誘ってみたが彼は貝崎と一緒のようだ。いいカップルだね。
うーん、なかなかピンとこないなぁ……
もうスーパーで買って帰ろうかしら?
そんなことを考えながら歩いていると、見覚えのある後ろ姿を見つけた。俺の大好きな背中だ。
「繭奈」
思わずその背中に声を掛けてしまうと、彼女はピクリと肩を震わせ振り向いたが、俺を見るなり嬉しそうに笑う。
「あら、奇遇ね龍彦くん♪」
繭奈はそう言って二歩三歩とこちらに歩みを進めて、もはや接触するのではという距離で後ろ手に立ち止まった。
その頬は朱に染まっている。
「龍彦くんはこれからお昼?」
「うん、繭奈もこれから?」
「そうよ、良ければ一緒に……あっ」
繭奈はそこまで言って、忘れてたとばかりに後ろを向いた。そういえば彼女は今日、予定があるって言ってたような……
「……完全にウチの事忘れてたっしょ」
「悪いわね、蔵真くんとは最近仲良くなってね」
「今更取り繕っても遅いっつーの」
呆れたようにそう言ったのは、繭奈の友人である笹山だ。ウェーブがかったロングな金髪と口調がギャルっぽい。
「あぁ……と、この事は内緒にしててくれるかしら?」
「それはいーけどさ……」
「ありがとう冬夏」
少しむくれたように笹山が言う。腕を組んだその姿は少し近寄り難い雰囲気を醸し出している。
スタイルも良く、繭奈よりも更にスラッとしていて、背も高い。モデルだと言われても疑わないぞ。
「別にいいよ。繭奈がコイツと付き合ってるとか、どう考えても繭奈の汚点だし可哀想だから」
「へ?」
そう言って鋭い視線を向けてくる笹山に、繭奈は少しマヌケな声を出す。
俺はと言うと、あーそういうね…って感じだ。
「ねぇアンタ。どうして繭奈と付き合ってるのか知らないけどさ、本当に繭奈のことを想うならさっさと手を引いて」
「なんで?」
「ちょっと冬夏、なに言ってるのかしら?」
こういう手合いは中学の時にある程度慣れたので今更怒ることもないが、繭奈はそうでもないようで、笹山に鋭い眼を向けている。
「なにって、コイツに別れろって言ってんの。どう考えても似合わないでしょ、こんなチビ」
鋭い眼から蔑むようなソレに変わった笹山だが、確かに彼女は俺とではほぼ同じ身長、なんならあちらの方が少し高いが、そんなことをバカにされる謂れはない。
まったく面倒くさいのに絡まれてしまった、つい繭奈に話しかけてしまったのが運の尽きか。
「ふざけたこと言わないでくれるかしら?いくら冬夏でも許さないわよ」
「ちょっ、繭奈!汚いよそんなヤツ!」
笹山の言い分に苛立った繭奈が俺の手を握って、見せつけるように身体を寄せた。
もちろん俺だってそれを突っぱねることはない。その腰に手を回す。
「チビとか汚いとか、まさかアナタがそんな汚い口の利き方をするような人だとは思わなかったわ。そういうことをするのならアナタとの関係はこれまでね」
「そっそんな!ウチは繭奈のタメを思って……」
「それを独り善がりというの。龍彦くんには私から告白して、やっと付き合えたの。中学の時からずっと好きだったのに、なんでそれを諦めなきゃいけないのかしら?それも他人の言葉なんかで」
「うぐ、それは……」
繭奈の言い分は最もだ。本人が決めたのならともかく、他人がその付き合いにアレコレ口出しをするのは違うだろう。
それは友達ではなく、理想を押し付けるための人形扱いと同義だ。
「だっだってソイツは、繭奈が好きだからってペンを盗んだり、ことある事に付きまとってストーカーしたり、ジロジロ気持ち悪い視線をむけて視姦する最低な男だって聞いて……」
「残念だけど、龍彦くんはそんなことしないわよ」
「「残念……?」」
一体どこが残念だというのか、困惑してしまい笹山と二人でハモったオウム返しをしてしまった。
それって普通やられたら嫌なんじゃないの?
「いい?冬夏が思ってるより龍彦くんはずっと紳士的よ。ペンを盗んだ時もアリバイがあるし、中々バッタリ会う事がないから私の方が先回りとかもしなきゃいけないし、ずっと見ていたくてジロジロしてたら目が合っちゃうし。ソレ全部 私の方がやっていたくらいよ。ちなみに料理上手でいつも手作り弁当よ」
「なんかごめん」
途中から繭奈がかなり興奮気味になり、後半は言葉足らずになってしまっている。
料理上手で手作り弁当とは……?たぶん学校に持っていっている昼食にまつわる話だろうが……
そんな様子の彼女に笹山は軽く引いている。
「ふぅ……ちょっと興奮しすぎたわね。とにかく、龍彦くんは変にがっつかないし誰ともフラットにコミュニケーションを取れるわ。いつもいつもだる絡みされていた私にとって、龍彦くんの存在は癒しだったの。いつの間にか好きになって、ずっとその気持ちに我慢して、だから上手くいかなくて冷たく接しちゃって後悔して……でも、やっと付き合えた。やっと恋人になれたの。それを邪魔することだけはやめて、お願い」
「っ……分かった、ごめん繭奈」
真剣な表情で言った繭奈に、笹山もその剣呑さが無くなり謝った。
ひとまず仲直りだろうか?
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