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三十八話 夏祭り
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今日は夏祭りの日、まだ空は明るいがそろそろ茜色に染まりかけている時刻に、繭奈と笹山はやってきた。
夕方とはいえ夏だからか日は長く、まだまだ空は明るいままで傾いた太陽が繭奈の浴衣を照らし、その姿をしっかりと魅せてくれている。
藤の花が彩る明るい紫が、クールな雰囲気を纏う繭奈にピッタリであった。
「……似合ってるよ、繭奈」
「ふふ、ありがとう♪」
じっ と繭奈の浴衣姿を見つめていた俺はハッとして、ボーッとしている頭にムチを打ってなんとか彼女を褒めることができた。あまりにも素敵な姿に見惚れてしまい何も言えなくなりそうだった。
「でも、せっかくなら龍彦くんの浴衣も見たかったわね」
「そっか、じゃあ来年のお楽しみってことで」
「待ちきれないわね♪」
今は浴衣を持っていないが、来年のこの時期までには用意しておきたいな……母さんにでも相談してみようと思った。
俺に返答に彼女は嬉しそうに腰に手を回してきた。もっとガッツリ抱きついてもいいのよ?
そんな俺たちを見た笹山はパタパタと手で顔をあおいでいた。
「はぁー夏だってぇのにあっついなぁ……」
「何言ってるの?むしろ夏なんだから暑いに決まって」
「「そうじゃない」」
笹山があついと言ったのはどう考えても俺たちについてだろうが、繭奈はそんなことだと思っていないのかきょとんとしていた。
そんな彼女の言葉に二人でハモりながらツッコミを入れてしまい、二人で一瞬目を合わせた後に吹き出すように笑った。
「え、なんなのかしら二人して。私おかしいこと言ったかしら……」
「あついのはアンタら!見せつけられてるから言ってんの!」
ポカンとしている繭奈に笹山が怒ったように声を張った。それを聞いた繭奈が閃いたようにポンと手を叩く。
「あら、つまり羨ましいってことね」
「ちっがぁぅ……よ?」
「そこは強く言えよ」
最初こそ強く言おうとした笹山は、何故かすぐに目を泳がせて可愛らしく顔を背けた。
ちょっと想像して羨ましかったんだな。
「そう?もし冬夏が正直に言うのなら龍彦くんとハグすることくらい、ちょっとだけなら許してあげるのに」
「うぐぐ……ちょっと良いって思っちゃった」
「思うな」
どうにも調子の乗り切らない様子の笹山であった。
そんなやりとりもそこそこに、せっかくの祭りという事で出店を回ることにした。
たくさんの人たちで入り乱れる道を三人で歩き、出店の定番である焼きそばをまず買ってみた。美味しい。
もぐもぐと焼きそばを食べていると、じっとそれを見ていた笹山が口を開く。
「……いつも思うけど、蔵真ってホントに美味しそうに食べるよね」
笹山が感心したようにそう告げると、俺と同じく焼きそばを食べている隣の繭奈がふふっと笑った。
「そう、とっても可愛いわよね。よく分かってるじゃない」
「ん?うんー?うーんそっか、そうだね」
「納得すんな」
そんな要素などどこにもないハズなのだが、いったい彼女は何に納得したんだろう?
ちなみにそんな笹山はたこ焼きを食べていた。
「思ったより蔵真って面白いというか、いいキャラしてるよね。モテないのが意外」
「みんな表面しか見てないのよ……っていうか、アナタも似たようなものだったでしょ」
「うぐっ、それはまぁ……ね?」
妙に好感度の高い笹山だが、どう考えても繭奈の影響によるものだろう。
あの敵意剥き出しの態度からは想像もできない。
買ったものを食べ終えた俺たちは空になった紙皿をゴミ箱に捨てて、他にもなにか食べようと物色し始めた。
まだお腹は減っているのだ、どんどん食べるぞ!
そんな折に、手を繋いでいた繭奈がその手をくいっと引いた。
「ん?どうしたの?」
「いえその、今って祭りなんだし、これだけ人が多いじゃない?」
「うん」
何を言おうとしているのだろうか?少し挙動不審な繭奈の言葉を待つ。
笹山もきょとんとしており、繭奈がいったい何を言おうとしているのかを待つことしかできなかった。
「……人が多すぎるし、一旦抜け出さないかしら?」
「それならなにか買っていこう、そうすればゆっくり食べれるだろうし」
人混みが嫌になったのだろうか?というには少し頬が赤い。
もしかしてと思い額に手を当ててみるが、別に熱がある様子は無い。
「別に風邪を引いてるわけじゃないわよ?」
「そう、だね……なんか顔が赤いからどうしたのかって思って」
「あぁ、それはね……」
その言葉の続きを繭奈が言おうとしたその瞬間、後ろからポンッと肩を叩かれた。
驚いて後ろを振り向くと、そこにいたのは久しく見ていない春波と山襞であった。
「あは♪やっぱり蔵真くんだぁ!」
「こんばんは蔵真くん」
さてこの状況、どうしようか?
夕方とはいえ夏だからか日は長く、まだまだ空は明るいままで傾いた太陽が繭奈の浴衣を照らし、その姿をしっかりと魅せてくれている。
藤の花が彩る明るい紫が、クールな雰囲気を纏う繭奈にピッタリであった。
「……似合ってるよ、繭奈」
「ふふ、ありがとう♪」
じっ と繭奈の浴衣姿を見つめていた俺はハッとして、ボーッとしている頭にムチを打ってなんとか彼女を褒めることができた。あまりにも素敵な姿に見惚れてしまい何も言えなくなりそうだった。
「でも、せっかくなら龍彦くんの浴衣も見たかったわね」
「そっか、じゃあ来年のお楽しみってことで」
「待ちきれないわね♪」
今は浴衣を持っていないが、来年のこの時期までには用意しておきたいな……母さんにでも相談してみようと思った。
俺に返答に彼女は嬉しそうに腰に手を回してきた。もっとガッツリ抱きついてもいいのよ?
そんな俺たちを見た笹山はパタパタと手で顔をあおいでいた。
「はぁー夏だってぇのにあっついなぁ……」
「何言ってるの?むしろ夏なんだから暑いに決まって」
「「そうじゃない」」
笹山があついと言ったのはどう考えても俺たちについてだろうが、繭奈はそんなことだと思っていないのかきょとんとしていた。
そんな彼女の言葉に二人でハモりながらツッコミを入れてしまい、二人で一瞬目を合わせた後に吹き出すように笑った。
「え、なんなのかしら二人して。私おかしいこと言ったかしら……」
「あついのはアンタら!見せつけられてるから言ってんの!」
ポカンとしている繭奈に笹山が怒ったように声を張った。それを聞いた繭奈が閃いたようにポンと手を叩く。
「あら、つまり羨ましいってことね」
「ちっがぁぅ……よ?」
「そこは強く言えよ」
最初こそ強く言おうとした笹山は、何故かすぐに目を泳がせて可愛らしく顔を背けた。
ちょっと想像して羨ましかったんだな。
「そう?もし冬夏が正直に言うのなら龍彦くんとハグすることくらい、ちょっとだけなら許してあげるのに」
「うぐぐ……ちょっと良いって思っちゃった」
「思うな」
どうにも調子の乗り切らない様子の笹山であった。
そんなやりとりもそこそこに、せっかくの祭りという事で出店を回ることにした。
たくさんの人たちで入り乱れる道を三人で歩き、出店の定番である焼きそばをまず買ってみた。美味しい。
もぐもぐと焼きそばを食べていると、じっとそれを見ていた笹山が口を開く。
「……いつも思うけど、蔵真ってホントに美味しそうに食べるよね」
笹山が感心したようにそう告げると、俺と同じく焼きそばを食べている隣の繭奈がふふっと笑った。
「そう、とっても可愛いわよね。よく分かってるじゃない」
「ん?うんー?うーんそっか、そうだね」
「納得すんな」
そんな要素などどこにもないハズなのだが、いったい彼女は何に納得したんだろう?
ちなみにそんな笹山はたこ焼きを食べていた。
「思ったより蔵真って面白いというか、いいキャラしてるよね。モテないのが意外」
「みんな表面しか見てないのよ……っていうか、アナタも似たようなものだったでしょ」
「うぐっ、それはまぁ……ね?」
妙に好感度の高い笹山だが、どう考えても繭奈の影響によるものだろう。
あの敵意剥き出しの態度からは想像もできない。
買ったものを食べ終えた俺たちは空になった紙皿をゴミ箱に捨てて、他にもなにか食べようと物色し始めた。
まだお腹は減っているのだ、どんどん食べるぞ!
そんな折に、手を繋いでいた繭奈がその手をくいっと引いた。
「ん?どうしたの?」
「いえその、今って祭りなんだし、これだけ人が多いじゃない?」
「うん」
何を言おうとしているのだろうか?少し挙動不審な繭奈の言葉を待つ。
笹山もきょとんとしており、繭奈がいったい何を言おうとしているのかを待つことしかできなかった。
「……人が多すぎるし、一旦抜け出さないかしら?」
「それならなにか買っていこう、そうすればゆっくり食べれるだろうし」
人混みが嫌になったのだろうか?というには少し頬が赤い。
もしかしてと思い額に手を当ててみるが、別に熱がある様子は無い。
「別に風邪を引いてるわけじゃないわよ?」
「そう、だね……なんか顔が赤いからどうしたのかって思って」
「あぁ、それはね……」
その言葉の続きを繭奈が言おうとしたその瞬間、後ろからポンッと肩を叩かれた。
驚いて後ろを振り向くと、そこにいたのは久しく見ていない春波と山襞であった。
「あは♪やっぱり蔵真くんだぁ!」
「こんばんは蔵真くん」
さてこの状況、どうしようか?
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