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馬車の音がする。
お兄様がいらしたんだわ。
本宅より連れて来た執事見習いのスタニックとアルバンお兄様の声が、玄関ホールから聞こえる。
2階の私室を出て階段を降りれば、そこにはお兄様と男性が立っていました。
背格好もお兄様と同じくらいな方。
私を見つけたお兄様が目が合うと微笑んでくれた。
「エミリ、元気にしてたか?」
「はい、お兄様。」
軽く抱きしめてくれるお兄様は懐かしい香りがしました。
「エミリ、こちらはグレン・シュバリィー。未来のシュバリィー公爵さまだよ。私の悪友だとは、知っているだろ?会うのは初めてか?」
少し悪戯が成功したような満足げな笑みを浮かべるお兄様。
「王宮での舞踏会で遠くお見かけした事はありますが、挨拶はまだ…。いつも。お忙しそうでしたから。」
彼の父であるシュバリィー公爵は宰相閣下でいらっしゃいます。
その宰相閣下の補佐として日々忙しくされていて、次期宰相と噂されている方。
私が知っている事はそんなことくらい。
ちなみにお兄様は武より文の方。
文官とし大変忙しく、城に寝る為だけのお部屋をいただいているので、家には週1回帰ってこれるかあやしい日々を過ごしております。
「妹のエミリエンヌ・フォンテーナと申します。」
淑女の礼を丁寧にしたのは久しぶりだけど、身体に染み付いているらしく自然にできました。
「初めまして。グレン・シュバリィーです。…私も遠くからですが。」
よく通るお声は、言葉がハッキリと聞き取れますね。
さすが次期宰相様。
「私を?ご存知でしたの?…挨拶が遅くなってしまいもうしわけありません。」
お忙しいからお邪魔だと勝手に思い込まないで、ちゃんと挨拶するべきでした。
申し訳なく思い目を伏せるとお兄様が
「立ち話も疲れる。ゆっくり腰を下ろして話そう。スタニック、おいしいお茶をたのむよ。」
そう言って私の手を引いてくれました。
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