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なぜ覚えてないのか。
きっと、エルヴィナにとって取るに足らない出来事だったのだ。
自分にとっては忘れられない一番の記憶なのに。
女々しいな・・・。
「第一隊長!準備完了いたしました。」
自分の若い頃の痛い記憶に引きずり込まれえる所を、部下の声で現実へと戻る。
自分だけの記憶に残る事。
忘れ去られて返って都合がいいではないか、あんな無様な姿。
今は、エルヴィナは自分の側にいる。
「よし!・・・ジェラール・コーベンヌが接触してくる可能性は低い。ただ、来れば捕まえるチャンスでもある。人数は少ないが、気を抜かないよう心すること。」
「は!」
内報部は人数が少ない。
それは、貴族の秩序を乱す者を取り締まる、という内部的な意味からだ。
貴族同士のつながりは深く、広い。
情報の漏洩を防ぐ意味でも少ない方がいい。
部門長、副部門長の下にいくつかの隊を従えているこの部。
明日に迫る貴族会議で、不正を防ぐ為、出席者の調査が主な内容だ。
明日の会議は、それほど大きな案件が無い為、この件に関して我々の仕事量は、いつもと同じ。
だが、ジェラール・コーベンヌの脱走により、そちらに人員が取られているので、内報部が忙しいのはかわりない。
今回のような、エルヴィナの警護などは、逃亡者を確保するという任務であっても、所詮一貴族の警護だ。
本来なら第一隊の隊長である自分が出る任務では無いが、対象が結婚相手という自分の希望と部門長からの配慮で任務に就けることとなった。
部隊からは、自分のほかに1名、騎士団から3名と少数だ。
大人数では目立ちすぎるという懸念がある。
伯爵家から我が公爵家まで、そう距離はないから目立つ方がかえって危険度は下がるかとも思ったが、エルヴィナの所在がハッキリしてしまうより有耶無耶の方が、今後、相手も狙いを定めずらいかと、思いなおす。
大通りを通るのが通常の道順だが、目立たなさを取るなら、多少遠回りになるが街を囲むように作られた郊外の道の方が良い。
その方が人の通りも少ないので走る早さも確保できる。
人の目が無いのは狙われる可能性がある事もまた然り。
救いは、エルヴィナが本日我が家へ移動すると言う事が、昨日決まった事だ。
逃げて一週間そこらで完璧な計画ができるとは思えない。
我が家に使える者は、男女関係無く腕の立つ者を揃えている。
昔から王の命により、貴族を取り締まる任務を果たしている公爵家。
時には影の仕事にも就く事があるので、逆に狙われる事も多かった。
私設の警護団はもとより、メイドも護身術などを身に付けている。
エルヴィナを伯爵家に置くより、我が家にいてくれ方が、守りやすい。
それは言い訳だ。
指をくわえて見ているのは、もう終わりだ。
早くこの腕に閉じ込めて、自分自身が守り尽くす。
ジェラール・コーベンヌ、お前が手を離したんだ。
もう、エルヴィナは渡さない。
きっと、エルヴィナにとって取るに足らない出来事だったのだ。
自分にとっては忘れられない一番の記憶なのに。
女々しいな・・・。
「第一隊長!準備完了いたしました。」
自分の若い頃の痛い記憶に引きずり込まれえる所を、部下の声で現実へと戻る。
自分だけの記憶に残る事。
忘れ去られて返って都合がいいではないか、あんな無様な姿。
今は、エルヴィナは自分の側にいる。
「よし!・・・ジェラール・コーベンヌが接触してくる可能性は低い。ただ、来れば捕まえるチャンスでもある。人数は少ないが、気を抜かないよう心すること。」
「は!」
内報部は人数が少ない。
それは、貴族の秩序を乱す者を取り締まる、という内部的な意味からだ。
貴族同士のつながりは深く、広い。
情報の漏洩を防ぐ意味でも少ない方がいい。
部門長、副部門長の下にいくつかの隊を従えているこの部。
明日に迫る貴族会議で、不正を防ぐ為、出席者の調査が主な内容だ。
明日の会議は、それほど大きな案件が無い為、この件に関して我々の仕事量は、いつもと同じ。
だが、ジェラール・コーベンヌの脱走により、そちらに人員が取られているので、内報部が忙しいのはかわりない。
今回のような、エルヴィナの警護などは、逃亡者を確保するという任務であっても、所詮一貴族の警護だ。
本来なら第一隊の隊長である自分が出る任務では無いが、対象が結婚相手という自分の希望と部門長からの配慮で任務に就けることとなった。
部隊からは、自分のほかに1名、騎士団から3名と少数だ。
大人数では目立ちすぎるという懸念がある。
伯爵家から我が公爵家まで、そう距離はないから目立つ方がかえって危険度は下がるかとも思ったが、エルヴィナの所在がハッキリしてしまうより有耶無耶の方が、今後、相手も狙いを定めずらいかと、思いなおす。
大通りを通るのが通常の道順だが、目立たなさを取るなら、多少遠回りになるが街を囲むように作られた郊外の道の方が良い。
その方が人の通りも少ないので走る早さも確保できる。
人の目が無いのは狙われる可能性がある事もまた然り。
救いは、エルヴィナが本日我が家へ移動すると言う事が、昨日決まった事だ。
逃げて一週間そこらで完璧な計画ができるとは思えない。
我が家に使える者は、男女関係無く腕の立つ者を揃えている。
昔から王の命により、貴族を取り締まる任務を果たしている公爵家。
時には影の仕事にも就く事があるので、逆に狙われる事も多かった。
私設の警護団はもとより、メイドも護身術などを身に付けている。
エルヴィナを伯爵家に置くより、我が家にいてくれ方が、守りやすい。
それは言い訳だ。
指をくわえて見ているのは、もう終わりだ。
早くこの腕に閉じ込めて、自分自身が守り尽くす。
ジェラール・コーベンヌ、お前が手を離したんだ。
もう、エルヴィナは渡さない。
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