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クリスマス★

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 「今年はクリスマスうちに来ない?」

 遠慮がちに泉が聞いてくる。

 「ん?いいの?俺なんか…。」

 「いいに決まってるよっ!一緒にクリスマス過ごしたいもんっ!」

 …泉はそう言ってくれるが…。

 「気にしないで来いよ。お前がいた方が面白いし。良かったら浅川も…ってアイツどこ行ったんだ?」

 気づいたらさっきまでいた浅川さんがいなくなっていた。

 「トイレかな…。」

 あんまり女の子の事情に口を出すべきではないと思ったのでそのまま話を続ける。

 
 
 クリスマス…今年は泉に何を贈ろう…。

 考えるだけで楽しくなる。

 


 ★


 期末試験も終わり、終業式を終える。

 外はすっかり寒くなって、日が暮れるのも早くなった。

 すっかり街はクリスマス一色だ。

 クリスマスソングとイルミネーションで彩られた街を歩く。

 泉と二人でライトアップされたクリスマスツリーを見上げる。

 「凄い綺麗だねえ…。」

 嬉しそうに振り返った泉はとても綺麗だった。

 今日はクリスマスイブ…。

 ケーキを買って泉の家に行くことになっている。

 

 ケーキを買ったらおまけにクリスマスオーナメントを一つ貰った。

 かわいいサンタさんのオーナメントを泉が嬉しそうに眺める。

 「これ部屋に飾ろうっ★」

 …そろそろいい時間になったので泉と手を繋いで水野家に行く。

 「ただいま~っ★」

 「お邪魔しますっ。」


 「おかえりなさい、寒かったでしょっ★手洗って暖まって?」

 泉のお母さんは相変わらず元気で、美人さんだ。

 泉が部屋で着替えるのを待つ間に泉のお母さんの手伝いをする。

 「透クンってば気を使わないのっ!あ、でもグラス持っていって?」

 「はーいっ。」

 リビングにお皿にグラスを運ぶ。

 「透クンウチの子よりいい子なんだから。真実なんてまだ帰ってこないし…もしかして…デートかしらねっ★」

 嬉しそうな泉のお母さん。 

 つい気になってたことを聞いてしまう。

 「葵さんは…気にならないっていうか、心配じゃないんですか?その…泉と俺が一緒にいたり、泉が俺の所に泊まりに来るの…。」

 つい声が小さくなってしまう。

 「…別にならないわよ?だって透クンだったら泉のこと大事にしてくれるでしょ?それに何より泉が透クンの事好きなんだし。心配って言ったら少し前の真実の方が心配だったわよ。あの子…ちゃんと誰か愛せるのかしらって…。でも唯ちゃんがいてくれるんだもの…きっとあの子も大丈夫ねっ。…誰も愛せないで一人でいる事の方がよっぽど心配よ。」

 葵さんは寂しそうに笑う。

 「…でもっ…。」

 「好き合った結果の妊娠なら…反対しないわよ。むしろ応援してあげるから。透クン頑張って★」

 「!!?」

 お母さんは嬉しそうに話してくれる。

 「本当泉ってば昔っから男の子苦手で…。ずっと一人か真実にくっついていてね…正直結婚とか諦めてたのよ。そこそこの歳になったらそれなりの財産を継がせてどこか優しそうな男の子とって思ってたけど、そもそも男の子怖いみたいで。もう一生家で面倒みようって思ってたんだけど…。透クンが来てくれたから…。」

 「…?」

 「泉が透クンの事楽しそうに話してくれた時は嬉しかったわよ。これで少しは男の子苦手なの治るかしらって。結局透クン以外はやっぱりダメみたいだけど、むしろ正解だったわね。」

 
 泉がキッチンに入ってくる。

 「…透クンっ頑張ってねっ★」

 
 葵さんに肩を叩かれる。

 …。

 「あっ透はお客さんなんだから…座っててっ?」

 「泉も透クンと座ってなさいっもうすぐ終わるからっ…にしても真実遅いわね…。」

 

 「…ただいま…。」

 「葵さんおくれてごめんっ!」

 真実と真実のお父さんが帰ってくる。

 …心なしか真実が元気が無いような…。

 
 「こんばんわ。お邪魔してます。」

 真実のお父さんに挨拶をする。

 「透クン、よく来たねっ★」

 真実のお父さんは嬉しそうに笑ってくれる。

 「真実…おかえり。寒かったでしょ。手洗ってご飯にしようっ。」

 真実の背中を押す。

 洗面所で真実の手を洗わせてリビングに連れ込む。

 美味しそうなご馳走にみんなの笑顔が溢れている。

 ケーキに火を灯して眺めていると、とても幸せな気分になった。

 
 泉のお母さんのご飯は美味しかったし、ケーキも美味しかった。

 泉のお父さんが秘蔵の泉の写真や動画を見せてくれて…物凄く楽しかった。

 …真実…元気ないな…。

 ソファーで座って食事している真実を見つめる。

 ふっと肩に手を置かれて振り返ると泉のお父さんがいた。

 泉のお父さんは真実が元気が無い原因を知っているのか、首を振った。

 「気遣ってくれてありがとう。でも今は少し放って置いてやって?そのうち元気になるから。」

 …そう言われた。

 …そういうものかと思い、あまり気にしないようにした。

 


 なんとなく流れで水野家にお泊まりすることになる。

 「っていうか透クン戻って来なさいよっ。そしたら毎日ご飯作ってあげるのに…。」

 泉のお父さんもお母さんも少し呑んだからか上機嫌だ。

 「もういっそこのまま家で泉と結婚して…。」

 
 泉とさっと片付けをして上機嫌の大人たちから離れる。





 「泉…これ…。」

 泉のクリスマスプレゼントを渡す。

 月明かりの下で佇む真っ白な猫の模様の携帯電話のケースだ。

 「すごく綺麗だね。ありがとうっ。透…私からはこれ…使ってね。」

 泉がくれたのはお財布だった。

 「…いいの?」

 「うん。これなら毎日使ってもらえるんじゃ無いかって思ったの。」

 「うん。毎日大事に持ち歩いて使うね。」

 
 

 泉と目が合って、なんとなく笑い合う。

 「今日は一緒に過ごせて良かったよ。楽しかったし。」

 「透…私の部屋で寝よう?」

 そう言いながら泉が赤くなる。

 「…いいの…かな…。」

 階段を見つめる。

 階下には泉のお父さんもお母さんもいるのに…。

 「大丈夫。あの様子なら上に上がってこないからっ★」

 泉に手を引かれて部屋に入る。

 …。

 相変わらず泉の部屋はいい匂いで…。

 泉が枕元にサンタのオーナメントを置いた。

 「さ、お隣どうぞっ。」

 泉のベッド…。

 ドキドキしながら泉の隣に寝転ぶ。

 「一緒に住んでた頃を思い出すねっ。」

 …たしかに。

 数ヶ月前まではよく泉と寝てたな…。

 お化けが怖いと言いながらホラー映画を見たがったり、タオルケットを被りながらお化けが出る度に震えていた泉…。

 可愛くってたまらなかった。

 「…寒く無い?」

 泉に声をかける。

 「うん。透と一緒だからあったかいよ…。」

 泉が嬉しそうに抱きついてくる。

 …本当…かわいい…。

 泉の頭を撫でながら、いつの間にかに眠っていた…。



 
 

 
 
 
 

 
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