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真実を慰めろっ★

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 「透…昨日は悪かったな…。嫌な気分にさせただろ…。」

 浅川さんを送って行った真実が翌日家に来た。

 「…そんな事無いよ…。」

 真実の顔をあまり見れずに、慌ててお茶を淹れる。

 …大事な親友なのに…。

 二人の行為で興奮したなんて…。

 …情けない…。

 「はい。どーぞっ。」

 「ありがとう。」

 真実にお茶とおせんべいを出して座る。

 「俺…お前にあんな偉そうな事言ったけど…浅川の事抱いた…。」

 「…うん。でもまあ…あの流れじゃ仕方なかったんじゃ無い?浅川さん…真実に抱かれたがってたみたいだしさ。」

 つい喋ってしまう。

 「…お前あの時…?」

 「…真実…ごめんなさいっ!オレ…真実達の声とか聞いてたらその…我慢出来なくって…。部屋から出てって邪魔するのも悪かったし…。」

 真実と目が合う…。

 「真実達の声とか聞いてたら泉のこと思い出しちゃって…一人で…しちゃったんだ。ごめんなさい。」

 「あ、いやそれは別に…。気にしないでいい。あんなそばでヤられたら…仕方ないだろ。」

 慌てた様に真実が言った。

 …。

 何となく気まずい空気になる。

 …でも真実と気まずくなんかなりたくなかった。

 …しかも何故か落ち込んでいる様子の真実…。

 「真実ってば俺より先に大人になっちゃって…良かったねっ!」

 「…。」

 真実がため息をつく。

 …何で!?

 もし自分が泉とエッチしたら…幸せすぎて…嬉しいのに…。

 …真実は嬉しくなかったのかな…。

 真実を見つめる。

 「…浅川…結婚するんだってよ。」

 「…!!何それ!?誰とっ!シンジ?」

 驚いて真実の肩を掴む。

 真実は困った様に笑う。

 「責任取ろうとしたわけじゃ無いんだけど、昨日あの後浅川の家に行ってあいつの母さんの仏壇に線香やったんだ…。それで、浅川に…大学卒業するまで結婚を前提に付き合ってくれないかって頼んだら、そう言われた。」

 …浅川さん…結婚したいほど好きな人なんて居たんだ…。

 …絶対真実の事好きだと思ったんだけどな…。

 …でも…それならどうして真実とエッチなんてしたんだろう…。

 …好きな人とすればいいのに…。

 「俺との事は想い出だって…。」

 …。

 「分かんないな…。アイツ…。」

 真実が切なそうな顔で笑った。

 …。

 何か真実に言ってあげたかったけど何も思い浮かばなかった。

 こんな時…どうすればいいんだろう…。


 ふと家を片付けていた時に見つけたあるものの存在を思い出した。

 未開封だったし大丈夫だろう。

 「真実っ元気出してっ!こんな時はアレだよ!呑もう?」

 「は?お前何言ってるんだって何で酒なんか持ってるんだよっ?」

 「分かんないけど家にあったよ?多分おじさんかおばさんが呑むようだったんじゃないの?まあうちにあっても料理にしか使わないしさ。ほら呑んでっ?これってどういう風に呑むのかな…?氷入れるの?それともこのまま?」

 とりあえず真実にグラスを渡して、お酒を注ぐ。

 自分のグラスにもお酒を入れる。

 「…お酒ってどんな味がするんだろうねっ?」

 そう言いながら一気に呑み込んだ。

 「ああっ!!透バカかっ!お前一気にそんなに呑むやついないぞっ!!」

 真実の慌てたような声…。




 ★



 
 「んっ…。」

 誰かにキスされている…。

 口の中に舌が入ってきて…歯を舐められている…。

 「…いずみ…。」

 泉の舌を舐める。

 …すごい…気持ちいい…。

 「…大好きだよ…。」

 何とかそう言いながらキスされていた…。

 お酒のせいで身体に力が入らなかった…。

 


 ★


 
 「…透…おはようっ。もうっ真実ったらまた透のところに来てずるいっ!」

 泉の声にハッとする。

 起きあがろうとして、激しい頭痛に気づく。

 「…いたたた…。」

 ゆっくりそのまま寝転がるとそばで真実が眠っていた。

 …。

 真実は微笑む様に穏やかな表情で眠っている。

 
 「ああっ…透達お酒呑んでたのっ?透…大丈夫?二日酔い?」

 泉が心配そうに顔を覗き込んできた。

 「泉…おはよう。もう一回キスして…。」

 「…?」

 不思議そうな顔をする泉を抱き寄せる。

 「泉がキスしてくれたら頭痛消えるかも…。」

 「もうっ…透ってば…。」

 そう言いながら泉がキスしてくれた。


 

 
 
 
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