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受験シーズン到来!
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「透…本当に家のお母さん呼ばなくて大丈夫?」
泉が顔を覗き込んでくる。
「うん。これくらい寝てれば大丈夫だから…。気にしないで…。泉は学校行って来てよ。気をつけてね?」
ベッドから起きあがろうとすると泉に止められる。
「透、いいから寝てて?ちゃんと寝てないと治らないよ?来週試験なんだからちゃんと体調整えないとね」
泉が毛布をかけ直してくれた。
「ごめん、こんな時に。ねえ泉…泉に移したら大変だからしばらく家に帰った方がいいよ。本当に…。」
身体がだるくなって来たので目を閉じる。
「透…」
「俺…本当に大丈夫だから…」
「透…分かったから…寝て?」
泉がひんやりとした手を額に乗せてくる。
…気持ちいいなあ。
そう思いながら眠りにつく。
★
少し眠れたのかぼんやり目を覚ます。
…家の中はとても静かだ。
…テスト来週だから…勉強しないと…。
なんとか起き上がって鞄を漁る。
苦手な地理の問題集を持ち机に座る。
っ…。
何も頭に入って来ない。
来週は試験なのに…。
絶対に泉と同じ大学に行きたい。
勉強しないと…。
★
「おい透…大丈夫か!?」
…真実…?
頭をあげようとするができずに返事だけする…。
「どうしよう…来週試験なのに…。泉と同じ大学に行きたいのに…。真実…」
ぎゅっと抱きしめられて、ふわりとした感覚がした。
寒くてたまらない。
ぬくもりが欲しくて温かい何かに抱きつく。
気がつくと真実にしがみつきながら寝ていた。
「…真実…?」
真実は優しく透の頭を撫でながら地理を解説しながら詳しく話してくれている。
「透…いいから黙って聴きながら寝てろ。眠かったらこのまま寝ちまっていいから。」
あまり抑揚のない、でもとても聴き慣れた真実の声を聞いていると何故か自然に真実の解説が耳に入ってくる。
…真実の声…聞いてると落ち着くな…。
真実…温かい…。
気持ち良くて…そのまま再び眠りにつく。
★
「泉…お前家に帰ってろよ?透は俺が観とくから。俺はもう大学決まったし透の風邪が移っても問題ない。でも泉は…最悪透が駄目だったとしても進学しないと…お前が透のこと支えていくんだろ?」
「そうだけど…。」
泉と真実の声が聞こえてくる。
「親の世話にならないで透との生活を望むんなら、早く泉は社会人として働く必要が出てくるぞ?透は嫌がるだろうけど…。」
「…うん。私は大学でちゃんと真実を支えていけるように勉強しないといけないのはわかってるよ。透のことも守りたいし…。時間…無駄にはできないよね」
…二人とも…何話してるんだろう。
「だから今こんなところで風邪なんか引いて試験不意にできないだろ?」
「それは分かってるよ」
ふうっと泉がため息をついた。
廊下から聞こえてくる二人の声…。
「…分かった…じゃあ透のこと…よろしくね?」
泉の声が聞こえた。
★
「透クン大丈夫?もう少ししたらご飯にしよう。喉乾いてなくても何か飲もう?」
身体を支えられて起き上がらせてもらう。
「…いずみ…?」
頭がぼんやりする…。
口元に冷たい飲料の入った入れ物を差し出されてゆっくり飲み込む。
喉が腫れていて飲み込みづらかったが…すごく美味しかった。
「…泉…ありがとう。」
ベッドに寝かされる。
目を開けていられずに目を閉じると頭を撫でられた。
…気持ちいい…。
★
「ーであって、この場合の地形は当てはまらない。なぜならー」
淡々としたシンジの声が耳に入ってくる。
「…シンジっ…。」
真実の上で眠っていたようだ。
寝返りを打ち真実の胸に耳を当てる。
ゆっくりとした真実の声と心音が同時に耳に入ってくる。
背中を撫でられて、ボソボソと話しかけてくる真実の声…。
「透…大丈夫だ。すぐに熱も下がるし試験だって絶対上手くいくから。」
…そうだといいなあ。
真実の体温を感じながら再び眠りに落ちる。
★
試験当日にはすっかり熱は下がって、身体が軽くなっていた。
迎えに来た泉が玄関で笑う。
「透大丈夫?…行こう?」
「…うん。みんなのおかげで熱も下がったし大丈夫。よし、試験がんばるぞ!」
「大丈夫。もうお前の中に答えは入ってる筈だから、とにかく落ち着けよ?」
真実が玄関で見送ってくれた。
試験、開始!
苦手な地理のテスト用紙を見た瞬間頭の中が真っ白になったが何とか我にかえり記憶をフル動員させる。
あれっ…この問題って?
真実の声が頭の中で甦る。
真実の抑揚のない声が脳内で再現されていく。
…!!
苦手だった科目も何とか答えを書き込むことができた。
多分今までで一番答えが書けた筈だ。
ホッとしながら泉とお昼ご飯を食べる。
「午前中は何とか…まあ一番苦手だった地理が何とかなりそうだよ。泉はどう?」
「多分大丈夫。午後も何とかなると思うんだけど…」
まあ泉は余裕だろう。
泉のお母さんが作ってくれたお弁当は美味しい。
「透、今日お母さんが夕ご飯食べに来なさいっていってたけど…どうする?」
「そう?じゃあせっかくだし行こうかな。泉のお母さんも泉に似て…って泉がお母さんに似たのか…本当美人さんだよねえ」
熱が出ていた時何度も泉と間違って名前を呼んでしまった。
泉のお母さんはただ優しく微笑んでくれただけだったが、すごくホッとして背中を撫でられていると良く眠れた。
…きちんとお礼…言わないとな。
午後も比較的スムーズに試験は進んだ。
試験を終えて泉と水野家に帰る。
★
泉と一緒に泉のお母さんが夕飯を作るのを手伝う。
「透クン、悪いんだけどそろそろ真実起きして来てくれる?あの子今朝帰って来てからずっと寝てるのよ。もう昨日寝れなかったのかしらねえ…」
2階に上がり真実の部屋のドアをノックする。
…返事はなかったのでドアを開ける。
薄暗い部屋のベッドの上で真実は眠っている。
…本当…泉に似てるよなあ。
少しドキドキしながら真実の寝顔を眺める。
…昨日の晩は多分真実…ずっと地理の解説を聞かせてくれていたんだと思う。
穏やかな真実の声が脳内で再現される。
…。
眠っている真実の手にそっと触れた。
…この手がずっと背中を撫でてくれていたんだよね…。
大きな手だ。
「…シンジ…。試験無事に終わったよ。ずっと…背中を撫でてくれてありがとう」
真実の手を握る。
顔は泉に似ていたがやっぱり真実は男だと実感する。
手が…骨格がやはり泉とは全然…。
不意に手を握り返されて驚いていると真実が目を覚ました。
「透…試験無事に終わったか?」
「うん!多分大丈夫だと思う。真実のおかげだよ!」
真実がふっと嬉しそうに笑った。
「…良かったな。これでお前は…。」
一瞬切なそうな顔をしたが首を振ってニコリと笑った。
「いや、なんでもない。そろそろメシか。」
起き上がる真実。
「うん!試験も無事に終わってもう待つだけだから!今日は美味しいご飯が食べれそうだよ!行こう?」
真実と一緒に一階に降りる。
キッチンからはいつのまにかに帰って来たのか泉のお父さんの声と、泉のお母さん、泉の3人の楽しそうな声が聞こえていた。
泉が顔を覗き込んでくる。
「うん。これくらい寝てれば大丈夫だから…。気にしないで…。泉は学校行って来てよ。気をつけてね?」
ベッドから起きあがろうとすると泉に止められる。
「透、いいから寝てて?ちゃんと寝てないと治らないよ?来週試験なんだからちゃんと体調整えないとね」
泉が毛布をかけ直してくれた。
「ごめん、こんな時に。ねえ泉…泉に移したら大変だからしばらく家に帰った方がいいよ。本当に…。」
身体がだるくなって来たので目を閉じる。
「透…」
「俺…本当に大丈夫だから…」
「透…分かったから…寝て?」
泉がひんやりとした手を額に乗せてくる。
…気持ちいいなあ。
そう思いながら眠りにつく。
★
少し眠れたのかぼんやり目を覚ます。
…家の中はとても静かだ。
…テスト来週だから…勉強しないと…。
なんとか起き上がって鞄を漁る。
苦手な地理の問題集を持ち机に座る。
っ…。
何も頭に入って来ない。
来週は試験なのに…。
絶対に泉と同じ大学に行きたい。
勉強しないと…。
★
「おい透…大丈夫か!?」
…真実…?
頭をあげようとするができずに返事だけする…。
「どうしよう…来週試験なのに…。泉と同じ大学に行きたいのに…。真実…」
ぎゅっと抱きしめられて、ふわりとした感覚がした。
寒くてたまらない。
ぬくもりが欲しくて温かい何かに抱きつく。
気がつくと真実にしがみつきながら寝ていた。
「…真実…?」
真実は優しく透の頭を撫でながら地理を解説しながら詳しく話してくれている。
「透…いいから黙って聴きながら寝てろ。眠かったらこのまま寝ちまっていいから。」
あまり抑揚のない、でもとても聴き慣れた真実の声を聞いていると何故か自然に真実の解説が耳に入ってくる。
…真実の声…聞いてると落ち着くな…。
真実…温かい…。
気持ち良くて…そのまま再び眠りにつく。
★
「泉…お前家に帰ってろよ?透は俺が観とくから。俺はもう大学決まったし透の風邪が移っても問題ない。でも泉は…最悪透が駄目だったとしても進学しないと…お前が透のこと支えていくんだろ?」
「そうだけど…。」
泉と真実の声が聞こえてくる。
「親の世話にならないで透との生活を望むんなら、早く泉は社会人として働く必要が出てくるぞ?透は嫌がるだろうけど…。」
「…うん。私は大学でちゃんと真実を支えていけるように勉強しないといけないのはわかってるよ。透のことも守りたいし…。時間…無駄にはできないよね」
…二人とも…何話してるんだろう。
「だから今こんなところで風邪なんか引いて試験不意にできないだろ?」
「それは分かってるよ」
ふうっと泉がため息をついた。
廊下から聞こえてくる二人の声…。
「…分かった…じゃあ透のこと…よろしくね?」
泉の声が聞こえた。
★
「透クン大丈夫?もう少ししたらご飯にしよう。喉乾いてなくても何か飲もう?」
身体を支えられて起き上がらせてもらう。
「…いずみ…?」
頭がぼんやりする…。
口元に冷たい飲料の入った入れ物を差し出されてゆっくり飲み込む。
喉が腫れていて飲み込みづらかったが…すごく美味しかった。
「…泉…ありがとう。」
ベッドに寝かされる。
目を開けていられずに目を閉じると頭を撫でられた。
…気持ちいい…。
★
「ーであって、この場合の地形は当てはまらない。なぜならー」
淡々としたシンジの声が耳に入ってくる。
「…シンジっ…。」
真実の上で眠っていたようだ。
寝返りを打ち真実の胸に耳を当てる。
ゆっくりとした真実の声と心音が同時に耳に入ってくる。
背中を撫でられて、ボソボソと話しかけてくる真実の声…。
「透…大丈夫だ。すぐに熱も下がるし試験だって絶対上手くいくから。」
…そうだといいなあ。
真実の体温を感じながら再び眠りに落ちる。
★
試験当日にはすっかり熱は下がって、身体が軽くなっていた。
迎えに来た泉が玄関で笑う。
「透大丈夫?…行こう?」
「…うん。みんなのおかげで熱も下がったし大丈夫。よし、試験がんばるぞ!」
「大丈夫。もうお前の中に答えは入ってる筈だから、とにかく落ち着けよ?」
真実が玄関で見送ってくれた。
試験、開始!
苦手な地理のテスト用紙を見た瞬間頭の中が真っ白になったが何とか我にかえり記憶をフル動員させる。
あれっ…この問題って?
真実の声が頭の中で甦る。
真実の抑揚のない声が脳内で再現されていく。
…!!
苦手だった科目も何とか答えを書き込むことができた。
多分今までで一番答えが書けた筈だ。
ホッとしながら泉とお昼ご飯を食べる。
「午前中は何とか…まあ一番苦手だった地理が何とかなりそうだよ。泉はどう?」
「多分大丈夫。午後も何とかなると思うんだけど…」
まあ泉は余裕だろう。
泉のお母さんが作ってくれたお弁当は美味しい。
「透、今日お母さんが夕ご飯食べに来なさいっていってたけど…どうする?」
「そう?じゃあせっかくだし行こうかな。泉のお母さんも泉に似て…って泉がお母さんに似たのか…本当美人さんだよねえ」
熱が出ていた時何度も泉と間違って名前を呼んでしまった。
泉のお母さんはただ優しく微笑んでくれただけだったが、すごくホッとして背中を撫でられていると良く眠れた。
…きちんとお礼…言わないとな。
午後も比較的スムーズに試験は進んだ。
試験を終えて泉と水野家に帰る。
★
泉と一緒に泉のお母さんが夕飯を作るのを手伝う。
「透クン、悪いんだけどそろそろ真実起きして来てくれる?あの子今朝帰って来てからずっと寝てるのよ。もう昨日寝れなかったのかしらねえ…」
2階に上がり真実の部屋のドアをノックする。
…返事はなかったのでドアを開ける。
薄暗い部屋のベッドの上で真実は眠っている。
…本当…泉に似てるよなあ。
少しドキドキしながら真実の寝顔を眺める。
…昨日の晩は多分真実…ずっと地理の解説を聞かせてくれていたんだと思う。
穏やかな真実の声が脳内で再現される。
…。
眠っている真実の手にそっと触れた。
…この手がずっと背中を撫でてくれていたんだよね…。
大きな手だ。
「…シンジ…。試験無事に終わったよ。ずっと…背中を撫でてくれてありがとう」
真実の手を握る。
顔は泉に似ていたがやっぱり真実は男だと実感する。
手が…骨格がやはり泉とは全然…。
不意に手を握り返されて驚いていると真実が目を覚ました。
「透…試験無事に終わったか?」
「うん!多分大丈夫だと思う。真実のおかげだよ!」
真実がふっと嬉しそうに笑った。
「…良かったな。これでお前は…。」
一瞬切なそうな顔をしたが首を振ってニコリと笑った。
「いや、なんでもない。そろそろメシか。」
起き上がる真実。
「うん!試験も無事に終わってもう待つだけだから!今日は美味しいご飯が食べれそうだよ!行こう?」
真実と一緒に一階に降りる。
キッチンからはいつのまにかに帰って来たのか泉のお父さんの声と、泉のお母さん、泉の3人の楽しそうな声が聞こえていた。
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