この世界では相当に無力な私を、誰か貰って下さい。

武林 茜

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6  疑う心

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「不気味な見た目で申し訳無い。訳あって、人前で仮面を外すことが出来ないんだ。」

「いえ私の方こそ凝視してしまい、すみません。あの助けて頂き、ありがとうございます。」

「対したことはしていないから、気にしなくて良いよ。それよりも1つ提案があるんだが、俺の屋敷に来ないかい。

この世界では、悲しいことに君みたいな女性の人間は、あまり良い扱いを受けない。しかも、君は見たところ、魔力が無いみたいだし、尚更大変になるだろう。なんせ、こいつらが君にやったことは決して罪にならないんだよ。理不尽な話だけどね。

今は、魔法で時を止めているけど、俺がこの場を離れると魔法は自動的に解除される。

君に、辛い思いはさせないと約束する。だから、ぜひ一緒に俺と来てほしい。」 

「…。」

確かに、仮面の男性の言うとおり私を殺そうとしていた豚の獣人達は、まぶたも動かずに全てが停止していた。

助けてもらったことには、感謝している。だからといって「はい、宜しくお願いします。」と即答はしない。

だって、そうだろう。優しくしてくれた人が、全て善人とは限らないじゃないか。欲望を満たす手段として、人が良さそうな振りをしているだけなのかも。

私は、何回も裏切られてきた。家族や友人、同僚、上司、そして愛していた恋人にも。

簡単に他人を信じることが、私には出来ない。

心が歪んでいる私はただ、つばを飲み込み黙るしかなかった。
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