3 / 12
3話 男爵夫人の依頼
しおりを挟む
ディラック夫人の改まった様子に、チェルシーは何事だろうと身構えた。
「あなたのその人を見抜く能力を活かして、信頼できる探偵を雇ってほしいの」
「探偵って……奥様、何かお困りごとですか?」
「そんなに大したことじゃないのよ。……ただ、わたくしの生まれ故郷が今どうなっているか、こっそり調べてほしいの」
夫人は結婚後、故郷の家族と時折手紙のやり取りをしていた。村は辺鄙なところにあったため、年に二、三回程度のやりとりだったが、それでも夫人は家族からの手紙が届くのを楽しみにしていた。
だが、二年前、ぱたりと連絡が途絶えた。何度手紙を送っても一切返事がなかった。
何かあったのだろうかと不安に駆られる夫人をディラック男爵は慰め、村に調査員を向かわせた。
「川の氾濫で村ごと流されてしまったようなの。村のすぐ近くに大きな川があったから……」
外部との交流もそれほど頻繁に行われておらず、発覚が遅れた。そのため遺体の損傷が激しく、すぐさま埋葬したそうだ。
その後、ディラック男爵夫妻が墓参りに行って、家族や村人たちの冥福を祈った。
「当時はわたくしの妊娠が発覚した頃だったから、大事をとってすぐには行けなかったのよ。実際に行ったのは出産してから半年後……侍女の募集をする少し前くらいだったかしら」
「つい最近ですね……」
「ええ。長年仕えてくれていた侍女が突然辞めてしまって……わたくしが塞ぎ込んでばかりで見ていられなかったのね。それで、彼女は愛想をつかしてしまったのよ」
ザザッと、夫人の声に雑音が混じる。
言うべきか言わないべきか迷い、顔に出てしまったのだろう。夫人は困ったように微笑んだ。
「あなたに隠し事はできないわね。……辞めてしまったのは本当よ。彼女の筆跡で書かれた辞表が残されていたから。でも、わたくしの情けない姿を見たら愛想を尽かす前に、まず叱咤する子だったのよ。あの子とは幼馴染で、お互いのことはよく知っていたから。……なのに、突然手紙だけ残して消えたの」
夫人はそれに納得できなかった。
男爵に訴えて侍女を探してもらったが、消息を辿ることはできず、諦めて新しい侍女を雇うことになった。
「あの子は、故郷の村のことを気にしてたわ。引っかかる点があるから調べないとって。……きっと、そのせいで何か事件に巻き込まれたの」
夫人は悲しそうに目を伏せたが、すぐにチェルシーを見据えた。
「だから、あなたのその目で信頼できる人に調査を依頼したいの」
「それなら、私が調べますよ! 聞き込みする時も、あたしなら嘘を見抜けますし」
「でも、危ないわ。あの子の二の舞いになってしまうかもしれない」
探偵ならば、こうした危険な調査にも慣れている。だから、そちらのほうがいいのではないかと夫人は言う。
「大丈夫です! 心配でしたら、ボディーガードを頼みますから!」
「……で、俺が呼ばれたってわけか」
呆れたようにぼやくマイロに、チェルシーは反論する。
「あたしが呼んだのは『何か遭った時に頼れる人』であって、あんたじゃないわよ。なんで、あんたがここにいるのよ?」
夫人にはボディーガードを依頼すると言ったものの、チェルシーには伝手がなかった。
マイロが度々仕事で治安の悪い街に行っていたのを思い出し、彼ならボディーガードを頼んだこともあるだろうと相談を持ちかけた。
マイロから適任者を用意すると返ってきたため、さぞ屈強な男が来るのだろうと約束の場所に向かったところ、マイロがいたのだ。
「そりゃ、俺以上の適任者がいないからな」
チェルシーは思わずマイロの体を上から下まで見る。ローブに隠れて体格ははっきりとは分からないが、さほど身長があるわけでもなく、筋肉もたいしてついてそうには思えない。
肉体労働をしているわけでもないから、力もさほどないのかもしれない。もしかしたら、チェルシーよりも貧弱なのではないだろうか。
「お前……今、失礼なこと考えてないか?」
「え……!? そ、そんなことないよ!」
「ならいいけど。……ボディーガードを雇うってことは、お前が能力を使っている場面を何度も近くで見られるってことだ。一回や二回程度ならごまかしも効くだろうが、そのうちお前の力を悟られるかもしれない」
確かにそうだ。チェルシーは考えていることが顔に出やすいと言われている。
人の嘘を見抜ける能力は物心ついた頃には既にあったため、人の声にノイズが混じるのはチェルシーにとっては当たり前のことだ。だから、人が嘘をついていても通常はスルーする癖がついている。
だが、調査中は相手の発言の真偽を見極めることに集中しすぎて、顔に出てしまう可能性がある。変に意識すると失敗しやすいのが、チェルシーの欠点だ。
「夫人にも薄々勘付かれてしまったんだろ?」
「うん……。でも、あの方はあたしを利用しようなんて考えてないわよ」
「危険があるかもしれない調査を頼む時点で、利用されてる気もするが……ああ、わかったって。お前が自ら調査するって申し出ただけだったな。だから、そんな睨むな」
マイロは大きくため息をつく。
「わざわざ危険なことに自ら首を突っ込むのは心底理解できないが……まあ、あの屋敷で今後も働くなら、不安の種ははっきりさせておいたほうがいいんだろうな」
「……ねえ。マイロが一緒に行くとしても、ボディーガードはいたほうがいいんじゃない?」
夫人からは半月ほどの休みとともに、潤沢な調査費用をもらっている。旅費などを除いても、ひとりくらいなら人を雇える余裕はあった。
「あたしが顔に出やすくてもマイロがいるからごまかしやすいし、馴染の人なら雇いやすいんじゃないの?」
「俺は他の街に行く時にボディーガードを雇ったことはないぞ」
「え……危なくないの?」
「自分の身くらい自分で守れる。今までもずっとそうだっただろ?」
そういえば、村で暮らしていた時も孤児院時代も、やたらとマイロをからかう子どもたちがいたが、ある日を境に、彼に関わるのをやめた。
みんな、マイロのことが恐ろしいと震えていたが……。
「もしかして、いじめっ子達と殴り合いの喧嘩でもしてたの?」
「今頃気づいたのか。あいつらには辟易していたからな、一度やり返したら一切手出しをしてこなくなって楽だった」
幼馴染の意外な一面にチェルシーは目を白黒させる。
マイロは饒舌できっぱりと物を言うから、てっきり言葉で相手を黙らせたと思っていた。まさか、拳で反撃していたとは。
チェルシーの反応にマイロは得意げに鼻を鳴らすと、早く出発するぞと彼女を促した。
夫人の故郷の村は、チェルシー達が住んでいた街から少々離れた場所にあった。乗合馬車で二日かけて最寄りの街へ行き、そこから徒歩で丸一日かけてやっと辿り着いた。
くたくたになりながらようやく村に到着し、喜んだのもつかの間、チェルシーは困惑した。
「マイロ。奥様の村って、洪水で流されたのよね……?」
「夫人の話ではそうだな」
困惑するチェルシーとは対象的に、マイロは平静だ。こうなることを予想していたのだろうか。
「でも、どう見てもこれって……」
チェルシーは呆然と目の前の光景を見つめる。
かつて村があったと思われる場所には燃え尽きた家々の残骸があった。
「あなたのその人を見抜く能力を活かして、信頼できる探偵を雇ってほしいの」
「探偵って……奥様、何かお困りごとですか?」
「そんなに大したことじゃないのよ。……ただ、わたくしの生まれ故郷が今どうなっているか、こっそり調べてほしいの」
夫人は結婚後、故郷の家族と時折手紙のやり取りをしていた。村は辺鄙なところにあったため、年に二、三回程度のやりとりだったが、それでも夫人は家族からの手紙が届くのを楽しみにしていた。
だが、二年前、ぱたりと連絡が途絶えた。何度手紙を送っても一切返事がなかった。
何かあったのだろうかと不安に駆られる夫人をディラック男爵は慰め、村に調査員を向かわせた。
「川の氾濫で村ごと流されてしまったようなの。村のすぐ近くに大きな川があったから……」
外部との交流もそれほど頻繁に行われておらず、発覚が遅れた。そのため遺体の損傷が激しく、すぐさま埋葬したそうだ。
その後、ディラック男爵夫妻が墓参りに行って、家族や村人たちの冥福を祈った。
「当時はわたくしの妊娠が発覚した頃だったから、大事をとってすぐには行けなかったのよ。実際に行ったのは出産してから半年後……侍女の募集をする少し前くらいだったかしら」
「つい最近ですね……」
「ええ。長年仕えてくれていた侍女が突然辞めてしまって……わたくしが塞ぎ込んでばかりで見ていられなかったのね。それで、彼女は愛想をつかしてしまったのよ」
ザザッと、夫人の声に雑音が混じる。
言うべきか言わないべきか迷い、顔に出てしまったのだろう。夫人は困ったように微笑んだ。
「あなたに隠し事はできないわね。……辞めてしまったのは本当よ。彼女の筆跡で書かれた辞表が残されていたから。でも、わたくしの情けない姿を見たら愛想を尽かす前に、まず叱咤する子だったのよ。あの子とは幼馴染で、お互いのことはよく知っていたから。……なのに、突然手紙だけ残して消えたの」
夫人はそれに納得できなかった。
男爵に訴えて侍女を探してもらったが、消息を辿ることはできず、諦めて新しい侍女を雇うことになった。
「あの子は、故郷の村のことを気にしてたわ。引っかかる点があるから調べないとって。……きっと、そのせいで何か事件に巻き込まれたの」
夫人は悲しそうに目を伏せたが、すぐにチェルシーを見据えた。
「だから、あなたのその目で信頼できる人に調査を依頼したいの」
「それなら、私が調べますよ! 聞き込みする時も、あたしなら嘘を見抜けますし」
「でも、危ないわ。あの子の二の舞いになってしまうかもしれない」
探偵ならば、こうした危険な調査にも慣れている。だから、そちらのほうがいいのではないかと夫人は言う。
「大丈夫です! 心配でしたら、ボディーガードを頼みますから!」
「……で、俺が呼ばれたってわけか」
呆れたようにぼやくマイロに、チェルシーは反論する。
「あたしが呼んだのは『何か遭った時に頼れる人』であって、あんたじゃないわよ。なんで、あんたがここにいるのよ?」
夫人にはボディーガードを依頼すると言ったものの、チェルシーには伝手がなかった。
マイロが度々仕事で治安の悪い街に行っていたのを思い出し、彼ならボディーガードを頼んだこともあるだろうと相談を持ちかけた。
マイロから適任者を用意すると返ってきたため、さぞ屈強な男が来るのだろうと約束の場所に向かったところ、マイロがいたのだ。
「そりゃ、俺以上の適任者がいないからな」
チェルシーは思わずマイロの体を上から下まで見る。ローブに隠れて体格ははっきりとは分からないが、さほど身長があるわけでもなく、筋肉もたいしてついてそうには思えない。
肉体労働をしているわけでもないから、力もさほどないのかもしれない。もしかしたら、チェルシーよりも貧弱なのではないだろうか。
「お前……今、失礼なこと考えてないか?」
「え……!? そ、そんなことないよ!」
「ならいいけど。……ボディーガードを雇うってことは、お前が能力を使っている場面を何度も近くで見られるってことだ。一回や二回程度ならごまかしも効くだろうが、そのうちお前の力を悟られるかもしれない」
確かにそうだ。チェルシーは考えていることが顔に出やすいと言われている。
人の嘘を見抜ける能力は物心ついた頃には既にあったため、人の声にノイズが混じるのはチェルシーにとっては当たり前のことだ。だから、人が嘘をついていても通常はスルーする癖がついている。
だが、調査中は相手の発言の真偽を見極めることに集中しすぎて、顔に出てしまう可能性がある。変に意識すると失敗しやすいのが、チェルシーの欠点だ。
「夫人にも薄々勘付かれてしまったんだろ?」
「うん……。でも、あの方はあたしを利用しようなんて考えてないわよ」
「危険があるかもしれない調査を頼む時点で、利用されてる気もするが……ああ、わかったって。お前が自ら調査するって申し出ただけだったな。だから、そんな睨むな」
マイロは大きくため息をつく。
「わざわざ危険なことに自ら首を突っ込むのは心底理解できないが……まあ、あの屋敷で今後も働くなら、不安の種ははっきりさせておいたほうがいいんだろうな」
「……ねえ。マイロが一緒に行くとしても、ボディーガードはいたほうがいいんじゃない?」
夫人からは半月ほどの休みとともに、潤沢な調査費用をもらっている。旅費などを除いても、ひとりくらいなら人を雇える余裕はあった。
「あたしが顔に出やすくてもマイロがいるからごまかしやすいし、馴染の人なら雇いやすいんじゃないの?」
「俺は他の街に行く時にボディーガードを雇ったことはないぞ」
「え……危なくないの?」
「自分の身くらい自分で守れる。今までもずっとそうだっただろ?」
そういえば、村で暮らしていた時も孤児院時代も、やたらとマイロをからかう子どもたちがいたが、ある日を境に、彼に関わるのをやめた。
みんな、マイロのことが恐ろしいと震えていたが……。
「もしかして、いじめっ子達と殴り合いの喧嘩でもしてたの?」
「今頃気づいたのか。あいつらには辟易していたからな、一度やり返したら一切手出しをしてこなくなって楽だった」
幼馴染の意外な一面にチェルシーは目を白黒させる。
マイロは饒舌できっぱりと物を言うから、てっきり言葉で相手を黙らせたと思っていた。まさか、拳で反撃していたとは。
チェルシーの反応にマイロは得意げに鼻を鳴らすと、早く出発するぞと彼女を促した。
夫人の故郷の村は、チェルシー達が住んでいた街から少々離れた場所にあった。乗合馬車で二日かけて最寄りの街へ行き、そこから徒歩で丸一日かけてやっと辿り着いた。
くたくたになりながらようやく村に到着し、喜んだのもつかの間、チェルシーは困惑した。
「マイロ。奥様の村って、洪水で流されたのよね……?」
「夫人の話ではそうだな」
困惑するチェルシーとは対象的に、マイロは平静だ。こうなることを予想していたのだろうか。
「でも、どう見てもこれって……」
チェルシーは呆然と目の前の光景を見つめる。
かつて村があったと思われる場所には燃え尽きた家々の残骸があった。
1
あなたにおすすめの小説
女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です
くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」
身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。
期間は卒業まで。
彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです
みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。
時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。
数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。
自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。
はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。
短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました
を長編にしたものです。
わんこ系婚約者の大誤算
甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。
そんなある日…
「婚約破棄して他の男と婚約!?」
そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。
その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。
小型犬から猛犬へ矯正完了!?
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
噂の聖女と国王陛下 ―婚約破棄を願った令嬢は、溺愛される
柴田はつみ
恋愛
幼い頃から共に育った国王アランは、私にとって憧れであり、唯一の婚約者だった。
だが、最近になって「陛下は聖女殿と親しいらしい」という噂が宮廷中に広まる。
聖女は誰もが認める美しい女性で、陛下の隣に立つ姿は絵のようにお似合い――私など必要ないのではないか。
胸を締め付ける不安に耐えかねた私は、ついにアランへ婚約破棄を申し出る。
「……私では、陛下の隣に立つ資格がありません」
けれど、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「お前は俺の妻になる。誰が何と言おうと、それは変わらない」
噂の裏に隠された真実、幼馴染が密かに抱き続けていた深い愛情――
一度手放そうとした運命の絆は、より強く絡み合い、私を逃がさなくなる。
9時から5時まで悪役令嬢
西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」
婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。
ならば私は願い通りに動くのをやめよう。
学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで
昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。
さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。
どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。
卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ?
なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか?
嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。
今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。
冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。
☆別サイトにも掲載しています。
※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。
これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる