月の国

ホムラ

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105 一人暮らし

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「ダメに決まっているだろう」

珍しく声をあげて悪魔王は言った。

「一人暮らしをしたいって、そんなにダメなこと?」

スペクトラは、悪魔王に珍しく盾を突いた。

「お前は、俺の保護下についているんだ。ダメに決まっているだろう」

「もう、暴走なんてしないし、この先も悪魔城で働くんだよ?
 だから、いいでしょう?」

「とにかくダメだ。」

実は、スペクトラは、いまだに悪魔王と一緒に寝ている。

といっても、本当に猫が横で寝ているのと同じようにやましいことなど何もない。

悪魔界にやってきた時、あまりにもわがままで、食事をちゃんとしないし、悪魔王の腕から、緑のエキスを暫く吸って生きてきた。
子供のころから、時々、癇癪をおこしたりするので、悪魔王の横で寝かしつけていたのだ。

だんだんとちゃんとした食事をとれるようになり、今は、どこからどう見ても悪魔人らしくなってきた。

「エリーズだって、ずっと一人で暮らしていたんだ。
 私にだって出来るはずだ」

「お前なぁ。エリーズとお前は確かに2人で一人だよ。
 それは俺だって分かっているがな。
 お前とエリーズとでは、何もかもが逆なんだ。
 一人で暮らすのはあきらめなさい」

「逆でも大丈夫だ。
 ここで暮らしていたら、いつまでたっても子供のままだって思うから」

スペクトラは、必死に自分の考えを伝えた。

「お前は、悪魔界でしか生きられないんだぞ。
 悪魔界は、魔法王国と違って甘くないんだ。
 ここでは、お前は誰にでも親切にされているが、それは俺の娘だからだ。
 外は本当に厳しい世界なんだよ。
 現実を知りなさい」

「でも」

「もうこの話は終わりだ。俺だって暇じゃないんだ。下がりなさい」

スペクトラは、ぷんぷんと怒りながら自分の部屋に戻っていった。

悪魔王はため息をついた。

「困ったものだ。一度言い出したら聞かないところが子どもだよな」

それを横で見ていた禁軍第5位のフェルスパーは呆れながら一言こう言った。

「子離れ出来ないのは、王のほうではありませんか」

と。
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