失われた歌

有馬 礼

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第2部 帝都ローグ篇

21*

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 右膝をソファに乗せて体重をかけていたリコは、軽い力で引き寄せただけでふわっとバルクの膝の上に来る。触れ合わせ、ついばみながら、だんだんキスを深くしていく。舌を絡めて唾液を交換する。唇を離すと、リコは目を閉じていて、口は薄く開いたままため息をついた。ゆっくりと開かれた目は潤んでいて、蕩けた視線を送る。バルクはリコの唇を親指でなぞった。リコは再び目を閉じ、唇をなぞるバルクの親指を軽く唇で食む。
〈バルクが心配しなくていいように、わたしは何をすればいい? 何をあげればいい?〉
 目を閉じたまま「言う」。バルクは親指を離すと、代わりに唇で触れる。
 唇を離して、額と額をくっつけたまま、至近距離で見つめる。
「きみがほしい。全部」
 低く甘く囁く。
 その言葉に、リコは目を開いて、くすぐったそうに小さく笑う。甘い微笑み。
〈わたしはもう、全部バルクのものだよ〉バルクの首に回していた腕の径を縮めて、身体をぴったりと寄せる。〈触って、確かめてみて〉
 バルクの手を取って、胸に押し当てる。夜着の薄いシャツの下には何もつけていない。バルクの手は、すぐにそれ自体が意思を持っているかのように動き始める。形を確かめるようになぞり、撫であげて、布地の上から先端を探りあてる。バルクの指に居場所を暴かれて、それはすぐに身を硬くする。思わず顎を上げ背を反らせて、押し寄せてきた感覚を逃すために早く浅く息をする。バルクの腕が力強く背中を支えてくれるのがわかる。布地の上から硬くなった先端を転がされ、優しく摘みあげられただけで脚ががくがく震える。目を開けていられなくて、でも閉じると、触れられている肌の感覚に意識が集中して、もっともっと感じてしまう。身体の奥が熱い。服の上から胸に触れられただけで腰がふらふらして、もうバルクをねだっている。
 リコの浅くて早い呼吸が、まるで高熱に浮かされている時みたいだ。目は眠っているように閉じられて、長い睫毛が小さく震えている。捧げられるように差し出されている白い喉に、噛みつくような勢いでくちづけると、腕の中の愛しい人がビクリと跳ねあがる。呼吸がさらに荒くなって、凶暴な唇から逃れようとするが、却って自身を差し出すことになってしまう。なのに、逃れようとする動きとは裏腹に、指はシャツを握りしめ縋りついている。愛しい矛盾。リコのシャツの裾から手を滑りこませて、そっと背中を撫であげる。肌が粟立ち、身体が震える。それは苦痛のためではないとバルクは知っている。
「ベッドに行こう」
 耳元で低く囁くと、リコは目を閉じて呼吸を乱したままうなずいた。
 バルクはそのままソファから立ち上がる。子どものように抱きあげて、寝室に運ぶ。
 そっとベッドに下ろされるその動きの続きで、唇と唇が触れる。舌を差し出すと、強く吸いつかれてバルクの舌で隅々まで検められる。気持ちいい。頭がぼうっとする。
 シャツがするりと脱がされて、肌が露わになる。胸の先に軽くキスされて、ぱくりと食べるように、色づいている部分を口の中に含まれる。舌で全体を柔らかくなぞられて、頭が真っ白になる。背中がベッドから浮き上がって、バルクに自ら胸を差し出す格好になってしまう。浮いた背中とベッドの隙間にバルクの腕が入りこんできて、ぐっと強く抱き寄せられる。太腿にはバルクの熱が押しつけられている。独特の硬さと熱をもった、愛しい分身。あなたがほしい。
 強く吸われて、耐えきれずにバルクの肩に指を食いこませる。前に爪で傷つけてしまって、気をつけようと思っていたのに、制御できない。まるで捕食者に食べられる獲物のように、なすすべなく身を委ねることしかできない。甘い痺れが駆け巡り、視界が白く飛ぶ。身体が制御を失って強張り、震え、そして脱力する。
 はーっ、はーっ、と全力疾走の後のように呼吸を乱しながら、緑の瞳がぼんやりとバルクを見る。
 バルクは自分の服を脱ぐと、リコの夜着のパンツとショーツを脱がせた。ショーツを脱がせる時、つぅっとリコの花弁から糸がひいた。なんて可愛らしい。
 自分の服よりはやや丁寧に、リコの服をベッドの端の端に寄せて、ベッドサイドテーブルの引き出しから避妊具を取り出す。冷静な時は、あからさまにテーブルの上にいつも出しているのはどうなんだと思って引き出しに仕舞うが、こういう時は、なんでそんなまだるっこしいことをするのか、出しておけばいいじゃないかどうせ使うんだし、と思う。
 リコの足の甲に唇をつけて、足の裏や指を手でなぞる。普通ならくすぐったくてたまらないだろうが、リコの感じるポイントだということはとっくに知っている。足の指にもくちづけると、リコの腰が跳ね上がった。
 右の脚を手で、左の脚を唇で上になぞる。リコが期待混じりに小さく震えているのを感じる。濡れた花弁に息を吹きかけると、きゅっと締まる動きをする。わざとそこに触れずに、内腿に唇をつけ、甘噛みする。リコが手を握ってきて、切ない目で訴えているのを、わざと無視する。
〈バルク、お願い…。いじわる、しないで〉
 ほしい。ほしいほしい。気が狂いそう。でもバルクは聞いてくれない。触ってお願い。そうしてくれたら、何でもあげる。あなたの言うこと、何だってきく。
〈お願い、お願いバルク。わたしの気持ちいいところ、触って。こんなの、こんなの耐えられない…っ〉
 涙を流しながら懇願する。
 ようやくバルクがリコの敏感なところに指を伸ばす。軽く触れられただけで、歓喜に腰が浮き背中が反りかえる。
 バルクの指は円を描いてリコの形を確かめる。敏感な芽の上を指先が通りすぎるたびに腰が浮いて震える。
 くぷっ、とリコの中にバルクの長い指が入ってくる。あんなに待ち焦がれていたのに、入ってこようとされると、拒むようにぎゅっときつく中が締まる。バルクの指はリコの中を探るように動く。感じるポイントをくすぐられると、指に合わせて腰が勝手に動いてしまう。親指で敏感な芽を圧迫するように捏ねられて全身が痙攣する。
 指が抜かれ、入り口の襞を押しのけてペニスが入ってくる。中を擦りあげられて、気持ちいいと苦しいの合間を漂う。
 中をどういう風にされると気持ちいいか、全て知られてしまっている。文字どおり、全部バルクのものにされている、とリコは霞のかかった頭で考える。
 高みに持ち上げられたまま、降りてくることを許してもらえない。気持ち良すぎて苦しい。愛しいのか憎らしいのかわからなくなってくる。
〈も、許して…っ。変になる…っ〉
「いいよ。変になったところ見せて」
 耳元で囁かれて、吐息を感じて頬の産毛が逆立つ。
〈だめ、だめなの…!〉
 必死にバルクの首に縋りつくと、バルクの動きが一段速くなる。
「リコ、リコ…っ」
 バルクがうわ言のようにリコの名前を呼ぶ。
 苦しそうに顔を歪めて、汗をいっぱいかいて、リコの中に自分を刻みつけようと動いている。
〈バルク、バルク、大好き。愛してる。わたしの特別な人〉
 リコの中のものがぐっと大きさと硬さを増したと思った瞬間、バルクが呻いた。何度も精を吐いているのを動きで感じる。
 バルクの汗が顎を伝ってリコの身体にぽたぽたと落ちた。
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