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第3部 古都アーセンバリ篇
10 待っていましたよ
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診療所に派遣された僧侶たちは、休息のため夜の行は免除されている。
「セスト導師、まず食事します? それとも風呂ですか?」
シシェンが訊いてくる。
「あ、いや、大僧侶にお会いしたいから、俺のことは気にしなくていいよ。ありがとう。お疲れさま」
セストの言葉に、シシェンは不審な顔をする。
「そうですか…? わかりました。それじゃ、お疲れさまです」
軽く頭を下げて、シシェンは寮の建物の方へ去っていった。
「行こう」
「いきなり行って、会ってもらえる人なの? 大僧侶様って、すごく偉いんでしょ?」
その特性から通常の社会生活はできないナナカだったが、周りの人々を観察した結果、「偉い人には事前にアポイントがなければ会えない」という程度のことは知っていた。
「まず、秘書のラッジ導師に取り次いでもらうんだ。もしかすると今日は無理かもしれないけど、最短で日程調整してもらえると思う。あと、きみの部屋も確保しなきゃならない」
「なんか…ありがとう。色々」
「いや、いいんだ。これは俺が、ただのお節介でやってることだから」
ナナカはセストの後について行く。自分は何者なのか、それはナナカがずっと追い求めている謎だった。大僧侶ほどの人であれば、その謎を解き明かしてくれるのではないだろうか。否が応にも期待が膨らむ。
事務室で、大僧侶に面会したいのでラッジに取り次いでもらいたい旨を告げると、拍子抜けするほどあっさりと面会が許可され、ラッジの部屋に直接来るよう告げられた。まるで、こうなるのがわかっていたようなスムーズさだ。
「…大僧侶様って、気さくな人なの? 随分簡単に会ってくれるんだね」
廊下を歩きながらナナカは言う。大僧侶の姿は、年に1度の収穫祭くらいの時しか、一般には見ることができない。アーセンバリの大僧侶は、車椅子を使っている若い男性であるということは知っていたが、その存在は遠いものだった。
「いや、大寺院の僧侶でも、普通はこんなに簡単にはお会いできない。俺にもよくわからない」
ラッジの部屋をノックすると、すぐに応答があった。
「来ましたね、セスト導師。大僧侶がお待ちです」
通された部屋には、既に大僧侶が待っていた。
セストは合掌して礼を取る。大僧侶も礼を返すと、傍に立つナナカに顔を向けた。「見られて」いる、とナナカは直感する。
「待っていましたよ、セスト導師」
大僧侶が言う。柔らかく、耳障りのいい声だった。
「あなたのことも」
大僧侶はナナカに向かって微笑んだ。
「あたしを…?」
ナナカは思わず後ずさる。
「ええ、そうです。あなたを」
大僧侶は優しく頷き、2人に椅子を勧めた。
「よく彼女を見つけてくれましたね、セスト導師。私の見立ては正しかった」
「俺は、何も…」
「あなたも」大僧侶はナナカに顔を向ける。「よく絶望に囚われず、今日まで生きてくれましたね。よく、希望を持ち続けましたね。そして、よく勇気を出してここまでやって来てくれました」
「あ…」
そんなことを言われたのは、誰かにこんなふうに声をかけられたのは、初めてだった。胸がいっぱいになって、言葉に詰まる。その代わりに、目からは涙が溢れ出た。
「お名前をうかがっても?」
「ナナカです。ナナカ・セリ」
ナナカは指先で涙を拭って答えた。
「ナナカ、あなたのその特性の原因は、あなたの魂にあります」
大僧侶は、ゆっくりと、柔らかい声で言った。
「あたしの魂…?」
魂という言葉を使う人を、ナナカは他にも知っていた。
「そうです。人の魂は、4つの要素から構成され、その比率は人によって異なります。魔術師や精霊使いといった人々は、その要素の在り方がどれか1つに偏った人々です。大抵の人は4つの要素がほとんど同じ比率となります。これを『均衡』と呼ぶのですが…」
大僧侶は一度言葉を切って、ナナカの目をじっと見つめた。何もかも見透かすような目だ、とナナカは思う。紫の瞳に似ているけれど、何かが決定的に異なっている気がする。
「とはいえ、ほとんどの人の魂は、僅かな偏りを持っています。しかしあなたは…、あなたの魂は、完全な均衡なのです」
「…」
完全な魂。彼が、あの部屋で、情事の時にいつも言う言葉。
「人の魂は、他の魂の僅かな要素の偏りやゆらぎを認識するようです。しかしあなたのような完全均衡の魂にはゆらぎがない。あなたを認識できるのは、セスト導師のような、自ら光り輝く強い力のある魂の持ち主だけです」
「…」
ナナカは畏怖に似た思いでセストを見上げた。
「あなたがよほど強く働きかけなければ他の人々があなたに気づかなかったのは、そういうことなのです」
「わかり…ました」
ナナカは掠れた声でなんとかそれだけを言う。大僧侶は満足そうに頷いた。
「セスト導師、机の上にある木箱を持ってきていただけますか」
「はい」
セストは立ち上がると、大僧侶の後ろにある立派な机の上から言われたとおり木箱を手に取った。大きめの飴玉が1つ入るかどうかという、小さな箱だ。装飾のようなものはないが、隙間なくぴったりと閉まる蓋が、これは確かな職人の手で作られたものだと物語っていた。
「これは、ナナカ、あなたに差し上げます」
ナナカはセストの手から箱を受け取る。
「開けてみてください」
ナナカが蓋を持ち上げると、虹色の光が溢れ出した。
(この光、知ってる…なんで…)
ナナカは既視感に戸惑う。
中に入っていたのは、虹色に輝く球体だった。ネックレスのようなチェーンがついている。
「それはあなたの願いを叶えるものです。あなたが強く願うことを叶えてくれるでしょう」
大僧侶はナナカの目をじっと見て言った。
「それを、常に身につけていてください。そう、眠る時も、ですよ。私の言っている意味が、わかりますね?」
「はい…」
ナナカは大僧侶が言わんとする意味を察して、頷いた。そして早速実践するために、石を首にかける。
「あなたの居場所を大寺院の中に用意しました。大寺院には、社会的理由からここに身を寄せている方々がいらっしゃいますので、そうした女性たちが暮らしている寮に入ってください。もし借りている部屋などあれば、場所を教えていただければ大寺院の者をやって、引き揚げさせましょう。秘書官に伝えてください」
「ありがとうございます、大僧侶様…。こんなに親切にしてもらえる日が来るなんて。夢みたいです」
「お礼はセスト導師におっしゃってください。お役に立てたようで良かった。また困ったことがあれば、いつでも会いに来てください。もちろん、セスト導師も。お待ちしていますよ」
大僧侶は優しく微笑んで、それが面会終了の合図だった。
2人が大僧侶の部屋を辞すと、扉の前にやはりラッジが待っていた。
ラッジは驚きに目を見開いて、明らかにナナカを見ていた。
「本当に…」
「あたしが、見えてるんですか?」
ナナカはおずおずとラッジに尋ねる。先程大僧侶の部屋に案内された時、彼はナナカの方には見向きもしなかった。他の人々と同じように。
「ええ…。あなたが身につけているその球、それは大寺院の宝玉です。死者の魂をも呼び戻すと言われる、強い力を持つものです。おそらく完全均衡の魂の持ち主であっても、『見せる』ことができるはずだと大僧侶がおっしゃっていましたが…」
「そんな、大切なものを、あたしに…?」
「いえ、宝は持つべき者の元になければならない、とおっしゃったのは大僧侶です。それはあなたが持ってこそ、真の価値を発揮するものだったのですね」
ラッジは感心しきった様子だった。
「セスト導師、まず食事します? それとも風呂ですか?」
シシェンが訊いてくる。
「あ、いや、大僧侶にお会いしたいから、俺のことは気にしなくていいよ。ありがとう。お疲れさま」
セストの言葉に、シシェンは不審な顔をする。
「そうですか…? わかりました。それじゃ、お疲れさまです」
軽く頭を下げて、シシェンは寮の建物の方へ去っていった。
「行こう」
「いきなり行って、会ってもらえる人なの? 大僧侶様って、すごく偉いんでしょ?」
その特性から通常の社会生活はできないナナカだったが、周りの人々を観察した結果、「偉い人には事前にアポイントがなければ会えない」という程度のことは知っていた。
「まず、秘書のラッジ導師に取り次いでもらうんだ。もしかすると今日は無理かもしれないけど、最短で日程調整してもらえると思う。あと、きみの部屋も確保しなきゃならない」
「なんか…ありがとう。色々」
「いや、いいんだ。これは俺が、ただのお節介でやってることだから」
ナナカはセストの後について行く。自分は何者なのか、それはナナカがずっと追い求めている謎だった。大僧侶ほどの人であれば、その謎を解き明かしてくれるのではないだろうか。否が応にも期待が膨らむ。
事務室で、大僧侶に面会したいのでラッジに取り次いでもらいたい旨を告げると、拍子抜けするほどあっさりと面会が許可され、ラッジの部屋に直接来るよう告げられた。まるで、こうなるのがわかっていたようなスムーズさだ。
「…大僧侶様って、気さくな人なの? 随分簡単に会ってくれるんだね」
廊下を歩きながらナナカは言う。大僧侶の姿は、年に1度の収穫祭くらいの時しか、一般には見ることができない。アーセンバリの大僧侶は、車椅子を使っている若い男性であるということは知っていたが、その存在は遠いものだった。
「いや、大寺院の僧侶でも、普通はこんなに簡単にはお会いできない。俺にもよくわからない」
ラッジの部屋をノックすると、すぐに応答があった。
「来ましたね、セスト導師。大僧侶がお待ちです」
通された部屋には、既に大僧侶が待っていた。
セストは合掌して礼を取る。大僧侶も礼を返すと、傍に立つナナカに顔を向けた。「見られて」いる、とナナカは直感する。
「待っていましたよ、セスト導師」
大僧侶が言う。柔らかく、耳障りのいい声だった。
「あなたのことも」
大僧侶はナナカに向かって微笑んだ。
「あたしを…?」
ナナカは思わず後ずさる。
「ええ、そうです。あなたを」
大僧侶は優しく頷き、2人に椅子を勧めた。
「よく彼女を見つけてくれましたね、セスト導師。私の見立ては正しかった」
「俺は、何も…」
「あなたも」大僧侶はナナカに顔を向ける。「よく絶望に囚われず、今日まで生きてくれましたね。よく、希望を持ち続けましたね。そして、よく勇気を出してここまでやって来てくれました」
「あ…」
そんなことを言われたのは、誰かにこんなふうに声をかけられたのは、初めてだった。胸がいっぱいになって、言葉に詰まる。その代わりに、目からは涙が溢れ出た。
「お名前をうかがっても?」
「ナナカです。ナナカ・セリ」
ナナカは指先で涙を拭って答えた。
「ナナカ、あなたのその特性の原因は、あなたの魂にあります」
大僧侶は、ゆっくりと、柔らかい声で言った。
「あたしの魂…?」
魂という言葉を使う人を、ナナカは他にも知っていた。
「そうです。人の魂は、4つの要素から構成され、その比率は人によって異なります。魔術師や精霊使いといった人々は、その要素の在り方がどれか1つに偏った人々です。大抵の人は4つの要素がほとんど同じ比率となります。これを『均衡』と呼ぶのですが…」
大僧侶は一度言葉を切って、ナナカの目をじっと見つめた。何もかも見透かすような目だ、とナナカは思う。紫の瞳に似ているけれど、何かが決定的に異なっている気がする。
「とはいえ、ほとんどの人の魂は、僅かな偏りを持っています。しかしあなたは…、あなたの魂は、完全な均衡なのです」
「…」
完全な魂。彼が、あの部屋で、情事の時にいつも言う言葉。
「人の魂は、他の魂の僅かな要素の偏りやゆらぎを認識するようです。しかしあなたのような完全均衡の魂にはゆらぎがない。あなたを認識できるのは、セスト導師のような、自ら光り輝く強い力のある魂の持ち主だけです」
「…」
ナナカは畏怖に似た思いでセストを見上げた。
「あなたがよほど強く働きかけなければ他の人々があなたに気づかなかったのは、そういうことなのです」
「わかり…ました」
ナナカは掠れた声でなんとかそれだけを言う。大僧侶は満足そうに頷いた。
「セスト導師、机の上にある木箱を持ってきていただけますか」
「はい」
セストは立ち上がると、大僧侶の後ろにある立派な机の上から言われたとおり木箱を手に取った。大きめの飴玉が1つ入るかどうかという、小さな箱だ。装飾のようなものはないが、隙間なくぴったりと閉まる蓋が、これは確かな職人の手で作られたものだと物語っていた。
「これは、ナナカ、あなたに差し上げます」
ナナカはセストの手から箱を受け取る。
「開けてみてください」
ナナカが蓋を持ち上げると、虹色の光が溢れ出した。
(この光、知ってる…なんで…)
ナナカは既視感に戸惑う。
中に入っていたのは、虹色に輝く球体だった。ネックレスのようなチェーンがついている。
「それはあなたの願いを叶えるものです。あなたが強く願うことを叶えてくれるでしょう」
大僧侶はナナカの目をじっと見て言った。
「それを、常に身につけていてください。そう、眠る時も、ですよ。私の言っている意味が、わかりますね?」
「はい…」
ナナカは大僧侶が言わんとする意味を察して、頷いた。そして早速実践するために、石を首にかける。
「あなたの居場所を大寺院の中に用意しました。大寺院には、社会的理由からここに身を寄せている方々がいらっしゃいますので、そうした女性たちが暮らしている寮に入ってください。もし借りている部屋などあれば、場所を教えていただければ大寺院の者をやって、引き揚げさせましょう。秘書官に伝えてください」
「ありがとうございます、大僧侶様…。こんなに親切にしてもらえる日が来るなんて。夢みたいです」
「お礼はセスト導師におっしゃってください。お役に立てたようで良かった。また困ったことがあれば、いつでも会いに来てください。もちろん、セスト導師も。お待ちしていますよ」
大僧侶は優しく微笑んで、それが面会終了の合図だった。
2人が大僧侶の部屋を辞すと、扉の前にやはりラッジが待っていた。
ラッジは驚きに目を見開いて、明らかにナナカを見ていた。
「本当に…」
「あたしが、見えてるんですか?」
ナナカはおずおずとラッジに尋ねる。先程大僧侶の部屋に案内された時、彼はナナカの方には見向きもしなかった。他の人々と同じように。
「ええ…。あなたが身につけているその球、それは大寺院の宝玉です。死者の魂をも呼び戻すと言われる、強い力を持つものです。おそらく完全均衡の魂の持ち主であっても、『見せる』ことができるはずだと大僧侶がおっしゃっていましたが…」
「そんな、大切なものを、あたしに…?」
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