光の戦車と黄金皇帝 〜秘密の妃は素直じゃない

有馬 礼

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第2章 光の戦車は照れ屋さん

8 混ざりあう※

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「レイフ、ようやく言ってくれた」

 王太子は笑って、今度は唇にくちづける。最初は啄むように、そしてだんだん深く。
 唇を離すと、王太子は膝立ちになって自分のシャツのボタンをスルスルと外した。そのまま脱ぎ落として、下穿きも全て脱ぎ去る。

「わっ、えっ、なんで…!?」

 ぶるり、と躍り出たものを見て、レイフが思わず驚きの声を上げる。
 王太子はレイフの顔の両横に手を突くと、覗きこむように顔を近づけた。

「…なあ、レイフ、一応訊くが、いや、一応訊くだけで今更やめるつもりはないんだが、これから何をしようとしているか、わかっているのだよな?」

「わかってるよっ! ばかにするな、私はもう大人だ!」

 レイフは顔を真っ赤にして言い返す。王太子は鼻で笑った。

「やれやれ、そなたの言うことは全く信用できんな」

 レイフだって、これから何があるのかは知っていた。女性器に男性器を挿入するらしい、ということと、初めては痛いらしい、ということくらいは。そうだ、男性は性的な興奮を感じると、硬く、大きくなるって聞いたことが…比喩じゃなかったんだ…、と目の当たりにした現実と知識を今更突き合わせる。
 王太子は、レイフの夜着を全て脱がせると、ころり、と左を下に横向きに姿勢を変えさせる。レイフは大人しくされるに任せる。王太子もレイフの背中側に寄り添うと、身体をぴたりと密着させて横になった。腰にあの不思議な塊が押しつけられている。

(あの日みたいだ…)

 レイフは王太子と婚姻を結んだあの夜のことを思い出した。あの夜もこんな風に抱き寄せられたっけ。しかしあの夜は服を着ていたし、こんなにも身体は密着していなかった。
 王太子の温かい手がするりと肩を撫でる。撫でられたところが粟立ち、肩が跳ねあがる。首とベッドの隙間に王太子の左腕が差しこまれて、強く引き寄せられる。右手は柔らかくレイフの身体のラインをなぞっている。

「ん、ん…」

 脇腹から腰を何度も撫でられて、甘い声が漏れる。王太子が肩にくちづけを落とす。

「あっ」

 王太子の手が、レイフの平な腹部から太腿を撫でて、戻ってきて、胸の膨らみを愛でる。手のひらにすっぽり収まってしまうが、押し返すような瑞々しい弾力はレイフの生命力そのもののようだ。

「あ、ん…」

 先端にはまだ触れずに、手のひら全体で緩く触る。レイフの呼吸が速く、大きくなる。
 はっ、はっ、と荒い息を吐きながら腕の中でレイフが王太子を振り返る。その瞳は熱を帯びて潤んでいる。王太子はレイフにこちらを向かせて、胸に手を触れたまま唇を重ね、舌を絡める。

「んんっ」

 魂が触れあい、混ざりあう感覚に、レイフは背中をしならせる。もっとほしくて、必死で王太子の舌を求める。脚の間がむずむずする。感じたことのない熱が溜まりはじめている。王太子の指先が胸の先端に触れると、喉の奥から絞り出すような声が出た。

「くぅ…っ、あ、あ…」

 くちづけを続けていられない。唇から逃れて、空気を求めて喘ぐ。
 王太子は胸の先端に触れながら、舌で胸を斜めに横切っている傷痕をなぞる。この痛々しい傷痕が少しでも薄くなるように、願いを込めて、何度も。

「ああああっ」

 レイフが、嬌声というよりは悲鳴に近い声を上げる。

「まっ、て、アールト、そんな、ふうに…っ」

 目を固く瞑って、喘ぎ喘ぎ訴える。王太子が、この前レイフが王太子にしたように、魂の要素を送り込んでくる。魂を、全て混ぜ合わせてしまおうかという量だ。とても受け止めきれない。混ざって、溢れる。
 王太子がきゅっと胸の先端をつまむ。

「ぅあぁ…っ!」

 身体の制御が全く効かない。陸に打ち上げられた魚のように跳ねる。
 やっと王太子は一旦身体を離してくれた。レイフは息を切らせ、全身に汗を纏わせてぼんやりした目で王太子を見る。
 王太子はその視線に応えて、唇を重ねる。

「こんなふうに触られたら、へんになる」

 やっと解放された唇で、拗ねたような顔のレイフが言う。

「可愛らしいことを。一人前に誘っているのか?」

 王太子は再び身体を重ねて、レイフの首筋に舌を這わせる。
 
「なんっ、で」

 全身がざわめく。もっと触れてほしい。混ざりあって、溶けあってしまいたい。
 レイフの腰のラインを優しく撫でていた王太子の手が、するりと太腿を撫でて、脚の間に滑る。そのまま内腿を撫であげ、秘められた場所に指が潜る。

「は…っ」

 快感というにはあまりに強烈な感覚に、レイフは身体をこわばらせる。
 王太子の指は、簡単にレイフの敏感な場所に潜りこみ、探り当てて暴いていく。

「ああっ、あ、う…、あああっ」

 レイフは必死で王太子に縋りつく。王太子の指が、繊細な動きで、既にとろりと蕩けている場所をさらに熱く蕩かす。くちゅっ、と王太子が指を動かすたびに音がする。頭が真っ白になって、何も考えられない。声を我慢することも恥ずかしいと思うこともできなくなって、嬌声とも悲鳴ともつかない声を上げ続ける。

「あっ」

 引き裂かれる痛みとともに、レイフの中に指が潜りこむ。

「痛いか?」

 緊張を走らせたレイフに王太子が尋ねる。

「ん…でも、大丈夫…」

 レイフは自分から王太子の首に両腕を回して、くちづけをねだる。その望みは、直ちに叶えられる。愛しい者と触れあい魂の要素を交換し合うことは、傷も癒すのだろうか、とレイフはぼんやり考える。さっき感じた痛みが、少し軽くなっている。王太子が指を動かすたび、堅く閉じていた場所が、だんだんと開かれていくのを感じる。
 王太子が脚の間に身体を割りこませる。
 熱く蕩けた部分に、筋肉とも骨とも違った硬さをもった、張りつめたものが当てがわれる。レイフは身体を少し固くする。指とは比べ物にならない存在感。王太子が力こめて、ゆっくりと腰を押しつける。

「…っ!」

 これまで感じたことのない、身体の内側から引き裂かれる痛み。楔を入れるように、王太子が入ってくる。力を抜こうと息を吐くが、うまくいかない。痛みに身体が強張る。
 王太子はレイフの腰の下に腕を入れて、角度を調整する。舌を絡めてくちづけながら、ゆっくりゆっくり割り進む。

「んぅっ!」

 グッ、と狭い入り口を熱い塊がくぐり抜けた感覚がして、レイフは鋭い声を上げる。

「入った…よく頑張ったな」

 王太子はレイフの頭を撫でる。レイフは固く瞑っていた目を開けて王太子を見た。レイフがくちづけをねだって顎を上げるので応え、両腕を背中の下に入れてしっかりと抱きしめる。レイフも王太子の背中に腕を回す。

「レイフ、愛している」

 王太子はレイフの頬にくちづけながら、呟く。

「私の中に、アールトがいる」

 痛みが和らいできて、ようやく話せるようになる。

「繋がってる」

 レイフは腕に力をこめて、王太子の鎖骨のあたりに頬を擦りつける。なぜかはわからなかったが、胸がいっぱいになって、涙がこぼれる。

「アールトでいっぱいだ…愛してる」

 顔を上げて見つめ合い、どちらからともなく唇を重ねる。
 王太子はしばらくそのまま動かずに、くちづけを続ける。レイフの緊張が解けて馴染んできたのを感じてから、レイフを横向きにさせると、身体を繋げたまま器用に体勢を入れ替えて背中側からレイフに寄り添った。

「レイフ、愛している。ずっとこうしていたい。ほかには何もせず、レイフと毎日毎晩」

 王太子はレイフを強く抱き寄せると、柔らかい髪に顔を埋めた。
 レイフは笑って、胸の下に回された王太子の腕を撫でる。

「国はどうするんだよ」

「私がいなくともこの国は官僚がしっかりしているし、いかようにでもなるさ。それに、王位継承権を持つ王子は私だけではない」

「まるで国を捨ててどこかに逃げ出すみたいな言い方だ」

「レイフがそう望むのなら」

 王太子はレイフの肩にくちづける。

「んっ」

 レイフが背中をしならせ、甘い声を漏らす。

「そなたが望むなら、私は何でも差し出そう。私が持っているものなら何でも」

 その言葉を聞いて、レイフはくすくす笑う。

「いらない。それに、私は役目を果たしてる時のアールトも好きだよ。アールトはこの国に必要だ。…そうだ、私の願いを聞いてくれるって言うなら、腐った魂が生まれることのないような世の中を作ってくれないか」

「それはまた大きな願いだな。しかし、レイフにそう言われてしまっては仕方がない」

 王太子がレイフの胸にふわふわと触れる。生じた甘いざわめきに、レイフは僅かに身体をよじる。

「それにはまず、フルールフェルトの守護者か。またこちらに攻め入ってくるようであれば、今度こそ決着をつけなければならない」

 レイフの首筋に王太子の息がかかる。

「しかしあの時、守護者がレイフを追ってこなくて本当によかった。ドラゴンでも傷ついたそなたを庇いながらでは危うかっただろう」

「片腕を落としてやったからな。追ってくるどころじゃなかったんだろ。本当は首を落としてやりたかったけど、刺されたとこが痛くて、手元が狂った」

 それを聞いて王太子は苦笑する。

「そなたという者は、まったく」

「なあ、アールトが前に会った時も、あいつ僧侶の格好してたか?」

 レイフが振り返る。

「ああ。鎧は着けていたが」

「そうか…。あいつ、神子なのかなと思ったけど、本物の僧侶なのかもな。だから殺そうって思い切りが足りないんだ。中途半端なことするから私に腕を落とされるんだよ」

「あのな、レイフ…」

 王太子が笑っている振動が背中から伝わる。

「まあ、いいか」

 王太子はレイフの首筋にくちづけた。

「…なんだよ」

 レイフがむくれながら振り返る。

「いや、何も。レイフは、いつまで経ってもレイフだな」

「…変な奴」

 レイフは王太子の腕の中でそっぽをむいた。
 王太子はレイフの腰を引き寄せながら、自身も腰を押しつける。

「…っあ」

 レイフがため息を漏らして顎をあげる。王太子はゆっくりと腰を揺らしながら、レイフの胸を、手のひらに包みこむようにして触る。

「は…あ…っ」

 レイフが胸に触れる王太子の手に、自分の手を重ねる。王太子を振り返ったその目は、熱を帯びて潤んでいる。王太子は上半身を起こすと、再びレイフの脚の間に身体を割りこませた。腰を引くとレイフの中が引き止めようとするように吸いつき、押しこむと歓喜にうねって迎えいれる。
 抽送を繰り返しながら、閉じこめるようにレイフを抱きしめて、首筋にくちづける。首筋に、鎖骨に、肩にくちづけ、きつく吸いあげてしるしを残していく。魂も、身体も、自分のものだと知らしめるために。

「あ、ん、あぁっ、アールト、アールト、好き、好き…っあぁっ」

 レイフが悲鳴のような声をあげながら、しがみついてくる。背中に食いこむ爪の痛みすら愛しい。

「レイフ、レイフ、愛している…」

 その言葉に、レイフが固く閉じていた目を開いた。潤んだ翡翠の瞳。唇を重ね、舌を絡ませあう。王太子の動きが、だんだんと大きく、速くなっていく。

「やっ、あ、あぁっ、あぁっ」

 レイフは王太子の思うさま揺さぶられて、ただ声をあげることしかできない。自分の中の王太子がひときわ固く、大きくなったのを感じたのと、王太子が身体を震わせて奥の奥に分け入ってきたのは同時だった。

「…っぅ、く」

 王太子は奥歯を噛みしめて、レイフの中に精を放つ。
 2人は息を弾ませ、汗をしたたらせながら、唇を触れあわせて舌を絡めた。

「愛している、レイフ。この時を、どれほど夢見てきたか」

 王太子はレイフの首筋に顔をうずめる。

「待たせて、ごめん。気にはなってたけど、変態だから大丈夫なのかなって」

「…そんなわけないだろう、馬鹿もの」
 
 王太子は笑いながら、軽くレイフを睨んだ。
 笑いあいじゃれあう穏やかな睦みは、繋がりが自然に解けて、レイフが眠りに落ちてしまうまで続いた。
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