鉛筆さんと消しゴムさん

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鉛筆さんと消しゴムさん

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「ねえねえ鉛筆さん」


「なぁに消しゴムさん」


「わたしたち、一緒になってからもうどれくらいかしら」


「そうだねぇ、もう四ヶ月ぐらいかな」


「鉛筆さん……随分と小さくなっちゃったわね。あの頃は長身で、キャップさんからキャーキャー言われてたのに」


「そんなこともあったね。消しゴムさんだって、初めて会ったときよりも体が縮んじゃってるよ」


「わたしたちの寿命もそんなに長くはないのかもしれないわね」


「そうかもしれないね」




「……鉛筆さん」


「なぁに消しゴムさん」


「あなたで最後の鉛筆になっちゃったわね。」


「そうだね。今ではシャープペンシルが筆箱の中を占領しちゃったね」


「……わたしも、飽きられちゃうのかな」


「そんなことはないよ。文字を消せるのは君しかできないもん」


「あっごめんね。飽きられちゃうって、まるで鉛筆さんが飽きられちゃってるみたいな言い方して……」


「気にしないで。多分、消しゴムさんの言う通りぼくはもう飽きられてるんだよ」


「そんな……」


「あーあ。もうこんなに縮んじゃった。そろそろ捨てられてもおかしくないよね」


「嫌だよ。わたし、鉛筆さんがいなくなっちゃうの」


「ぼくも嫌だな。消しゴムさんと離れるの」


「あっ、あのね。わたし鉛筆さんに伝えないといけないことがあるの」


「なぁに」


「わたしっ、鉛筆さんのことが─」



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