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梅の思念2
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車椅子で庭園の奥にある硝子張りの温室に連れ出される。
「なぜこんな所に?」
「わからないわ、先生が人目につかない土がある所を用意しろとおっしゃったのよ」
お姉様も不安そうな顔をしている。温室の中に入ると、車椅子から降り地面に座る様にと促された。
お姉様の手を借り地面に座ると、男が目の前に座り瓶の中からビー玉の様な薬を一つ取り出した。
「さあ、これをお飲みなさい。そうすればあなたは完璧な存在に生まれ変わる」
薬を受け取り、お姉様の顔を見る。お姉様は私の目を見ながら頷いた。飲みなさいと言っている。
私は手にした薬を口に含んだ。口腔内に入ってきた薬はすぐに形をなくして消えてしまう。
次の瞬間身体が燃えるように熱くなる。
「あ、あああああああああああ!」
悲鳴にもならない声を上げて私は意識を失った。
──
「……はないんですよね」
「植物化してしまった者は人には戻らんよ、ただ……」
お姉様とあの男の声がする。声は聞こえるのに何も見えない。身体が動かない、動けない。目の前に壁がある、横にも。どうしてこんな所にいるの?
お姉様、お姉様……助けて、嫌このままは嫌、お姉様の顔が見えないなんて嫌、お姉様お姉様お姉様!
「お姉様ーー!」
目の前にあった壁の様な物を突き破り、叫びながら飛び出るとそんな私を見てお姉様と男が目を丸くしている。
「これは……」
体がある、目が見える、ああ、お姉様の顔が見える。
「お姉様……」
そうつぶやきながら手を伸ばすと驚いた顔をしたお姉様が慌てて駆け寄ってきた。
「梅子……なのよね?」
「はい……お姉様の梅子です」
その優しい腕の中で私は気を失った。
──
気がつくと私は自分の部屋にいた。
何があったんだろう? 植物人になるという薬を飲んで、体が熱くなって……。
そこで自分の体の変化に気がつく。苦しくない、体が動く……。
意を決してベッドから立ち上がってみる。自分の力で立ち上がれる!
「あ、あああ!」
嬉しさのあまり目から涙があふれる。治ったんだ! あの薬が効いたんだ! 私は健康な体を取り戻せたんだ!
ひとしきり感動で泣いたあとにふと気がつく。そう言えば、お姉様はどこにいるのかしら……。周りを見渡すがここにはお姉様はいない。
それに凄くのどが渇いている……水を貰いに行こう。
ドアから廊下に出ると周りがしんと静まり返っていた。階段を降りると下に掃除をしているメイドがいた。
声をかけようと思ったその時、喉の渇きが酷くなる。なにこれ……ヒリつく様な焼けるような……。
「あ……う……」
うめき声にメイドが気が付いた。
「梅子お嬢様!?」
慌てて駆け寄ってきたメイドを見て思う。
アア、オイシソウ……。
その瞬間私の身体から香りが立ち込める。何だろうこの香り……ふわふわとする意識の中で近づいてきたメイドの顔を見ながら私は呟いた。
「ネエ……チョウダイ?」
メイドはその言葉に目を丸くしたが、すぐにとろけた様な目つきになり、私に身を委ねてきた。
「なぜこんな所に?」
「わからないわ、先生が人目につかない土がある所を用意しろとおっしゃったのよ」
お姉様も不安そうな顔をしている。温室の中に入ると、車椅子から降り地面に座る様にと促された。
お姉様の手を借り地面に座ると、男が目の前に座り瓶の中からビー玉の様な薬を一つ取り出した。
「さあ、これをお飲みなさい。そうすればあなたは完璧な存在に生まれ変わる」
薬を受け取り、お姉様の顔を見る。お姉様は私の目を見ながら頷いた。飲みなさいと言っている。
私は手にした薬を口に含んだ。口腔内に入ってきた薬はすぐに形をなくして消えてしまう。
次の瞬間身体が燃えるように熱くなる。
「あ、あああああああああああ!」
悲鳴にもならない声を上げて私は意識を失った。
──
「……はないんですよね」
「植物化してしまった者は人には戻らんよ、ただ……」
お姉様とあの男の声がする。声は聞こえるのに何も見えない。身体が動かない、動けない。目の前に壁がある、横にも。どうしてこんな所にいるの?
お姉様、お姉様……助けて、嫌このままは嫌、お姉様の顔が見えないなんて嫌、お姉様お姉様お姉様!
「お姉様ーー!」
目の前にあった壁の様な物を突き破り、叫びながら飛び出るとそんな私を見てお姉様と男が目を丸くしている。
「これは……」
体がある、目が見える、ああ、お姉様の顔が見える。
「お姉様……」
そうつぶやきながら手を伸ばすと驚いた顔をしたお姉様が慌てて駆け寄ってきた。
「梅子……なのよね?」
「はい……お姉様の梅子です」
その優しい腕の中で私は気を失った。
──
気がつくと私は自分の部屋にいた。
何があったんだろう? 植物人になるという薬を飲んで、体が熱くなって……。
そこで自分の体の変化に気がつく。苦しくない、体が動く……。
意を決してベッドから立ち上がってみる。自分の力で立ち上がれる!
「あ、あああ!」
嬉しさのあまり目から涙があふれる。治ったんだ! あの薬が効いたんだ! 私は健康な体を取り戻せたんだ!
ひとしきり感動で泣いたあとにふと気がつく。そう言えば、お姉様はどこにいるのかしら……。周りを見渡すがここにはお姉様はいない。
それに凄くのどが渇いている……水を貰いに行こう。
ドアから廊下に出ると周りがしんと静まり返っていた。階段を降りると下に掃除をしているメイドがいた。
声をかけようと思ったその時、喉の渇きが酷くなる。なにこれ……ヒリつく様な焼けるような……。
「あ……う……」
うめき声にメイドが気が付いた。
「梅子お嬢様!?」
慌てて駆け寄ってきたメイドを見て思う。
アア、オイシソウ……。
その瞬間私の身体から香りが立ち込める。何だろうこの香り……ふわふわとする意識の中で近づいてきたメイドの顔を見ながら私は呟いた。
「ネエ……チョウダイ?」
メイドはその言葉に目を丸くしたが、すぐにとろけた様な目つきになり、私に身を委ねてきた。
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