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飛びたいペンギン side
飛びたいペンギン side:大福
しおりを挟む今日は久しぶりに遠出の依頼だ。
僕とよもぎはシェルアさんとマリアさんに、服と靴下と靴を装備された。
ちょっと動きにくいけど、寒い所に行くみたいだから多少の不便さは我慢である。
それよりお出かけがすごく楽しみだった。
よもぎは服を着て窮屈そうにしていたけど、寒いのが嫌いだから我慢していた。
移動ターミナルに来ると、人がいっぱいいて忙しそうだった。
サンくんもあっちを見たりこっちを見たりして忙しそうにしている。
僕はまたサンくんが迷わないように見張りにつくと、ちゃんとついて来るんだよと鼻を足に押し付けて忠告した。
サンくんは僕に謝ってきたけど、謝る必要はないよと返事をして僕は歩いた。
シェルアさんとロジェさんの所に行くと、このままゲートを通っていいという事だった。
ブラッドは前に時間を取らされたのを愚痴っていたけど、ロジェさんに事件があったからだろと一蹴されていた。
よもぎはマリアさんに抱っこされてお澄まし顔だ。
エッシちゃんはサンくんにゲートの説明をし始めた。
サンくんがどうやって行くのと聞くと、エッシちゃんは難しい言葉を使って丁寧に教えていた。
ブラッドが簡潔に瞬間移動装置だと言うと、サンくんはぽかんとしていたけど、小難しい話は僕と同じで聞いていないみたいだった。
僕は早く行こうとサンくんの足を鼻で押した。
ゲートをくぐるとあの感覚がして、次の瞬間にはもう別の場所にいた。
辺り一面雪景色である。
サンくんは寒さに叫んでいたけど、僕は喜びに叫んでいた。
ふわふわさくさくの雪の感触が楽しくて一直線に走っていると、後ろから僕を呼ぶシェルアさんの声が聞こえてそっちに走った。
顔が少し冷たいけど、そんなの気にならないくらい楽しい。
ロジェさんはよもぎと一緒で寒いのが苦手なようで、早く行くぞと僕達を急かして歩いた。
ついて行くと何か嗅いだ事のあるような匂いがして、僕は先頭のロジェさんを追い抜くと、匂いの元に声をかけた。
『ねえー! 誰かー! いるんでしょー!! 出てきてー!!』
出てきたのは僕達とは違う種族の動物だった。
人間と一緒で二足歩行をしている。
『うわっ』
『どちら様?』
僕の前に現れた未知の動物は僕に驚くと、ドアを閉めて向こう側に消えてしまった。
後ろでブラッド達が色々話していたけど、僕はあの動物と仲良くなりたくて仕方なかった。
家の中から二つの足音が聞こえると、あの動物の声も聞こえた。
ドアの向こう側から出てきたのは人間とあの未知の動物だった。
ロジェさんが挨拶をすると目の前の人間も挨拶をして、僕達を家の中に招き入れた。
人間の名前はコアというらしい。
僕とよもぎは玄関先で装備していた靴と靴下、服を脱がされた。
コアさんが言うには、この未知の動物を保護してほしくてEMANONに依頼したようだった。
シェルアさんが服を乾かしていいか聞くと、コアさんは勿論と言って部屋の奥に走っていってしまった。
家の中は暖かくて、服なんか着なくていいくらい快適だ。
ロジェさんは溜息をつくと、シェルアさんに面倒事じゃないだろうなと疑っていた。
未知の動物はコウテイペンギンという名前の種族だとシェルアさんは言っていた。
僕は犬よりちょっとかっこいい名前だなと羨ましくなった。
シェルアさんとロジェさんは二人で難しい話をしているけど、みんないつもの事だとスルーして椅子に座っていた。
コウテイペンギンはチラチラこっちを見てくるけど、僕達を警戒しているのか近付いてくる様子はなかった。
よもぎはペンギンに興味がないみたいで、欠伸をするとストーブの側まで歩いていった。
じっとペンギンを見ていると、ブラッドが僕にアイツを捕まえろと言った。
捕まえる気はないけど仲良くしたかったから、僕はペンギンの所に走った。
じゃれつく直前で僕の身体をペンギンは躱すと、エッシちゃん達の方に走っていった。
エッシちゃんは走ってきたペンギンを可愛いと褒めている。
今、僕の可愛さが脅《おびや》かされている気がした。
ペンギンは結構大きい生き物らしいけど、このペンギンは小さいみたいで、マリアさん達が話していた。
ペンギンは次によもぎの方へ行くと、挨拶をして人間以外に僕達みたいな毛むくじゃらの生き物がいっぱいいるのかと聞いていた。
どうやらペンギンは僕達“犬”をよく知らないようだった。
よもぎは少し面倒くさそうにしながらもペンギンに返事をしている。
僕の方を見てアレは何とペンギンは聞いていたけど、よもぎは素直にパートナーだと答えていて、僕は嬉しくなった。
ペンギンは陸の知識に詳しくないみたいで、色々よもぎに質問していた。
少しするとコアさんが飲み物を持って戻ってきた。
コアさんは飲み物をテーブルに置いて椅子に座ると、ペンギンが何故ここにいるのかを話し始めた。
このペンギンは二週間前に海岸で倒れていたようで、保護団体に引き取られる予定だったけど、逃げ回ってコアさんの家に住み着いたそうだった。
僕は鍵を閉めているのに家の中に入れるなんて、よもぎみたいだと思った。
ロジェさんは保護団体に任せればいいのにと言っていたけど、コアさんは保護団体の人に懐かれてるなら育てたらと言われたからウチを頼って来たのだと言っていた。
シェルアさんとペンギンが見つめ合っている。
ロジェさんがウチに依頼しても保護団体に預ける形になると言うと、コアさんはそれでも僕達が来たから安心したと笑っていた。
ペンギンはかなり不満そうな顔をしていたけど、口を開く事はなくて、静かに部屋から出ていった。
マリアさんが言うには、このペンギンはこの辺りに生息しない区のペンギンなようで、此処にいるのは変らしい。
ペンギンは戻ってくると、手に持っていたおもちゃをテーブルに置いた。
コアさんは何か怒っていたけど、ペンギンは知らん顔でおもちゃを動かして遊んでいる。なんだか楽しそうだ。
でもペンギンはまた部屋から出ていった。
コアさんもペンギンを追いかけて部屋を出る。
バタバタガシャーンというすごい音が聞こえると、ペンギンがアルバムを頭に置いて走ってきた。
これを見てというペンギンにみんなが集まる。
飛び跳ねると、アルバムに飛行機の写真があるのがチラッと見えた。
コアさんは子供の頃から飛行機が好きみたいで、さっきのおもちゃもコアさんの物らしい。
パイロットになりたかったけど、学校に通うお金が足りなくてなれなかったと寂しそうな顔をしていた。
パイロットには免許が必要で、そのために人間は色々勉強しなきゃいけないみたいだ。
ペンギンは厳しく目を覚ませとコアさんの足をつついていたけど、悲鳴を上げるコアさんが可哀想だった。
『まったく……』
『やりすぎだよー!』
僕が注意すると、ペンギンはこれがやりすぎなら海では生きていけないと言っていた。
よもぎは人間は陸の生き物だからと呆れている。
シェルアさんがペンギンの感情を汲み取って、飛行機に乗りたいのと問いかけると、ロジェさんはすぐ否定して呆れていたけど、ペンギンはキラキラと目を輝かせて頷いた。
そしてペンギンは天国に近い場所に行きたいと訴えた。
比喩なのか何なのかはわからなかったけど、ペンギンの目は本気だった。
コアさんと一緒に飛行機に乗りたいかと聞くシェルアさんの問いに、ペンギンは何度も頷く。
『そう! 乗りたいの!』
『じゃあ僕も乗ってみたい!』
便乗して僕も頷くと、ペンギンはコアさんをまたつついた。かなり痛そうである。
ペンギンはシェルアさんの方に歩いていくと、小さい人間も乗れるのと聞いていた。
エッシちゃんはペンギンの言葉がわからなくて、今からでも遅くないと言っているのかとペンギンに聞いていたけど、ペンギンもエッシちゃんの言葉がわかってないから適当にうんうん頷いていた。
すれ違いコミュニケーションである。
でも面白いから僕もうんうん頷いておいた。
コアさんは無理無理と叫んでいたけど、ペンギンにつつかれてまた悲鳴を上げていた。
こっちを見るペンギンに、よもぎが人間はペンギンの事を話しているのだと教える。
ロジェさんは次来た時に書類を持ってくると言っていたけど、コアさんは今日ペンギンを引き取ってくれると思っていたみたいでがっかりした。
ペンギンは魚をたくさん食べる種族らしい。
マリアさんは魚の丸飲みを気にすると、話題の中心のペンギンを見つめた。
皆の目がペンギンに向くと、ペンギンが俯いていて心配になった。
マリアさんはペンギンの知識を披露すると、話の中でロジェさんが野生動物だと二週間は手続きに時間がかかると言って、書類をコアさんに渡した。
コアさんは驚いた後、自分にペンギンの面倒を見るのは無理だと訴えた。犬しか見た事がないらしい。
ペンギンは僕が何かしたのと聞いてきたけど、僕は何もしていないため、一緒の顔をして僕達は首を傾げた。
コアさんはロジェさんに言い負かされたみたいで、法律が憎いとよくわからない事を言っていた。
僕は拳を震わせるコアさんの足を、まあまあと叩いて落ち着かせた。
その一方でペンギンはマイペースにアルバムのページをめくっていた。
ペンギンは皆の視線が嫌だったようで、エッシちゃんの所に見ないでと言いに行っていたけど、エッシちゃんとマリアさんの撫で撫でに絆されていた。
ルイスくんとサンくんもペンギンを撫でて楽しそうにしている。
僕はほんのちょっとだけムッとした。
ロジェさんが咳払いすると、ふわふわした空気は流されてなくなった。
シェルアさんはコアさんのお金を立て替えてくれるそうで、コアさんは喜んでいる。
シェルアさん達はコアさんに挨拶をすると、マリアさんとエッシちゃんが僕達に防寒装備を着させた。
ペンギンは人間の真似なのか、別れ際に翼を振っていた。
外に出ると雪が降っていて、僕は気分が上がった。雪を踏む感触が楽しい。
よもぎはマリアさんの腕に抱かれたまま走る素振りすら見せなかったけど、帰る時は流石に地面に降りていた。
よもぎがつくったゲートをくぐってEMANONの事務所に帰ると、サンくんは驚いていたけど僕はそれどころじゃなかった。
だってよもぎがシェルアさんにおやつを貰っていたのだ。
おまけにロジェさんからもおやつを貰っている。
羨ましくてよもぎをじっと見ていたけど、よもぎは僕に半分こしてくれなかった。
僕はダイエットが早く終わってほしいと願わずにはいられなかった。
シェルアさんとロジェさんはパソコンをまた触ってお仕事を始めた。
明日もまたコアさんの家に行くみたいで、皆で色々話している。
マリアさんは僕達だけじゃなくペンギンも好きみたいで、行きたいと一番に手を挙げていた。
ルイスくんもエッシちゃんも行きたいと言っていて、僕はちょっとペンギンに嫉妬した。
『皆ペンギンに夢中になってる……』
『水族館でしか会えないような存在だからでしょ』
『よもぎは嫉妬しないの?』
『なんで私が嫉妬しなくちゃいけないの?』
よもぎはそう僕に言うと不可解な物を見る目で僕を見てきた。
相変わらずつんでれである。
僕は何も言わずによもぎに寄り添った。
♢
翌日事務所に出勤したけど、よもぎ達はコアさん達の所に行くらしく、僕だけお留守番だった。
シェルアさんに行きたいとねだっても、風邪引いたら困るでしょと却下された。
どうやら今日僕の熱が若干高かったから気にしているようだ。過保護すぎる。
出て行こうとする皆を引き止めていると、美味しそうなジャーキーの匂いがして、僕は思わずそっちに走った。
ブラッドはジャーキーを僕にくれると、僕の背中を撫でた。やはり持つべきものはおやつをくれる友達である。
僕は久しぶりにジャーキーを味わって食べた。
ブラッドには僕だけが頼りだと言われた。
僕は何の事かよくわからなかったけど、うんと力強く返事をした。
その後おやつを食べたのがバレて、シェルアさんに怒られた。
その結果、僕は昼ご飯を減らされてしまった。
ブラッドのせいだよと前足でつつくと、ブラッドはバツが悪そうな顔をした。
今頃皆あの雪の中で遊んでいるんだと思うと、僕は寂しくなった。
なかなか帰って来なくてソワソワしていると、ブラッドが僕の代わりにシェルアさんに聞いてくれた。
よもぎ達はペンギンのお世話を任されたらしい。
……お仕事なら仕方ないかぁ。
お昼になるとロジェさんが来たけど、よもぎ達はまだ帰って来なかった。
しばらくするとやっとよもぎ達が帰って来て、僕は大急ぎで出迎えた。
おかえりと言っていたけど、皆から美味しそうな匂いがして、僕はよもぎ達が外食をした事に気付いた。
僕が減量されたご飯を食べている間に皆は美味しいご飯を外で食べていたのだ。ショックだった。
『僕も食べたかった……』
『痩せたらいつでも食べれるでしょ』
『うぅ……』
僕は今食べたいのに、よもぎは残酷な事を言う。
拗ねていると、マリアさんがペンギンのお世話係になりたいとロジェさん達に訴えていた。
僕は余計に心が荒みそうになった。
♢
一日おきのペンギンのお世話は、ロジェさんは寒いのが苦手だから不参加らしかった。
雪はあんなに楽しいのに、ロジェさんは損している。
シェルアさんは最終日について来てくれるみたいだった。
——一日目。
今日はブラッドもペンギンの世話に行くみたいで、また僕はお留守番だった。
部屋を出る前にブラッドの足にしがみつくと、ブラッドは僕を振り落とそうとしてきたけど、負けじとしがみついていると一緒につれて行ってくれる事になった。
よもぎと一緒に行けないのは残念だったけど、雪が見れる時思うとワクワクした。
防寒対策の服を着てから移動ターミナル経由でコアさんの家に行くと、まだまだ雪がいっぱいで歩く度に新しい足跡をつけた。
『や! また来たよ!』
『え! パートナーは?』
『家にいるよ?』
僕がそう言うと、ペンギンはホッとしていた。
『ねえ! 外行って鬼ごっこしよ!』
『鬼ごっこ? って何?』
『やればわかるよ!』
鬼ごっこに誘うと、ペンギンは僕の後をついて来た。
僕は鬼ごっこの遊び方を簡単に説明すると、外を駆け回った。
ペンギンと僕は交代で鬼ごっこをやったけど、だんだん飽きてきたから今度はブラッドを鬼にした。ブラッドは僕の遊び相手でEMANONの仲間なのだ。
ブラッドはペンギンが変な所に行きそうになると、その度にすごい形相で追いかけていた。
『ねえ、種族が違っても仲間になれるの!?』
『うん! なれるよ!』
僕はペンギンと並走しながら答えた。
ペンギンは走るのをやめると、氷の上を滑った。
ルイスくんはブラッド捕まえろと怒られていた
——二日目。
コアさんの家に行くと、ペンギンがコーヒーの粉を落としていた。
マリアさん達が綺麗に片付けてくれたけど、ペンギンが外で旗を掲げたのはよくわからなかった。
僕はペンギンに競争しようと言われると、快諾して走った。
——三日目。
この日は僕もよもぎもお留守番だった。
帰ってきたエッシちゃんからかまくらを作る事になったという話を聞いて、かまくらって何だと思った。
——四日目。
今日は雪に鼻を突っ込んで穴を空ける遊びをした。
よもぎが見たら何してるのと言われる遊びだけど、意味がなくても楽しかった。
皆かまくら作りに奮闘していたけど、マリアさんとエッシさんが僕と時々遊んでくれた。
ブラッドはルイスくんとエッシちゃんに文句を言っていたけど、ペンギンにジャンプされるともっと怒っていた。
ペンギンはブラッドとエッシちゃんはパートナーなのかと関係を聞いてきた。
僕は似たような感じで仲間だと伝えておいた。
——五日目。
僕もよもぎもお休みだった。
家でのんびりダラダラした。
——六日目。
今日はよもぎも一緒だった。
ワクワクで雪道を歩いていくと、ペンギンが走って僕達を迎えに来た。
ペンギンの写真をマリアさんもエッシちゃんも撮っていて、僕はいよいよライバルの出現を感じた。
よもぎはペンギンにスマホとカメラの説明をしていた。
かまくらが出来ると、僕達は早速中に入った。
風が来ないからなかなか快適だ。
『海の生活とこっちの生活はどう?』
『やりたい事あるから、今の方が楽しいよ!』
『良かったねぇ』
笑っていると、ペンギンも嬉しそうな顔をしていた。
『イヌの生活はどうなの?』
『こっちも楽しいよ!』
公園に行った話をしていると、エッシちゃん達が僕達を見て可愛いと言ってきた。
よもぎは構わず外に出ていったけど、マリアさんにお願いされるとまた戻って来た。
撮影会が終わると、よもぎはガレージの中へと入っていった。
なんだかんだ付き合ってくれる辺り、よもぎは優しい犬だと僕は思った。
——七日目。
最後の日はシェルアさんも一緒だった。
ペンギンを引き取りに行くみたいだったけど、あのペンギンと会えなくなるのはちょっと寂しかった。
マリアさん達は結局コアさんを説得出来なかったから落ち込んでいた。
コアさんの家に行くと、ペンギンは明るく僕達を出迎えてくれた。
コアさんはシェルアさんと挨拶すると、書類をいっぱい受け取っていた。
ペンギンが羨ましがってシェルアさんの服を引っ張る。
自分にはないのかと言っていたけど、シェルアさんがコアさんに渡したのは人間が読む難しい書類だ。
人間の言語で書いてある物を見たって読めないから楽しくないだろう。
そう思っていると、コアさんが笑い声を上げて、免許を取ったら飛行機に乗せてやるなんて言っていた。
僕はこの前と全然違うコアさんの態度にビックリした。
あんなにペンギンを嫌がっていたのに、飛行機に乗せるなんて言うのだ。
サンくん達もビックリして、口々にシェルアさんにどういう事か聞いていた。
シェルアさんの話によると、昨日コアさんから心境の変化があってペンギンを預かると電話があったらしかった。
僕はそうなんだと納得がいったけど、サンくん以外の皆はなんで教えてくれなかったのかシェルアさんに問い詰めていた。
知らないと声を揃えて言うマリアさん達に、シェルアさんは苦笑いを浮かべている。
ペンギンが此処にいられるのは良い事なのに、皆の反応がよくわからなかった。
でもマリアさんもエッシちゃんもペンギンの引き取りがなくなった事をすごく喜んでいた。
一方でコアさんを追いかけ回していたペンギンは、戻ってくるとマリアさんとエッシちゃんの所に行って二人と踊り始めた。
ペンギンは独特な力強い踊りをしていたけど、踊り切るとサンくんの所にいって、踊りに誘っていた。
サンくんは上手く踊れないと自信なさそうに言っている。
そしてエッシちゃんの助言を聞くと、くるくる回った。
ペンギンはサンくんの回転を見て拍手すると、エッシちゃんもサンくんに向けて拍手した。
ルイスくんはいつの間にかシェルアさんの背後に移動している。
サンくんがなんでシェルアさんの後ろにいるのか聞くと、ルイスくんは言葉を濁していた。
マリアさんがルイスくんに踊りを勧めていたけど、キャラじゃないからと断られていた。
……キャラじゃないってどういう事だろう。
僕は頭の上にクエスチョンマークがいっぱい飛んだ。
ペンギンもどういう事だと身体ごと傾けて不思議そうにしていた。
ルイスくんはよっぽど踊りたくないのか、渋い顔をしている。
シェルアさんはそんなルイスくんに苦笑すると、ペンギンにルイスくんが踊りは苦手な事と今日はお土産を持ってきた事を伝えた。
ペンギンはお土産のイカとオキアミという言葉に反応して、早くちょうだいとシェルアさんに突進していく。
シェルアさんはペンギンがぶつからないように手で食い止めると、戻ってきたコアさんに向かってご飯をあげてもいいか聞いた。
コアさんが勿論と答えてマリアさんに傷の手当てを受けていると、ペンギンが複雑そうにその様子を見ていた。
シェルアさんは全力でつついたら駄目だよとペンギンに注意して、コアさんに謝るよう促す。
ペンギンも反省しているみたいで、コアさんの所に走っていくと、ごめんなさいと謝っていた。
コアさんはペンギンが人の言う事を聞いた事にビックリすると、謝るペンギンを見てシェルアさんが預かった方がいいんじゃと元も子もない発言をした。
ペンギンは自分を捨てようとするコアさんに怒り心頭で地団駄を踏んでいる。
でもシェルアさんがコアさんの申し出を断ると、真っ先にシェルアさんの所に行って謝った事を報告していた。
お土産を貰うとコアさんはご飯欲しさに謝罪されたのかと言っていたけど、ペンギンはちゃんと違うと否定した。
ペンギンは美味しそうにイカを食べている。
お裾分けでオキアミをよもぎと貰ったけど、お腹を壊すから食べなかった。
ペンギンは僕達が食べないのを好き嫌いだと思って今度はイカを渡してきた。
『これ、僕達は食べられないよ~』
『なんで? こんなに美味しいのに?』
『陸の動物は身体の構造が違うから、イカやオキアミを食べると消化不良で嘔吐や下痢をするの』
『そうなんだ……残念……』
『気持ちだけ貰うね!』
僕がそう言うと、ペンギンは目の前のオキアミとイカを食べて回収した。
食べ方が丸飲みだから掃除機みたいだ。
シェルアさんはペンギンの名前を書くように言っていたけど、コアさんは名前を考えるのが億劫みたいだった。
ペンギンはペンギンと呼ばれても今更何だと返事をしていた。
種族名で呼ぶのは間違っていないけど、僕はこのペンギンの名前がついたらどんな名前だろうと思いを馳せる。
ペンギンも自分の名前がほしいみたいで、名前をみんなに考えて貰おうとするのを阻止していた。
ペンギンの性別は外見で判別するのは難しいからDNA検査をしているらしい。
難しい事はよくわからないけど、僕はペンギンの名前を次会った時に呼べるのが楽しみになった。
——後日、ペンギンの名前がランギに決まったという話を聞いた。
ランギは女の子だったようで、僕は最初に飛びつこうとしたのをよもぎに怒られた。
たまに行くコアさんの家は、僕もよもぎもお気に入りの場所に加わった。
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