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1話 キラメキ☆ラプソディ
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人生が、2度も訪れている。
僕はいわゆる『剣と魔法のファンタジー世界』で勇者として生きていた。
そして仲間と共に魔王を倒し、国を救った。
けれど……結果はハッピーエンドとはいかなかった。
つまり相打ち。
魔王は倒した。倒したけれど僕も死んだ。
相手は文句なしに強かった。さすが魔族を統べる魔王だった。
平和な世界を見てみたかったというのもある。でも僕の犠牲で世界が救われたと思えば、さほど悔いはなかった。
……で、終わったと思ったら、まさかの2度目の人生がスタートした。
世界を救った特典だろうか?
僕が転生したのは現代日本。
平和な日本では『勇者の力』なんて全くの不要だった。
むしろ、力を発揮したら悪目立ちしてしまう。
SNSで拡散されて、あっという間に人生のピンチだ。
というわけで、僕は普通の高校生として暮らしている。
ちょっと運動が得意な男子だけど、どっちかというとインドア派。あまり目立たないように、オタク文化を味わいながらひっそりと。
「うおおーー! 断罪シーン。キターーー!!」
この叫びは僕じゃない。
僕の隣に座っている妹だ。
妹の楓がスマホで夢中になってる……恋愛ゲーム?
いや、乙女ゲームっていうのか?
それを横から見てたのが僕。
叫んだのが妹だ。
このゲームは『キラメキ☆ラプソディ』というらしい。だけど最近の乙女ゲームってのは……すごいの一言だった。
やたらキラキラしたイケメンたちが、ひとりのヒロインにデレまくるらしい。展開次第では『逆ハーレムエンド』もいけるそうだ。
現実だったら、血みどろの争いに発展しそうで、逆ハーレムという言葉に不穏なものを感じるが……女子の夢がつまってるゲームということで無理やり納得した。
「で……楓さん。その悪役令嬢は、そんなに悪いやつなのか?」
「はあ!? お兄、本気で言ってるの?」
「いや、だって僕、そのゲームよくわからないし……教えてくれたっていいだろ?」
「もうっ……しょうがないなあ、お兄は……」
今まさに婚約破棄されている悪役令嬢。
だけど、そんなに悪いやつなのか?
処刑されないといけないほどに?
僕が疑問に思うのには理由がある。
端的に言うと……ビジュアルがすごい好みだったのだ。
白銀のロングヘアをハーフアップにしてる彼女。少しツリ目でクールな美人系。
贅肉のないスラリとした立ち姿は、どこかたおやかな印象をうける。
正直、目が釘付けだった。僕はこの瞬間、彼女のファンになっていた。
こんな美しい女性が、処刑されなきゃいけないほどの悪人なのか?
って思ってたけど……。
「じゃあ、説明してあげるね。このアメリアはねぇ、侯爵家の令嬢で13歳の時に王太子の婚約者になるんだけど……」
説明を始めた楓だったが、妹の口から出た内容に、僕は絶句することになった。
誰もが羨むだろう王太子の婚約者。
だけど、ヒロインに婚約者を取られそうになった彼女がとった行動はヤバかった。
語られるのは想像を絶する嫌がらせ、いじめの数々。
バケツの水をかける、頭上から花瓶を落とす、刺客を送り込む、毒殺を試みる。
エトセトラ、エトセトラ……。
まじかよ……。こんなにかわいいのに、そんなに悪いやつなのか。
うそだろ。信じられない。
僕は信じないぞ!
「でもね、お兄……。アメリアはちょっと生い立ちが可哀相なんだよね」
「そうか……続けてくれ」
こんな悪い子になったのには生い立ちに理由があるといいたいのだな、マイシスターよ。
そうだと思っていたんだよ。こんなかわいい人が悪いわけないもんな。
さあ、話してみるんだ、この兄に……。
楓が言うには……幼少期のアメリアは何不自由なく健やかに育っていたらしい。
だが、彼女が11歳の時に事件は起こる――。
彼女の母親が流行り病で亡くなったのだ。
そこから全て変わってしまったという。
父は仕事に没頭するようになり、アメリアを相手にしてくれなくなってしまう。もちろん頼みの母はいない。友と呼べる存在がいなかった彼女は常に孤独だった。
孤独に耐えきれなくなったアメリアは、使用人相手にワガママ言いたい放題になっていき――最終的には性格が歪んでしまったという。
彼女は孤独だったのだ。
そして今、心の拠り所である婚約者さえ取られてしまった。このピンクドリルのヒロインに。
やばい、泣けてくる……。
「お兄……ゲームの話だからね」
「分かってるって」
そう現実じゃない――おちつけ、これはゲームの設定だ。
架空の話なんだ。
でもさ、かわいそうだろっ!
それで処刑?
誰かが助けてあげたら……違う結末だったんじゃないのかよ?
これは、防げた未来じゃないのか?
「でも、これで隠し攻略対象の出現フラグは立ったから! このまま隠し攻略対象に行くか。それとも、推しの〇〇様をもう1回攻略するか……」
「このヒロインの方がよっぽど悪役令嬢じゃないのか?」
「えー、なんで?」
「だってこれ……ぶっちゃけNTRじゃん」
人様の婚約者を奪うとか悪者じゃなくてなんなんだ?
どう考えても正当化する理由が見つからないんだけど。
「いやいや、これはそういうゲームなの。推しと恋愛する尊いゲームなんだよ!」
「はあ、そうか……エロゲーみたいなもんか」
「ちがうよ……お兄ってお馬鹿なの? とんでもない変態さんなの?」
「フッ、冗談だ……つまりあれだろ? ギャルゲーみたいなやつだ」
「ギャルゲーっていうのがよくわからないけど……そうなのかな?」
ギャルゲー自体を知らない見たいだったが、楓は納得したらしい。
でも妹の話を聞いていると、どうしても主人公のピンクドリルヘアーの令嬢が悪者にしか見えないんだけど。多分、他の攻略対象も相手の女子から略奪するんだろ?
ヒロインこそ本物の悪役令嬢なんじゃないのか?
楓は楽しんでゲームしてるみたいだから、別にいいけど。
マイシスターはその後もシナリオがどうとか、〇〇様(名前はうろ覚え)は声が良いとか、逆ハーがどうとか。
それはそれは熱く語っていた……。
やっぱり攻略対象(つまり令息)毎に、決まった悪役令嬢(競合相手)がいるそうだ。
つまり、僕の推しであるアメリアだけに留まらず、罪なき他の令嬢たちからも婚約者を奪うということなんじゃないか?
なんて恐ろしいゲームなんだ。
こんなのプレイしていたら性格が歪みそうで怖い。楓は大丈夫か?
だれだよ、この酷いシナリオ考えたやつは!
責任者連れてこい!!
……でも、もう眠いから明日にしてやろう。
命拾いしたな――。
「じゃあ、僕そろそろ寝るわ……」
「うん、おやすみ。お兄」
「おう、楓もあんまり夜更かしするなよ……」
それにしても『キラメキ☆ラプソディ』か……。
とんでもないシナリオっぽいけど、楓の話を聞いていたら多少の興味が湧いてきた。
暇なときにでもやってみようかな。
――そう思っていたんだけど。
結論から言うと。
乙女ゲームをやれる日なんて、やってこなかった。
僕はいわゆる『剣と魔法のファンタジー世界』で勇者として生きていた。
そして仲間と共に魔王を倒し、国を救った。
けれど……結果はハッピーエンドとはいかなかった。
つまり相打ち。
魔王は倒した。倒したけれど僕も死んだ。
相手は文句なしに強かった。さすが魔族を統べる魔王だった。
平和な世界を見てみたかったというのもある。でも僕の犠牲で世界が救われたと思えば、さほど悔いはなかった。
……で、終わったと思ったら、まさかの2度目の人生がスタートした。
世界を救った特典だろうか?
僕が転生したのは現代日本。
平和な日本では『勇者の力』なんて全くの不要だった。
むしろ、力を発揮したら悪目立ちしてしまう。
SNSで拡散されて、あっという間に人生のピンチだ。
というわけで、僕は普通の高校生として暮らしている。
ちょっと運動が得意な男子だけど、どっちかというとインドア派。あまり目立たないように、オタク文化を味わいながらひっそりと。
「うおおーー! 断罪シーン。キターーー!!」
この叫びは僕じゃない。
僕の隣に座っている妹だ。
妹の楓がスマホで夢中になってる……恋愛ゲーム?
いや、乙女ゲームっていうのか?
それを横から見てたのが僕。
叫んだのが妹だ。
このゲームは『キラメキ☆ラプソディ』というらしい。だけど最近の乙女ゲームってのは……すごいの一言だった。
やたらキラキラしたイケメンたちが、ひとりのヒロインにデレまくるらしい。展開次第では『逆ハーレムエンド』もいけるそうだ。
現実だったら、血みどろの争いに発展しそうで、逆ハーレムという言葉に不穏なものを感じるが……女子の夢がつまってるゲームということで無理やり納得した。
「で……楓さん。その悪役令嬢は、そんなに悪いやつなのか?」
「はあ!? お兄、本気で言ってるの?」
「いや、だって僕、そのゲームよくわからないし……教えてくれたっていいだろ?」
「もうっ……しょうがないなあ、お兄は……」
今まさに婚約破棄されている悪役令嬢。
だけど、そんなに悪いやつなのか?
処刑されないといけないほどに?
僕が疑問に思うのには理由がある。
端的に言うと……ビジュアルがすごい好みだったのだ。
白銀のロングヘアをハーフアップにしてる彼女。少しツリ目でクールな美人系。
贅肉のないスラリとした立ち姿は、どこかたおやかな印象をうける。
正直、目が釘付けだった。僕はこの瞬間、彼女のファンになっていた。
こんな美しい女性が、処刑されなきゃいけないほどの悪人なのか?
って思ってたけど……。
「じゃあ、説明してあげるね。このアメリアはねぇ、侯爵家の令嬢で13歳の時に王太子の婚約者になるんだけど……」
説明を始めた楓だったが、妹の口から出た内容に、僕は絶句することになった。
誰もが羨むだろう王太子の婚約者。
だけど、ヒロインに婚約者を取られそうになった彼女がとった行動はヤバかった。
語られるのは想像を絶する嫌がらせ、いじめの数々。
バケツの水をかける、頭上から花瓶を落とす、刺客を送り込む、毒殺を試みる。
エトセトラ、エトセトラ……。
まじかよ……。こんなにかわいいのに、そんなに悪いやつなのか。
うそだろ。信じられない。
僕は信じないぞ!
「でもね、お兄……。アメリアはちょっと生い立ちが可哀相なんだよね」
「そうか……続けてくれ」
こんな悪い子になったのには生い立ちに理由があるといいたいのだな、マイシスターよ。
そうだと思っていたんだよ。こんなかわいい人が悪いわけないもんな。
さあ、話してみるんだ、この兄に……。
楓が言うには……幼少期のアメリアは何不自由なく健やかに育っていたらしい。
だが、彼女が11歳の時に事件は起こる――。
彼女の母親が流行り病で亡くなったのだ。
そこから全て変わってしまったという。
父は仕事に没頭するようになり、アメリアを相手にしてくれなくなってしまう。もちろん頼みの母はいない。友と呼べる存在がいなかった彼女は常に孤独だった。
孤独に耐えきれなくなったアメリアは、使用人相手にワガママ言いたい放題になっていき――最終的には性格が歪んでしまったという。
彼女は孤独だったのだ。
そして今、心の拠り所である婚約者さえ取られてしまった。このピンクドリルのヒロインに。
やばい、泣けてくる……。
「お兄……ゲームの話だからね」
「分かってるって」
そう現実じゃない――おちつけ、これはゲームの設定だ。
架空の話なんだ。
でもさ、かわいそうだろっ!
それで処刑?
誰かが助けてあげたら……違う結末だったんじゃないのかよ?
これは、防げた未来じゃないのか?
「でも、これで隠し攻略対象の出現フラグは立ったから! このまま隠し攻略対象に行くか。それとも、推しの〇〇様をもう1回攻略するか……」
「このヒロインの方がよっぽど悪役令嬢じゃないのか?」
「えー、なんで?」
「だってこれ……ぶっちゃけNTRじゃん」
人様の婚約者を奪うとか悪者じゃなくてなんなんだ?
どう考えても正当化する理由が見つからないんだけど。
「いやいや、これはそういうゲームなの。推しと恋愛する尊いゲームなんだよ!」
「はあ、そうか……エロゲーみたいなもんか」
「ちがうよ……お兄ってお馬鹿なの? とんでもない変態さんなの?」
「フッ、冗談だ……つまりあれだろ? ギャルゲーみたいなやつだ」
「ギャルゲーっていうのがよくわからないけど……そうなのかな?」
ギャルゲー自体を知らない見たいだったが、楓は納得したらしい。
でも妹の話を聞いていると、どうしても主人公のピンクドリルヘアーの令嬢が悪者にしか見えないんだけど。多分、他の攻略対象も相手の女子から略奪するんだろ?
ヒロインこそ本物の悪役令嬢なんじゃないのか?
楓は楽しんでゲームしてるみたいだから、別にいいけど。
マイシスターはその後もシナリオがどうとか、〇〇様(名前はうろ覚え)は声が良いとか、逆ハーがどうとか。
それはそれは熱く語っていた……。
やっぱり攻略対象(つまり令息)毎に、決まった悪役令嬢(競合相手)がいるそうだ。
つまり、僕の推しであるアメリアだけに留まらず、罪なき他の令嬢たちからも婚約者を奪うということなんじゃないか?
なんて恐ろしいゲームなんだ。
こんなのプレイしていたら性格が歪みそうで怖い。楓は大丈夫か?
だれだよ、この酷いシナリオ考えたやつは!
責任者連れてこい!!
……でも、もう眠いから明日にしてやろう。
命拾いしたな――。
「じゃあ、僕そろそろ寝るわ……」
「うん、おやすみ。お兄」
「おう、楓もあんまり夜更かしするなよ……」
それにしても『キラメキ☆ラプソディ』か……。
とんでもないシナリオっぽいけど、楓の話を聞いていたら多少の興味が湧いてきた。
暇なときにでもやってみようかな。
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結論から言うと。
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