足手まといだと言われて冒険者パーティから追放されたのに、なぜか元メンバーが追いかけてきました

ちくわ食べます

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「あら~ユウト、おかえりなさい。ちょうど、お義父様とお義母様にご挨拶していたところですの」
 
「メリッサ!? どうして僕の家に?」
 
「どうしてって、わたくしたち婚約者じゃありませんか。ご両親にご挨拶するのは当然のことですのよ」

 上品に微笑んだメリッサが、右手の指輪をキラリと光らせた。
 
 ピンク色の宝石があしらわれた高そうな指輪だ。

 それを見た僕は言葉を失ってしまった。

 へえ。僕……いつの間にかメリッサと婚約してたのか。知らなかったなあ。

 きっとあの指輪って僕がメリッサに買ったんだよね?
 
 でも、いつ買ったんだろう?

 全く覚えてないや。初めて見る指輪だなあ。ハハッ。
 
 もしかして僕、記憶障害でもあるのかな。

「ささ、恋人さんもどうぞゆっくりしてくださいな」
 
「いや、でも俺は……」

 僕が言葉を失っていると、母さんが外に待機していたルチアを強引に連れて来た。

 そして2人が出会ってしまった。
 
「「あぁ!?」」

 目があった2人は瞬時に一触即発の空気を作り出した。
 
 だけど、その空気をまったく読めない人がいた。

 「おお、こりゃ……またすごい綺麗な人じゃないか。ユウトはモテモテだな。父さんびっくりだぞ。はっはっは!」

 ちょっ、やめてくれ父さん。これ以上、2人を煽らないでくれ……。

「どうしてユウトのご実家にルチアがいますの?」
 
「そりゃ、こっちのセリフだぜ、メリッサ」
 
「ところで恋人ってなんですの?」
 
「はあ? そのままの意味だが。メリッサこそ婚約者なんて、どういうだよ。あぁん?」
 
 ほら! 2人がバチバチし始めちゃったよ。父さんも笑ってないで止めてくれ。
 
 はやく、どうにかしないと……。

 カオスな空気が漂う部屋に、コンコンと扉をノックする音が割り込んできた。

「あら、今日はお客様が多いわね」

 そう言うと母さんは玄関に向かっていく。

 お客様が多い……だって?

 やめてくれ母さん。扉を開けちゃダメだ。もう嫌な予感しかしない。

 そんな心の声は届かず、母さんは扉を開けてしまう。
 
「はじめまして、お義母さん。私、ユウトの妻のリリカと申します」
 
「ユウト~。お嫁さんが来たわよ!」

 なんと、僕にはお嫁さんがいたそうだ。世の中は知らないことでいっぱいだな。

 というか、なんでリリカまで僕の家に。僕、君たちのパーティから外されたよね?
 
 それなのにメンバー全員が実家に揃うとか意味不明すぎるんだけど。
 
 僕は初めてできた恋人を両親に紹介しようとしただけなのに……なんでこうなった?
 
「婚姻届に不備があったので、書き直してもらいに来たんです」
 
「あら、そうなの。わざわざご足労頂いちゃって、ごめんなさいね~」
 
「いえ、お義母さまが謝ることじゃありません。私たちの幸せのためですから」
 
 そうだよ、母さん謝らなくていいから。だって僕、そんな書類書いた覚えないんだけど。

 いや、それよりもだよ?
 
 恋人と婚約者とお嫁さんがさ、同時にいたらおかしくない?
 
 お願いだからそこを疑問に思ってよ、母さん!
 
 それに、もしその異常な関係が事実だったとしたらさ。まず息子を叱ろうよ……とんでもない悪い男じゃん。
 
 ああ、いや……事実じゃないよ。無実だけど。
 
「ん? なんでメリッサとルチアがここにいる?」

 居間に来たリリカが、メリッサとルチアがいることに気がついたようだった。
 
「リリカ。お前、なんでユウトの家に来た?」
 
「私はユウトの妻だからここにいるのは変じゃない」
 
「ふふ、婚姻届けは受理されていないのでしょう。まだ妻とは言えないんじゃなくって?」
 
 そうだよ、さすがメリッサは頭の回転が早い。
 
 だが、リリカも負けていなかった。
 
「ユウトにサインさせて提出するだけだから、もうほとんど妻」

 サインさせる……か。そっか、僕はリリカに力じゃ勝てないもんね~。
 
 あれれ?

 なんだろう、無理やりサインさせられる未来が見えるぞ?
 
「わたくしがそんな暴挙を許すと思いますか?」
 
「俺もだぜ。ユウトの正式な恋人として見過ごすわけにいかないなぁ!」
 
「「正式な恋人?」」

 一瞬『リリカ VS メリッサ&ルチア』という構図になりそうだったのに、ルチアが爆弾を投下して様相が混乱していく。
 
「そういうことだ。お前たちと違って『捏造や妄想』の関係じゃねえってことだ」
 
「ふーん……」
 
「あら、そうですの……」
 
 3人の目つき、やばくない? 殺し合いでも始めそうなんだけど。大丈夫だよね?
 
 この場で楽しそうなのは父さんと母さんだけ。
 空気読めないよね~この2人。昔からかわらないなあ。

「それで、ユウトとはどこまで進んだんですの?」
 
「まさか……もう蹂躙し尽くした?」

「いや、まだ手……握っただけだ」
 
「ふーん……」
 
「まあ、ウブですこと」
 
 照れながらルチアが言うと、リリカとメリッサは余裕を取り戻したみたいだった。

 いや、リリカさん。蹂躙ってなんなのさ。言い方ぁぁ!?
 
 というかさ、誰もそこにツッコまないのはなぜぇぇぇ?

 僕は助けを求めようと、父さんと母さんに視線を送る。

「母さん、これならすぐに孫の顔を拝めそうだな。しかも3人ともとんでもない美人だ。いや~うちの息子はすごい男だな。鼻が高い」
 
「ええ、そうですねお父さん。私、初孫は女の子が良いわ」
 
「だそうだ! 頑張れよユウトっ」

 だめだ……父さんと母さんは当てにならない。
 この状況でどうしてこんなに呑気でいられるんだ。「ファイト!」じゃないんだよ、全く。

 この3人の雰囲気は最悪。家の中で暴れられたら、大変だ。
 
 高ランク冒険者がバトルなんてしたら、あっという間に廃屋になってしまうぞ。
 
 ここは僕がなんとかしないと……。
 
「あ、あの……話し合いなら外でしようよ!」

 僕は恐る恐る3人に提案する。『お前は黙ってろ』とか言われそうな展開なので、内心冷や汗ものだった。
 
「ん、そのほうが無難」
 
「そうですわね。そのほうが賢明ですわ」
 
「ああ、ここじゃ狭くてやりづれぇしな」

 僕の予想と違い、3人は素直に提案を受け入れてくれた。よかった。
 
 いやでもさ、外に出たところでヒリつく空気は変わらないよ~。

「ユウトは私が好き放題にすると決めている」
 
「リリカに取られるくらいなら、俺がユウトをめちゃくちゃにしてやるぜ」
 
「あら、わたくしがユウトに新境地を教えて差し上げる予定ですのよ」

 あれ……なんだろう。3人の話を聞いていると僕の心もヒリついてくるから不思議だ。
 
「じゃあ、誰がユウトにふさわしいか決めよう。勝負を提案する」
 
「ええ。望むところですわね」
 
「ああ、いいじゃねえか。やってやるよ」

 ギラついた目でお互いを牽制し合う3人。

 なんでこうなった??
 
 どうしてこんな状況になったんだろう。
 
 僕の分かるのは、彼女たちが心に炎を灯らせているということだけ。

 どんな勝負が始まるのか……それは彼女たちにしかわからない。
 
 外に出たからってさ、Aランク冒険者が暴れたら家がめちゃくちゃになっちゃうよ。あたり一面焼け野原だよ?
 
 この状況はまずい。でもみんなは臨戦態勢だ……。
 
「ねえ~ユウト。ちょっとお買い物頼めるかしら? せっかくだから4人でいってらっしゃいな~」

 玄関から母さんの間延びした声が聞こえてくる。
 
 母さんにはこの雰囲気がわからないらしい。平和だね……

「みんな泊まっていくんでしょう? 夜ご飯の買い出しに行ってきて欲しいのよ」

 何言ってるんだよ、母さん!?
 
 こんないがみ合ってる3人が家に泊まる? そんなわけ無いじゃないか!

「わかりましたわ、お義母様」
 
「俺達に任せてくれ……ください、です」
 
「お金なら私たちで出しますから、大丈夫です」

 え? うそ。なにこの連帯感?
 
 3人が笑顔で答えたのを見て、僕は何も言えなくなってしまった。

「あら、わるいわね。良いお嫁さんたちじゃないの。大事にするのよ」

「う……うん、そうだね母さん」

 良いお嫁さんたち? えっと~、僕って3人と結婚するの?
 
「…………一旦、休戦協定を結ぼう」
 
「ふふ、そうですわね」
 
「ああ、おもしろくなってきたところだけど……仕方ねえよな!」
 
 なぜか3人とも嬉しそうだ。もう意味がわからない。誰か正解を教えて下さい。
 
 僕が放心していると、リリカが率先して母さんから買い物カゴを受け取った。

「じゃあ、行ってきます」
 
「ええ、気をつけるのよ」
 
「もちろんですわ」
 
「ユウトは俺が守ってやる……なんです」
 
「それじゃ、よろしく頼むわね」
 
 母さんはそう言うと、のほほんと家の中に入っていった。
 
 僕は3人の顔を伺うが、さっきまでのピリピリした雰囲気はまったくない。

「ユウト、道案内をお願いしたい」
 
「そうですわね。わたくしたち土地勘がありませんものね」
 
「そうだな。はやくこの村に慣れたいところだぜ」
 
「うん……分かったよ」
 
 あれ? 修羅場は切り抜けたみたいだけど、なんか雰囲気がおかしいぞ?
 
「わたくしたち、お嫁さんですもの」

「そう、私はお嫁さん」

「はあ、俺だけのユウトだと思ってたのによぉ……」

 ん? あ? ええ? おぅ?

 さっきまでの殺伐とした感じはもうない。それはそれでいいんだけど、みんなどうしたの? 
 
「ずっとこうなる気はしてたんだよな~」

「ルチアに出し抜かれるとは思いませんでしたけどね」

「出し抜いてない。ただ手を繋いだだけ。まだ挽回できる」

「ああ? 俺は恋人だぞ!」

「今はわたくしたち、お嫁さんですわ。同じスタートラインです」

「くっ! 手を出しとけば良かった……」

 僕は悟った。
 
 彼女たちは僕を追放したんじゃない。
 
 僕を「誰にも邪魔されない安全な場所」に追い込んで、一気に囲い込みに来ただけだったんだ。

 才能がなくても、みんなに追いつけなくても、どうやら僕は、選ばれる側になれたらしい。

 でもコレって……修羅場ってやつなんじゃ?? 
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