サラシがちぎれた男装騎士の私、初恋の陛下に【女体化の呪い】だと勘違いされました。

ゆちば

文字の大きさ
9 / 18
第2章 二人のための夜会

第9話 花園は男性立ち入り禁止につき

しおりを挟む
 ドーーンッ!
 部屋の外からフェルナン陛下が私を案じる声がすると同時に、鍵の掛かっていたドアが勢いよく蹴破られたのだ。

「生きてるか!? アルヴァ……ろ……」

 フェルナン陛下の金色の瞳が揺れた。
 ご令嬢に馬乗りされ、下着姿でベッドに押し倒されている私を見て。

「へ、陛下! 助け――」
「すまん! 百合の間に挟まることは死罪だものな! 失礼する!!」

 蹴り破られ破損したドアをわざわざはめ直し、フェルナン陛下は大慌で姿を消した。

「いや、待てーーーいっ! そんな法律ないわーーーっ!」

 私がツッコミを入れても、フェルナン陛下が戻って来る気配はない。
 まさか、襲い襲われではなく、百合認定されてしまうなんて。

「ヴィオラ様、陛下がなんかすみません……。女体化した私とあなたが百合展開とか、そんな噂が立たないよう、後でしぼっときますんで……」

 なんだか気まずくなってしまい、私はやれやれとため息を吐き出した。
 しかし、さぁ、これでようやくヴィオラ様もどいてくださるかなと思いきや。

「百合……? わたくし、今ユリユリしておりますの……?」

 ヴィオラ様の様子がおかしい。
 青く澄んだ瞳がキラキラと輝き、指を胸の前でもじもじさせ、頬は美しい薔薇色だ。いや、薔薇とか百合とか花だらけだが、とりあえずヴィオラ様の様子がおかしい。

「今思い出しました……。わたくし幼い頃、お父様の蔵書を覗いてしまいましたの……。女の子たちが仲睦まじくしている日常系の素敵な書物でした……。お父様はそれを『百合』と呼んでいて……。『至高。しかし険しい夢なり』と悲しそうに申しておりました……」
「な、なんかヒース公爵のとんでもない秘密を知ってしまったような……」

 私が気まずい苦笑いを浮かべ、ヴィオラ様の下から抜け出そうともそもそとしていると。

「いやん♡ 今は動かないでくださいまし♡」

 ヴィオラ様が可愛い悲鳴を上げ、私はギョッと目を剥いた。まるで私が下で何かしたみたいなリアクションはやめてほしい。

「ヴィオラ様、あの、解散しましょう! 何か起こる前に!」

 あせあせと私が慌てて彼女の腰を掴んでベッドの下に下ろそうとすると、またヴィオラ様は「きゃんっ」とセクシー&キュートに叫ぶではないか。どうやら私は、ヴィオラ様の新しい扉を開けてしまったらしい。

「わたくし、お家のために陛下のお心を射止めようと必死に努力して参りましたの……。けれど、いつもなぜが虚しくて……。でも今、その理由がようやく分かりました」
「うわぁぁぁ……、これ以上言わないで……」
「わたくし、百合が好きなのですわ!」

(ひぇぇぇっ‼)

 ヴィオラ様の両手が、私の肩をがしっと押さえて放さない。青い瞳の中にハートが見える気がして、私は思わず震え上がってしまった。

 おそらくヴィオラ様の心の底には、幼い頃に見た百合の書物への感動がずっと眠っていたのだろう。公爵令嬢である彼女は、フェルナン陛下と結婚するようにと親から淑女教育を受けながらも、その胸には百合への憧れがくすぶり続けていて――。

「――なんて分かったところで、どうしろと⁉ 私は女体化してますけど、男ですからね!」

 本当は女だが、男推しするしかない。貞操の危機だから。
 けれど、ヴィオラ様はにっこにこだった。

「元は男性でも、今は女の子ですもの。一生呪いが解けない可能性もありますし、これはもう、9割9分女の子ですわ。国王付き護衛騎士の身分なら悪くありませんし。それに百合はお父様の夢ですもの。きっとお喜びになられますわ」
「お父様の夢は、娘を国母にすることじゃなかったんですか⁉」
「より険しい夢の方が燃えますわ! ね、アルヴァロちゃん!」
「ちゃん、やめろ!」

 話していても埒が明かない。取り敢えずヴィオラ様を落ち着かせなければと思った私は、体を起こし、彼女の耳元でこう囁いた。
 男装時のちょっとハスキーな声色で。少しだけ色っぽく――。

「まずはお友達から始めよう。私から誘いに行くから待っていて。可憐で情熱的なヴィオラちゃん……」
「は……はわわぁぁ~~!!」

 私の百合のカリスマ口撃を食らったヴィオラ様は、幸せそうに気絶してくれた。うまくいって良かった。男を演じるために、様々な属性の研究をしていた甲斐がある。

 そして私はベッドにヴィオラ様を綺麗に横たえると、ひとまず安堵しながら毛布を体に巻き付けて部屋を後にしたのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

【完結】孤高の皇帝は冷酷なはずなのに、王妃には甘過ぎです。

朝日みらい
恋愛
異国からやってきた第3王女のアリシアは、帝国の冷徹な皇帝カイゼルの元に王妃として迎えられた。しかし、冷酷な皇帝と呼ばれるカイゼルは周囲に心を許さず、心を閉ざしていた。しかし、アリシアのひたむきさと笑顔が、次第にカイゼルの心を溶かしていき――。

契約結婚のはずが、無骨な公爵様に甘やかされすぎています 

さら
恋愛
――契約結婚のはずが、無骨な公爵様に甘やかされすぎています。 侯爵家から追放され、居場所をなくした令嬢エリナに突きつけられたのは「契約結婚」という逃げ場だった。 お相手は国境を守る無骨な英雄、公爵レオンハルト。 形式だけの結婚のはずが、彼は不器用なほど誠実で、どこまでもエリナを大切にしてくれる。 やがて二人は戦場へ赴き、国を揺るがす陰謀と政争に巻き込まれていく。 剣と血の中で、そして言葉の刃が飛び交う王宮で―― 互いに背を預け合い、守り、支え、愛を育んでいく二人。 「俺はお前を愛している」 「私もです、閣下。死が二人を分かつその時まで」 契約から始まった関係は、やがて国を救う真実の愛へ。 ――公爵に甘やかされすぎて、幸せすぎる新婚生活の物語。

【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?

きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。

【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

たまこ
恋愛
 公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。  ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。 ※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜

鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。 そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。 秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。 一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。 ◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた魔王様と一緒に田舎でのんびりスローライフ

さら
恋愛
 美人な同僚・麗奈と一緒に異世界へ召喚された私――佐伯由香。  麗奈は「光の聖女」として王に称えられるけれど、私は“おまけ”扱い。  鑑定の結果は《才能なし》、そしてあっという間に王城を追い出されました。  行くあてもなく途方に暮れていたその時、声をかけてくれたのは――  人間に紛れて暮らす、黒髪の青年。  後に“元・魔王”と知ることになる彼、ルゼルでした。  彼に連れられて辿り着いたのは、魔王領の片田舎・フィリア村。  湖と森に囲まれた小さな村で、私は彼の「家政婦」として働き始めます。  掃除、洗濯、料理……ただの庶民スキルばかりなのに、村の人たちは驚くほど喜んでくれて。  「無能」なんて言われたけれど、ここでは“必要とされている”――  その事実が、私の心をゆっくりと満たしていきました。  やがて、村の危機をきっかけに、私の“看板の文字”が人々を守る力を発揮しはじめます。  争わずに、傷つけずに、人をつなぐ“言葉の魔法”。  そんな小さな力を信じてくれるルゼルとともに、私はこの村で生きていくことを決めました。

処理中です...