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しおりを挟むエグバートは、跡継ぎに相応しくないと思われていたが、アグニュー侯爵家の子息というのもあり、オールストン子爵家の姉妹と婚約が駄目になっても大した傷を覆うことはなく、新しい婚約者がすぐに決まった。
ジャクリーンのような美人でもなければ、アイリーンのような食べることが大好きでセンスの欠片もない令嬢とは違っていた。平々凡々の目立つことのない令嬢をエグバートは次の婚約者に選んだ。
その令嬢は、アグニュー侯爵夫人のお眼鏡にかなうものではなかった。夫人は娘が欲しかったが、生まれたのはみんな息子で、自分の思い描いた令嬢を娘にしたかったのだ。
そのため、婚約したエグバートのお相手にアグニュー侯爵夫人は意地の悪いことをしまくった。
それによって、エグバートは……。
「アグニュー侯爵家の跡継ぎは、弟にさせてください」
「お前は、どうするんだ?」
「婚約者の家に婿入りします」
エグバートの言葉に彼の母は喜んだ。
「は? 私だって、こんな家、継ぎたくありません」
「こんな家だと?」
「あ、父上はいいんです。母上です。兄上の婚約者に意地悪なことばかりして、あんなことを私の婚約者がされるなんて、ごめんです。継いだら、ずっと意地悪され続けてしまいます。そんなの耐えられない」
「お前、そんなことしていたのか?」
「それは……」
「それ、ジャクリーンの時もしていたんですか?」
「まさか! あの子こそ、理想の娘よ!」
理想の娘だと言い、アグニュー侯爵夫人はジャクリーンのことをベタ褒めした。それにアグニュー侯爵家の男性陣が引きつった顔をしていたが、それにも全く気づいていなかった。
息子たちは、気に入った者に何をするのかをよく知っていた。ジャクリーンのお気に入り具合は、その仲でも酷いことがよくわかった。
アグニュー侯爵も、妻のそういうところを直せと散々言っていたが、直るどころか。悪化していたことに頭を抱えそうになっていた。
「エグバート。婚約者を大事にしろ」
「言われなくともそうします。もう、失敗しません」
跡継ぎをエグバートの弟がなる条件は、母をどうにかすることだったが、アグニュー侯爵はすぐに妻と離婚した。
それこそ、ジャクリーンのことをお気に入りなことに変わりがないのは、あの語りっぷりでよくわかった。でも、彼女は王太子の婚約者になったのだ。
暴走される前に手を打つことにしたが、急に離婚されることになった彼女の暴れっぷりは酷かったが、気が変になったと周りに思われてエグバートの弟は心優しい令嬢としばらくして婚約した。
彼女は優しすぎて、気が変になって離婚することになったことを気にかけているような令嬢だった。
その令嬢は、エグバートが解消したり、破棄となったことを知っていても、今の婚約者をとても大事にしているのを見て、嬉しそうにしていた。
「エグバート様のような方が、お義兄様になってくれるのが嬉しいです」
「そ、そうか」
エグバートは、可愛い義妹ができることを喜んだ。
「兄上。彼女は、私のです」
「わ、わかっている」
それを見て、エグバートの婚約者は微笑ましそうにしていた。
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