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しおりを挟む学園の中でおかしなことが続いていて、ヴァレリアは利用されることがなくなった。
人生最悪の日が更新されなくなったことには心底、ほっとしている。
だが、その真逆にジョヴァンナの目だけでなく、姉や従姉妹やよく知らない令嬢たちの目から光が消え始めていた。
無理もない。同じことを言われ続けるのだ。まるで、昨日やその前のことが何もなかったかのようにやり直しを普通にしているかのようにしていた。
そうなるまで、姉のロザリアは家でよく愚痴っていた。それも最近はなくなった。
両親は、ロザリアに何を愚痴っているんだとばかりにして、取り合うこともなかった。
「いい加減にしないか」
「そうよ。公爵家のご子息との婚約なのに台無しにするつもり?」
「でも」
「もう、やめて。そんなことより、もっと好かれるように努力なさい。髪質も肌もボロボロじゃない」
ストレスが続くとそうなるロザリアに両親は、愚痴に対して取り合うこともなく、もっと努力しろと姉に言っていた。
ヴァレリアも、散々な目にあわされ続けてきたこともあり、両親と同じく知らぬ存ぜぬを貫いて、何も言わなかった。
「ちょっと、ヴァレリア! あなたまで、無視しないでよ!」
「……」
だが、余計なことを言わずに首を傾げているうちにロザリアは諦めたように何も言って来なくなった。
ヴァレリアが、両親のようにあーしろこーしろと言っても怒鳴り散らされるだけだ。
聞いてはいるが答えなかっただけだ。そもそも、無視してないで、婚約者に言いたいことを言えばいいと思うが、それをしても同じことを繰り返されるから、気が変になりそうなのかも知れない。
だが、散々利用して、これまでのことを謝罪すらしない姉を助けたいとは、どうしても思えなかった。
ジョヴァンナ以外には、姉と同じく知らぬ存ぜぬな態度を貫いた。
「ヴァレリアまで、みんなと同じなの?!」
「ちょっと、助けてよ!」
「あなたしか頼れないのに! みんなと同じになんてなってにいでよ!!」
なんと言うか。姉も酷いが、ヴァレリア利用した令嬢たちは八つ当たりのようにそんなことを言った。最悪すぎる人たちだと改めてわかったが、そんな人たちを助ける義理なんてヴァレリアにはない。
まるで、お助けキャラみたいに縋られても困る。
そのため、諦めがついたのか。厄介なことに巻き込まれることはめっきり減った。
やっと、ジョヴァンナに話しかけることができたのは、だいぶ経っていた。
「ジョヴァンナ」
「……」
ヴァレリアが、心配しても何もできずにいた幼なじみにようやく話しかけることができた。
だけど、彼女らしいことを言うことはなかった。
おかしすぎる。呪いのようなものを彷彿とさせる状況が、ヴァレリアからジョヴァンナたちに伝染ったかのようになっていた。
それこそ、他と違って本人が全く気乗りしていない婚約をしたのだ。元よりそういう風に婚約することになったら、さっさと破棄になってどこかで好きに暮らすとよく言っていたが、それをしないで、いつものようなことを言ってくれることもなかった。
「どうなってるのよ」
薄ら気持ち悪いことになっていた。
「本当に呪いだったら、あちらに全部しっぺ返しがいったってことでしょ。でも、ジョヴァンナは本当に心優しいだけなのに。どうして、こんなことになるのよ」
少なくとも、ジョヴァンナはヴァレリアのことを利用してなどいない。それだけは、ヴァレリアには痛いほどわかる。
こんなことになっていることをどうにかできたらと思っても、ヴァレリアができることはなかった。
まるで、邪魔させないと言わんばかりにヴァレリアは、そこから留学することになってしまったのだ。
「何も思いつかないのに更に引き離すってあんまりだわ。……まぁ、側にいても、何もできない不甲斐ない幼なじみだけど」
でも、ヴァレリアはずっとジョヴァンナのことを気にかけていた。それが無力であり、何の役にも立っていないかのようにされるのは辛かったが、それでも幼なじみを思う気持ちを失くすことはなかった。
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